ガンダムビルドファイターズトライの世界でがんばる話 作:キャプテンキャップ
1
『ROUND2 FIGHT!!』
システム音声とともに対角線上にいるショーさん目がけて
「おりゃあああ! ――ぁぁあああっ!?」
しかしリング中央を少し過ぎたところで不測の事態が起きた。足をもつれさせて派手に転んだのだ。全力疾走でスピードが乗っていたせいもあって、マットの上をゴロゴロ転がる。
天王、床、ロープと目まぐるしく移り変わる画面を見てたら画面酔いしてきた。うぉえぇぇぇ、目が回る~世界が廻る~~!
少しして転がる速度が落ちてきて、どうにか周りを見ることができるようになってきた。するとどうだ、何と
コケた時はどうしようと思ったけど、ショーさんが固まっているってんならまだ先手が取れるってもんだ!
「あ……」
しゃっくりした拍子にアームレイカーの操作をミスる。起き上がり途中のSガンダムがバランスを崩して、またもや前へ倒れていく。俺はアームレイカーを操作して体勢を直そうとするも、慌てていたせいでSガンダムが上体をひねり、背中からマットへ。
うぎゃー! 結局コケたー! と内心で
Sガンダムが前へ倒れる勢いと、床についたバックパックの形状が奇跡的に噛み合い、ごろんと後転する形になったのだ。
奇跡は続く。なんと転がった先が∀ガンダムの腹部で、そこにすっぽりと収まると、そのまま∀ガンダムごと後ろへ転倒。
「ぐはっ!」
Sガンダムに潰された∀ガンダム。ショーさんが苦悶の声を上げる。これはチャンス! 俺は攻撃を仕掛けるべく、横に転がるように
「ぐふぉっ!!」
思いがけず追撃となる。
「ヒックぃっ、なんか知らんけどやったぜィ! ヒック!」
そうだよ、なんか流れでボクシング対決みたいなことしてたけど、これは格闘戦。武器を使わなければなんでもアリなんだよ。
今更ながら思い出している間に、ショーさんが横に転がって逃げる。それをエビぞりの要領で上体を反らしつつ両肘を立てて、腹筋を使って跳び上がりながら追いかける。立てた両肘を∀ガンダムに突き立てる! ∀ガンダム、さらに転がって躱される! エビ反り跳びからの両肘スタンプ! 転がって躱される! 跳んでスタンプ! 転がって躱される! それを繰り返している内に楽しくなってきたー!
「あははははは!! 待て待てー!!」
「しつっこいぜ! ええ!?」
俺のエビ反り跳びに合わせて
「へぶぁっ!?」
強引に軌道を逸らされたSガンダムが∀ガンダムの横にお腹からビターン!と墜落。うぉう、落下ダメージが加算されてるぅ! ってダメージ画面を見ている場合じゃない! ∀ガンダム、打ち下ろしの右ストレート! それを左へと横向きになってギリギリで躱すことに成功。同時に左足を蹴り上げて∀ガンダムの
僅かによろめく∀ガンダム、その隙に立ち上が――れた! ようやくだよ! 数十秒ぶりに立てた! ひっく! ……でもなんか画面が揺れてるような?
「まだ膝にくるほどダメージは受けてないハズだけどなあ? なんで揺れてるんだ?」
首をひねりながら思わず口に出した俺の独り言を拾ったのはデラーズさん。
『揺れてるのは
「ヒック! えー、俺なの? 俺が揺れてんの? なんで? ヒックっ」
『それは儂も
「それに顔も赤いようだ」
デラーズさんの言葉にショーさんも動きをとめて、そんなことを聞いてくる。
「しゃっくりはまだ止まんないし、顔が赤いのは熱いからじゃないかな? ヒック! でも問題ないよー、今すっごい楽しいし気分も上等やし!
あはははhヒック!
『いや明らかにテンションがおかしいだろう。まるで酔っているみた……酔っている?』
そう言って少し考え込んだデラーズさんがまた口を開く。
『レンよ、今日なにかアルコール入りの食べ物を食べなかったか?』
アルコール入りの食べ物? そんなの食べてないよー……あ、食べ物じゃないけど、こーれーぐすー*1なら沖縄そばにかけて食べたっけそういえば。まあ唐辛子の辛味成分がまだ十分に溶け出してなかったから、ほぼほぼ泡盛だったけど。
こーれーぐすーの説明をしながら言えば、
「それだ! そのこーれーぐすーとかいう調味料で酔っぱらっておるのか!*2」
「バーロー! 酔うのが怖くてこーれーぐすーを入れられるかってんだ! うぃっくぅ!」
ロイ・フォッカーだって似たようなこと言ってたから
「というわけで試合続行だ、ショーさん!」
「へへっ、酔ってても戦おうってのか。いいぜ、とことん殴り合おうじゃねえかっ、レン!!」
至近距離で睨みあう|Sガンダムと∀ガンダム。だけどきっと俺たちの口元は笑っている。
っていうかそっかー、俺って今酔っぱらっているのか―。ならアレだ、こういう時に使う格闘技といえば1つしかないでしょ!
そう! 酔拳だ!
俺は自分の揺れに合わせてSガンダムも揺らす。両手をだらんとさせて、その場でふらり、ふらり。左右にふらふら揺れて、前後にふらふらり。
たまには足をもつれさせるように前後左右に1、2歩ばかり千鳥足で動いては元の位置へふらりふらり。
『むっ、レンのあの動き……もしや酔拳か!?』
デラーズさんは気づいたかな?
∀ガンダム、ステップからの左ジャブ3発! それを俺、上体を後ろに逸らして躱す! スウェーバック? そんな上等なもんじゃないさーねー。だってバックパックの重さに負けて足をもつれさせながら後ろへ後退。おっとっとー。それを追いかけつつジャブの連打を仕掛けてくる∀ガンダム! それを躱すべく更に上体を反らす。目の前を∀ガンダムの左腕が通り過ぎていく。
ここまで上体を反らせば、重いバックパックを背負うSガンダムは当然、重量と重力に引かれて後ろへ倒れる。倒れていく。
それを見て
けど――
「それは俺も同じなんだよなあ!」
俺は倒れつつあるSガンダムのテールステビライザーを90度まで起こし、それを杖のように支えにして転倒を防ぐ。
「な、なにぃ!?」
驚くショーさんを尻目に、俺はそのままの状態で右足を跳ね上げて∀ガンダムの顎を蹴り飛ばした!
「がはっ!!」
後ろへ数歩、たたらを踏む∀ガンダム。俺はテールステビライザー先端の伸縮機能を活かしてバネのように使い、上体を起こすと勢いそのままに千鳥足で進みながら上体を突き出すように左右交互にパンチパンチ! ∀ガンダムはそれを両腕のガードで防ぎながら、俺の前進に合わせて後退していく。
「流石
パンチをやめて、体をドリルのように回転させながら頭から∀ガンダムのお腹に
「ぐぼっ!!!?」
ショーさんの虚をつけたようでクリーンヒット! 体をくの字に曲げて吹き飛ぶ∀ガンダム。ひゃっほい! と歓声を上げながら俺もマットの上に落ちる。あがー!
あいててて……。そう呟きつつ起き上がる。別に本当に痛いわけじゃないけど、こういうのってついつい言っちゃうよね。
さてショーさんは――まだマットに寝ている!
『
システム音声がカウントを読み始める。お、初めてダウン取ったぞ!
カウント
「へ、へへ……やるじゃねぇか、レン。予測しにくいステップに、同じく予想できない攻撃。……ボクサーの俺から見りゃ、こりゃあ不気味な技だぜ」
およ? ショーさんは酔拳を知らないのかな? まあかなりアレンジ入りまくった酔拳もどきだけどね。
「へぇ、酔拳ってのかい。小さいころからボクシング一筋だったからな、初めて知ったよ」
「マジですか。流石(?)ボクシング馬鹿」
「へっ、俺にとっちゃ最高の誉め言葉だ」
そう言うショーさんの口調はどこか苦し気で、∀ガンダムも同調するようにお腹を抑えながら肩で息をしている。……いやガンプラは息しないな。これって同調してるのは∀ガンダムではなく、ショーさんが∀ガンダムに同調して苦しんでいる? それって――
『……アシムレイトか』
俺と同じ考えだったらしいデラーズさん。
アシムレイト――ファイターとガンプラが一体となって戦闘能力を向上させる技術。反面、ガンプラが負ったダメージがファイターにフィードバックされるというデメリットもある諸刃の剣。
つまりショーさんは今、∀ガンダムが腹部に負ったダメージが自身にも降りかかっているわけだ。
ボディーに攻撃を食らうのってキツイと聞いたことがある。だからボクサーはお腹に高いところから重いボールを落としたりして鍛えるらしい。(マンガ調べ)
きっと現役ボクサーのショーさんも普段からお腹を鍛えているだろう。
けど、これはガンプラバトルだ。
ファイターの技能が反映されるとしても、ファイターの身体能力が反映されるわけじゃない。あくまで戦うのは用意したガンプラで、その性能は事前にスキャニングしたGPベースと試合直前のスキャニングで決定される。
だからいくら普段からショーさんがお腹を鍛えてボディーへの攻撃に強いといっても、ガンプラには関係のない話で。
つまりつまり?
素組みの∀ガンダムの腹部が強固なわけがなく、そこへ加えられた攻撃が効かないわけもなく、それがそのままショーさんにフィードバックされているのなら、だ。
けっこう膝にキてるってことじゃないのかなあ!?
ほらよく見たら∀ガンダムの膝、笑ってるよ! 小刻みにぷるぷるしてるよ! ぃよっしゃー! 今が攻め時、今度こそ一撃必殺!
俄然ヤる気になったぞぃ! きっと今の俺、最っ高にゲスい笑みを浮かべてるだろうけど、勝てばよかろうなのだ! フハハハハハー!!
『む、お前の足が止まったことに気づいたようだ。来るぞ、ショー』
「へっ、向こうから来てくれるんなら助かるってもんさ」
「ちょっ、デラーズさんレフェリーでしょ!? なんでショーさんサイド
『悪どい顔をしている今のお前に、味方する奴は誰もいないと思うがな』
酷い! でもその気持ち分かっちゃう! まあデラーズさんなんてどうでもいいや。ひっく。
「喰らえショーさん! ガンプラ流酔拳!(今命名)」
大振りの右ストレート! ダッキングで躱されて空を切る右拳、かーらーの! 空振った遠心力を利用して回転しながら左の打ち下ろしパンチ!
「――ふっ!」
それをサイドステップで躱したショーさんが体勢を崩している俺にジャブを放つも、わざと足を滑らせて転ぶことで回避!
「自分から転んだ!? スリップ――いや!?」
ボクシングならスリップ取られるだろうけどコレ、なんでもありのガンプラバトルなのよね! 俺は転んだまま∀ガンダムの足首をつかんで立ち上がり、反対に∀ガンダムを倒した。
「ぐはっ!」と背中をマットにしこたま打ったショーさんが息を吐きだす。こっから追撃ー! カウント読みが始まる前に∀ガンダムの腹部目がけてジャンピング
「が! ぐぅ!! ぐぼおっ!! ――くそ!」
∀ガンダムの腹部に3度ジャンピングスタンプ喰らわせて、4回目のジャンプしたところで∀ガンダムが転がって脱出。ちぃっ、4回目は不発か! 舌打ちしつつ∀ガンダムを目で追えば、少し離れた所ですでに立ち上がり、ファイティングポーズをとって――はいなかった。
両腕をぶらりと下げた状態でこっちを見ている。お、ダメージの蓄積で腕が上がらなくなってきたかな?
「ヒック! ならここで一気に決めさせてもらう!」
腕が上がらないなら攻撃できないはずだから、大胆に近づいても大丈夫! ……だと思う! なんちゃって酔拳スタイルの千鳥足歩法をやめて小走り気味に距離を詰める――うん、思った通り迎撃は来なかった!
腕を伸ばせば届く位置。
「
掛け声とともに棒立ちの∀ガンダムの全身を滅多打ちにする。左右交互のパンチにローキック、膝蹴り、頭突き。技術なんて一欠けらもない、力任せの純粋な暴力。ここで決めてみせると畳み掛ける!
何十発とクリーンヒットを貰いながら、しかしそれでも倒れない∀ガンダム。どんなに殴られ蹴られド突かれようとも、ふらつくことはあっても決してマットに沈まない。
(タフすぎるでしょ!?)
いくらダメージ度設定が【C】とはいっても、とっくにガタがきて倒れててもおかしくないのに。ファイターの意地で立っているとでもいうの!?
これがボクサーっ、これがアシムレイトの本領か!
「だけど! これで決める! 決めてみせる! 真・一撃必殺!!!!」
3歩ほど後ろへ下がってから助走をつけてからの大振りの右ストレート! 両手ぶらりのノーガードじゃ躱せまい!
……ん? 両手ぶらり? ノーガード? …………あ!!!!
しまっ――両手ぶらりノーガード戦法は
気づくも、もう遅かった。繰り出したSガンダムの大振り右ストレートは止まらない。止められない。∀ガンダムの顔面へと伸びていく右拳。と、ショーさんの眼が、∀ガンダムのツインアイがギラリと光る!
(誘われた!)
ショーさんが『あしたのジョー』の矢吹丈のそっくりさんなら、きっと得意技も同じなわけで。きっと繰り出される技は――!
それまで棒立ちだった
(やっぱりか!)
クロスカウンター。『あしたのジョー』と『あさってのジョウ』の主人公が得意とする技。
目を見開く。足を殺されたショーさんの狙いは初めっからこれだったんだ!
∀ガンダムの左ブロウに巻き込まれたSガンダムの右ストレートが軌道を逸らされていく。
「ッラアアア!!!!!」
「おおおおーーーー!!!!!」
負けてなるものかと必死に軌道修正を図るも、内に掛かる力を外に押し戻すのは難しくて――
ガキイィィッッ!!!!!
「ぐうっ!」
果たして、∀ガンダムの左ブロウがSガンダムの頬を
『ク、クロスカウンター! ショー、お前ってやつはどれだけ『あさってのジョウ』が好きだというのか――カウント7で立った時からこれを狙って!』
デラーズさんの言うようにショーさんの目論見は大成功で、俺のこのラウンドで決着という目論見は大失敗というわけだなチクショウめ!
その代償は大きく、クロスカウンターの状態で止まっていたSガンダムがグラリと揺れてマットに片膝をつける。
『
「へへ……試合が終わるにゃまだ早いぜ、レン。こっからは俺の見せ場なんだからよ」
カウントが読まれる中、俺を見下ろしてショーさん。そんな対戦相手を見上げて俺はニヤリと笑い、口を開いたところで――
| <ROUND2 END> |
『ROUND2 END!』
カーン!
2
ゴングの音ともにシステム音声が第2ラウンドの終了を告げ、コーナーポストへと転送される。
ドッカと勢い良き椅子に腰を落としたSガンダムのダメージを癒しながら、俺は唇を強く噛んだ。
(くっそー! このラウンドで決めきれなかったかー!)
優勢に進めていたのに! 主導権を握っていたのに!! ショーさんのボクサーとしてのテクニックと実戦経験に逃げられた!!!!
あの人はアニメ的な行動や攻撃に不慣れだったのに!!
酔いなんてとっくに醒めていて。酩酊の代わりに感じるのは一種の高揚感。
色々言ったけど、別に悔しくは……あるけども、それ以上に今の状況が超が付くくらい
さっきの見た!? 決まったと思ったらクロスカウンターですよ、クロスカウンター! ノーガードで誘われてからの必殺技という燃える展開! アニメかよ! あ、ここアニメの世界だったっけ!
くぅ~~~! 楽しい! ヤバい!最高! これだから辞められないよな、ガンプラバトル!
(……あー、でもやっぱ決めたかったなぁ)
さっきのラウンドで決められなかったのは俺が未熟で、力不足だから。
今の俺にとっては、文字通りガンプラバトル完全初心者のショーさんですら高い壁だ。ちょっとばかり変則的な攻撃を仕掛けても、武を
でも、だからこそ――
「俺は……あの人に勝ちたい!」
勝敗に
やっぱ勝てるなら勝ちたいよな!
椅子に座って休んでいるショーさんを睨むようにして、呟く。知らずとアームレイカーを握る手に力が入る。それに応えるかのように、イスに座るSガンダムが膝に置いた拳を握りこんだ。
だよな、お前も勝ちたいよな。ショーさんに――∀ガンダムにさ。
「だから、最後の最後まで力を貸してくれよ。相棒」
試合を楽しみながら勝とうな!
Sガンダムは返事をするように、ツインアイを光らせた。
◇◇◇
「……へへ。見ろよおやっさん、俺を睨んでいるあいつの眼。まるで飢えた獣のようだ……ギラギラしてやがんぜ」
肩で息をするショーが、コクピットから音声だけでデラーズに言う。
「ショーよ。アシムレイトを常時発動しているお前の体はすでにボロボロのはずだ。これ以上のダメージは
したらどうか。というデラーズの言葉はショーによって
「……頼むよ、おやっさん。止めねぇでくれ。真っ白になるまで
「ショー……お前……だが!」
「あいつはガンプラファイターとしてはまだまだ素人かもしれねえ。だけどな、あいつの拳は熱かったんだ。遊びのつもりでやったこの試合で、ボクサーとしての俺を本気にさせたんだ。ま、その上でここまでボロボロにされたけどな。へへっ、ボクシングのセオリーも技術も中々通じやしねえ。最後のクロスカウンターが決まったのも運が大きい。……それになんだよ、ガンプラ流酔拳って」
面白れぇってよ、なったぜ。ガンプラバトルってやつが。そんな気にさせてくれたあいつは、
「ボクサーとしてじゃなく、ファイターとしての俺にとっちゃ世界一なんだよ、レンは……世界一の男なんだ」
「ショー……」
「そんな男がよ……リングの上で、俺を待ってる。だから、行かなきゃな……」
その言葉とともに∀ガンダムをイスから立たせ、リング中央へ歩ませるショーに、デラーズはもう何も言わず、その背中を見送ったのだった。
3
もう少しで1分間の休憩が終わる、そんな時。
ショーさんが、ゆらりと立ち上がり、歩く。その姿はまるで幽鬼のようで。だけどその目はギラついたまま……いや、輝いたまま。まるで夢見る子供のように。夢を追いかける少年のように。夢を叶えるために努力する青年のように。
そして俺たちは対峙する。リングの中央で。
さっきのクロスカウンターで思った以上に頭部にダメージを受けている。ペナルティで常時機動力低下のデバフが付いてる。1分の休憩では取れなかったようで、きっともう一発似たようなパンチを貰ったら即KO。そんな状態。
でもそれは散々俺の攻撃をノーガード戦法で食らい続けたショーさんの∀ガンダムも同じ。いや、アシムレイトでガンプラのダメージを共有している分だけショーさんの方が不利な状況。
だから恐らく、このラウンドは短期決戦になる。
「……ラストラウンドだ、レン」
「だね」
「お互い全力で燃え上がろうや――真っ白になるまでよ」
その言葉に、ただ頷く。
「されじゃあ、いこうか。ガンプラファイト――」
「レディ――」
「「ゴオッ!!!!!」」
『ROUND3.FINAL ROUND――FIGHT!!』
勝つのは俺だ!!
俺の思いはまた、ショーさんの思いでもあるはずだ。
なら、最後にモノをいうのは思いの強さだ。
お互いに至近距離での打ち合い。足を止めての真っ向勝負。
スウェーもダッキングもパリィもない。
お互いにガードを地平線のかなたに放り捨てた乱打戦。
∀ガンダムのジャブが、ストレートが、フックがアッパーがボディーがSガンダムを叩く!
お返しとばかりにSガンダムのパンチが、キックが、頭突きが膝が肘が∀ガンダムを襲う!
「レンーーーーーー!!!!」
「ショーさーーーーーん!!!!」
∀ガンダムの右ストレートの出だしに合わせて、Sガンダムも右ストレートを放つ! 狙うはカウンター! もしくは相打ち!
「――え!?」
いや、
さっきのクロスカウンターの時と同じ。また誘われた!
悟った時には既に∀ガンダムは身を屈めて右ストレートをやり過ごし。
虚しく空を切り、伸びきった右腕。顔を少し下げれば、∀ガンダムがこちらを見上げていて。
右ストレートを放った直後で、前面がら空きのSガンダム。
そんな美味しい場面を逃してくれるはずもなく。
ヤバい! アッパーが来る! 防御を!! そう判断するも同時に、でも――間に合わない!? 直感でそう分かってしまった。
その直感は正しいとでも語るように、∀ガンダムのツインアイがギランと光る!
ギュム!と音が聞こえるほどに握られた∀ガンダムの右の拳が、膝をバネに勢いよく起こされる体とともに突き上げられて――
「がっはあああああ!!!!」
防御する間もなくSガンダムの顎を跳ね上げた!
パキン……と
『
| <BATTL E END> WINNER HUKI・show |
システム音声がカウントを取ることなく、試合を終了。
∀ガンダムの天高く突き上げたアッパーは、そのまま勝者のポーズとなった。
4
――っか~~~~! 負けたーーー!
試合が終わり、バトルシステムが解除されるとバトルフィールドが消え、同時に疑似コクピットも解かれる。
負けはしたけど、超楽しかったー!
バトルシステムの上に寝転んだままのSガンダムを回収し、ついでにアッパー状態の∀ガンダムも回収。
アシムレイトでダメージを負ったショーさんは多分、痛みとかで動きにくいだろうからな。俺が持ってってあげよう。
ショーさんの所では、ふらつくショーさんのためにデラーズさんがイスを用意して座らせて休ませているところだった。
「ハハハ! たまげたぞショー! 最後のアッパーは見事だった!」
「へへ、そうだろう? 会心の出来だったぜ、おやっさん」
「まったくだよ。あそこでアッパーとか、まんま石力*3戦のラストじゃん。なんでジョウにそっくりのショーさんが石力役してんのさ」
デラーズさんとショーさんの会話に笑いながら割り込んで、回収しといた∀ガンダムを差し出す。それを受け取りながらショーさんも、ふっと笑う。
「ちょっと疲れたからさ……少し寝かせてくんねぇか、二人とも」
「あいよー」
「寝る前に体の調子を見せてみろ……ショー? おい、ショー!」
「……うっせぇな……耳元でそんな大声出すなよ、おやっさん……おやっさんよぉ…………」
デラーズさんの問いかけに、うつろな目で、辛うじて聞き取れるほどに小さな声でショーさんは答えると……
――燃えたぁ……燃えたよ。真っ白にさ……。
穏やかな顔で、まるで満足そうに、思い残すことはないかのように――ショーさんは笑みを浮かべながら……静かに目を閉じた。
「ショーさん?……うそでしょ、ショーさーーーーーん!!!!」
「ショーーーー!!!!」
5
「zzz……zzZZZ…………」
はい眠ってるだけでしたー! 寝るって言ってたもんね! 勘違いした俺たちが悪いね! ……いや勘違いするでしょ!? あそこまであしたのジョームーブしてたらさあ! はっさ
因みにショーさんはその後1時間ほどで目を覚ましました。
んで、お開きとなりました。
ガンプラはダメージ度設定【C】だったからもう1戦くらいはできそうだったけど、代わりにアシムレイトでショーさんがボロボロだったからね。無理は禁物。
今はプラモ屋『茨の園』の店前で別れの挨拶。
「レン、楽しかったぜ。おやっさんも世話になった」
「ん、俺も
「気にするな、ショー。それもまた、店長の務めだ」
女性に肩を支えられたショーさんに、笑顔で答える俺とデラーズさん。
「そしてこれを――レン、お前に貰ってほしいんだ……」
そう言って俺の手に∀ガンダムを握らせ、女性に肩を支えられながら去っていくショーさんの背中を俺は見送ることしかできなかった。
「ショーさん……」
俺は残された∀ガンダムを見やる。そして思うのだ。
「いらねー!」
だって俺、未組立のヤツ持ってるし。ダメージ度【C】だったとはいえ、結構ボロがきてるガンプラ貰っても……ええ~?
死闘の思い出に? 記念品として……うぅん……やっぱいらない! でももうショーさん帰ったから返せない! あとあの女の人誰!? しれっと居たけど! ホント誰!?
「あ、そうだ! デラーズさん、ショーさんと仲良くなってたよね、このターンエーあげる……って、もういない!?」
さては逃げたな!?
アムロ@いっきまーす ⚙ ✉ フォローする @amuroikiiki
ガンプラ大好き。でも素組み派 これからは改造もやってきたい ガンプラバトル始めました!
33ツクロー 41ツクロワー ツクート ツクートと返信 メディア いいね |
| アムロ@いっきまーす @amuroikiiki・10分前 格闘戦オンリーガンプラバトルやってきたー! 対戦相手は現役ボクサーのショーさん! 酔拳(笑)で頑張ったけど、残念ながら負けましたーw やっぱボクサーは強い! 負けたけど、でーじ楽しかったよー! ◌6 ↺7 ♡130 ✉ |
| 明日はショータイム @showtime・45秒 返信先:@amuroikiiki
俺も楽しかったよ 勝ったは勝ったけど、辛勝だっかからな 機会があればまたやろうぜ ◌ ↺0 ♡69 ✉ |
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お疲れ様です アムロ君が楽しんで試合をしたんだろうなっていうのが伝わりま した! ◌ ↺0 ♡10 ✉ |
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酔拳VSボクサーw 見てみたかった!w ◌ ↺0 ♡7 ✉ |
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「――んで? 結局、貰った∀ガンダムはどうしたんだ?」
明けて月曜日の学校。休み時間に友人のハールーが聞いてきたので、仏頂面で答える。
「適当なガンプラの空き箱に突っ込んどいた」
「ジャンク品にでもするん?」
「俺もそう思ってたんだけど……簡単にバラしてみたら結構……」
「痛んでたか―」
ハールーの言葉に無言で頷く。まあ俺のSガンダムもかなり痛んでたしね。予想はついてたよ。殆どのポリキャップはゆるゆるになってたし、パーツもガタガタ。あそこまでいくとジャンク品として使うのも無理だろうし。なので、ショーさんの∀ガンダムを箱から取り出すことは恐らく二度とないだろう。
「んー! でも楽しかったー!」
椅子に座ったまま伸びー。またやりたいなー、ガンプラバトル。
「お、だったらレン。今度は俺とやろうぜ!」
「おん? でもハールー、前にガンプラバトルは観る専って言ってなかった?」
確かそう言ってたと思うんだけど、俺の気のせい?
「ああ、確かに俺は観る専だ。だけどそれは、
「普通のガンプラバトル? 普通以外のガンプラバトルってあるの?」
俺が首を傾げて尋ねると、ハールーは力強く頷いてこう言った。
「ある! その名も、ガンプラサバゲーだ!」
「ガ、ガンプラサバゲー!?」
何それ!?
「レンっ、一緒にサバゲーしようぜ!」
感想お待ちしてます。
UAが3,000を超えました! お読みくださりありがとうございます!