中々筆が進まなくて遅れてしまいました。
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↑You tuberチャンネルを開設しました。執筆に影響しないよう努力しますが、予期せず投稿が遅れる場合もありますので、ご注意ください。
「糞ぉ…ッ!!亜人共にここまでされるとは、この無能共めがッ!!」
指揮所であるテントでは、アデムが指揮を忘れ、血走った目で怒鳴り散らしていた。
兵員たちはそんな彼に極力関わらないようにしつつ、各々の職務に専念している。
内心「そんなことより指示を出せ」と思っているが、下手に口走れば彼の使役する魔物に食い散らかされるのは目に見えているため、黙っていた。
そんな中、アデムは頭の中で打開策を考えている。
といっても、自分だけが生き残る方法だが。
(もうこの国はだめか。パーパルディア皇国に亡命し、復讐の機会を…)
あまりに自分勝手な考えが浮かび、そろりそろりとテントの出口へ移動し始める。
その直後だった。
「うわっ。実際会うとヤベェなこいつは。日向に1か月置いといた牛乳みてぇな臭いがしやがる」
「「「!?」」」
テント内へ、やけに大きく響く男の声。
全員が声のする方を振り向くと、そこには黒いコートを羽織った男が立っていた。
黒々とした金属と木材でできた塊を背負い、腕を組んだ栗林である。
アデムを見ながら、夏場に放置された生ごみを見るような目をしていた。
「大将!」
「来たぞ~」
手甲と十手の先端を赤く染めた華賀江と藤堂が、テントの裂け目から入ってきた。
黒づくめの歩兵数名もそれに続き、ロウリア兵へPPSh-41(SE)を向ける。
幹部2人はテント内での室内戦を考慮し、サブマシンガンを持った兵に同行を求めたらしい。
「ひッ…!」
栗林と幹部2人と全身漆黒の兵たちに気圧されたのか、何人かが悲鳴を上げ、残りも動けない。
アデムも、目の前の敵集団から発せられる殺気に打ちのめされそうになったが、それでも彼は将官だ。
「役立たず共がッ!!もういい!こいつら毎食い殺せッ!!」
抵抗できない部下に嫌気が刺したのか、それとも逃亡・亡命を悟られないよう彼らを諸共に始末しようと考えたのか、念のため手元に控えさせていた魔獣――ゴブリンと百足蛇を数体呼び出し、飛び掛からせる。
「おい」
栗林が手で合図すると、歩兵たちが前に出、得物を向ける。
直後、PPSh-41の銃口に発射炎が明滅し、耳を塞ぎたくなるような銃声がテント内を満たし、ロウリア兵は驚愕しつつ耳を抑え、地面へ倒れ込んだ。
ゴブリンの肉体も、硬い外骨格で覆われた百足蛇も、高速で撃ち出される7.62ミリトカレフ弾の前では紙切れ同然だ。
鮮血や黄色の体液、破片を飛び散らせながら、襲い掛かってきた魔物全体が一瞬で駆逐された。
「な…ッ!?」
統一戦争時代から、幾多もの敵兵を葬ってきた自らの魔獣軍団が、10人に満たない歩兵の手で殲滅されたこと、百足蛇の硬い外骨格を粉砕する威力の攻撃に、アデムは目を剥いて絶句する。
「…さて。君らには信じられないかもしれんが、我が軍はよっぽどのことがない限り、捕虜となった者への虐待を禁止している」
「ま、五月蠅くしてる奴にはちょっとばかりお仕置きしてるけどな」
アデム以外の兵員に向けて栗林がそう言い、華賀江が補足した。
「今すぐ降伏してくれれば、この戦いを終わらせることができる。暫くは我が軍の管轄で過ごしてもらうことになるだろうが、少なくとも死ぬことはない。…君らも、祖国に帰りを待つ者がいるんじゃあないか?」
やけに威厳ある栗林の言葉に耳を傾けるロウリア兵。反論する者は皆無であった。
話が一通り終わると、彼はアデムへと向き直る。
「…ただし、お前は別だ」
「だっ…黙れぇッ!!」
自棄になったアデムが、力任せに剣を振り下ろす。
感情的になったまま得物を扱っているせいか、振り下ろす速度自体は速いものの、動きは直線的だ。
「遅い。刃物を持ったチンピラと変わらんな」
「!!??」
栗林はおもむろに腕を伸ばすと、振り下ろされる剣の切っ先を、
単に動体視力が良いだとか、指の力が人より強いだけでは絶対に説明のつかない現象だが、幹部二人も、周りの歩兵も、今更動じることはない。
一方のアデムは、渾身の一撃を指2本で止められたことに、驚くこともできなかった。
(ん…!?)
栗林の目に浮かぶ、花の形をしたパターンを見つけた。
何の花かは不明だが、雌しべの部分が、3つの勾玉が円を描くように配置されたものだ。
「ふん…ッ!」
「ぐへぇ…ッ!!??」
栗林は剣を摘まんだままアデムを引き寄せると、彼の腕を鷲掴んで背負い投げ、地面へと叩きつける。
ズドンッ…と、まるで迫撃砲が着弾したかのような音とともに、背中からクレーターができる威力で地面へと叩きつけられたアデムは、口から血を吐き、目を剝いたまま絶命した。
背負い投げによる内臓破裂が、死亡の原因となったようだ。
「お見事じゃ。大将」
「あんな素人に負ける奴の気が知れんよ…さて」
藤堂の言葉に返答し、栗林はリロードが終了したPPSh-41を向けられているロウリア兵らに向き直る。
「降伏しろ。君らに最早勝ち目はない」
生き残っていたアデムの側近は無言で何度も頷き、周りの兵員に目配せする。どうやら、彼がアデム戦死時の次席指揮官らしい。
側近の視線を受けた兵は魔信に向き直り、戦闘停止を呼びかける。
テントの外からなおも聞こえてきた銃声や斬り合いの音が、徐々に小さくなっていく。
「改めて、今より君たちは我が軍の捕虜となる。以後、我々の指示以外の行動は厳禁だ。逃亡を企てようとした者、許可なく魔信を隠し持ち、使用した者が出た場合、それなりの措置を取らなければならなくなる」
措置といっても、拷問したり、処刑したりといった過激なものではない。
実行者をより強い監視下に置き、その所為で自由度が制限される位だ。
「…分かった」
ロウリアではやはり人道的な考えがないらしく、覚悟したような目で側近が一言そう応えた。
(何だあいつ。大袈裟すぎるだろ)
(しょうがないだろ大将。向こうは降伏した敵は皆殺しって考えが当たり前なんだから)
ぎこちなく味方に戦闘停止を呼びかけ続ける彼らを見、栗林は怪訝そうに華賀江に小声で話しかけ、彼女が呆れたように返す中、戦闘は収束に向かっていった。
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「アデム君からの連絡はまだ来ないのかね?」
「はい。こちらからも呼びかけていますが、一切通じません」
ギムの建物の一室を間借りし、そこを司令部に据えたパンドールは、アデム率いるエジェイ攻略部隊との連絡が途絶えたことに疑問を覚えていた。
当初、パンドールとアデムはギムの建物を利用した司令部で指揮を執り、現場はジェーンフィルアに任せる予定だった。
しかし、ギムで物資と亜人を手に入れることができなかったことが相当悔しかったらしく、アデムは自ら現場へ赴き、前線から少し下がった場所へ陣を構えることとなった。
パンドールは一応、軍人としてのアデムは高く評価していた。
ヒステリーを起こしたりはするが、将軍としての能力は高いし、それはロウリア王国の統一戦争で証明されている。
それ故、連絡1つもなしに消息を絶つとは、考え難かった。
さらに腑に落ちなかったのが、エジェイ攻略部隊の戦況を確認しようと、本国のワイバーン本陣に連絡騎を派遣するよう通達しようとしたのだが、そちらにも繋がらなかったことだ。
まさか敵ワイバーンの奇襲でやられたのかと思ったが、クワ・トイネにそれほどの航空戦力があるとは思えない。
「上空から何か来ます!」
「何!?ワイバーンか!?」
ワイバーンによる直掩は望めないとして、厳重な対空警戒を行っていた兵の報告が届き、パンドールや幹部たちが顔色を変えた。
基本的に、ワイバーンを地上からの攻撃で堕とすのは無理だ。
矢を命中させても鱗を貫通することはできないし、そもそも当てること自体難しい。魔法攻撃も同様だ。
「総員、街を出て散れ!!早くしろ!!」
魔信を通じ、部下全員へ怒鳴ると、自らも街の出口に走る。
敵も街を壊すことはないし、ギムへ籠っていた方が安全ではないかと一瞬思ったが、もし被害を顧みず自分たちを攻撃する腹積もりなのであれば、街毎一網打尽にされてしまう危険がある。
実際、ギムは井戸も埋められ石畳もボロボロ、爆発する罠もあちこちに仕掛けられており、人が住めるような場所ではなくなっている。
ギムは完全に放棄しているため、心置きなく街毎パンドールたちを葬る可能性も十分にあった。
それなら、街から脱出して荒れ地を走り、何とか森林に飛び込んで難を逃れた方がマシだと判断した。
荒れ地は遮蔽物もなく、敵から狙われやすいが、分散すれば目標になる確率も減るはずだ。
無論、全員が逃げ切れるとは思っていないが、少しでも生き延びられる確率を上げるにはこれしかない。
「ワイバーンじゃない!巨人が…!」
その声は、重量のある物体が着地したような地響きの連続によって中断された。
花を思わせる白い布によって落下速度が弱められた漆黒の巨人が、次々と荒れ地に着陸している。
ゴーレムよりも遥かにごついその巨人は、剛腕で役目を終えた布――パラシュートを器用に切り離すと、巨体に覆い被さったそれを引っぺがす。
「ゴーレムか…?」
「ゴーレムなら、遠距離で魔法撃てばこっちのもんだ!魔導士は詠唱の準備をしろ!」
兵士たちが言葉を交わすと、魔導士を連れて荒れ地を進んでいく。
人間が放つ魔法の射程は短いため、最低でも100メートル以下まで接近する必要があるのだ。
自らの肉体のみが攻撃手段であるゴーレムなら、その戦法で正解だろう。
パンドールも、総勢20体ほどと思われるゴーレムを眺める。
空から降ってきたことには流石に驚いたが、動きが鈍く、飛び道具を持たないゴーレムは、基本的に魔法の遠距離攻撃で対処可能だ。
特段脅威に感じてはいなかった。
「うん…?」
巨人の1体が腕を直上へ向けると、そこから赤い煙が吹き上がった。
不審に思ったものの、何が目的の行動なのかが図りかねる中、件の巨人らはやけに人間らしい動きで終結すると、腕を前に突き出す。
直後、剛腕に据えられた4丁のShkas(SE)が、毎分1800発の速度で7.7ミリ弾をばら撒き始めた。
閲覧ありがとうございました。
8話連続で指揮官もKAN-SENも出てきてない…信じられるか?これ、日本国召喚とアズレンのクロスSSなんだぜ?
次回は蹂躙回です。…いや、次回"も"だ。