EVANGELION -夢の後にあるセカイ-   作:KYON-

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7,ジンの部屋で、前編

「よくあんなテストでこんな点取れたわね、天才なのね、アンタ」

 キッチンに立つジンの後ろから聞こえるのは、先ほど、ずけずけと自分の部屋に上がり込んできた少女、式波・アスカ・ラングレーの声だ。

 彼女はこの五日間仕事をしていなかったジンのテレビを勝手につけると、コロコロとチャンネルを回し始める。一通り確認して落ち着いたのは、いつも彼が見ている報道番組だった。

「今晩御飯用意するけど、もちろん食べてくよね」

「うん。帰っても自分で用意しないといけないし」

 

 どうしてこうなったんだろう…。

 

 テレビと、本棚と、ベッドと、ダイニングテーブルと、冷蔵庫。それ以外には古いパソコンが一台だけという、家具の少ない殺風景な彼の部屋に、クラスのアイドルであるアスカがいるのは、彼にとって不思議な光景だった。

 彼はこうなってしまった原因を、イマイチよくわからないでいる。

 自分のテスト成績を見て、いきなり上がり込んできたアスカ。その表情の奥には、プライドを傷つけられた恨み顔と、好奇心に駆られる笑顔が見えた。

 

 ジンが冷蔵庫を開けた時、自分のベッドが軋む音が聞こえた。

「椅子代わりにするのはいいけど、それ相当古いから壊さないでよ」

「そんな乱暴じゃないわよ。ねぇ、本棚の本、読んでもいい?」

「構わないけど…ドイツ語だったり英語だったり、古典だったりするから…」

 ジンは彼女がドイツ語を読めることを知って、こう言った。

 対してアスカからは予想通りの返事、

「大丈夫よ、アタシ、ドイツ語分かるから」

「帰国子女…だったっけ」

「そうよ、でももう日本の生活の方が長いわね」

 

 ジンは彼女の話を流して、冷蔵庫から幾つかの食材を取り出した。

 キャベツに人参、ピーマン、しめじ。そして申し訳程度に残っていたベーコン。

「野菜炒めでいいでしょ」

「食べれれば何でもいいわよ」

 振り返ると、ベッドに横になって本を読むアスカ。テレビを点けた意味がない。

「テレビ…」

 ジンがテレビを消してくれ、と言おうとした瞬間、先読みしたアスカがすぐに電源を切った。

 沈黙が広がり、会話が途切れた。

 

 

 野菜を切る音だけが、部屋に響く。

「今更だけどアンタ、一人暮らしなのね。両親とは別居してるの?」

 会話が途切れて数分、アスカが口を開いた。ジンは一瞬包丁を止めたが、何もなかったようにまた作業を始める。

「両親は…いないんだ。去年まで姉さんと暮らしてたんだけど、姉さんも死んじゃってさ」

 ジンの脳裏に、姉の優しい笑みが思い浮かんだ。母に似た姉の笑顔は、年の流れと共にかすれてきている気がする。思い出すたび、そのことに気づかされて、涙が零れそうにもなる。

 だが、アスカに気にさせないように明るい声で言ったジン。しかしアスカは態勢を変えずに、相変わらず本を読んでいる。

 ジンは切った野菜をフライパンに入れていく。油の跳ねる音が聞こえ始めた。

 しばらくして、またアスカが口を開く。

「私と同じね…」

 それを聞いて、ジンは顔をうつむけた。

「両親は戦争で死んじゃってね、アタシ、中学生の時から一人で暮らしてるの。親戚に頼ろうとも考えたけど、父親の行いが悪すぎて、誰も助けてはくれなかった」

 無言で聞きながら、フライパンをふるうジンに、アスカは訊いた。

 

「石狩」

「何?」

「今日、泊めてくれない?」

 

 ――結局、引力には逆らえないのか…この子も。

 

「いいよ。ゆっくりして」

 

 ジンの心には、やましい気持ちなど微塵もなかった。ただ、憐れみの気持ちがあった。




どもどもテスト前日にも関わらず、更新している馬鹿筆者です。
少し設定を変えたので、無理やりな感じが今回は目立ちます。
アドバイス等ありましたら、気軽にお寄せ下さい。
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