リトルウィッチアカデミア~闇の魔女と11'sウィッチ~ 作:宣伝部長
「ねぇ・・・ルアナさん?」
「んっ、どうかしましたか?」
「ほんっとうの・・・ほんっとうに・・・こんな格好じゃなきゃいけないのかしら?」
「服越しだとあまり感知出来ないので申し訳ないんですけど、しばらくの間の辛抱です」
「はぁ・・・は、恥ずかしいわね」
早朝の天文室。
全裸に大きなバスローブを羽織ったアーシュラ先生。
そんな彼女の身体中を真剣な表情で嘗め回しながらルアナは触診をしていた。
この前の一件で呼び出され、状態を確認する為に今に至る。
「・・・・・なるほど」
「も、もしかして・・・何かわかったの!?」
「アーシュラ先生・・・・・意外と胸が大きいんですね」
「・・・へっ?」
「いやぁ~・・・こういった形で大人の女性の身体を触ったのは初めてだったので・・・・・」
「ルアナさん」
「そ、そんなに怖い顔しないでくださいよ。じょ、冗談ですから・・・・・」
鬼のような形相に変わりつつあるアーシュラ先生に対してルアナは冷や汗を背筋に感じるのであった。
しかし、一回咳払いをすると真面目なルアナの口からある事実が明かされた。
「うーん・・・アーシュラ先生の魔法が使えない理由は・・・魔力遮断が原因だと思われます」
「・・・・・魔力遮断」
「えぇ・・・それに加えてその遮断しているモノはどうやらあまり見かけない術式でして解読に難あり・・・ですね。まだ確定ではないのですが、古代にて用いられていた術式がアーシュラ先生の身体にある魔力回路を循環させないように施されてしまっていると言うのが現状ですね」
「ワガンディアの花粉を浴びた魔女が魔法の力を失う逸話が絶えないのはそれが原因と言えるわね・・・それで、貴女の見解では治せそうなの?」
「自分が治療した・・・魔力枯渇とはまた別問題ですから現段階では何とも言えないです。しかし、可能性が0%と言う訳ではないので絶望する事はないかと・・・・・」
「そう・・・あっ、あの・・・ルアナ・・・、アッコは・・・彼女は元に戻れそう?」
電子端末を真剣に見ていたルアナにアーシュラ先生はぽつりと一言。
そんな言葉にルアナは視線を向けると笑顔で口を開く。
「あぁ・・・アッコの事なら安心してください!ダイアナと同じ症状のはずですから治療すればアッコは立派な魔女になれるはずですよ」
「そう・・・あの子は私の鎖から救われるのね」
「そんな事よりも自分の事を心配した方がいいですよ?まだ回復の見込みのないアーシュラ先生の方がこのままだと一生魔法が使えなくなってしまうかもしれないんですから」
「・・・そうね、頑張らないとね」
「わかって頂けるといいんですよ。それじゃあ・・・もう服を着てもらっても構いません」
「助かったわ・・・ありがとう」
礼を言うアーシュラ先生だが、彼女の表情には少し安堵の色が見える。
大きく背伸びをしたルアナは荷物をまとめるとマジックシュガレットを咥えて火を灯す。
しかし、アーシュラ先生は何かに気付いたのか気難しそうな表情になる。
「ルアナさん・・・さっきダイアナさんとアッコが同じ症状だと聞いたのだけど・・・・・」
「んっ?どうかしましたか?」
「ダイアナさんも私のショーを観に来てしまっていたの?」
「あの子もシャイニィシャリオの大ファンでしたからね。わざわざお忍びで外国にまで飛び出してショーを観に行くぐらいには熱心でしたね!今では恥ずかしくて隠しているけど、シャイニィシャリオのファンの1人ですよ」
「そう・・・あの時に私は彼女にも・・・・・」
「まぁ・・・魔法を使えなくなったダイアナは当時かなり悲しんでました」
「・・・・・っ」
「しかし、ダイアナはアタシにこう言ったんです」
「・・・・・?」
「シャイニィシャリオが与えてくれた感動を裏切りたくない・・・・・と」
ふぅ~と煙を上に向けて吐くルアナ。
アーシュラ先生は黙り込んだまま座っている膝元の服をギュッと掴んでいた。
「これ以上ダイアナの事をべらべらと話してしまうとダイアナに怒られちゃいますからこの辺でお開きにしませんか?」
「えぇ・・・そうね、ごめんなさい。いきなり突拍子のないことを聞いてしまって・・・・・」
「今のダイアナがあるのは紛れもなくシャイニィシャリオのおかげなんですからそんなに深く考えないでください!」
「わかったわ・・・・・ありがとう」
「それじゃあアタシはこれで!失礼しました」
お辞儀を済ませたルアナが天文室から去った後、アーシュラ先生は大きく深呼吸をする。
「私は本当に・・・悪い魔女ね」
昼休憩で賑わいの中をルアナは歩きながらある事を考え事をしていた
「(図書室のすべての書物に目を通したけど・・・文献に関する事は詳しく記されているモノはほとんどなかった。まるで昔にあった文献の内容を隠蔽するように・・・ナインオールドウィッチがルーナノヴァを設立したはずなのに・・・・・ここまであの出来事に関するデータがないのは可笑し過ぎる)」
本来の目的・・・。
ルアナは幼き頃に屋敷の中にある宝物庫からとある文献を見つけたのだ。
だが、古ぼけた文献は文字が擦れていたり、破けたりしていた。
それに幼い頃のルアナでは内容が理解出来ず・・・忘れることにした。
しかし、色々と知識を得たルアナは昔の記憶からまたあの文献と対峙する事にした。
太古の魔女が使用していたと言うルーナ文字で記された文献。
すべてを解読するのに約2週間掛かったが・・・その文献に気になるワードがあったのだ。
【ルーナノヴァに闇の魔女を封ずる】
「(闇の魔女・・・ナインオールドウィッチの手によってこのルーナノヴァに封印したとあの文献には記されていた。途切れ途切れではあったがアタシの解析が間違いなければ合っているはず・・・・・そして、この仮説が正しければ恐らく・・・・・)」
「ルアナ!!」
「んっ・・・?アッコか・・・それにアマンダ・・・って、その恰好はどうしたのよ」
不意に名前を呼ばれて振り向いて見たが、そこには掃除道具を一式装備しているアッコとアマンダが立っていた。
「寝ていたアッコをアタシが優しく起こしてやったのにアッコと一緒に罰掃除とかやってらんねぇ~」
「あぁぁっ!!何言ってるのよ!!アマンダが私の頭を引っ叩いたからこんな事になったんでしょ!!」
「なっ!?アッコがアタシの親切心を無下にして蹴飛ばし返して来たのが悪いんじゃねぇかよ!」
「なにを~!!!!」
「やんのかぁ~!!」
「はぁ・・・喧嘩両成敗」
ルアナがパチンッと指を鳴らすと額を擦り付け合う2人は頭上から水を浴び、犬のように頭を振っていた。
「それよか何かあったのかよ」
「・・・えっ?」
「真剣な表情で廊下歩いてたからよ・・・何か悩んでるんじゃないかと思ってよ」
「そうだよ!何か悩んでるなら何でも言ってよ!!だって私達友達でしょ!!」
「些細な事だから大丈夫だよ」
「そっか、相談したい事がなんだって言うんだぞ?お前には貸しを作っておくと後々良い事がありそうだからな」
「それならアマンダには相談しないでおこうかなぁ~?」
「おいおいっ!?」
「冗談だっていつでも頼りにさせてもらうよ」
「絶対だからなっ!!」
「またね!ルアナ!!」
「サボるんじゃないぞぉ~!」
罰掃除に向かう2人を見送るとルアナは中庭のベンチに腰を掛けてタブレット端末を睨みつける。
そこには屋敷で見つけた文献のデータが映し出されていた。
「それって・・・・・ルーナ文字?」
「へぇっ?」
「あっ!ご、ごご、ごめんなさい!!覗き見なんてしちゃって・・・・・」
後ろから聞こえた声に振り返るとロッテとバーバラが並んでいた。
珍しい組み合わせにも見えるが2人の手にはナイトフォールの新刊が見受けられる。
ナイトフォールが好きな2人はちょくちょく2人でナイトフォール談義を楽しむ仲なのである。
「ロッテ、ルーナ文字読めるの?」
「・・・ううん。読めはしないんだけど、なんとなくルーナ文字なんじゃないかなって・・・実家に居た時にお店で何度か見た感じかな」
「確か・・・魔法道具屋だったか?」
「うん、それに・・・精霊に一度だけ教えてもらったぐらいで・・・・・」
「・・・・・精霊か」
「ルアナはルーナ文字が読めるんですの?」
「あぁ・・・完全に理解しているレベルではないが読めることは出来るよ」
「まぁ!ダイアナに続きルアナもルーナ文字が読めるなんて凄いですわね」
「・・・・・っ!?バーバラ!!」
「ル、ルアナっ!?!?ど、どど、どうしたんですの!?」
ガシッと両肩を掴まれて迫られるバーバラ。
いきなりの展開に顔を真っ赤にして慌てふためく。
「ダイアナはいま何処にいる!?!?」
「きょ、今日の予定通りなら部屋にいらっしゃるはずですが・・・・・」
「サンキュー!!」
風のように走り出したルアナを見送りながらも残された2人は不思議そうに首を傾げていた。
「何があったのかな?」
「あんなルアナ初めて見ましたわね」
「ダイアナァァァ!!!!」
「ルアナ!?いきなり叫んでどうしたのかしら?」
「コレ!読めるか」
「もう・・・そんなに焦ってなにを・・・・・っ!?」
1人紅茶を嗜んでいたダイアナに対してルアナはタブレット端末にある文献を見せる。
呆れたような態度のダイアナではあったが、タブレット端末の内容に目を通すと黙って目でルーナ文字をなぞっていく。
「闇の魔女・・・この名前には聞き覚えがありますわね」
「・・・詳しい説明出来るか?」
「亡くなったお母様から幼き頃に昔話としてお聞きした程度ですが、確か・・・魔の者によって変えられた闇に呑み込まれた魔女と言う認識ですわね」
「・・・・・魔の者か」
「ルアナ・・・貴女、もしかしてこのルーナノヴァに来た理由って・・・・・!?」
「あぁ・・・闇の魔女を復活させる」
ルアナの一言で一瞬にして険悪な空気がこの場を支配する。
「・・・・・って、そんな訳ないだろう?アタシがそんな危なっかしい事する訳ないじゃん!」
「はぁぁ・・・貴女ならしれっとやりかねないから信用ならないんですよ」
「アタシがそんな人間に見えるのか!」
「まったく・・・単身無策でギャングのアジトに乗り込んだりしたのを覚えていないのかしら」
「アレは人助けだったから仕方なくだよ!それに負ける気なんてさらさらなかったし・・・・・」
「それで・・・多くの人間を心配させたのは何処のどなたでしたか?」
「・・・・・うぐっ」
言い合う2人ではあったが、折れたようにルアナはマジックシュガレットを取り出すと一服し始める。
「・・・でも、闇の魔女を復活させようとしている集団はいるみたいだ。世間の魔女界隈ではその話がちょくちょく出始めている」
「それで・・・ルアナはその調査に・・・?」
「単独行動ではあるけどね」
「先程貴女に言った言葉覚えています?」
「単身無策・・・だろ?大丈夫じゃん!手がかりの文献は何となく解読出来たし、何となくキーワードも掴めた!これはミッションクリアも間違いない!!」
「完全にその文献を解読した訳ではないでしょ?途切れ途切れで大事な所が抜けてしまっている可能性もあるかもしれませんし・・・・・」
「まぁまぁ・・・アタシもバカじゃないんだ。このルーナノヴァで怪しい場所を見つけたんだ」
「・・・それは何処ですの?」
「新月の塔」
深夜の月明かりの下・・・ルアナは新月の塔の前に居た。
「・・・ダイアナ・・・遅いな」
心配だからと同行を申し出たダイアナだったのだが、約束の時間は過ぎていて遅刻を滅多にしない相手だからか少し不安ではあった。
しかし、こちらに向かってくる人影に気付くと安堵と共に呆れたような気持ちになった。
「あぁ~・・・どうしてこうなった」
「申し訳ありません・・・どうしても同行したいと言って引いて下さらなかったのです」
「私達はダイアナのルームメイト!」
「何かあったらお手伝いするのが当然ですの!!」
「まぁ・・・数は多くても困らないから大丈夫だよ」
「そう言ってもらえて助かりましたわ」
やる気満々のハンナとバーバラ。
そんな2人を無理矢理帰らせる訳にも行かず一緒に連れて行く事にした。
「それじゃあ・・・新月の塔を調べに行きますか」