その後……残った月山の従者は異常な耐久力で、宇井特等の部下を大いに苦戦させた。しかし、隻眼の梟が離脱したことによって佐々木上等と宇井特等が加わったことによりついに倒れた。
一方、月山の当主である月山観母が移送中に脱走。そのため、月山の後継者は情報収集のためにコクリア送りとなった。
前線に立っていたことにより、宇井特等達S1班の実働部隊は評価を上げた。逆に全体を見る立場にあった和修政は元々反対派が多かったことも加わってわずかにそのキャリアに傷が付いた。
琲世はそんな周囲の評価を気にする余裕は無かった。月山家討伐において、教え子の一人が殉職したのだ。役割と命令上仕方無かったが、その場に自分はいなかったという罪の意識で琲世は自縄自縛していた。
そんな中、S1班の会議室で曇った顔のまま琲世は宇井郡と相対していた。
「
「ええ……ですが、瓜江君がよくやってくれているようです」
というよりは元々琲世に反抗的だった瓜江が人間的に成長したことによって、彼らが自立し始めたというべきだろう。必然的に指導役だった琲世はQsの中心から、徐々に離れつつあった。
「指導役を辞めると聞いた」
「はい。僕には因縁が多すぎる。それが彼らに飛び火しては……」
宇井はタバコに火を点けた。中性的な外見からはそういった印象は無いが、彼は愛煙家だった。しかし、いままで琲世の前で吸ったことは無い。
「佐々木
「宇井特等……そう、ですね……」
「だが、なぜかな。今の君はもう少し距離を縮めても良いと思える」
「は……?」
タバコを灰皿に押し付ける。そこにあった火は消えて、タバコからまだ火の点いていない葉が見えた。
「私はハイルを失った。キジマ班のことも含めて、S1班はその機能が大きく低下している。そして、私もパートナーが不在だ」
「宇井特等、まさか……」
「そう。手っ取り早く戦力を補充したい。Qsも鈴谷班も和修特等のS2版に編入される。そこで……君をスカウトしたい」
琲世は寂しさと同時に胸が張り裂けそうな感動を覚えた。危険な自分は幸せになれない。誰からも必要とされていないからだ。それが今は自身を買おうという人が現れた。
「コレが私の覚悟だ」
机の上にゴトリとジェラルミンケースに似た箱が置かれる。捜査官にとってはおなじみの物。クインケの収納ケースだ。
その中にはかつて伊丙入が使用していた鱗赫-Rate/S+……Ausが収められていた。