海戦の前に閑話休題を少々。
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『本当に良いの?』
『え~?何が?』
絶え間なく桜の花弁が降り注ぐ広大な重桜庭園の一角――池に掛けられた朱色の橋の上で、2人の女性が言葉を交わしていた。
1人は、黒地に銀の桜が描かれた、左脚にスリットが入る着物を、もう1人は白地に金の桜が描かれた、同じようにスリットが入った着物を纏っている。
前者――白銀黒烏は、目の前で小鳥を指に止まらせて微笑む女性を見ながら話しかけ、彼女は軽い調子でそう言った。
『私が本当に重桜の海軍に入っていいのかってことよ。そんな軽い内容じゃないでしょ?お姉ちゃん』
黒烏の前にいる人物こそ、重桜を象徴する存在――『カミ』である。
滅多に重桜の国家運営へ口を出すことはしないものの、国…ひいては世界が亡びるような非常事態が発生した場合のみ手を貸す、正しく神様のような存在なのだ。
大昔、世界が荒廃したときから現れたとされ、2000年以上は生きているらしい。
長い時を経て、文明の発展を助け、その後の人類の成長を見届けた張本人だ。
重桜の民は彼女を崇拝しているが、滅多に人前へ姿を現さないため、この美貌をお目に掛かれた者はそういない。
彼女が住んでいるのは、重桜の国名となっている巨大な桜"重桜"と一体化した城だ。
昔の重桜民が、『カミ』のためにと建てたものらしい。
彼女の手で結界が張られ、『カミ』が入城を許可しない者には、侵入することができない。
しかし、『カミ』のお気に入りの1人である黒烏は、アポなしで訪問したにも関わらず、快く結界を解いてくれた。
――元セイレーンの黒烏がそう言うのもごもっともだ。
世界の海を掌握し、多くの人命を奪った勢力の出身者が所属できるほど、重桜海軍は優しい組織ではない。
『大丈夫♪長官さんにはちゃ~~んと"お話"してあるから♪』
小鳥を空へ放してやりながら言う『カミ』。
雲上人もいいところな彼女と対面し、そう命じられた海軍の長官は、緊張のあまりイエスマンになるしかなかっただろう。
後で胃薬の詰め合わせでも送るかなどと思っていると、『カミ』がどこからか小型のアタッシュケース、布で包まれた長い木箱を取り出し、黒烏へと渡した。
『お姉ちゃんからのプレゼントよ❤』
アタッシュケースを開けてみると、そこにあったのは14年式拳銃の改良型。
ただし、カラーリングが純白で、金色の桜柄が描かれていた。
次に、長い木箱を覆う布を取ると、蓋を開ける。
入っていたのは、一振りの重桜刀。
全体的に黒っぽく、卍のような形状の鍔が特徴的だ。
禍々しく、それでいてどこかで感じたことのあるエネルギーが漏れている。妖刀の類だろうか。
『貴女が持ってきた黒いメンタルキューブを、私の力でこれに変えたのよ。最上大業物・紫雲神去…ってところかしら』
『言ってて恥ずかしくならない?』
そう返したが、『カミ』は意に介さない。
確かに、セイレーンから抜ける際、人類への餞別として黒紫色のメンタルキューブ――インフィニティキューブを2個持ってきていたが、こんなことに使われるとは思わなかった。
映画や漫画、アニメで出てくる錬金術のようだ…と呆れたが、『カミ』にはこの程度わけないかと思い直す。
『あぁ、1個しか使ってないわよ。残りは研究者の皆に預けてあるから』
『じゃないと困るわよ。人類反攻の鍵なんだから』
妹一筋の『カミ』が、キューブを2個ともこの刀につぎ込まなかったことに安堵しながら、箱から取り出して鞘から抜いてみる。
黒紫色の刀身の表面がまるで流れるように蠢き、禍々しい印象を受ける重桜刀だった。
『…随分と不気味な餞別だこと』
『プレゼントって言ってるでしょう?』
付属のホルスターに拳銃を入れて左脚に巻き、刀を左腰に差した。
直後、『カミ』の両手が黒烏の頬を優しく包み込む。
声を上げることも許さず、彼女は顔を目の前まで近づけ、黒烏は思わず顔を赤くしてしまった。
『貴女をしっかり守ってくれるように、おまじないをかけておいたわ。良い?黒烏。絶対に無理しちゃ駄目よ?』
普段の『カミ』とは違い、珍しく真面目な声音と表情で語りかけてきた。目はいつも通り閉じているが、鋭い視線を感じる。
反論の余地もなく、黒烏はただ頷くだけだった。
『クスッ…。随分と、お涙頂戴な一幕ですねぇ…』
『こら、邪魔するなお前!すっげぇいいとこだったろ!』
『大将。録画データは消してもらうぞ』
芝生を踏む音と共に現れたのは、黒づくめの男2人と少女1人。
全身から血の匂いを撒き散らす長身の男と、40歳程度と思われる、巨大な刀を背負った男、少女の方は、水色のショートカットに黒いカチューシャ、長い十手を背負っている。
『カミ』に呼ばれた"お気に入り"は、黒烏だけではないようだった。
『薙刃君!栗林君!藤堂ちゃん!今来たのね?』
『台無しよ、もう…』
3人を和菓子が乗った椅子に案内する『カミ』を見ながら、黒烏は姉との2人きりの時間が終わったことに、少々の落胆を覚えていた。
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「うにゃ…」
「あっ、起きた」
艦長室で目を覚ました黒烏に気付いたKAN-SEN『ニュージャージー』は、備え付けのコーヒーメーカーでカフェオレを淹れていた。
いくら身分の高い者とはいえ、軍艦の艦長室は広いとは言えないのが通例だが、基本的にKAN-SENしか乗らないため、その分彼女らの居住性を向上させるための小改造が行われている。
この『ニュージャージー』の艦長室もそれが実施され、1人で寝るには過ぎるサイズのベッドに机、クローゼットといった家具が置かれていた。
「ん~~…ッ」
夢で見た回想を思い出して微妙な気持ちを覚えながら、黒い下着を纏った豊満な肢体をくねらせ、思い切り伸びをする。
「おはよ~…」
「まだ寝てていいわよ?指揮官。会敵まであと16時間ってとこね」
「その匂いで覚めちゃったわ…」
白いタンクトップとホットパンツを着たニュージャージーから、カフェオレを受け取る。
甘く味付けされたそれが脳に活気をもたらし、更に眠気が覚めていく。
「そういえばさぁ、指揮官。何で私が旗艦なの?大体リットリオに任せたりするじゃない?」
『旗艦として、黒烏の専属艦として相応しい艤装』を目的として、サディアが各企業の力を結集して建造したヴィットリオ・ヴェネト級の新型艤装は、この泊地で最強と言えるだろう。
そしてリットリオも、黒烏の専属艦という立場上、作戦では旗艦を務めることが多い。
今回の任務も、リットリオが旗艦になると考えていたニュージャージーは、自分が選ばれたことに、内心で戸惑っていた。
「…1つ。貴女へ実戦経験を積ませるには丁度良いと思ったから。後1つ…」
少し不機嫌な表情になった黒烏は、自身のスマートフォンの画像を見せた。
紫髪の、腰に紅く塗装された大鋏を提げた少女が、リットリオの右腕に抱き着いており、リットリオもまた笑顔でそれに応えている写真だった。
自撮りらしく、少女の左手が画面外に向かって伸びていた。
「リットリオの奴、また私以外の女を許可なく…!」
自分を見てくれないことに腹を立てた黒烏が、頬を膨らませて怒る。
「でも指揮官だってリットリオたち以外とも…その、シテるんじゃなかった?」
言い辛そうにニュージャージーが問うと、黒烏は心外だと言わんばかりに反論する。
「私のことが好きすぎて軍務に支障が出るような子だけよ。リットリオみたいに四六時中口説いてるわけじゃないわ。…というわけで、リットリオは暫く旗艦任務はお預けにしたのよ」
隼鷹とか大鳳とか…と独り言を零す黒烏を見ながら、ニュージャージーは彼女の隣に腰掛ける。
何やら、悪戯を思いついた悪童のような微笑みを浮かべている。
「へぇ~…。それじゃあ…」
「ん…ッ!?」
タンクトップに覆われた双丘を、黒烏の腕へ押し付けてきた。
同時に、黒烏の手を取ると、自身の太ももへ触れさせる。
「私も指揮官のことが好きすぎて、これからの戦いに支障が出ちゃいそうだわ~♪」
わざとらしく言いながら、グイグイと密着してくるニュージャージー。
黒烏は顔を赤くしつつ、溜息をついた。
「…会敵8時間前までよ」
「オッケー♪」
了承を得たニュージャージーは体重をかけ、黒烏の身体を押し倒すと、無防備を晒す彼女の身体を貪り始めた。
――戦後、このまぐわいを知ったリットリオが、自身の非をしっかり認めて謝った後、この時以上に激しく黒烏を可愛がることになるが、それは別の話である。
閲覧ありがとうございました。
カミ→ウルトラマンキング
黒烏→ウルトラの父
薙刃桐生→ウルトラマンベリアル
栗林忠道→ウルトラマンレッド
藤堂鈴→アストラ(その昔野垂れ死にそうなところを『カミ』に助けられた)
みたいなイメージですね。4人はそれぞれ『カミ』のお気に入り兼友人です。
あ、薙刃大佐黒幕説はないですからご安心ください。
見た目黒烏と同じくらいの年齢でも、2000年生きている『カミ』からしたら栗林さんも赤子でございます。