ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS外伝 ~ゴーストハンター~   作:黒井福

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初めましての人は初めまして。どうも、黒井です。

今回は大ちゃんネオさんの作品「ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS」の三次創作です。何でも私をモチーフとしたキャラを出していただけるとの事でしたので、この度そのキャラを主人公としたスピンオフを書かせてもらいました。


第1話:少年は一歩を踏み出す

 他人と満足に話せなくなったのは、果たして何時からだったか。

 

 詳しくは思い出せないが、とにかく外に出る時はキャップを目深に被ってツバで他人と目線が合わないようにする必要があった。

 

 そこまでしても外に出るのは、行きたい場所、見たいものがあったからだ。

 

 向かう場所は近所のそれなりに大きなガンプラショップ。そこはガンプラの販売だけでなく、ガンプラバトルも行われている。

 目当てはそのガンプラバトルだ。そこでは多くの者が自前のガンプラを持ち寄り、激しいバトルを繰り広げている。

 

 自分で思い思いのガンプラを作り、そしてそれを自ら駆って相手と戦う。

 

 憧れていた。自分もできればそれに混ざりたい。

 だが他人を前にすると、どうしても口が開かず前を見る事が出来なかった。

 

 だから顔を殆ど隠して、野良バトルに参加するしか出来ていなかった。

 

 ついこの間までは――――――

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 千葉県館山のマンションの一室で、1人の少年が真剣な表情で筆を動かしていた。

 デスクライトで照らされたそれ――――ガンプラのパーツに、繊細な指使いで色を塗っていく。まるで米に文字を書いているかのように、額に汗を浮かべながら。

 

 慎重に、慎重に色を塗る。一切の塗りムラもはみ出しも無い様に丁寧に塗り、塗り終えたパーツは小さな洗濯ばさみのついた棒に挟み乾燥機に放り込む。

 

 そうして全てのパーツを塗り終え、気が付けば時刻は深夜を回っていた。流石に少し疲れた。少年は椅子の背凭れに体重をかけ背中を伸ばし、固まった筋肉を解す。背骨がボキボキと音を立て、筋肉が解れる感触に思わず吐息が零れる。

 

 だがやる事はまだまだある。

 大変な作業だが、それだけに出来上がった時の事を想像するとここで止めようという気にはならなかった。

 

 何よりこのガンプラには自分の全てが詰まっている。

 

 少年――クロサワ・フクトは気合を入れ直すと、ガンプラ完成に向けてもうひと頑張りと再び机に向かうのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 翌日、県内の男子校の一つである『白狗(はくく)高校』の教室で、フクトは机で一冊のラノベを読んでいた。

 読んでいるのはドリームキャストゲーム「機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で』のノベライズだ。フクトはこれが好きだった。活躍するのがジムタイプのモビルスーツで、しかも単純な性能勝負だけでなく戦術やチームワークで戦う様子に引き込まれる。

 

 そんな彼に、2人の学生が近付いて来た。切れ長の目をした黒髪の学生と、どこか妖艶な笑みを湛えた柔らかい物腰の学生だ。

 

 2人の学生の内、黒髪の学生がフクトの肩を軽く叩いた。

 

「よぉ」

 

 肩を叩かれ、フクトは本から顔を上げ学生の顔を見ると次いで時計を見た。今の時間を見て、フクトは目を見開く。約束の時間を過ぎていたのだ。

 時間つぶしのつもりが、内容にのめり込み過ぎて時間の経過を忘れてしまっていた。フクトは慌ててラノベを仕舞うと立ち上がった。

 

「慌てなくていいのよぉ。元々こっちが声を掛けた側なんだしぃ? なんだったら、最初から迎えに行くつもりだったしねぇ」

 

 そう言ったのはもう1人の物腰柔らかな学生だ。口調や穏やかだが、言葉遣いや仕草は女性的だった。男子校であるにも拘らず、である。

 

「付いて来い。部室に案内しよう」

 

 黒髪の学生――ヤマデラ・レイヤと、女口調……オカマの学生――ニアラ・イトはフクトを伴い教室を出て行った。

 

 2人の後に続いてフクトがついて行った先は、部活棟の一室だった。表札には『ガンプラ部』と書かれている。

 3人が部室に入ると、そこには1人の学生が椅子に座って待っていた。

 

「来たか……待っていたよ」

 

 色黒の学生は椅子から立ち、フクトに近付き手を差し出した。差し出された手を見て、フクトは顔を伏せおずおずと差し出し握手をする。

 目線を全く合わせず、だが握手には応じるフクトに学生は苦笑した。

 

「噂は本当のようだな。誰も君の声を聞いた事がないと言うのは。口が利けないと言う訳でもないんだろうが……」

「はいはい部長! フッ君が他人を苦手な事はもう承諾済みでしょ? 大事なのは、フッ君のガンプラとバトルの腕がどんなもんかって話の筈よ」

 

 部長――ジヨウ・コエンはイトに叱られ、肩を竦めると手を離して頭を下げる。

 

「おっと、すまんね。別に責めている訳じゃなかったんだ。気分を悪くしたなら謝るよ」

 

 コエンが頭を下げると、フクトは首を左右に振った。彼の言う事は事実だし、フクト自身今の自分には問題があると分かっている。

 分かっているが、どうしても他人を正面から見ることは出来ないのだ。

 

「さて、今日君を呼んだのは他でもない。君のガンプラの出来とガンプラバトルの腕を見せて欲しいからだ」

 

 フクトは頷く。最初声を掛けられた時もそう言う話だったからだ。

 

「まずはガンプラを見せてくれ。話はそれからだ」

 

 レイヤに促されて、フクトは持ってきたケースからガンプラを取り出し机の上に置いた。

 

 フクトが出したのは黒塗りのジムタイプのガンプラだった。パッと見は『0083』に登場するジム・カスタムに見えるが、頭部にはジム・スナイパーⅡの狙撃用バイザー・センサーが取り付けられており、また両腕にはゲルググMに搭載されている110㎜速射砲が取り付けられている。手にはTRシリーズが装備しているロングブレードライフルを持っていた。

 

 全体的にしっかりと纏まっているように見える。悪くない出来だ。

 

「ふむ……ガンプラの出来は合格だな」

「あとはガンプラバトルの腕、ね。レッ君、どっちがやる?」

「俺がやってもいいか?」

「オーケー、それじゃ早速行きましょ」

 

 イトの言葉を合図に、一行は部室を出てある場所へ向かう。

 

 向かった場所は高校から少し離れた所にあるガンプラショップ。その店の奥にある、ガンプラバトル用のスペースに向かう。

 

 運よく筐体は空いていた。フクトとレイヤはガンプラを持ち筐体につく。

 

『Please set your GP BASE』

 

 電子音声に従い、2人はGPベースを筐体に接続する。すると青い粒子・プラフスキー粒子がガンプラバトルのフィールドを形成していく。

 

 作られたのは夕焼けに染まる廃墟の街並み。そのフィールドを見て、フクトの口元に小さな笑みが浮かんだ。

 

 誰も彼の笑みに気付く事も無く、レイヤはガンプラをGPベースにセットした。見た所ジンクスⅣをベースに改造したガンプラの様だ。

 レイヤがガンプラをセットしたのを見て、フクトもガンプラをGPベースにセットする。セットされたガンプラにプラフスキー粒子が満ち、ガンプラに命が吹き込まれる。

 

「ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳ、出るぞ」

 

 起動したガンプラを駆り、レイヤが一足先に出撃する。原作さながらに粒子を撒き散らして飛翔するレイヤのジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳ。

 

 向こうは既に準備万端。フクトの方も遅れてはいられない。

 

 フクトは光球状の操縦桿を握ると、彼の僅かな挙動に反応してガンプラが動く。

 

「――――!」

 

 フクトの口元に笑みが浮かんだ。目が爛々と輝き、口は自然と言葉を口にしていた。

 

「……ジム・スナイパーⅣ、出撃……」

 

 操縦桿を押し込み、フクトのガンプラであるジム・スナイパーⅣが戦場に躍り出る。

 

 2人のガンプラがフィールドに降り立つのを見て、イトは顎に手を当て興味深そうに眺めていた。

 

「さてさて、お手並み拝見ね」

 

 

 

 

 一足先に出撃していたレイヤのガンプラ、ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳは上空からフクトのジム・スナイパーⅣを探していた。

 ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳは射撃装備としてロングバレルのGNビームライフルを装備している。そして両肩には防御装備も兼ねたGNバスターソードを装備し、両太腿はアドヴァンスドジンクス同様のバーニアが。背中のGNドライブは取り払われ、代わりにブレイブ指揮官用試験機のドライブ付きバインダーを装備したダブルドライブ仕様となっていた。

 頭部にはブレードアンテナを増設し、ジンクスⅣとブレイブを融合させアドヴァンスド化させたような機体となっていた。

 

「さて……クロサワのジムは…………」

 

 見ただけで狙撃用の機体と分かるフクトのジム・スナイパーⅣ。向こうの狙いは狙撃戦だろう。しかもカラーリング的に、このフィールドでは見つけるのは困難だ。

 

 あまり長く上空を飛び回るのは危険かもしれない。レイヤがそう思った矢先、下の廃墟から一条の閃光が迸った。ジム・スナイパーⅣのロングブレードライフルによる狙撃だ。

 

「そら来たッ!?」

 

 ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳは咄嗟にGNフィールドを張り狙撃を防ぐ。狙撃は一発だけでは終わらず、二発三発と続けて行われた。

 なかなか姑息な事に、狙撃が行われている地点はちょうど影になっていてジム・スナイパーⅣのカラーリングもあってモニターでは姿を見る事が出来ない。

 ならばとレーダーで捜すが、レーダーにもジム・スナイパーⅣの存在は確認できなかった。

 

「ステルスか、味な真似を――!」

 

 あまり目立たないが、宇宙世紀のモビルスーツにもステルス機は存在している。アッガイなんかが正にそうだし、アウターガンダムと言う作品ではジムの背後に居ても気付かれないレベルのステルス機が登場した。それにクロスボーンガンダムのアビジョも、ステルス性の高い機体と言う設定となっていた。

 

 とにかくこのままでは釘付けにされては埒が明かない。レイヤは機体を降下させ、自身も廃墟のビル群に機体を紛れ込ませた。ジム・スナイパーⅣは狙撃を得意とした機体、接近戦には弱い筈だ。

 

 だがレイヤは決して楽観視はしていなかった。彼は先程、下から狙撃されていた時のジム・スナイパーⅣの様子がどうにも気になっていた。何かが引っ掛かる。

 

 

 

 

 

 その違和感に気付いたのは、外野から見ていたイトとコエンだった。

 2人はフクトのジム・スナイパーⅣの、隠された仕掛けに舌を巻いていた。

 

「ガンプラであれを再現するとはな」

「それだけ、あのジム・スナイパーⅣがよく出来てるって事よ。やっぱり、彼に声を掛けて正解だったわ」

 

 最初にフクトに目を付けたのはイトだった。後1人、ガンプラバトルに参加してくれるメンバーを探していたイトは、とあるホビー誌で紹介されたフクトのガンプラの出来に感銘を受けた。そして彼が同じ高校の学生であると気付き、レイヤとコエンを説得して彼を入部させるべく動いたのだ。

 

 そんな経緯でスカウトされたとは知らないフクトは、今正に1人の狩人となってレイヤのジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳに襲い掛かろうとしていた。

 

 

 

 

 地上に降り立ったジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳは、廃墟の間を縫って最初に狙撃された地点へと向かっていた。既に狙撃地点が割れているのに同じ場所に留まるような事はしないだろうし、する様な間抜けは願い下げだが、移動の形跡を見つける事が出来れば姿を捉える事が出来るかもしれない。

 

 レイヤは極力足音を立てないよう、繊細な力加減で操縦桿を動かす。

 その時、頭上で何かが動いた。

 

「ッ!?」

 

 咄嗟にGNライフルを向けるジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳだったが、そこには何もない。ただ茜色に染まった空があるだけだ。

 

「…………」

 

 暫く上を警戒し、ついでに見える範囲を注意深く観察したが特におかしなものは見当たらない。或いはこれも、フクトの策の一つかもしれない。周囲の瓦礫か何かを放り投げたのか。

 

 レイヤはそう思い直すと、銃口を下げ再び先程の狙撃地点へと向かう。

 

「……ここか」

 

 狙撃された地点に到着したが、案の定そこには何もない。ジム・スナイパーⅣの姿は勿論、移動の痕跡も見当たらなかった。

 

 さて、これで状況は振り出しに戻った。フクトのジム・スナイパーⅣは今どこで何をしているのか。

 

 何か痕跡はないかと見渡しながら考えを巡らせるレイヤの頭に、真っ先に浮かんだのはこの場所自体が囮であると言うものだった。

 狙撃地点が割れていて、相手が地上に下りてきたのならこの場所を狙ってくるのは当然の事。つまり、レイヤの行動が読まれているという事に他ならない。

 

 レイヤは勘に任せて咄嗟に機体を飛翔させた。それが彼の機体を救う。コンマ数秒の差で、ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳが居た場所を粒子ビームが通り過ぎて行った。今度はかなり近い。この距離なら確実に見える。

 

「そこか!」

 

 ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳが射撃地点にGNビームライフルを向け反撃の粒子ビームを放つ。レイヤの反撃は回避されたが、それでもGNビームライフルの一撃はビルに命中し小さな爆発を起こし火災を発生させる。

 

 その揺らめく炎が、フクトのジム・スナイパーⅣの姿を浮かび上がらせた。

 漸くフィールド上で目にする事になったジム・スナイパーⅣ。その姿にレイヤは思わず目を見開いた。

 

 ジム・スナイパーⅣの装甲の色が、背景に溶け込んでいるのだ。

 

「光学迷彩!? いや、機体そのものの色が周囲と同化してるのか!」

 

 漫画『ガンダム外伝ザ・ブルーディスティニー』には、主人公のユウ達の部隊がとある任務で隠密行動する際に機体に特殊な塗装をして戦闘をする話があった。その時にされた塗装と言うのが、正に今フクトのジムが施している機体の色が周囲と同化するものだった。これなら確かに見辛い。カメレオン宜しく、動かなければ一目見ただけでは分からないくらい色が同化しているのだから。

 

 見付け辛い厄介な塗装だが、しかしあの迷彩塗装には明確な弱点がある。あの塗装は設定上、熱に弱いのである。原作でも戦闘の最中フィリップの機体の塗装が熱で剥がれ、機体の下半身が丸見えの状態になってしまっていた。

 であるならば…………。

 

「焙り出す!」

 

 ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳは上空からジム・スナイパーⅣが良そうな場所に向けてGNビームライフルとサイドバインダーのGNキャノンを乱射した。既に見え辛くなっているが関係ない。ビームで火災を発生させ、その熱で塗装を剥がしてやれば姿は見えるようになる。

 

 レイヤの作戦にはフクトも気付いていた。というより、この迷彩塗装は気付かれれば、そして原作でのこの塗装を知っていれば対処はしやすい。だからこうなる事は織り込み済みだった。

 

 見事、それがフクトのレイヤに対する感想だ。白狗高校のガンプラ部はあまり噂を聞いていなかったが、ガンプラの出来もガンプラバトルの腕も優れている。

 

 フクトはガンプラバトルはこれが初めてと言う訳では無く、声を掛けられる前にも厚着をしてフリーでガンプラバトルをしたことがあった。だからこそ、レイヤの実力が分かる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 緊張でフクトの呼吸が荒くなる。言うまでも無くフクトの得意とする戦いは狙撃と隠密だ。だからこそ敵に見つかり辛くなる塗装をし、狙撃の腕を磨いてきた。

 それが破られそうになっているのだ。彼は窮地に陥っていると言って良い。

 

 しかし、彼の口元に浮かんでいるのは、抑えきれない笑みであった。

 

 自分は今、自慢のモビルスーツで、ジムをカスタムしただけの機体で手に汗握る戦闘をしているのだ。

 ホワイトディンゴやデルタチーム、外人部隊や闇夜のフェンリル隊の様な。

 

 胸をときめかせながら、フクトは操縦桿を動かし機体を移動させる。上空からの射撃で火災が発生し熱で徐々に塗装が剥がれ、姿が露になっていくが関係ない。

 ジム・スナイパーⅣは機体を翻し、ビームの雨から逃れ再び廃墟のビル群の中へと消えていった。

 

ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳはジム・スナイパーⅣの姿を見失うと、射撃を止め上空から油断なく廃墟のビル群を観察した。

 依然としてレーダーにはジム・スナイパーⅣの姿は映らない。あの塗装とは別にレーダーに映らない仕様に改造しているようだ。だが先程に比べれば見つけやすくなった筈、そこを突く。

 

「…………ん!」

 

 出し抜けにビルの間から一条の粒子ビームが飛び出した。ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳが下を見ると、そこにはロングブレードライフルを構えたジム・スナイパーⅣが引っ込んでいくのが見えた。

 

「そこか!」

 

 ジンクス・アドヴァンスドX-ⅣがGNバスターソードを片方抜き、一気に降下してジム・スナイパーⅣに接近しようとした。

 

 このビル群、隠れ蓑に出来ている内はジム・スナイパーⅣに有利だが、存在が知られれば逆に彼を不利にする。あの長物はこの狭いビル群で振り回すには適さないからだ。しかも形状が形状なので、突き刺すと言った事も出来ない。

 

 それでも慎重に歩みを進めた。彼はなかなかに姑息な男だ。この状況で、何か仕込んでくるかもしれない。

 

 果たしてレイヤはジム・スナイパーⅣを見つけた。正確に言えば、崩れたビルの穴から伸びるロングブレードライフルの銃口だ。大方、急いで隠れたのは良いが収まり切らなかったのだろう。

 

 追い詰められた証拠――――――

 

「――――本当にそうか?」

 

 何かおかしい。レイヤはジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳをゆっくり移動させ、ロングブレードライフルの銃口をGNバスターソードの切っ先でそっと押した。

 するとロングブレードライフルは抵抗なく押され、そのまま音を立てて地面に倒れた。急いでビルに空いた穴を覗き込むとそこはもぬけの殻だった。

 

 やられた、これも囮だ。フクトは自分のジムの最大の武器を囮にしてレイヤの意識を引き付けたのだ。

 という事は、今レイヤはフクトに対して大きな隙を晒しているという事になる。

 

 直感に従ってレイヤはGNフィールドを展開した。そのコンマ数秒後にジム・スナイパーⅣのビームサーベルがGNフィールドに受け止められ、激しく光を散らした。

 

「ッ!?!?」

「やってくれたな!」

 

 レイヤはロングバレルのGNビームライフルを手放し、GNバスターソードでジム・スナイパーⅣのビームサーベルを持った腕を斬り飛ばす。宙を舞うジム・スナイパーⅣの腕。

 

 自身の自慢のガンプラの腕が宙を舞う様子に息を呑んだフクトだが、体は咄嗟に操縦桿を押していた。操縦桿の動きに従い、ジム・スナイパーⅣは攻撃の為にフィールドを解除されたジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳに肉薄する。この距離なら、ロングブレードライフル程ではなくともデカいGNバスターソードは振れないし、フィールドも張れない。

 

「くっ!?」

 

 迫るジム・スナイパーⅣに向けGNバルカンで迎撃するジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳだったが、それと同時にジム・スナイパーⅣも残った腕に取り付けられた110㎜速射砲が火を噴いた。放たれた銃弾が、ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳの右肩の付け根を撃ち抜き頭部をハチの巣にする。

 

「舐めるなぁ!」

 

 しかしジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳはまだ撃墜されていない。左腕が残っている。

 

 ジンクス・アドヴァンスドX-Ⅳは左肩のサーベルラックからGNビームサーベルを引き抜くと、それをジム・スナイパーⅣのコクピット部に突き刺した。コクピットを潰され、ジム・スナイパーⅣに撃墜判定がされる。

 

「ぁ――――」

 

 自分が撃墜されたという事に、フクトは一瞬呆然とし次の瞬間には大きく息を吐いた。出来る限りの事はしたが、結局は負けた。何だかんだ言っても、やはり野良バトルで培っただけの経験では本気でその道を歩んでいる人には一歩及ばないという事だ。

 

 正直に言うと悔しい。このジム・スナイパーⅣもかなり本気で作ったものだし、このガンプラを最大限に活かす戦法も考えてきた。それで負けたのだから、悔しくない訳が無かった。

 

 無かったが、心は爽やかだった。全力を賭して戦い、そして負けたのだ。ここまで思いっきりやれば、どんな結果になろうと清々しい。

 

「よぉ、お疲れ」

 

 そこにレイヤがやって来た。彼の後ろにはイトとコエンも居る。

 

 徐にレイヤが手を差し出してきた。それが何を意味しているか、分からない程フクトも馬鹿ではない。

 フクトは俯きがちになりながら、自分も手を差し出しレイヤの手をそっと握る。互いに健闘を称える握手は、フクトにも初めての経験で新鮮だった。顔は俯いているが、その口元には小さく笑みが浮かんでいた。

 

 そんな彼に、コエンが口を開いた。

 

「見せてもらったよ、君の実力。…………合格だ」

「!!」

 

 合格という言葉に、フクトは顔を上げた。顔を上げるとコエンとイトの2人と目が合い、慌てて顔を背ける。

 そんな彼に苦笑しながら、コエンは言葉を続けた。

 

「ガンプラ制作の技術のみならず、ガンプラバトルの腕も悪くない。君を我がガンプラ部に歓迎しよう。これからよろしく頼むぞ、クロサワ君」

 

 コエンがフクトに手を差し出し、レイヤがフクトから手を離した。フクトは上目遣いになりながらも、差し出されたコエンの手を握り返し蚊の鳴くような声で「よろしくお願いします」と口にした。

 

「さ~て、これでチームメンバーが揃ったわね! これからがアタシ達、『トライフォース』の出陣よぉ!」

「トライフォース? 何だそれ?」

「レッ君のジンクスとフッ君のジム、そしてアタシの『ビルゴⅣハイヴ』。Ⅳが3つ揃ってトライフォース(3つのⅣ)よ。分かり易くていいでしょ?」

「安直過ぎはしないかね?」

「良いのよ、これ位で!」

 

 イトのネーミングにコエンとレイヤが何だかんだと意見を述べる。その中に自分も含まれているのだと思い、フクトは3人に見られない様に笑みを浮かべた。

 

 この時から、新たなチーム・トライフォースが動き出した。

 そしてそれは、後に「ゴーストハンター」と呼ばれるガンプラファイターの第一歩でもあった。




読んでいただきありがとうございました。

正直に言うとこの作品、なかなかに難産でした。展開とかが上手く纏まらず、なかなか筆が進まなかったです。

こんな感じの作品ですが、今後もお付き合いいただけますと嬉しいです。

執筆の糧となりますので、感想その他よろしくお願いします。

それでは。
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