オーマジオウを中心とした仮面ライダージオウの妄想です

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BLESSING TIME 仮面ライダー、オーマジオウ

 常磐(ときわ)ソウゴは世界を救った。

 

 平成という時代が終わりを告げるその少し前から、さらに数ヶ月を(つい)やして成した。機械人形のがらくたを(まと)めて処分するだけのつまらない作業だった。王様なぞ、所詮(しょせん)は社会を回すためのシステムの一部に過ぎない。

 2019年4月28日、19歳の誕生日だった。

 愚かにも魔王に(かつ)ぎ上げられた少年は、その日から世界の全てを背負うことになった。

 

 まず慟哭(どうこく)があった。口いっぱいに開いた小さな(うろ)から響く声なき声が世界を震わせた。この事態を(まね)いた相手に対してなのか、祭り上げられたことに気付かなかった愚かで不甲斐(ふがい)ない自分に対してなのか、その両方なのか。

 そうすることで、ようやく最低最悪な自分を受け入れられた。一部の仮面ライダーしか認められない自分ではなく、あらゆる邪悪、狂気、破滅の仮面ライダーを継承した。

 最善、最高の魔王になると宣言し、その力のみで戦ってきた。さかしまなライダー達のライドウォッチを受け取りはしても、受け入れられなかった。

 結果が世界の滅びだった。

 ならば、最低最悪の魔王になろうとも、世界を救う。覚悟が決まった。本当ならば王になる夢を持った時から(そな)えねばならなかった気概(きがい)だった。

 獅子座のレグルスが一際(ひときわ)大きく輝いた。従来のジオウライドウォッチによく似たウォッチに、黒と金のライドウォッチが現れ、新たなウォッチが完成した。ジオウライドウォッチⅡである。

 ジクウドライバーにジオウライドウォッチⅡを装填する。

「変身!」

『祝福の(とき)! 最高! 最善! 最大! 最強王! オーマジオウ!』

 ジクウドライバーを回すまでもなく、バトルスーツに無限の力が(みなぎ)った。荘厳(しょうごん)な雰囲気を(にぶ)金色(こんじき)に装飾しながら、ライダーの文字が燃えるような深紅に塗り潰された。

 

 全ての処分が終わった時。周囲に動くものがなくなり、己のみが君臨する荒野にオーマジオウは(たたず)んでいた。

 黄金に(ふち)どられた黒い仮面で嗚咽(おえつ)(おさ)えながら、墓碑銘(ぼひめい)(ごと)き瞳には後悔の色が映っていた。唯一の肉親から送られた祝福の言葉など、とうに心から色()せて消えてしまった。

 

 

 

 オーマジオウの力は時空を破壊し、創造する力だった。

 だからやり直した。今の世界を認めたくなかった。王としての自分も、こんなふうにしかなれないと思いたくなかった。

 しかし、やり直した二回目の世界は、時計が一周するが如くかつてと同じことの繰り返しでしかなかった。

 歴代の仮面ライダーの世界が融合し、その中で変身者に出会い、力を継承していく。大事なことであり、尊いことであり、世界を救うには何の役にも立たない儀式を()(おこな)った。

 何度も何度もやり直し、何度も何度も繰り返す。ただ試行回数が増えて、世界が破壊と創造を経験し続けるだけ。

 

 これではだめだった。だから条件を変えてやり直した。同じ条件だから同じ道筋を辿るならば、その全てを変えてでも世界を救ってみせる。

 だが世界は思ったよりも頑固で、条件がいかに変わろうとも関係なかった。

 記憶を引き継ぐ。変わらない。

 2009年4月のバスツアーに乗らない。変わらない。

 スウォルツの干渉をなくす。変わらない。

 クォーツァーの干渉をなくす。変わらない。

 新たな味方を設定する。変わらない。

 新たな敵を設定する。変わらない。

 あえて継承せず、全ての仮面ライダーと力を合わせて世界を救う。変わらない。

 ジクウドライバーを手放す。変わらない。

 両親の命を救う。変わらない。

 大叔父に引き取られない。変わらない。

 王を目指す夢を捨てる。変わらない。

 2019年4月28日が訪れる前に命を()つ。変わらない。

 変わらない変わらない変わらない。何度条件を変えても、本来の歴史とは全く異なる歩みだったとしても、19歳の誕生日に見た光景は少しも変りはしなかった。

 

 結局、全ての繰り返しは虚無だった。何も成せず、何も成さない。最低最悪の魔王に相応(ふさわ)しい所業(しょぎょう)だった。

 

 

 

 残された道は、これまでの世界を受け入れ、自らの罪を背負って未来を創ることだった。

 時空干渉ができるからといって、やっていいわけではない。そう思い、無理やりにでも王の瞳にこれからを映した。

 まだ人々は半分程も生き残っている。どんな罪を犯したとしても王が案じるべきはまず彼らだった。

 過去に(とら)われず、常磐ソウゴは今度こそ最高最善の魔王となるべく人々に手を差し伸べた。

 

 しかし世界の人々は常磐ソウゴを拒絶した。2019年4月28日はオーマの日と呼ばれるようになり、オーマジオウこそがダイマジーンを使役して世界をめちゃくちゃにしたと認識されていた。

 違う。そう叫びたかった。

 しかし証拠がない。己がダイマジーンを止め、破壊した側だと証明する方法は何一つとて存在せず、また証拠がないからこそ世界の破壊と創造を繰り返した事実を認識されずに済んでいる。

 非難を甘んじて受け止め、そして(つと)めて冷静に世界中の人々に無罪を主張し続けた。

 だが世界から文明の(あかり)が消え、海面の上昇により都市という都市がことごとく飲み込まれる天変地異が引き起こされた現状では、誰も常磐ソウゴの話を信じなかった。誰もが困窮(こんきゅう)し、生きていける明日を夢見ていた。

 オーマジオウの力で数多くの物を生み出し、整え、世界中の人々に与えた。それでも人々は信じず、何かの罠だと自分達の悪い想像を信じ続けた。

 

 いつの間にかオーマジオウに楯突(たてつ)く者達が増えた。レジスタンスと呼ばれる彼らは、オーマジオウを滅ぼしさえすれば世界はより良い方向に向かえると無邪気に信じ切っていた。

 ああ、なんて愚かなのだろう。常磐ソウゴは感慨(かんがい)もなく素直に思った。

 仮面ライダーが存在する世界は存続できる。だが逆に仮面ライダーが存在しない世界は存続できない。仮面ライダーの世界を通す普遍(ふへん)のルール。

 そんなルールがあればこそスウォルツは自らの世界に仮面ライダーがいないことに絶望し、己の世界の存続のためにオーマジオウの力を利用しようとした。

 

 では、今この仮面ライダージオウの世界に、仮面ライダーはどれだけいる?

 

「私だ。この私だけが仮面ライダーだ」

 長い月日が流れゆく中で、常磐ソウゴの一人称は魔王らしいものに変化していた。

 そして常磐ソウゴの独白こそが世界の真実だった。この世界に唯一存在する仮面ライダーであるオーマジオウが何らかの形で消滅した場合、遠からず世界は滅びる。

 ふと考えてしまった。もしかして、オーマの日に消滅するはずだったこの世界自身が望んでいるのだろうか。だとすれば、自分にも勝る世界の頑迷(がんめい)さに呆れた。

 レジスタンスへの怒りは微塵(みじん)()かなかった。かつての自分もまた、同じように何も知らず、己の望みのために動いた。その(あやま)ちを過ちと気付いていないだけだ。

 ならばやることは一つだった。

 

 

 

 常磐ソウゴは自らの歴史の知識を(もち)いて適切な地形に王都とその王宮を作り上げた。レジスタンスがいかなる時に攻め込んでも返り討ちにできるように、入念に、執念深く。

 衛兵にクォーツァーの手駒だったカッシーンを配置して、己の存在を誇示(こじ)するように巨大な石像を二十体作り上げた。

 

 クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、ディケイド、ダブル、オーズ、フォーゼ、ウィザード、鎧武、ドライブ、ゴースト、エグゼイド、ビルド。

 

 それぞれの世界と歴史を守り抜いた十九の平成仮面ライダーと、何も知らず夢を叶えようと初めて変身した若き日の自分の石像だった。

 レジスタンスは絶対に退ける。何度でも、何があっても。守り抜いたとは到底言えないような荒廃した世界でも、懸命(けんめい)に生きようとする人々がまだ残っている。

 彼らが生きるために、この世界を守るために、自分は絶対に倒れられない。常磐ソウゴはそう決心した。

 例え想いが間違っていなくとも、世界を消滅させようとするレジスタンスの行いを受け入れるわけにはいかなかった。

 

 こうして、オーマジオウは世界を守り、世界を救う最高最善の魔王になった。

 

 

 

 武器商人のウォズが歴史の管理者だと早々に気付いていた。おそらく、2019年よりもずっと後の、2040年代後半から2050年代前半にかけてのどこかで生まれる人間だろう。

 常磐ソウゴは、しかしウォズに対し何もしなかった。敵であればそのように対応するだけで、勝手に魔王の従者を自称しようとも頓着(とんちゃく)しなかった。

 

 それよりもレジスタンスの動向が気がかりだった。正確に言えば、未だにオーマジオウの力に屈しない意志の強さに興味と希望を抱きつつあった。

 例えばタイムマジーン。ダイマジーンのような大規模破壊兵器としての力は持たないが、あらゆるものが不足するこの時代であれだけの発明を形にして量産したその執念に心を奪われた。

 人間はこれ程までに強い。己の無知を痛感させられた。

 そもそも今の世界でさえ、前時代の遺物(いぶつ)は数多く残っている。それらの便利な道具や数々の知識もない時代から、人類は繁栄を手にした。その強さを(あなど)っていたようだ。

 特にレジスタンス一の戦士、明光院(みょうこういん)ゲイツは注目せざるを得ない。

 もし仮に、ゲイツが仮面ライダーだったならば、そしてこの私を倒してくれたならば。下らない妄想だが、そんな期待を抱かずにいられない程の逸材(いつざい)だった。

 

 しかし、現在仮面ライダーでもない相手に倒されるわけにはいかなかった。

 レジスタンスが無謀(むぼう)にも常磐ソウゴに攻撃を仕掛け、()()けられた。すでに撤退段階まで来ており、殿(しんがり)を明光院ゲイツとツクヨミという少女が務めていた。

 しかしゲイツ達の必死の抵抗もオーマジオウの前には無意味だった。このまま一気に殲滅(せんめつ)も視野に入れ、オーマジオウドライバーから無限に供給される力の一部を込めた。

 

 だというのに、オーマジオウの血よりも濃く染まった双眸(そうぼう)に信じられない人物が立ちはだかっていた。

 初めて変身した時よりも、傷つきながらもずっと精悍(せいかん)な顔つきをした、王に相応しい雰囲気を()ね備えた若き日の常磐ソウゴ。

 己自身だった。

 

 

 

 合図もなく、オーマジオウと若き日の私の戦いが始まった。そちらに集中せねばならないオーマジオウはレジスタンスを見逃し、無事に撤退させてしまった。

 若き日の私が変身した姿は一番力のない仮面ライダージオウの姿だが、(あふ)れんばかりの闘志と覇気が性能以上の強さを発揮していた。

 思わず疑問が口に出てしまった。

 若き日の私がこの時に現れるなど、2068年の常磐ソウゴの記憶にはない。パラレルラトラパンテによって意識を同調させようとも、このような事態は存在しなかった。

 今、この時までは。

 

 再びあり得ないことが起こった。2019年の過去から、仮面ライダーとなったゲイツと、同じく仮面ライダーとなったウォズの二人が時空を超えて若き日の私と融合した。

 世界の破壊と創造を繰り返し、(いく)たびも2019年4月28日を経験した常磐ソウゴが全く知らない新たなジオウの姿。サイキョージカンギレードの刃を両腕で防ぎながら、未知の可能性に驚愕(きょうがく)した。

 若き日の私、いや仮面ライダージオウトリニティは必殺技を発動し、サイキョージカンギレードからジオウサイキョウの文字を伸ばしてオーマジオウを突き飛ばし、片膝(かたひざ)をつかせた。

 これ程の力はかつての常磐ソウゴにはなかった。何が起きたのかすぐに理解できなかったが、かつてとは全く異なる経験を得ているようだった。

 そして真意もまた理解した。信頼し合う三人の力が結集した姿だからこそ、同一人物である常磐ソウゴがゲイツとウォズの想いとは異なる思惑(おもわく)を抱えていたことが真摯(しんし)に伝わってきた。

 信頼し合える仲間という違いが素直に(うらや)ましかった。

 

 変身を解いた若き日の私にオーマジオウの力の本質を伝え、世界と人々をどう救うのか問いかける。破壊と創造は表裏一体、救済もまた同様だった。

 本来の時空へ若き日の私を送り返した後、その狙いを理解していた2068年の常磐ソウゴは力を使った。若き日の私がツクヨミの服にブランクライドウォッチを(しの)ばせていたことは知っていたからだ。

 たとえ無意味な足掻(あが)きであろうとも、新たな可能性を見せてくれた若き日の私とその仲間達へのささやかな贈り物だった。

 

 

 

 そして幾ばくかの時を経てレジスタンスの襲撃作戦が始まった。

 歴代の平成ライダーと若き日の私の像の前で返り討ちにし、メリディアンサッシュから放つセパレートサージで無力化したレジスタンスのほとんどを別時空に飛ばした。

 

 だがそれが悪かった。作戦失敗後、あろうことか明光院ゲイツは宮殿に侵入した後、二つのライドウォッチを盗んで過去に行ってしまった。せっかく仮面ライダーゲイツに変身する力を手に入れたというのに、オーマジオウではなく過去の常磐ソウゴを倒しに向かった。

 なんと数少ない生き残りであるツクヨミも同行し、ウォズもまた二人を追ったようだった。

 スウォルツの妹でもあるツクヨミは別の世界の存在であるがゆえに、この仮面ライダージオウの世界にとって負担となる。世界に滅びの現象をもたらす災厄(さいやく)となる人物だった。オーマジオウの力であれば滅びの現象を力ずくで跳ね返せるものの、若き日の私では無理だ。

 一方で一筋の希望が生まれた。若き日の私がゲイツ、ツクヨミ、ウォズの三人と出会う世界は今まで存在しなかった。未だにジオウトリニティが誕生する過去の存在を把握できない程だった。

 だが、オーマジオウが君臨するこの2068年が存在するからこそ存在した三人が過去に跳躍(ちょうやく)して若き日の私と共に歩んでいくならば、そう遠くない過去に実現するだろう。

 何度条件を変えて繰り返しても変わらなかった世界だが、未だ試されたことのない条件で再び歴史が生まれていく。

 

 なんか、行ける気がした。

 

 

 

 結局、俺のやろうとしていることは虚無なんだろう。

 

 フータロスにとって守るべき時間は存在しない。元来フータロスがいた未来の時間は消え去っている。

 スーパータイムジャッカーのティードが歴史の連結を絶ち、仮面ライダーがTVの中の絵空事(えそらごと)に変えられようとしているからだ。

 仮面ライダーが存在し、世界を守ってきた事実が空想に置き()えられたなら、その先の未来にいた人間は消滅する。

 しかしフータロスはティードによる世界改変の仕組みを利用して、精神エネルギーの形で久永(ひさなが)アタルの元に出現できた。

 久永シンゴが(さら)われる時間そのものには飛べなかったが、ある意味イマジンであるがゆえの弊害(へいがい)かもしれない。イマジンは契約者の願いを叶えて過去に飛べるからだ。

 そこまでの力があるわけでもなかったはずなのに、仮面ライダー達を呼び出せられたのは幸いだった。これも絵空事のイマジンが願いを叶えられるからだろうか。

 

 俺が久永兄弟を助ける理由はない。助けても本来の姿と時間に戻れるわけでもない。

 それでも助けたかった。

 俺は仮面ライダー達が自らの存在を賭けて守り抜いた世界の未来に生きた人間だ。そんな(とうと)くて温かな世界の未来にいた人間だからこそ、みっともなくても誰かを助けたくなった。

 なんて、格好つけても本当のところは分からない。所詮端役(はした)の怪人でしかない自分だけじゃ久永シンゴを助けられず、仮面ライダーに頼ってしまった。格好悪い。

 そして仮面ライダーは格好良くて、次々と湧き出てくる怪人達をものともせずに圧倒し、ついにはティードを打倒してシンゴと世界を救った。

 

 傍観者(ぼうかんしゃ)でしかなかったが、事が終わって無事に再会できたアタルとシンゴを見ていると、何となく満足できた。

 そのまま自分も消えるかと思ったけど、そんな気配は一向に訪れない。もしかして、アタルやシンゴが少しでも覚えててくれるから消滅しないのか。全く、イマジンになると涙もろくなるのかな。(こころよ)い風が吹いて目の下を(ぬぐ)ってくる。

 仮面ライダーが空想となった現実の世界に願う。

 二人の未来に(さち)多からんことを。

 いかつい怪人には似つかわしくない願いだった。その願いを叶えるのは俺でも仮面ライダーでもなく、アタルとシンゴの二人だ。

 二人の成長が楽しみだ。できるなら再会したい。そのためには虚無なんて感じている暇はない。

 

「またな」

 いつかまた、未来で。

 

 

 

 若き日の私はティードの野望を打ち砕き、送り込んだカッシーンとの戦いを経てジクウドライバーを一度は手放しながらも再び手にした。

 今まで感じたことのない気分になった。一度消えたからはない。元より若き日の私がジクウドライバーを再度手にすることは分かり切っていた。

 この高揚感(こうようかん)は若き日の私が新たな未来を創り出したからだった。

 

 すなわち、救世主ゲイツが魔王常磐ソウゴを打倒した未来。

 自分が倒される新たな未来を創造したことには2068年の常磐ソウゴも驚かされた。後を(たく)せる仮面ライダーの仲間がいる幸福を、若き日の私はきちんと理解しているだろうか?

 ダイマジーンが早期(そうき)に出現していることもあり、ウォズは困惑している部分が大きいようだが、あり得ざる未来の到来は歴史の管理者としても見過ごせないはずだ。

 

 最も、ウォズの気がかりは逢魔降臨歴(おうまこうりんれき)通りに進まないことだろう。

 かつての常磐ソウゴは全ての仮面ライダーの力を継承することでオーマジオウに至った。

 仮に十九人の仮面ライダーのみを受け継いでもオーマジオウには(いた)れない。逢魔降臨歴はあえて十九人の仮面ライダーに焦点を当てて力の継承を行わせ、オーマジオウに至らせないようにする計画書だった。

 この計画書でさえ、2068年まで世界が続いた未来があればこそ存在する物だ。オーマジオウが存在するからこそ、オーマジオウを否定できる。

 

 そしてオーマジオウを完全に否定できた新たな未来から、その未来で生まれたウォズが現れ、歴史に干渉し始めた。

 己の未来の到来が定まらぬならば、干渉もあり得ることだ。選ばれなかった未来が消えるならば、どちらかのウォズは必ず消滅する。回避するために足掻くだろう。

 新たな仮面ライダーウォズの参戦、知られざる未来の仮面ライダーの存在。若き日の私を倒そうと時間を超えたはずのゲイツが迷う中で、若き日の私はジオウライドウォッチⅡを手に入れた。

 歴史が加速する。ジオウライドウォッチⅡはかつてオーマの日の惨状(さんじょう)を経験しなければ使えなかった力だった。それをもう使いこなせている。

 一方、歴代の平成ライダーの継承はあまり進んでいない。2019年4月28日になろうとも十九人分の継承は難しいだろう。逢魔降臨歴通りに継承が進まない限り、ダイマジーンの起動は回避されたはずだ。

 救世主の未来によって出現した未来の仮面ライダー達がここまで影響を与えた。かつて成しえなかったことが若き日の私と仲間達によって引き起こされていく。

 アナザージオウが出現し、ゲイツリバイブの力が生まれ、オーマジオウの未来のウォズが仮面ライダーに変身する。

 

 本来、未来は誰にも分からない。時間干渉の力を持っていたとしても、制御は不可能。人間はそうあるべきだった。

 2019年はまさしくその通りの時間となっている。いや、わずかながら仮面ライダージオウトリニティの誕生を知る分だけ、2068年の常磐ソウゴは見通せていてわずかに鬱陶(うっとう)しくもあった。

 それでも、過去のできごとなのに、2068年の常磐ソウゴは2019年の戦いが何よりも楽しみになっていた。

 

 

 

 仮面ライダージオウトリニティ。仮面ライダージオウ、ゲイツ、ウォズの三体が融合した姿。2068年の常磐ソウゴ以外誰も知らない歴史が、また一つ生み出された。

 特に今回は決定的だった。歴史の分岐点となっていたオーマの日が決定づけられ、救世主たる仮面ライダーゲイツリバイブが誕生していても救世主の未来が消滅した。

 最早(もはや)、ジオウの力だけでは説明のつかないところまで来た。始まりに常磐ソウゴが、仮面ライダージオウがいたとしても、その後の展開はジオウだけでは決して成しえなかった。

 

 威光(いこう)()しながらも誰もいない宮殿の薄暗い玉座の間で一人、高笑いした。既にレジスタンスは壊滅状態にあり、ある意味では王都も無用の長物となった。ウォズもおらず、衛兵はカッシーンのみ。

 孤高(ここう)の王、すなわち独りよがり。守るべき民草からは畏怖(いふ)嫌悪(けんお)を向けられて、なぜこうも心が()れやかなのか。

 この現状を変えてくれる誰かが現れたからに他ならない。思わず祝電(しゅくふく)を若き日の私とゲイツに送った。

 

 何にせよライドウォッチは集めなければならない。

 常磐ソウゴが最高最善の魔王になるために、スウォルツ率いるタイムジャッカーやクォーツァーとの戦いのために、ジオウの世界の存在ではない者達による滅びの現象を打ち破るために。

 力を集約させる必要があった。最早ここまで継承が長引けば2019年4月28日までにどうあっても十九個のライドウォッチを手に入れられない。ジオウトリニティの獲得は丁度(ちょうど)良い時報になった。

 そしてツクヨミもまた、時を(つかさど)る王家の力に目覚めようとしていた。常磐ソウゴを(めぐ)る戦いは、ついに終わりを見()え始めた。

 

 

 

 常磐ソウゴは生まれながらの王ではない。スウォルツやクォーツァーの思惑が絡み合い、おだてられて玉座まで登っただけの(いつわ)りの王だった。

 幼少期にあった夢は特別な想いでも何でもなく、純粋な憧れを両親に答えただけだった。

 どこにでもあって、どこにもなくなってしまった家族との幸せな時間の中、何を覚悟するでも背負うでもなくただ夢見た。先に待つ砂漠の未来なぞ見通せなかった。

 (はた)から見れば滑稽(こっけい)だっただろう。もしくは、子どもの妄言は大きい方がいいと思われたかもしれない。

 

 しかし、それでも。

 クォーツァーにもスウォルツにも利用され、否定される(いわ)れはない。

 

 十九の平成仮面ライダー達のライドウォッチを受け継いだ若き日の私に、ニ十個目のジオウの力が継承される。

 2068年まで常磐ソウゴが君臨しなければ、継承されるべきオーマジオウの力は存在しなかった。

 ジオウライドウォッチⅡを早期に使いこなせず、ジオウトリニティも生れなかった。

 何より、かけがえのない大切な仲間達を得ることなどできなかった。

 誰に託されたのでも、誰に言われたのでもなく、(おの)が心に従って若き日の私の元に辿(たど)り着いた三人。

 望んでいたはずの魔王を倒す救世主の未来を捨て去った明光院ゲイツ。別の世界では時の女王となれる器を備えた、生まれながらの王であったツクヨミ。歴史の管理者でありながら今この時を創ることを選んだウォズ。

 彼らが若き日の私と仲間になれたのも、オーマジオウの未来があってこそだった。

 世界が救われるために必要な条件とは、常磐ソウゴが己の罪と向き合い、2068年まで世界を守る魔王として君臨し続けることだった。

 

 新たな仮面ライダージオウ オーマフォームの誕生を、力を失い始めたパラレルラトラパンテでかろうじて知覚した。

 平成ライダーもまた黙って世界の終末を待つわけがなかった。必死で駆け抜けた平成の時代を守るため、何度でも立ち上がるはずだ。

 そして、令和が到来した時に平成の消滅と舗装(ほそう)を行おうとしたことで、新時代の仮面ライダーが現れる余地が生まれた。身勝手に歴史を改変しようとしたクォーツァーが勝つ未来はなくなった。

 消えつつある2068年の常磐ソウゴの自意識が、自分ではなくなった若き日の私へと祝福する。

 

 祝え。真の王者の誕生を。

 

 

 

 木梨(きなし)(たけし)は牢獄の中で後輩達の輝かしい活躍を思い返していた。

 クォーツァーの首魁(しゅかい)である常磐SOUGOを倒し、また令和の象徴である新仮面ライダーがカゲンを倒した。世界を救った仮面ライダー達の未来はきっと大丈夫だろう。

 だが代わりに木梨猛は永遠にここから出られない定めになっている。この牢獄は歴史の管理者たるクォーツァーが利用していた物だが、クォーツァー専用ではない。

 

 仮面ライダーの歴史にあってはならないものを収容し、永遠に日の当たらないようにする。それこそがこの牢獄の本質だった。

 

 木梨猛はその本名も変身後の名前も、本物の仮面ライダー達に伝えることはできない。人類の自由と平和のために戦った栄光なき改造人間の(あわ)れな末路だった。

 不幸中の幸いか、牢獄では(ほこり)()もらない。静止した時の中の如く、いつまでも色褪せない。良く言えば最高の保存環境、悪く言えば飼い殺し、死蔵。

 クォーツァーを超えた喜びと同じくして正反対の感情が木梨猛の制御を振り解いて、口腔(こうこう)からぽとぽとと溢れ出て広くない部屋の中で木霊する。

 改造人間になった悲哀(ひあい)ではない。想い人と共にいられないことをまたも思い知らされて、どうしようもなく喉奥(のどおく)から()い上がってはまろび出てくる。

 お茶の間の子ども達に見せられない、情けないヒーローの姿だ。

 

 だからこそ、正反対の感情を表に出して大きく笑う。

 どこかで望まれた時、奇跡が起きてまた人々の前に現れることができるように。涙でメイクがぐちゃぐちゃにならないように、全力でもう大丈夫だと皆に教えるために。

 

「ぶっとばすぞぉ……!」

 決意を込めて独言(どくげん)した。

 平成の時代、仮面ライダー達が途切(とぎ)れた時もなお戦い続け、世界を守り抜いた。仮面ライダーと認められずとも構わずに。

 その世界で必死に生き抜いた彼ら平成ライダーが、新たな令和の時代も瞬間瞬間を全力で走っていくことを願わずにいられない。

 走っていれば転ぶこともあるだろう。人生の中で大きな谷間に落ちてしまうこともあるだろう。大切な何かを取りこぼして止まってしまうこともあるだろう。

 そこからまた再起してほしい。誰に認められずとも、他の人から笑われようとも、無様(ぶざま)(さら)そうとも。

 そんな美しくなくとも、絶対に価値のある人の営みを、木梨猛は牢獄から願っている。

 いつまでも、いつまでも。

 

 

 

 クォーツァーの計画を食い止めようとも、加古川飛流の暴走を阻もうとも、世界は変わらなかった。

 スウォルツの野望を潰さなければ意味がない。正確には、スウォルツの世界の問題を解決せねば平穏は訪れない。

 若き日の私にオーマジオウライドウォッチを継承させた時の万感(ばんかん)の思いは失われ、三度(みたび)常磐ソウゴは未来に君臨した。

 そもそも若き日の私がジオウトリニティでオーマジオウに挑むまで、過去の歴史がどうあろうともオーマジオウの未来は(たも)たれる。堂安(どうあん)主水(もんど)が仮面ライダークイズの力を失っても記憶を保持した例に近い。

 

 スウォルツの野望が牙をむいた。十九の世界が融合しながらも、本来所属するべき世界が融合していないツクヨミやスウォルツによる滅びの現象が始まり、世界が(おびや)かされた。

 残る仮面ライダー達が涙と苦悶の表情を隠しながらも懸命に人々を救おうと戦い続けた。

 若き日の私はスウォルツの世界に移動し、己の運命を巡る真実を知った。その際に気になる点があったが、それよりも若き日の私が2068年に行き、仮面ライダージオウトリニティに変身する瞬間に()かれた。

 

 2068年に初めてジオウトリニティと交戦した時、オーマジオウは己を恥じた。

 確かに明光院ゲイツもレジスタンスも(たくま)しく、この未来を変えてくれるまばゆい可能性に満ち満ちていた。彼らに勝手に期待して、勝手に王の務めと考えて蹂躙した。

 だがどうだ、ジオウトリニティはゲイツやウォズの可能性でありながらジオウの、常磐ソウゴの可能性でもあった。

 いつしか自分の可能性を(かんが)みなくなり、他の誰かに己の贖罪(しょくざい)を押し付けようとした。

 本当の意味で最高最善の魔王になれる未来の自分を信じられなくなっていた。

 だから信じよう。己の可能性を、自分の未来を、精一杯信頼しよう。

 

 

 

 かつてツクヨミのブランクライドウォッチに与えた力が2019年に開花し、新たな仮面ライダーツクヨミが生まれた。

 スウォルツの世界は仮面ライダーツクヨミの世界となった。互いの世界の仮面ライダーが一つの世界に集うことにより、世界同士に()け橋が生まれ、仮面ライダージオウの世界の人々を避難させようとした。

 しかし若き日の私が仲間達を大切に思っているように、仲間達もまた若き日の私を大切に思っている。

 かつて、己の犠牲を前提とした計画であることをゲイツとウォズに悟らせないようにしたように、ツクヨミも若き日の私を犠牲にしたくなかった。

 計画は破綻(はたん)し、スウォルツを倒すためにゲイツとツクヨミが犠牲となった。

 

 その過程で若き日の私はジクウドライバーをオーマジオウドライバーに変化させ、威武(ぶい)(ほとばし)らせながら仮面ライダーオーマジオウに変身した。

 オーマジオウライドウォッチは若き日の私の元から消失したが、オーマジオウの力を継承したことに変わりはない。

 例え全ての平成ライダーのライドウォッチを継承していなくとも、全てのライダーの力そのものであるオーマジオウの力を受け継いでさえいれば、仮面ライダーオーマジオウに変身できた。

 

 若き日の私は仮面ライダーオーマジオウの力で滅びの現象さえ一蹴(いっしゅう)し、時空破壊を実行しようとした。

 やはり、そうすることは分かっていた。若き日の私とパラレルラトラパンテで繋がり、最後の問答を行う。

 皆が世界を救った。常磐ソウゴ一人だけの力ではない。王になる資格があるとしても、孤独な王様では仕方ない。

 世界を創り直し、皆ともう一度王様を目指す。そう決めた若き日の私の顔は、()んだ青空のように清々(すがすが)しかった。

 

 

 

 面白かった。諦観(ていかん)と絶望の支配する世界で一人だけ君臨する未来よりも、余程良かった。

 薄暗い玉座の間は2068年の常磐ソウゴの心境そのものだった。周囲には誰もおらず、己だけが光を()びていればいいと、孤高を気取(きど)陰気(いんき)な魔王に成り下がった。

 だが、若き日の私は違う。最後に意識を共有した時、座すべき玉座のない若き日の私の周りに誰もいなかった理由は、その誰もが若き日の私を守り、犠牲になったからだ。

 ゆえに再創造された世界は、仮面ライダーツクヨミの世界と仮面ライダージオウの世界が融合したままだ。これにより若き日の私がツクヨミやスウォルツと一緒にいても滅びの現象が起きないようにした。

 ゲイツやウール、オーラとも一緒のようであり、本気で皆と王様を目指すつもりだ。ウォズが見守る中、誰も犠牲にしない最高最善の魔王の未来へ突き進もうとしている。

 

 だが実のところ、世界の再創造は決して順風満帆(じゅんぷうまんぱん)(すべ)り出しではない。世界の崩壊が近づく中で、新たな魔王と呼ばれた若き日の私が別の時空から来訪したことを知っていた。

 アナザーゲイツやアナザーウォズの出現も、起源の日とでも言うべき仮面ライダージオウへの初変身の日にアナザーオーマジオウが介入(かいにゅう)することも、同様だった。

 若き日の私が仮面ライダーオーマジオウに変身したことで、パラレルラトラパンテで知覚できるようになった。

 

 そしてまた、存在と自意識が希薄化(きはくか)する中で、再創造された世界の未来が垣間見(かいまみ)えてくる。

 令和の仮面ライダーゼロワンとの激闘。ゲイツリバイブすら超えた真の救世主仮面ライダーゲイツマジェスティとの邂逅(かいこう)。世界の破壊と創造を繰り返し、力を(げん)じた私ではないオーマジオウの暴走。西遊記の物語に取り込まれ、さらなる令和の仮面ライダー達を導く光景。神ともいえる存在と、並び立つべきスーパー戦隊との共闘。そしてさらに生まれる令和の仮面ライダー達。

 

 ああ、なんて愛おしい。

 かつての自分ができなかった、予想だにしなかった未来の瞬間一つひとつが羨ましくもあり、望ましくもある。

 全てが手放しで喜べる事象ではない。別の時空から異なる常磐ソウゴが現れたならば、何かしらの事件が起こり、解決のために奔走(ほんそう)していたということだ。

 何もかも上手くいくような平坦(へいたん)な道のりではないが、今までの人類の歴史も同じく凸凹(でこぼこ)道だったから卑下(ひげ)するものでもない。

 決して未来は綺麗事ばかりではないだろう。それこそ歴史に干渉し、やり直したくなるようなできごともあるだろう。

 それでも心の底からこう思う。なんて美しいんだろう、と。

 

 

 

 誰にも看取(みと)られず消えゆく老害の身でも、今なら仮面やベールに(しな)びた顔を隠さず言える。

「なんか、行ける気がする!」




 オーマジオウの未来は消え、世界は救われた。仮面ライダーの歴史も同様に、平成から令和へと繋がっていった。
 『仮面ライダージオウ』という作品の意義は果たされた。その先は虚無よりも意味のない蛇足かもしれない。
 だけど。
 作品の中に息づいた登場人物達の人生は終わりではない。時計の針が誰に見られずとも一周すればまたもう一度始まるように、語られなかったとしても絶対にどこかで足掻き、休み、失敗し、成功する。
 かけがえのない時間を創っていく。
 いつかの時間で、どこかの世界で、そんなふうに生き続けた彼らをもう一度観られることを、切に願う。

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