ガンダムビルドファイターズトライの世界でがんばる話   作:キャプテンキャップ

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『えっと――その声はオジョウサマですか? どうも助かりました』

 

 ありがとうございます。と隠れていた積み木の影から出てきたゼクアイン(ハールー)がぺこりと頭を下げた。オジョウサマ? ……ああ、ミコさんのあだ名なのね。

 ハールーに(なら)って俺もお礼を言う。

 

『あら? その声、もしかして試合前にメメちゃんたちと話していた子たち?』

 

 試合前っていうのはフィールドの下見をしていた時のことかな? だったら俺たちで間違いないので頷く。

 

『ともかく助けることができてよかったわ!』

 

 ご満悦のミコさん。にしても……

 

「そのゼフィランサス、すっごいカスタムされてますねー」

 

 胴体にはタクティカルベスト、腰回りにベルトキットが装着されている。ちなみにこれらはパーツの裏に粘着性の高いシリコンが取り付けられていて、さらにその中にはプラフスキー粒子に反応する素材が練りこまれているお陰で、バトル中の密着性を引き上げてくれる優れモノだ……その分高いけどね。

 あと。バーニアの使用が禁じられているガンプラサバゲーでは、殆ど意味のないバックパックは俺のνガンダム同様()り外しているみたい。

 持っているアサルトライフルも漫画と同じ外見をしているから、センチュリオンアームズCMRカスタムとかいうヤツなんだろう。自分で組んだのか、これも作中同様トレポンなのかは知らないけど。

 ともあれ――

 

「金がかかってそうな機体と装備だなあ」

 

『ええ! 掛かってるわよ! 私、普段はサバゲーをやってるんだけど――』

 

 馬鹿正直な感想を口にすれば、ミコさんは眉を(ひそ)めるどころか楽しげに自慢を始めた。自分のサバゲー装備に近いものをゼフィランサスにも装備させているの!だとか、私の兄貴(センチュリオン)サブ(ベレッタ)は最強よー! 等々……。

 流石、銃の名前がカッコいいからと買う女。多分きっと、ゼフィランサスを選んだのも同じような理由だと思う。

 

『え? このガンプラを選んだ理由? 名前がカッコいいし、なにより兄貴(センチュリオン)と何だか響きが似てるでしょ? だから兄貴とゼフィランサスは()わば盃を交わした義兄弟(きょうだい)なの!』

 

 おぅ、やっぱりそうだったかー。

 

『ミコさん、フィールド(戦場)のど真ん中で立ち話してると死ぬよ』

 

『リミちゃん! それもそうね! 坊やたち隠れるわよ!』

 

 横から話に入ってきたのはHGUCガルバルディβ。どうやら中の人は眼鏡おでこでグレネーダーのリミさんのようだ。確かに彼女の言う通りここで話し込んでたらヒット取られそうだ。……隠れるのはいいけど、坊やってのはやめてくれません?

 などと思いながら、先程まで身を隠していた積み木の後ろへと回り込んだ途端――

 

 とす、ころころころころ……

 

「へ?」

 

 低い軌道で飛んできて、カーペットへと軟着陸を決めて()()()()()()と転がりこちらへと流れてきた物体が目の前に1つ。膨らんだ楕円形のソレは握るに適していて、色はやや灰色がかった黒。上部には円筒状の突起がついていて、見る人によっては水筒を思い起こすかしれない。でも大抵の人が()()を見て思い浮かべるのは――

 

「しゅ、しゅしゅしゅsっ、手榴弾!?」

 

 うっそだろ!? どこから!? これって爆発するんじゃなくて何十発っていうBB弾を全方位にまき散らすんだっけ!? しかもこの位置、下手したらみんな巻き込まれる!!

 

『『『!!??』』』

 

 俺の声に即座に反応したハールー、ミコさんにリミさん。3人ともすぐさま隠れていた積み木から出てその後ろへと回り込んで手榴弾へと備える。

 それを見た俺も急いで積み木の裏側に移動! 間に合うか!?

 俺が回り込んだ瞬間、バカンッ! と何かが開く音とともに積み木へとバチバチバチバチ!!!! 大量の弾が当たり(はじ)ける。あっぶな! ギリギリ!! と思ってたらνガンダムの顔の横を数発の弾が(かす)め、何ぞ!?と慌てて伏せる。頭上を通り、後ろの積み木へと当たる銃弾。

 

『坊やたち! 正面に敵が来てるわ!』

 

 ミコさんの声にハッとして注意を前に向ける。先程キティザクたちがいたテーブル下に敵ガンプラが数体。恐らくあのどれかが手榴弾を投げ込んできたのだろう。そこに向かってミコさんが牽制射撃を開始しつつ、眼鏡おでこの友人に声を飛ばす。

 

『リミちゃん!』

 

『ん、任せて』

 

 どうやらそれだけで通じたようで、ミコさんの牽制射撃で動きが鈍った敵陣へとガルバルディβが手に持っているグレネードランチャーを向けた。

 それを見た敵側が慌てふためく。

 ――リボルバーグレネード!? ――ヤバい!6連射が来るゾ!! ――マジかよ! ――退()け! 退けェ!!

 

 6連リボルバー式グレネードランチャー。

 リボルバー拳銃を大型化したようなグレネードランチャーであり、そのお腹には6発のモスカートが収まっていて連射することができる、なんとも夢に(ロマン)あふれる武器。

 それが今、敵に向かって火を噴こうとしているのだ。……まあ実際に吹くのは火じゃなくてガスの煙だけど。

 

 ボパン!!

 

 派手な音を響かせ、砲口から白い煙とともに100発以上の弾が勢い良く飛び出していき――うぎゃあ!! ――うひいっ!? ぶわあぁっ、ひ、ヒット―!! ――あだだだ!! ヒットォ!!

 うわぁお。たった1発で2ヒット取っちゃったぞ。これがグレネードランチャーの威力かー。ヤベーとしか言いようがないな!

 

『ミコさん、そのνガンダムの子、今日が初参加らしいから、私たちが敵を引き付けて先に行かせてあげよう』

 

『そうね! 坊やたち、聞いての通り私とリミちゃんが敵を抑えている間にフラッグを目指しなさい!!』

 

「!? でもそれだと二人が!」

 

『大丈夫。もう少ししたら後ろから味方も援護に来る』

 

『ええ! リミちゃんの言う通り! だから坊やたちはフラッグにたどり着くことだけを考えなさい!』

 

『オジョウサマ……てんちょーさん』

 

 ミコさん(オジョウサマ)リミ(てんちょー)さんを見やる。ミコさん(ゼフィランサス)はアサルトライフルを乱射しながら頷き、リミさん(ガルバルディβ)は片手でリボルバーランチャーをぶっ放しながら、空いた手でサムズアップ。最後にハールー(ゼクアイン)と顔を見合わせ、頷く。

 

 GO! ミコさんの声を合図に、俺とハールーは駆け出す。銃弾があちこちで飛び交う中、今や激戦区となったテーブル下は通れないのでそこを迂回してフラッグを目指す!

 

 ……まぁ、なんかエモい感じで送り出されたまでは良かったんだけど、そのあとすぐに俺とハールーは纏めてやられてしまったんだけどね。

 同じくやられて戻ってきたミコさんたちには笑いながら「サバゲーなんてこんなもんよ」と慰められた。

 

 この試合は敵側の勝利に終わるも、サバゲーと同じくガンプラサバゲーも時間が許す限りどんどん試合が行われる。連続して参加するかそれとも休憩するかはもちろん自由。

 俺たちはもちろん連続で参加だ。中学生の体力は最高だな!

 

 

 そしてゲームの数だけドラマが生まれる。

 例えば――

 白を基調にホワイトグレーを各所に配したザクフリッパースベースのナイパーが、白く長い毛足を持つラグカーペットにうつ伏せになって身を隠し、無防備に身をさらす獲物を微動だにせず今か今かと待ち構え……その時が来た。

 

 パスンッ!

 

 気の抜けた音ともに、200m離れた先のガンダムアストレイの側頭部をBB弾が打ち抜いた。

 

「ヒットー!」

 

 ――!? マッスルがやられたぞ! どこから撃たれた!? ――あそこだ! あそこにザクスナイパー……いや、ザクフリッパー改造のスナかあれ!? ――ヤッベェ! ゴルゴさんじゃねえか! ――みんな散りながら集中攻撃! ゴルゴさんやらないとやられるぞぉぁああああヒットォ!

 一人のプレイヤーに翻弄されたり。

 

 

 また別のゲームでは――

 

「さあこいっ、モンキー野郎ども! 人間一度は死ぬもんだアイタァア?! ヒットオォォォ!!」

 

 ガンキャノンⅡを改造して『宇宙の戦士』に出てくる起動歩兵にしたプレイヤーがフィールドの中心で作中のセリフを叫べば当然、格好の的になるわけで。案の定速攻で退場となり。

 

「ちょっ、機動歩兵さんかい!? 早い! 早すぎるよ!」

 

 俺のカイさん的ツッコミに周囲から笑いが漏れる中、機動歩兵さんは自分を打ち抜いたであろう敵がいる方へ「ナイスキル!」と笑顔で称賛の声を投げると「ヒット通りまーす!」と大声で言いながらセーフティエリアの方へ去っていく。

 とはいえ、ああも目立つ言動を取ればノリのいい味方もそのムーブに釣られるわけで。

 そんな機動歩兵さんの背中を見送っていると――あいつ、無茶しやがって! ――へっ、起動歩兵一人にいい格好させるかよ! ――起動歩兵の仇ィィィ!! うおおおお!!!

 なんて叫びながら突撃していく味方(バカ)たち多数。その人たちも当然のごとく狙い撃ちされて次々退場していくのを見た他の仲間が、

 ――よくもアイツらをーーー! ――ジョニー! ――俺も行くぞぉぉ!! ――コウ・ウエキ! 吶喊(とっかん)します!!

 そう言いながらさらに突撃していく。いやもうみんなやられるの前提で突撃してるよね?

 俺? もちろん突撃したよ? 「悲しいけど、これ戦争なのよね」って言いながら。……秒でやられましたけど? 楽しければいいわけさーねー!

 

 また次のゲームでは――

 フィールド南の方で、反撃すべく積み木の脇から顔と銃を出して構える――と同時に向こうから弾が飛んできた。頭を引っ込める。敵の銃撃に頭を押さえられている間に、少しずつこちらに近づいてくる、撃っている敵とは別のヤツだろう足音が。

 サプレッションってやつかー。どうやら敵さんは二人一組(ツーマンセル)のようだ。

 ハールーはとっくにやられてるし、牽制されて動けないし……これ詰んだ?

 はい、予想通りこの数秒後に無事やられちゃんどー。

 

 

 はたまた別のゲームでは――

 ハールーが味方から譲り受けたロケランを構えながら、興奮した声をあげるのを背中越しに聞く。

 

「レン! 敵が向こうからやってきたぞ!」

 

 同時にブバンッ!と、物凄い音が聞こえてきた。

 ハールーが敵目掛けロケランをぶっ放したのだろう。立て続けに悲鳴じみたヒットコールがいくつも上がった。

 

「ハハッ! やったなハールー!」

 

 ハイタッチをしようと後ろを振り向くも――

 

「……ハールー?」

 

 そこには誰もいなかった。

 

「ハールー! おい、返事をしろぉ!」

 

 と独り叫んでいる後ろで「ヒット通りまーす」と声をあげながら退場していくガンプラ集団の中に、ロケランぶっぱの直後にやられたハールーがいたり。

 

 

 そんなこんなしながら沢山のゲーム(試合)が進んでいく。

 フィールドの至る所でヒットコールであがり、笑い声や悲鳴に加え、楽し気な会話があちらこちらで木霊する。

 名前も知らない人たちと肩を並べ、語らい、笑い、驚き、叫ぶ。

 これがガンプラサバゲーかと楽しくなる。いや最初から楽しかったけどね! 時間が経てば経つほど、ゲームを重ねれば重ねるほど、楽しさが増していく。

 

 だけどそんな楽しい時間も終わりが近づいてくる。

 

『次のゲームが最後でーす! 復活無制限! 心置きなく撃ちまくって死にまくって下さーい!』

 スタッフさんのアナウンスにみんなが笑う。俺も笑う。

 スタッフさんの『5秒前!――4、3……』というカウントダウンにみんなが声をあわせ、『――イチ、ゼロ! ゲームスタートォ!!』の掛け声とともにハールーやチームメンバーとフィールドへと躍り出す。

 

「レン、サバゲー楽しんでるか?」

 

 並走するハールーが訊ねてくる。

 楽しんでるかって? そんなの答えは決まってる。

 

「あったりまえさー!」

 

 こうして俺の初ガンプラサバゲーは終わった。

 だけど、俺のガンプラライフはまだまだ続く。

 

 俺の中に燃えるガンプラ(スピリット)が尽きるまで!!

 

 

               ガンダムビルドファイターズの世界でがんばる話――《完》

 




 これにて『ガンダムビルドファイターズの世界でがんばる話』は完結です。
 もっと考えていたエピソードとかあったけど、元よりガンプラサバゲーで終わるつもりだったのと、このままやってもエタりそうだったので締めることにしました。
 何気に初の完結作品です。
 ブクマや感想、評価をくれた方々、本当にありがとうございました!
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