ガンダムビルドファイターズトライの世界でがんばる話 作:キャプテンキャップ
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あっという間に放課後になった。今はプラモ屋『茨の園』に向かっている途中なんだけど、この世界が本当にアニメの世界なんだなーと思う瞬間が多々ある。
学校の休み時間やこうして歩いているときとか、耳に入ってくる周りの声の中に聞き覚えのある声優さんの声が混じっている時があるんよ。
例えば今日の2時間目の休み時間。廊下を走りながら喋る数人の女生徒の中に、どう聞いてもクェス・パラヤの中の人と同じ声の子がいて、思わずババッ!ってそっち向いちゃったもの。もういなかったけど。
ハールーが「いきなりどした!?」ってビックリしてたけど、俺の方が
そしてさっき。裏通りの方から男の人が大声で「よくも俺の焼き魚を横
こんな感じでたま~に、おんやあ?ってなる声が聞こえてくるんよ。でも反応してるの俺だけなんだよね。まあこの世界の人たちにとってはただの一般人のこえでしかないだろうし。さすがアニメの世界。さすアニ。
というわけで、はい到着!
商店街の一角にあるこの4階建てビルの1階が、プラモ屋『茨の園』。
ガンプラが浸透している世界なだけあって、個人経営のお店ながら豊富な品揃え。
そして店の奥には、ガンプラバトルをするためのブースも完備しているというパーフェクトなお店、それがプラモ屋『茨の園』だ!
見取り図だとこんな感じ!
| 倉庫 | ||
| レジカウンター | ||
| ガンプラコーナー | 工具コーナー | ト イ レ |
| 塗装ブース | ||
↑
店入り口
というわけで入るぞー。
「よく来たな、レン」
自動ドアを抜けるて店に入った俺を、渋い声で出迎えてくれたのはこの店の店長。よくガンプラを買いに来てるので顔なじみだ。
見た目も声も【機動戦士ガンダム0083】に出てくるエギーユ・デラーズそのもの。そっくりさんなんてそんなチャチなもんじゃねえレベルでデラーズしてる。
その見た目から、みんなからはデラーズ、もしくは閣下と呼ばれてるんだけど、分かり味しかない。本人もノリノリで物まねしてくるし。
「こんにちはー、閣下。早速なんだけど、マークセッターってどこにあるか教えてー」
「うむ、それならこっちだ。ついて来い、レン。それまで貴様の命、この儂が預かる。いいな?」
「……そのセリフ
「……ノリが悪いぞレン。いや儂も言っててそう思ったがな」
思ったのか。
「コホン。それよりも、素組派のレンがマークセッターを求めるとは珍しいな」
「んー? 前に作ったνガンダムVer.Kaのデカール、まだ貼ってなくてさ。それを貼ろうと思ったんだけど、持ってないの思い出して買いに来た」
なるほどな。と頷いたデラーズさんが「おっと」と急に立ち止まった。そして目の前の棚を俺に見えるように指さす。
「2段目にある蒼い蓋をした瓶のソレがマークセッターだ」
どれどれと手に取ってみれば、それは前世でも愛用していたクレ〇スの【○○.マークセッター デカール軟化剤】だった。
「使い方は大丈夫か?」
「ん、問題ないよー」
「そうか、ならいいが……では、綿棒などはいらないな?」
「……あ」
忘れてた。水転写式デカールを貼るときの必需品。なぜ必需品なのかは後ほど。
「綿棒もだけど、ピンセットやら水を入れる小皿なんかもなかったような?」
「つまりは何も持ってないと」
「だねー」
「はあ……綿棒と小皿はマークセッターと同じメーカーのでまとめて買うといい。そう高いものでもないし、綿棒に至っては毛羽立ちにくいから一般向けの物より使い勝手がいいだろう。ピンセットは……デカールを貼るだけなら100均の物でも十分だ。帰りに寄るといい」
デラーズさんはため息をつきつつも、そうアドバイスをくれた。
前世では綿棒も小皿もピンセットも適当なものを使ってたんだけど……ほうほう、小皿はメタリック製で10枚入りか。値段も安い。綿棒もそれなりに入ってるけど、流石に一般向けのヤツに比べたら数が少ないな。
「毛羽立ちにくいって言ってたけど、デカール貼るときに毛羽立ったら何か支障が出るのか聞いていい?」
「無論だ。綿棒から分離した繊維がパーツやデカール、塗料に付着してしまうのだ。そうなっては台無しであろう?」
「なるほど、確かに。んじゃあ綿棒と小皿10枚入りを一緒に貰うよ……って商品名に全部Mrが入るのね」
そういうシリーズだからな。とデラーズさん。まあそうなんだけど。
一緒にレジまで行ってお会計。表示された金額は千円いかないくらい。割引もされてるおかげもあって、子供のお財布に優しくて嬉しいなー。
お金を払おうと財布を出そうとしたところで、レジカウンターのショーケース部に並べられたガンダムマーカー各種が目に留まった。
……ん~。折角だし、スミ入れペン極細タイプは買っとくかー。……あ、メタリックシルバーもある! 前世ではこれでバーニア内部を塗ってたなぁ。これだけでも結構重厚感増すんだよね。これも買いっと。……おぉう、この2色だけで千円近くするのか。
まあいいや。デラーズさーん、この2つも追加でー。ほい2千円。
「毎度どうも。それにしてもどうしたというのだ、急にやる気じゃないか」
「やー、νガンダム仕上げたら、それでガンプラバトルデビューしようかなって」
お釣りをもらいつつそう言うと、デラーズさんの動きが止まった。おん? どしたのデラーズさん。その手に持っている商品の入った紙袋プリーズ?
「……ガンプラバトル、だと? MGのνガンダムVer.Kaでか?」
そうだけど。デラーズさんもハールーと同じ反応なのなぁ。……うぅん、こうも同じ反応されると、何か考えちゃうなあ。
やっぱ勿体ないとかさ。デビュー戦でMG、しかもνガンダムVer.Kaは敷居が高いかなーって。……うぅん、でもなあ。
悩む俺を、黙ってみていたデラーズさんが口を開いた。
「ガトー……いやさレンよ。お前はなぜガンプラバトルがしたい」
「なぜって、そりゃあ――自分の作ったガンプラで戦ってみたいからだけど」
「それだけか?」
それだけかって、それは勿論…………どうなんだろう? 本当にそれだけなんだろうか?
今一度考える。なぜ俺はガンプラバトルがやりたんだろう。
この世界に生まれたからには、ガンプラバトルがやりたい。
ガンダムが好き。ガンプラが好き。
そう言ってたのは『ガンダムビルドファイターズトライ』のヒロイン、ホシノ・フミナだ。
けどそれは俺の言葉でもある。いや、ガノタの大部分の人の言葉でもあると思う。
ガンダムが好きだからこそ、ふとした瞬間に名言を呟いてしまう。
作中に出てくる
どの作品も、どのキャラも、どのMSも好きだから。思い入れが強いから。
そんな想いが詰まったガンプラで、他の人の想いが詰まったガンプラと戦ってみたいんだ。
ガンプラバトルならそれができる。好きなMSを自分で操ってさ、自分の好きなキャラのセリフを言ってみたりできる。
繰り返しになるけど、ガンプラバトルならそれができるんだよ。
だから俺は、ガンプラバトルがしたい。
「それはMGνガンダムVer.Kaでないとできないことか?」
デラーズさんの問いに首を横に振る。
「アムロ・レンが目指すガンプラバトルとはなんだ」
俺が目指すガンプラバトル。
それは――思い浮かぶのは、ガンダムビルドファイターズシリーズと模型戦士ガンプラビルダーズ。みんな楽しそうだった。負けた悔しさも次の勝利への燃料にしていた。
勝っても負けても楽しい。ライバルたちや仲間と切磋琢磨し、勝つためのアイデアをプラモにつぎ込んで、自分の理想のMSを実現するために、披露するために、作って闘う。それがビルドファイター。
俺もそうありたい。
だから、俺が目指すガンプラバトルは!
「みんなで楽しく、レッツ・バトル!」
「……ふふ。青い巨星でもない儂が言うことでもないが、いい目をしている。それにフレーズもいい。レンよ、それがお前の大義であるのなら、儂はこう言おう。大義を生まんとする者が、小事にこだわってはならん。νガンダムVer.Kaにこだわることはいいことだ。しかし! それで
なるほど。まずはガンプラバトルの空気に触れてみるわけか。
「そうだね……そうかもしれない。うん、わかったよデラーズさん。俺、まずは他のプラモでやってみる!」
となると、デビュー戦では何を使おうか。うぬぬぬぬ……。
買った商品を一旦預けて、ガンプラコーナーに足を運ぶ。一緒についてきたデラーズさんがやたらジオン系MSを推してくるけど、無視だ無視。俺のデビュー戦なんだから俺が決めるっての。
俺のデビュー戦。その愛機。
普通に組んで戦うのも面白そうだけど、最初はこう……ガツーンとインパクトのある戦いにしたい。
でも改造する技術はないし……うぬぬぬ。
と、突然の
――あ、これは……イケるか?
降りてきた閃きが実現可能かどうか、頭の中で検討してみる。
アレは家にあったはず……うん、記憶ではあるな。
足りないのは帰りに100均で買って――
検討した結果、マジで行けそうだと判断。
これはハマったら面白そう。勝っても負けても盛り上がるだろう。どっかのギラドーガ乗りも言ってたもんな。やってみる価値ありまっせ!って。
あとはその閃きを託すプラモを選ぶだけ。
うんうん
「よし、これに決めた!」
「ふむ、決めたようだな、どれ――……なるほど、これを選んだか。面白い」
HGUC
「コイツでデビュー戦、飾るよ!」
「ふふ。その日を楽しみにさせて貰おうぞ」
お金を払って購入。ガンプラが入った袋とマークセッターなどが入った袋を両手に引っさげて店を後にする。
「ジーク・ジオン!」
後ろからデラーズさんの声が聞こえてきたけど、ごめん。俺べつにジオニストじゃないのよ。