白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは!夜叉烏です。

 You tubeへ上げる動画編集、課題、テスト勉強で遅れました。申し訳ございません。


渦中を舞う戦乙女

 「先遣隊との連絡は!?」

 

 「ま、まだです。魔信に連絡ありません」

 

 ギム東方5キロに築かれた陣地内へアルデの怒声が響き、兵士が慎重に言葉を選びながら応えた。

 

 前線指揮所では、早々に魔信を設置した天幕が迫撃砲により吹き飛ばされたため、苦戦を強いられていることを伝える間もなかったのだ。

 そのため、ジューンフィルアたちが惨敗しているなど、彼らは知る由もない。

 

 「ちッ!なら本陣は!?」

 

 「其方も繋がりません!」

 

 偵察騎を派遣してもらおうと、ワイバーン本陣へ連絡を取ろうとするが、此方も繋がらない。

 Do335の銃爆撃により、魔信も兵員も全てが吹き飛ばされているので当然だ。

 

 アデムの苛立ちが高まり、再び八つ当たりすべく脚に力を込めた瞬間だった。

 

 轟音や兵士、リントブルムが上げたものと思しき絶叫、怒号、鬨の声が聞こえてきた。

 

 「何事か!?騒がしいッ!!」

 

 直後、息せき切って兵士が天幕に滑り込んでくる。

 

 「敵襲ですッ!!馬防柵を強行突破し、敵の大軍が本陣地に侵入してきますッ!!奴らは鉄の地竜を使役している模様!!」

 

 「んな…ッ!?何だとぉッ!!??」

 

 安全な筈の陣地に敵の攻撃が及んだことに、アデムは思わず大声で叫んだ。

 

 

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 陸軍第109師団所属の四式各車は、前線のものとは違い、時間を掛けて作られた頑丈な馬防柵を正面からぶち破り、搭乗していた兵員が躍り出た。

 

 「よし行くぞッ!!」

 

 栗林は車内全員に言うが、それを聞くまでもなく藤堂が十手を構え、兵員室の縁を乗り越えた。

 跳躍した彼女は、手近なロウリア兵を視界へ収めると、左頬に十手を叩き込む。

 

 「へぼぉッ!?」

 

 血反吐を吐き、首がほぼ180度回転して絶命した彼が崩れ落ちたタイミングで、幹部たちがぞろぞろと降車する。

 

 「ぶっ殺す❤」

 

 「さぁて、やるか…!」

 

 「男には興味ないんだけどな~。まっ、お仕事はしなきゃね♪」

 

 「番災さん。行きますわよ」

 

 「うッ…うん…ッ!」

 

 「見苦しいからって、降伏してくる奴は殺すんじゃないぞ」

 

 闘志を剥き出しにする彼女らに、神奈川が釘を刺す。聞こえているのかは不明だが。

 神奈川は柳葉刀に手を掛けながら、自らが乗ってきた四式に向き直る。

 

 「大将、貴方はここに留まって指揮を…」

 

 しかし、兵員室はもぬけの殻だ。

 前方から大声が聞こえる。

 

 「おっしゃぁッ!!来いッ!!」

 

 「大将に続け~~っ♪」

 

 「「「いえ~~~~いっ!!」」」

 

 既に栗林は、兵たちの先頭をひた走っていた。

 両手に鋏を携えた武宮による後押しで、将兵たちも戦場には似合わない声音で叫びながら、銃剣や軍刀、ナイフで近場のロウリア兵を斬り捨てていく。

 

 「ま、魔導砲を…!!」

 

 「無理ですッ!この乱戦では…!」

 

 「ならリントブルムだ!亜人如きがあれに敵うわけがないッ!!」

 

 陣地防衛のため配置されていたリントブルムが、重桜兵たちに導力火炎放射を放とうとしたが、一〇〇式火炎発射器を持つ兵がそれを見逃さない。

 複数の兵が発射口を向ける。

 

 「「「ファイヤーッ!!」」」

 

 口から火炎が放たれる前に、火の点いた燃料の奔流が発射口から放たれ、リントブルムと乗り手、そして巨体に隠れる兵たちを飲み込む。

 

 「ぎゃあぁぁぁぁぁッ!?」

 

 「あちぃッ!!あちぃよぉッ!!」

 

 文字通り火だるまになったロウリア兵とリントブルムの絶叫が轟き、ゴロゴロと地面を転がる。

 

 「な、何だあれは!?人一人で放てる火属性魔法ではないぞ!?」

 

 「いや、そもそも魔力を感じない!なんだありゃあ!?」

 

 魔術師が扱う火属性魔法は、火炎瓶と同等程度の威力だ。火炎放射器の比ではない。

 

 「糞ッ!!早く奴らを…ッ!?」

 

 リントブルムに騎乗した隊長が指示を飛ばそうとするが、重桜兵にとってはいい目標だ。九九式小銃から放たれた7.7ミリ弾が眉間を貫き、愛騎は飛来してきたパンツァーファウストの弾頭が爆砕した。

 

 さらに、高速で肉薄してきた九七式自動二輪部隊が装備するDP-28(SE)の銃撃が、別のリントブルムに集中する。

 硬い皮膚がズタズタに引き裂かれ、頭部が原型を留めないまでに抉られた死体が崩れ落ちた。

 

 「り、リントブルムが…!?」

 

 「嘘だろ!?」

 

 普通の剣や弓矢では撃破不可能なリントブルムが蛮族に…それも魔法すら使わずに撃破されたことに、兵の間で動揺が広がる。

 

 重桜兵たちが形成する黒い津波は、ロウリア兵の戦列を飲み込むように、陣地後方に向けて進撃していった。

 

 「…そうだった。あいつらはそういう奴らだったな」

 

 「隙を見せたな女ぁッ!!」

 

 俯いて独り言ちる神奈川の背後からロウリア兵が肉薄し、剣を横薙ぎに振った。

 単純な動きながら、見事な太刀筋を描いた剣戟が彼女の首を捉える直前、彼の前腕を神奈川が鷲掴んだ。

 

 「なッ!?…いででででぇッ!!??」

 

 腕を覆う鎧がひしゃげ、前腕が凄まじい握力によって潰される。

 骨が木端微塵になり、神経が途切れ、掴まれた箇所から先がだらりと90度下を向いた。

 脱力した手から剣が滑り落ち、神奈川はそれをキャッチすると、ぐるりと向き直る。

 

 「…私の作戦を一々無視するなぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 奪った得物を逆手で振るい、胸甲ごと強引に断ち斬る。

 死体の口に手榴弾を詰め込んで敵集団へ放り投げると、乱戦から抜けて向かってくるロウリア兵へ十四年式拳銃を発砲しながら柳葉刀を振り回し、自らも自棄になりつつ突っ込んでいった。

 

 

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 「がッ…!?」

 

 「ごほッ…!!」

 

 「あーあ。野郎の汚い血が付いちゃった。男には興味ないんだけどなぁ」

 

 (こっわ…)

 

 斬りかかってきたロウリア兵の喉に鋏を捻じ込んだ武宮が嫌そうに言うのを見た華賀江が、心中でそう呟いた。

 

 武宮は筋金入りの同性愛者だ。

 気の弱い番災を口説きまくり、花笠から説教を喰らうまでの一連の行動が、第109師団では名物となっている。

 

 直後、リントブルムが導力火炎弾を放とうと口内に魔力を蓄え始めたが、武宮は鋏を投擲して両目を潰した。

 腰に提げた着脱式の大鋏を抜き取ると、刃を分割し、50メートルはある距離を一瞬未満で駆け抜ける。

 

 絶叫を上げるリントブルムの目の前に現れた武宮は、相手の首元を2本の刃で挟み込み、引き裂いた。

 首が飛び、残った胴体が力なく倒れるが、彼女は死体を踏み台にして宙へ飛ぶと、ロウリア兵の集団へ舞い降りる。

 

 降り立った美少女に驚く間もなく、ロウリア兵たちは四方八方を斬りつける三次元的な斬撃により細切れになり、飛び散った鮮血が地面を赤く彩った。

 

 (凄い…!)

 

 瞬く間に兵士十数人とリントブルムを生身で始末した武宮を、モイジが驚きを隠しきれない表情で見つめる。

 

 騎士団の団長を務めるだけあって、彼の剣技はクワ・トイネ公国軍内でも上位に入るに実力だ。

 そんなモイジでも、武宮の剣戟を見切れない。

 

 我流なのか荒々しい、悪く言えば滅茶苦茶な剣筋であることは辛うじて分かったが、それでも成立している辺り、剣術の才は中々のものを持っているようだ。

 というより、リントブルムを剣で仕留めること自体おかしい。

 

 「背中がお留守よ❤」

 

 背後から掛けられた声に振り向くと、曲面を描くように斬れてずれ落ちたロウリア兵の死体が横たわっていた。

 美少女の戦いぶりに見惚れている間に、後ろが疎かになっていたらしい。

 

 声を掛けてきた女性――孤狼はウルミを振り回して敵の間合いの遥か先から鋭い剣戟を繰り出し、ロウリア兵を斬り捨てていく。

 振り動作を少し間違えただけで、長くしなる刀身が自分を斬ってしまう可能性のあるウルミだが、リボンを思わせる刃は意思を持っているかのように使用者の身体を避け、敵だけを攻撃しているかのように見えた。

 

 ついでに言うと、彼女は身体が途轍もなく柔らかい。

 背後から斬りつけようと近づいたロウリア兵を踵で蹴り上げ、背中から脚を前に伸ばし、隙を衝いて前方から突進してきた敵の顔面へ足裏を叩き込んだ。

 

 女性は男性に比べ身体が柔らかいというが、それでは片付けられないレベルの柔軟さである。

 

 「す、済まない!」

 

 フィギュアスケートのビールマンスピンのような体勢で蹴りを繰り出したため、ただでさえ短いスカートの中身が丸見えになっている。

 

 騎士団長とはいえ、他のクワ・トイネ軍幹部から見れば若年の域にいるモイジは、咄嗟に顔を逸らした。

 

 「そういえば、番災殿は…」

 

 気弱な幹部の存在を思い出し、周囲を見渡すが、件の人物は見当たらない。

 まさかやられてしまったのではないか、と危惧したが、そんな彼にまたもや声が掛けられた。

 

 「モイジさん、御無事でしたか?」

 

 「その声は花笠ど…!?」

 

 振り向いた先には、両腕が血に塗れた少女。

 黒を基調とした半袖の制服にはそれほど付着していないものの、肘から下は真っ赤だった。

 

 徒手空拳で戦っていたようだが、花笠の細腕でこの場を切り抜けられるとは思えないが…。

 それに、彼女の手をよく見てみると…。

 

 「あぁ、これですか?」

 

 掌が一部、グレーに変色している。

 鉄のような、無機質な色だ。

 

 「セイレーンとの戦闘中、少々無茶してしまいまして…」

 

 どうやら作り物の腕らしいが、ただの義手ではないことが直感でわかった。

 技術的なことに詳しくはないが、着用者の膂力を底上げするような機能が備わっているのかもしれない。

 

 「今度、家の者に塗装が剥げないよう造ってもらおうと思います…あら?」

 

 花笠が何かに気付き、ある方を振り向く。

 それに釣られてモイジも視線を移すと、十文字槍を携えた銀髪の少女が、俯きながら近づいてきた。

 

 「番災さん。そちらは終わりまして?」

 

 花笠がその少女を呼び、番災が顔をゆっくりと上げた。

 

 「…ッ!?」

 

 しかしその表情は、戦闘前の気弱な顔つきとは正反対のものだった。

 まるで獲物を捕らえた肉食獣のような目つきと、不気味に吊り上がった口元。左目から頬にかけて鎮座する傷が、凶悪そうな雰囲気に拍車を掛けている。

 

 「あぁ…花笠。今片付け終わったところだ」

 

 戦闘前とは明らかに異なる荒々しい、男っぽい口調だ。

 身長を優に越す長さの十文字槍はどこに持っていたのか気になったが、腰に複数の棒と、十字架を思わせる短刀らしきものを差していたため、それを連結させたのであろう。

 

 まるで人が変わったような笑みを浮かべながら、全長1.8メートル程度と思われる槍を肩に担いでいる。

 

 「え…っと、番災殿…ですな?」

 

 「あ?…あぁ、俺は俺だぜ。ま、今は真白の番じゃねぇけどなァ。俺は番災虚哭(きょこく)だ」

 

 確認するように問うたモイジに、白い歯を見せて笑う番災。

 

 先に述べておくと、番災は二重人格者だ。

 入隊前…まだ10歳の頃に凶悪犯罪へ巻き込まれ、肉親を殺された挙句自身は連れ去られ、狭く何もない部屋で1年以上監禁され続けた。

 

 長い監禁生活の影響で、彼女の精神状態が不安定な状態に陥っていく中、唐突に2人目の人格が出現した。

 食事を届けにやってきた凶悪犯を、肉を切るためのナイフで殺害し、構成員も皆殺しにした後、行く当てもなく街を彷徨っていたところを、当時の栗林の部下が拾ったのだ。

 

 一応、彼女の精神治療には海兵隊の大河内が関わっている。

 彼曰く「番災ちゃんが自分を守るために作り出したもの」とのことだが、彼女自身は作った覚えはないとのことだった。

 恐怖のあまり助けを求めているうちに、無意識に形成された人格だというのが、彼我の認識となっている。

 

 見分け難いということで、名前をどうするか話し合ったが、もう1人の"番災"自身が『虚哭』の名を名乗った。

 縁起が悪いと幹部や栗林が変更を促したが、「自分にはこれで十分」とのことで、この名前で落ち着いている。

 

 「それより、もう大将は奥まで行っちまってるらしいぜェ。俺たちも行くぞ」

 

 「あら。相変わらず活動的な御方ですこと」

 

 慣れた様子で陣地の奥へ歩みを進め、モイジも彼女らに続いた。

 ロウリア兵の死体が散らばり、生き残りを縛り上げている重桜兵が散見される。

 

 ロウリア軍には「虜囚の辱めを受けてはならない」という鉄則があり、アルデやパンドールのような高官らも兵たちに対し、それを徹底している。

 しかし、圧倒的な実力差を見せつけられたためか、抵抗したり、舌を噛み切ったりする捕虜はほとんどいなかった――舌を噛み切ろうとした者は、見張りの歩兵に阻止されている。

 

 「野蛮人めッ!!縄を解け…グハッ!?」

 

 「五月蠅いから黙れ。煙草が不味くなる」

 

 一部、抵抗の意を示す者が声を上げるが、一仕事終えた後の煙草を吸っていた重桜兵が、九九式小銃の銃床で殴り、沈黙させた。

 敵兵、特に華美な鎧を着込んだ将校らしき人物は、拘束後も騒いで鬱陶しかったため、いつもは禁止されている捕虜に対しての暴力だが、今回はある程度許容されている。

 とはいえ、死亡したり、後遺症が残るような威力では叩くのは厳禁だ。

 

 モイジが、転がっているロウリア製魔信器を手に取り、顔を顰める。

 

 「…妙だな。あのアデムのことだ。亜人に敗北する位ならと、配下の魔獣を従えて突撃してきそうなものだが…」

 

 「てことは、先に逃げる気だって?」

 

 頷くモイジ。

 

 「将校としては失格ですわね」

 

 「奴は冷酷だが、同時に狡猾だ。自分が生き残れるのであれば、部下はおろか上司、国をも簡単に捨てるだろう」

 

 ロウリア統一戦争でのアデムの逸話を耳にしたモイジは、僅かな怒気を含ませながら言った。

 

 「糞の擬人化みたいな奴だな」

 

 「お口が悪いですわよ、番災さん。ですが、お気の毒ですわね」

 

 「え…?」

 

 花笠の言葉が引っ掛かり、思わず振り向いた。

 次いで虚哭がモイジの疑問に答える。

 

 「栗林のオッサンはそういう奴にすげぇ敏感なんだ。多分、地の果てまで逃げても追いかけられるぜェ?」

 

 「それに、仲間を軽々しく切り捨てる御方を許すことはありません。私たちの世界でも…」

 

 直後、奥から誰かの断末魔が微かに聞こえ、敵将が栗林の餌食になったことを、幹部2人は察した。

 

 




 閲覧ありがとうございました。

 次は栗林大将のお仕置きと捕虜の方々、海戦組の導入になると思います。

 (https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos)
 ↑YouTubeやってます。執筆に影響しないよう努力しますが、予期せず投稿が遅れることがありますので、ご了承ください。
 
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