EVANGELION -夢の後にあるセカイ- 作:KYON-
すっかり日の暮れた午後七時、いつも一人のはずのジンの食卓には、今日はアスカがいた。
ジンとダイニングテーブルを挟んだ向かい側で、ジンの作った野菜炒めをすでに食べ終えている。
ジンの残ったご飯もあと一口、そんなところで、外が急に騒がしくなり始める。
「雨…降ってきたか…」
「そうみたいね」
朝の天気予報で言っていたにわか雨だ。
ジンは慌てた様子で勢いよく立ち上がる。彼の座っていた椅子が、勢い余って後ろに倒れるほどに。
椅子の落ちる音と、ジンが思い切り開けたベランダサッシの音に、一瞬目と耳を塞いだのはアスカだった。彼女が再び目を開けた時、ジンはベランダに飛び出して、干しっぱなしだった洗濯物を部屋の中に投げ込むようにして取り込んでいた。
その中に混じっていた彼の下着に、アスカは思わず赤面して目線を外す。
――男子って気遣い無さすぎよ…
ジンが彼女のその態度に気づいたのは、肩を濡らして全ての洗濯物を取り込んだ時だった。
「あ、ごめん…」
ジンは咄嗟に隣の部屋に洗濯物を片付けた。横目で見ていたアスカは視線をそこで上げる。
倒れた椅子を戻したジンの、濡れた肩が目に入る。
「風邪ひくわよ」
「いいよ、あと一時間もすればシャワー浴びるし」
「その一時間でひくのがオチじゃないの」
「余計なこと言わないでくれよ…そう言われたら本当にひくかもしれないじゃないか」
ジンは自分の肩に手を当てながら、椅子を戻して座った。
手早く残りを食べてしまうと、彼はアスカの分の皿もまとめてシンクに置き、水に浸す。
その後は、隣の部屋に咄嗟に片付けた洗濯物を畳みに行ったかと思うと、すぐにそれを終えて、リビングダイニングに戻り皿洗いを始める。
テキパキと家事をこなしていく主夫のような姿を、アスカは見ているだけだった。
何もせずに、ただただジンをボーっと見つめるアスカに、ジンは尋ねた。
「アスカ、先にお風呂入ったら?」
「はっ…うん…」
突然話しかけられて戸惑ったアスカ。彼女はすぐにそう答えたが、全く準備せずにジンの家に転がり込んだことを思い出した。
何故ほぼ初対面に等しい、同級生の男子の家にろくな準備なしで転がり込んだのだろうか。ふとそんな疑問が、彼女の脳裏をよぎる。
まだ時間もそう遅くはない。にわか雨に降られながら帰るという選択肢もある。だがその時の彼女は、すぐにその選択肢を消し去った。
アスカはため息をつきながら、ジンに訊く。
「アンタ、余ってる服とかある? すこし小さ目でもいいわよ」
「何に使うの?」
「パジャマ替わりよ…。泊まる準備なんてちっともしてないもの」
「じゃあなんで泊まるって言い出したのか…」
苦笑いするジンの顔を、アスカはキッと睨んだ。睨まれて表情を硬くするかと思われたジンだったが、逆に更に表情を柔らかくしてアスカを手招きする。
「姉さんのが結構あるよ。ついてきて」
そう言ってジンが向かったのは、先ほど洗濯物を押し込んだダイニングの隣の部屋。ジンについていったアスカは、そこで床に積まれた十個ほどの段ボール箱を見た。
段ボールの側面には『レイ』という名前がマジックで書かれている。
ジンはその一つを開けた。
「確か…この箱…」
中身を確認して、ジンはそれをアスカの前に持ってくる。箱の中身は、ジンの姉のパジャマだった。
「好きなの使って」
その時アスカの意識は、ジンの姉の名前に移っていた――。
お久しぶりです、更新遅れ&駄文申し訳ありません。
テストが終わった後、あまりの点数に力が抜けきってました。
これからオリジナルと併せてぼちぼち進めていくので、よろしくお願いいたします。