白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんばんは。夜叉烏です。

 You tube用の動画編集で遅れました。今回はエジェイ攻防戦の前段階になります。

 あ、因みに今作の登場人物である栗林忠泰陸軍大将ですが、見た目はBFⅤに登場するナカムラ・ケイスケがちょっと老けた感じです。普通にイケメン。
 


敵前晩餐

 「陣地構築は完了しました。貴軍も我々も士気は旺盛ですし、ロウリア兵が何十万来ようと突破はできません」

 

 「だと良いのですが…」

 

 自信に満ちた荒川の声に、エジェイの防衛を任されたノウ・フスコデは、乗り気でなさそうに返す。

 

 報告より、ロウリア王国軍の総兵力は40万だと知らされている。

 優れた兵器で武装してはいるが、クワ・トイネ軍は3万名であり、ギムより撤退してきたモイジ率いる騎士団も合流しているが、それでも3000名が増えただけだ。

 

 援軍に赴いた《烏の巣》の陸軍と海兵隊はそれぞれ1個師団ずつで、合計約3万名。

 戦車、BM-13B"カチューシャⅡ" 132ミリ16連装ロケットを搭載した三式六輪自動貨車が2個小隊ずつそれぞれ16両、機動装甲服を着込んだ歩兵も2個分隊22名。

 

 依然、数の差は圧倒的なのだ。

 兵の練度や武器・兵器の性能でも左右されるものだが、戦いはやはり数がないと勝てないものである。

 

 「ご安心を。我々なら大丈夫です。鎧袖一触できますよ」

 

 ピシャリとそう言い切る荒川だったが、ノウの優れない表情は変わらなかった。

直後、彼らの後ろから何者かが近づく。

 

 「はぁ~、酷い目に遭った。あいつ怒りすぎだよな」

 

 栗林が笑いながらそう言う。相当のお説教を受けたようだ。

 部下の写真をばら撒いた挙句のセクハラである。寧ろその程度で済んで良かった方だろう。

 

 「あんたはもっと大将としての自覚を持てっていつも言ってるだろ」

 

 一応釘を刺してはいるが、聞いているのかすらわからない。

 

 しかし、こんなでも彼は大将の階級を頂いている名将だ。

 幹部たちも、度重なるセクハラ行為に頭を悩ませつつ、何やかんやで軍法会議に突き出すこともしていない。

 

 それだけ、信頼はされているということなのだ。

 

 特に、幹部以下の兵員たち――特に男性陣には、栗林の印象は最高だ。

 KAN-SENたちと同等レベルで麗しい7幹部の写真――トイレや着替え、風呂等は流石に撮影しないが――を時折撮影し、裏ルートで部下たちに配っているのが効いているからであろう。

 

 (彼は重桜でも名将の1人だと聞いていたが…本当に自由な御人だ。部下たちも、彼を見限るようなことはしていないし、相当なカリスマを持っているのだろう。確かに限度はあるが…)

 

 エジェイに派遣されたばかりの栗林と作戦会議を開き、その後の懇親会で渡された幹部たちの写真を見た。

 

 (ただの少女にしか見えんが…。彼があんなにも信用する者たちだ。実力は確かだろうな。それに、彼女たちがいるお陰で我が軍の士気も上がっているし、助かる)

 

 「さてノウ将軍、始まりますよ。目標は5キロ先で出撃準備中のロウリア軍です。貴軍の砲兵部隊によろしくお伝え願います。我々のロケット砲部隊も、ほぼ同時に攻撃を開始致しますので…」

 

 今のクワ・トイネ軍にとり、陸戦における5キロなど近距離だ。122ミリ加農砲であれば、問題なく届く。

 射撃諸元も入力済みだ。

 

 「分かりました。やりましょう」

 

 無線を扱う兵を呼び出し、砲兵部隊に指令を送る。

 

 やや置いて、城壁の内側に設置された122ミリ加農砲10門がほぼ同時に発射炎を閃かせ、さらにBM-13B"カチューシャⅡ"――132ミリロケット弾の弾体を延長し、発射炸薬量を増大させたことで射程が12000メートルまで伸びた――も、夥しい量の白煙を噴出させながら、細長い影を多数、空中へ打ち上げていった。

 

 

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 本来であれば、ジェーンフィルア伯爵にエジェイ攻略を任せる予定だったが、ギムで何もできなかったことが余程悔しかったのか、前線の部隊を彼に任せ、アルデはその5キロ後方、即ちエジェイより10キロ西に築かれた陣地で指揮を執っていた。

 

 「糞ぉ…!!この私をここまで愚弄するか…!!」

 

 モンゴルの遊牧民族が使う"ゲル"に似た天幕へ陣取る彼の目の前には、出撃前の朝食として出されているパンとスープ。

 

 本来なら、奪った食糧で作った豪華な食事に舌鼓を打ちつつ、のんびりと指揮を執る予定だったのだが、ギムはもぬけの殻であり、東方征伐軍は予想外の節制を強いる羽目になった。

 

 その最たるものが食事であり、司令官である彼でさえ、目の前の粗食を余儀なくされている。

 末端の兵はより悲惨であり、パンの一欠片が与えられただけだ。

 

 お陰で、そこら中で奪い合いが絶えなかった。

 騎士団長をはじめとした現場指揮官が宥めているが、兵の士気も限界に近い。

 これ以上待機を続けさせるのは無理があった。

 

 イライラしつつも貧相な食事を平らげると、剣を片手に魔信へ怒鳴り、5キロ先に陣取るエジェイ攻略隊の先遣部隊へ指示を送った。

 

 「総員出撃!!目標はエジェイだ!!戦が終われば残った亜人共は自由にして構わん!!殺すなり嬲るなり好きにしろ!!」

 

 「「「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」」」

 

 兵たちも、ギムで好き勝手できなかったことが余程腹立たしかったらしい。

 剣や槍を片手に、怒鳴り声を上げながら歩みを進める。

 

 本陣より、援軍として送られてきた50体のリントブルムや魔物、騎乗した騎士団長も、兵の歩調に合わせて突撃を開始する。

 

 北連陸軍顔負けな人海戦術の様相を呈するロウリア軍だったが、頭上からやってきた音が兵たちの進軍を一瞬止めた。

 甲高い、神経を掻き毟られるような轟音に、全員が思わず空を見上げた瞬間、彼らの只中に何かが高速で突入し、炸裂した。

 

 地上の100か所以上で爆発が連続して発生し、生み出された火炎がロウリアの軍勢を包み込む。

 

 「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」

 

 「ひぎぃ…っ!?」

 

 直径122ミリの榴弾と、直径132ミリのロケット弾が地面に爆炎を沸き立たせ、爆風と破片が鎧毎兵士の肉体を切り裂き、四肢を無くした者が絶叫を上げた。

 騎兵の集団の只中にも射弾は落下し、弾片が馬と乗り手を切り刻み、炎が全てを攫っていく。

 

 着弾点の至近にいた兵は、一瞬で物言わぬ肉片となり果てたが、腕や脚を落とされて死ぬまで激痛を味わうよりはマシだっただろう。

 

 「さ、さっきの奴か!?」

 

 「違う!上から何か…!」

 

 「う…!俺の腕がぁ…!」

 

 まだ敵も見ない内に謎の攻撃に晒されている事実に、ロウリア軍は忽ち大混乱に陥り、進軍が停止してしまった。

 

 リントブルムも加農砲の砲撃に巻き込まれ、総勢55体のそれは、一瞬で40体を割り込んでいる。

 Sマイン地雷でも撃破できる程度の防御力しかないリントブルムだ。榴弾やロケット弾の直撃や至近弾を喰らっては、ひとたまりもない。

 

 「散開しろ!!固まっていると良い的になるぞ!他兵と間隔を開けて突撃だ!!」

 

 現場指揮を任されたジェーンフィルアが、統制を取り戻そうと声を張り上げた。

 魔信を通じて放たれた彼の指示に、混乱していた者たちは、何とか落ち着きを取り戻す――完全には取り戻せてはいないが――と、散らばって突撃を再開する。

 

 弾着により死傷者が出るのは変わらないが、密集していた先ほどよりも遥かにマシだ。

 

 「よし、間もなくエジェイから3キロになる。あと少しだ!!」

 

 いつ吹き飛ばされるかわからない恐怖の中前進しているのだ。兵の心理的圧力は計り知れなかっただろう。

 そんな彼らを激励するつもりで、ジェーンフィルアは剣でエジェイに聳える巨大な城壁を指し、魔信に怒鳴っていた。

 

 「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

 その言葉に闘気を奮い立たせたのか、ロウリアの軍勢はある程度士気が上がったようだ。

 腐っているとはいえ、此度の戦乱に参加する兵士たちは、一騎当千のベテランである。

 

 ゆっくりとした歩みではあるが、彼らは着実に城壁へと近づきつつあった。

 

 

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 「根性あるなぁ、あいつら。うちに欲しい位だ」

 

 「渋滞も起こさずに鉄条網を乗り越えるとは、中々やる」

 

 攻撃開始から30分、砲弾を送り続けるだけの単純な作業に退屈している幹部らを見かねた陸軍、海兵隊の主計班が、城壁に鉄板とコンロ、そして重桜産のカルビ、牛タン、サーロイン、ヒレをはじめとした高級肉の数々を持ち込み、焼き肉パーティーが開催されていた。

 しかも、光学望遠カメラによって監視されたロウリア軍の進撃を鑑賞しながらである。

 

 末端の兵たちにも肉が配られ、舌鼓を打っている。

 

 「ちょっとはやるようだけど、まだ来ないの?伊刈退屈~❤」

 

 「もうちょっとしたら白兵戦させてやるから。な?」

 

 サーロインを切り分け、口に入れながら不満を述べる孤狼を、栗林が宥める。

 まるで、我儘な子供に言い聞かせる父親のようだ。

 

 もう1枚の肉を取ろうとした途端、フォークが突き立てられ、目を付けていた獲物を奪われてしまった。

 

 「あ、ちょっと!そのお肉伊刈が育ててたのに!」

 

 「名前は書いてなかった」

 

 「細かいのは抜き抜き~❤」

 

 「ふむ。老体には少し堪えそうだが、美味いな」

 

 サーロインを持ち去った神奈川は、伊刈の文句を適当に聞き流すと肉を切り分け始め、それに武宮も便乗して言い、カットされたステーキを頬張り、ロウリア城へ密偵として侵入していた少女も、年寄り臭い台詞を言いながら、細かく切った肉を口に入れる。

 忽ち、孤狼の額には四つ角が浮かんだ。

 

 「…殺す❤」

 

 「やめろォ。飯が不味くなる」

 

 ナックルダスターを兼ねた護拳付の重桜風ウルミを手にした彼女を、隣に座る菊嶋が宥めようとする。

 それが気に障ったのか、彼の頬に孤狼の拳がめり込んだ。

 

 衝撃波が発生し、机上の皿や肉が一瞬だけ浮き上がり、さしもの栗林や荒川、その他陸軍や海兵隊の幹部勢がその方を向く。

 

 「…痛ぇなァ。何だいきなり」

 

 「ムカつくのよ、無駄に頑丈な癖に❤」

 

 装甲車のボディを凹ませるナックルダスターの一撃を食らいながら、表情を変えずに言い返す菊嶋に、孤狼は笑顔で言い残すと、大人しく別の肉を自身の皿へ盛り付けた。

 

 「伊刈さん?お食事中にそのような物騒なものを取り出すなど…」

 

 「危ない…ます…」

 

 金髪を長く伸ばした、ナイフとフォークで行儀よく肉を食べている少女が眉を顰めながら苦言を呈し、俯き気にチビチビとコーラを飲んでいる、腰まで届く銀髪をポニーテールにした少女も、消え入りそうな声で言った。

 

 伊刈自身も食事を続けたかったためか、彼女は珍しく反論することなく、鉄板上の肉にフォークを突き立て始める。

 

 「おや、御二方は食べないので?なくなりますよ?」

 

 栗林が言った。

 この混沌とした焼肉パーティーには、ノウとモイジも参加していたのだが、食事が喉を通らなかった。

 敵を…しかも相当な大軍を前にし、加農砲の砲声を聞きながら、高級そうな牛肉に舌鼓を打つなど、彼らの常識の範囲外である。

 ついでに言うと、孤狼の人外染みた威力の挙撃と、それを受けても平然としている菊嶋の頑丈さに、内心ビビっていた。

 

 相当な余裕が垣間見えるが、彼らは正直、ここまで暴力的な数の差を相手にしてしまっては、撃退はできたとしても、相当な損害を受けるのは確実だと思っていた。

 

 「…モイジ君、食べよう。高そうな肉だし、これを食べずに死んだらきっと後悔する」

 

 「…えぇ。ですが、食べ過ぎても動き辛くなるので控えめにしておきましょう」

 

 やっと肉へ手を付け始めた2人だった。

 

 「もしかして、勝てるか心配してる?大丈夫だって!私たちがついてるから!」

 

 鋏をチョキチョキと鳴らしながら、武宮が元気づけるように言う。

 

 重桜陸軍でもそれなりの地位にいるとはいえ、20歳を越えていない少女だ。

 同盟国の、しかも将軍の位を持つ者に対する口の利き方ではないが、なぜか悪い気はしない。寧ろ頼もしさが感じられた。

 

 「安心してよ。パパっとあいつら殴り倒して終わらせようぜ」

 

 「おいお前等、せめて言葉遣いをどうにかしろ」

 

 軽いノリで華賀江も言い、握り拳を作るが、荒川が彼女たちの言動の悪さを指摘したが、ノウが彼を抑えた。

 

 「いや、我々も少々弱気になりすぎていたようだ。確かに兵力は向こうが遥かに上。しかし、我が軍は以前と違い銃火器で武装し、貴軍らも付いている。少なくとも、負けることはないだろう」

 

 自信を取り戻した上司を見、モイジも心の蟠りがなくなったような表情で頷いた。

 

 直後、机に置いてあった端末が電子音を響かせ、持ち主である神奈川が口元をナプキンで拭うと、通話ボタンを押して耳に当てる。

 

 「そうか、わかった。…敵との距離が2キロを切った。そろそろ私たちも行くz…」

 

 しかし、幹部たちの食事が終わる気配なない。談笑しながら鉄板上の肉を片っ端から拾い集め、皿に盛っている。

 

 神奈川の背後から暗黒の瘴気が見えたように感じ、唯一その言葉に反応していたノウとモイジが身を震わせた瞬間、彼女は机を思い切り引っ叩いた。

 

 「出掛けるぞ!!いつまで食ってるんだお前らッ!!??」

 

 その怒声により、幹部たちはやれやれといった様子で肉を口内へ詰めれるだけ詰め込み、城壁を降りて行った。

 




 超節制を余儀なくされるロウリア軍と、戦う前から叙〇苑レベルの焼き肉を楽しむ重桜・クワ・トイネ連合軍。
 これだけでどちらが有利かが分かりますね!

 今作の陸軍と海兵隊はこんな感じで結構はっちゃけてます。頭のネジが数本抜け落ちてるレベルで。

 >「出掛けるぞ!!いつまで食ってるんだお前らッ!!??」
 戦場に向かうことを「出掛ける」と言ってる神奈川ちゃんも一見真面目キャラに見えて抜けてるというかなんというか。
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