白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんばんは。夜叉烏です。

 陸の方は一区切りつきました。

 (https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg)
 ↑You tuberチャンネルを開設しました。執筆に影響しないよう努力しますが、予期せず投稿が遅れる場合もありますので、ご注意ください。



征伐軍全滅

 

 四式陸上攻撃機"連山"をベースに開発された四式輸送機の編隊は、ギムの街上空3000メートルを飛行していた。

 

 「静かなものだな…」

 

 「えぇ。敵のいない空を飛ぶのは久しぶりです」

 

 重桜空軍第142飛行隊に所属する"連山"22機を率いる機長兼飛行隊長の呟きに、隣に座る副操縦士が応えた。

 

 四式輸送機は、ベースとなった"連山"を全体的に再設計したもので、大容量格納庫を機体後部に備えている。

 積載量は12トンにもなり、前世界では前線部隊への物資投下、空挺部隊の輸送に活躍した。

 

 ただの飛行機同然の機体で戦場に赴くのはかなりの度胸がいるものだが、この世界のワイバーンは高度3000メートル以下でしか活動できないため、彼らの飛行を阻害するものはない。

 

 非武装の輸送機はセイレーンに執拗に狙われたものだが、これほどまでに静かな空を飛ぶのは、工藤たちにとって久しぶりだった。

 

 『俺たちもだよ。お前ら諸共堕ちる心配がないのは久しぶりだ』

 

 積載している五式機動装甲服の搭乗者が、冗談めかしに割り込んできた。

 

 四式輸送機は爆弾倉がなく、機体後部に昇降扉を備えている。

 これで、車両等を速やかに降ろすことができるのだ。

 

 五式は積載区画に固定されているが、降下時は搭乗者がそれを解除し、昇降扉は機長が遠隔で操作する。

 

 「そうだな…よし、降下準備!」

 

 「2番機、偏流測定準備」

 

 矢継ぎ早に、飛行隊長が命じる。

 

 高度3000メートルから物資を投下すれば、風に乗って着地点がかなり散らばってしまう。

 風向や風速を正確に測定し、投下した五式がどの程度流されるのかを把握し、ギムから離れないように、また各々が散らばらないように降下させる必要があった。

 人間のスカイダイバーと同じように、機動装甲服も降下中はある程度方向転換することができるが、念のためである。

 

 『偏流測定完了。誘導します』

 

 測定を終えた2番機が前に出、残りの全機が2番機の後方へ占位する。

 

 『こちら格納庫。拘束は外した。いつでも降下できる』

 

 「ハッチ開放。降下用意!」

 

 搭乗者からの報告を受け、機長は昇降扉のレバーを操る。

 自分の目で確認はできないが、今頃格納庫には高度3000メートルの冷たい風が吹き込んでいることだろう。

 

 「よし、行ってこい!幸運を祈る!」

 

 『そっちも気を付けて帰れよ!』

 

 暫し時間を置き、格納庫内の機動装甲服が投下され、機体が僅かに軽くなる。

 

 バックミラー越しに、黒い巨大な塊が降下していく様が、飛行隊長の目に映っていた。

 

 

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 着地の衝撃は、それほどでもなかった。

 

 重桜陸軍第6装甲歩兵分隊分隊長は、装甲服の右腕に後付け装備した八九式擲弾筒の改造型を頭上へ放ち、2個分隊が終結してくるのを待つ。

 

 HMD越しの周囲の視界には、既に直率する分隊員と、共同で作戦に当たる第7装甲歩兵分隊の五式が全て映っている。

 第142飛行隊2番機による偏流測定が正確だったこと、風がそれほど強くなかったため流されなかったこと、そして機動装甲服を駆る搭乗員が優秀だったことがあり、全員の終結にそれほど時間は必要としなかった。

 

 『こちら第7装甲歩兵分隊。全員終結。いつでも戦闘可能』

 

 「了解。派手に行くぞ」

 

 ギムに陣取るロウリア兵は、巨大な五式に足が竦んで動けないだろうと思っていたが、意外にも積極的に接近してくる。

 五式の巨体故、動きは鈍いと判断し、懐に入り込むつもりなのかもしれない。

 

 「敵は横一列で接近している。一気に行くぞ」

 

 『『『了解!』』』

 

 敵は、横隊を形成して向かってきている。

 大型の盾を装備した重装兵の背後に、剣士や魔導士が続く形だ。この辺りの国では、メジャーな戦法である。

 

 中々の迫力ではあるが、装甲歩兵分隊からすれば「どうぞ狙ってください」と言わんばかりの隊形だ。

 

 小栗はHMD越しに、向かってくるロウリア兵1人1人を同時にロックオンした。

 照準の円環が彼らを残らず捉え、視界一帯が白く染まる。

 

 「各個に自由射撃!奴らを街へ押し戻せ!」

 

 横一列に並んだ五式が両腕を突き出すと、巨腕に備えられたShKAS(SE) 7.7ミリ機銃計4丁に、一斉に発射炎を閃かせた。

 

 ShKAS(SE)は元々、北方連合が開発した航空機銃ShKASを、7.7ミリ弾が使用できるよう改造を施したものである。

 毎分1800発もの発射速度を誇り、しかも650発の弾薬を装填した状態で全備重量40キロ程度と軽いため、導入後は当時の主力艦戦である零戦にも搭載された。

 

 威力不足との声が多く、それほど経たないうちに戦闘機から取り外されることとなったが、機動装甲服の武装として使用するとの決定が下されたため、退役は取り止められた。

 

 機動装甲服は、圧倒的火力と防御力による歩兵型セイレノイドの制圧が主任務であり、ShKASなら充分と判断されている。

 

 ――22体の機動装甲服、合計18丁の機銃から放たれる7.7ミリ弾の弾幕が、横隊で進軍してくるロウリアの戦列を押し包んだ。

 

 大きな盾に守られた安心感は大きかっただろうが、粗悪な鉄板を用い、矢や剣戟に耐える程度の耐久性を持っているに過ぎないものだ。

 猛速で飛来してきた7.7ミリ弾は、その盾をあっさりと貫き、構えていた重装兵の命を次々と刈り取る。

 

 最初の数秒の斉射で重装兵は全滅し、障害物を失った歩兵や魔導士が、次々と射すくめられていく。

 

 「う゛…ッ!?」

 

 「がぁ…ッ!?」

 

 毎分1800発もの勢いで放たれる7.7ミリ弾は、瞬時に彼らの身体を穴だらけにし、短い悲鳴を遺言に倒れ伏す。

 

 「あ…あ…!!」

 

 奇跡的に弾幕に絡めとられなかった者も、股間を濡らして腰を抜かしていた。

 恐怖のあまり、泡を吹いて気絶している兵もいる。

 

 総勢1000人程度と思われる敵集団は、たった数十秒の斉射で壊滅したのだった。

 

 「射撃終了。…各員、弾数はどうか?」

 

 麾下の分隊も、第7装甲歩兵分隊の五式も、まだ1丁あたり2000発以上の7.7ミリ弾を残しているようだ。

 

 背部に背負うウェポンラックとジェットパックを兼ねる弾薬嚢には、7.7ミリ弾が3000発装弾されている。この弾持ちの良さも、搭乗員には好評なのだ。

 

 「よし、爆撃が終わるまでは様子見だ。一旦後退する」

 

 『『『了解!』』』

 

 

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 「将軍!第1陣、全滅しました!」

 

 驚愕と絶望感を隠し切れない通信兵の報告を聞くまでもなく、攻撃部隊の第1陣が1分も経たずに全滅していく光景を、パンドールは呆然と眺めていた。

 

 懐に入り込めば弱いと踏んで優々突撃していった凡そ1000人の兵士は、そのほとんどが亡骸と化し、敵ゴーレムへ全く損害を与えられなかった。

 

 アデムが戦力の殆どを前線へ連れて行ったものの、自身の指揮下には未だに1万人以上の兵士がいる。

 

 しかし、1000人の兵力を瞬時に壊滅させる力を持った謎の巨人に対しては、どこか力不足を感じずにはいられなかった。

 

 (あの攻撃は一体何なんだ!?魔力は感じないし、大盾を貫く攻撃を凄まじい速さで連発するなど…!いっそ全員で突撃して肉薄するか…)

 

 このままギムに攻めてくるかと思いきや、なぜか後退しだしたため、その隙に相手をどう倒すか考える。

 しかし、既存の戦術が通用しない未知の巨人相手に、どう対抗するかが全く浮かばない。

 

 唯一、ワイバーンが有効な戦力だと思われたが、本陣と連絡がつかないため、その手は使えない。

 

 頭の中で必死に戦術を考える。

 ロウリア軍の三大将には及ばずとも、将軍としては優秀の域にいるパンドールは、その頭脳をフル回転させ、3分ほど考えを巡らした後、決定事項を口に出した。

 

 「…全員、分散して突撃せよ!敵を包囲するのだ!」

 

 シンプルな命令だが、巨人の数は20体少しだ。

 薄く広がって突撃し、敵の攻撃による人的被害を極限しつつ、包囲して追い詰める構図である。

 

 将軍の命令を受け、部下たちが動き出す。

 剣や杖を携え、呼吸を整えると、突撃の合図を待った。

 

 (しかし、なぜ敵は攻撃をやめて撤退したのだ?やはり自国の街は壊したくないのか…。いや、井戸も埋められているし、ここは街としては死んだも同然。もう人が住めるような場所ではないが…)

 

 突撃開始の時宜を見計らっているパンドールの頭に、そんな疑問が浮かぶ。

 その直後だった。

 

 「…何の音だ?」

 

 風を切るような音が聞こえてきた。神経を掻き毟られるかのような、不快な音だ。

 全員が思わず、音の発生源である頭上を見上げる。

 

 黒い点が多数、自分たちに向けて落下してきている。

 数えるのも馬鹿らしくなるほどの数だ。

 

 「逃げ――」

 

 咄嗟に魔信へ怒鳴り込むが、全て伝え終わる間もなく、その黒い塊――四式陸上攻撃機"連山"20機から投下された250キロ爆弾が降り注いだ。

 仮に命令が伝わっていたとしても、ワイバーンの限界高度を超えた場所から投下され、猛速で落下してきた爆弾から逃れる時間はなかったであろう。

 

 高度3000メートルより爆撃を実施した"連山"の搭載量は、7.5トン。

 1機辺り28発、20機で560発の250キロ爆弾が、ギムの街全域へと降り注いだのだ。

 

 3000メートルの高さからの爆撃のため、街から逸れた爆弾も少なからずあった。

 しかし、それよりも圧倒的に家屋や街道への直撃弾が多い。

 

 街を占拠していたロウリア兵らは、250キロ爆弾炸裂の衝撃波で吹き飛ばされ、爆炎の中に消え、倒壊する家屋の下敷きとなっていく。

 

 瓦礫に埋もれた状態で辛うじて息があり、救助を求める声を上げる者も多数いたが、奇跡的に家屋の倒壊や爆風、爆炎に吞まれなかった兵は、目の前で起きた大破壊に腰を抜かして動けなくなっており、助け出されることがないまま息絶えていった。

 

 こうして東方征伐軍は全滅し、ロデニウス大陸の統一と亜人の撲滅という戦略目標の達成が不可能になったことが、確実のものとなったのだった。

 

 そして同時期、海上でも殺戮が繰り広げられていた。

 




 閲覧ありがとうございました。

 次回は海戦。やー---ー-っとKAN-SENが登場するよ。これホントに日本国召喚×アズレンssか?


 
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