幼い“僕”が狂気に溢れた目で、“僕”の首を絞める僕を見ている。よだれを垂らしながらソレでいいと言いながら。
「……それでいいんだよ、糞野郎」
僕の救い。お前の救い。気づけば僕はたくさんいて、過去の記憶を蘇らせようとしている。その時、僕はどうなるのだろうか。
……報われて良いって勘違いしてた。
――本当に?
僕が何をしたというのか。僕は幸せな夢。死ねば悲劇的でドラマチックな最後が待っている。目が覚めたら少し泣いてしまうだけの佐々木琲世という存在。
サッサン……どこからか声がした。
夢はもういい。夢ではなく現実に生きて……悲劇でなく喜劇を見たいと
「僕は……佐々木琲世だ!」
おやすみカネキケン。
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目覚めた瞬間に琲世が感じたのは痛みだった。ただひたすらに強い力で殴られている。それを行っているのは痛々しい見た目の喰種。
「私は……! 愛され……る」
目も口も雑に糸で縫い付けられているが、それも意味があるのかどうか。現に彼、あるいは彼女は目を見開き、大口を開けて一心不乱に叫んでいる。
それは自分の中にある自分たちのようで、楽にしてやらなければいけない。琲世は痛みの中、自然とそう思った。
足を使って、殴りかかる腕に絡みつけ投げ上げた。それは単純に人間の体術だった。違うのは佐々木琲世が半喰種であり、彼らと拮抗するだけの力を持っているということだ。
投げ飛ばされた喰種は鉄骨の上で、高みの見物を決め込んでいた怪物に向かって飛んでいった。
「あ~あ、むはっ。つまんな」
笑いながら、本当につまらなそうな怪物……包帯女はそれまで琲世を殴っていたカナエという名の喰種を無造作に投げ返した。本当にただつまらないからという理由で。
「さて、さて、このままじゃあ本当に玉無しのガキになっちゃうし……もう一度叩けば治るかなぁ」
包帯女がメリメリという音を立てながら、異形の怪物と化していく。人型であったことなど思い出せないような姿になった瞬間、怪物……隻眼の梟は凄まじい勢いで跳ねた。
巨体ながら、反射できないようなその速度はトラックのようだった。
横振りの一撃。佐々木琲世はカナエに殴られ続ける前に、これを食らって気絶状態になったのだが……彼はそれをただ体を斜めにするだけで躱した。
「アレェ?」
「……宇井特等、こちら佐々木! 彼を発見! 同時に隻眼の梟が強襲!」
カナエにもがれた腕をもどかしく感じながら、弾き飛ばされたはずのクインケ・ユキムラを探して“佐々木琲世”は廃墟にも似た屋内を駆け巡る。人とは思えない速度で。
琲世好き