白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんばんは。夜叉烏です。

 やっとKAN-SENの戦闘シーン書けたよ…。

 You tubeやってます。執筆に影響しないよう努力しますが、予期せず投稿が遅れる可能性もございますので、ご了承ください。
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海戦(前編)

 「いい景色だ。美しい…」

 

 4400隻もの帆船を指揮する、ロウリア海軍東方征伐艦隊提督のシャークン・ケロウドは、海上を埋め尽くす無数の船舶を見て、そんな言葉を漏らした。

 

 ロデニウス大陸国家史上最高の海軍戦力を有する東方征伐艦隊の任務は、陸軍の越境・ギム攻略と呼応して、クワ・トイネ公国の経済都市マイ・ハークに強襲上陸を実施し、ここを占領することだ。

 水上戦を戦う船舶の他、こちらも数えるのが馬鹿らしくなるほどの揚陸艇が随伴している。

 その船内では、鎧やローブを纏った屈強な剣士や魔導士が待機していた。

 

 「しかし、王も心苦しいだろうな…」

 

 順調に進撃が続いているのを確認しながら、シャークンは独り言ちた。

 

 周囲へ悟られぬように細々とした行いだったとはいえ、亜人の解放運動を積極的に支援していたハーク・ロウリア。

 御前会議等で彼と親交のあったシャークンは、その考えの賛同者であった。

 

 しかし、パーパルディア皇国の横やりでハークの計画は頓挫し、クワ・トイネ公国・クイラ王国との戦争に臨まなけらばならなくなった。

 

 両国の国民たちには申し訳ないことこの上ないが、これもロウリア王国の存続のため、そして命を預かる部下のため、手を抜くことは許されない。

 

 覚悟を決め、水平線の遥か彼方にあるだろうマイハークの街並みを思い浮かべながら、前方を見据える。

 

 (恨まないでくれよ…)

 

 クワ・トイネ国民に向け、せめてもの謝罪を心中で実施した瞬間だった。

 

 艦隊の前方へ6本の巨大な水柱が屹立し、発生した高波が複数の船をさらっていった。

 それに声を上げる間もなく、見張り員の報告が飛び込む。

 

 『正面に敵艦隊!…デカい!?なんて大きさだ!!』

 

 

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 「うお…ッ!」

 

 ブルーアイは、まるで濡れ布で頭部を思い切りひっ叩かれたような衝撃と轟音に、思わず声を漏らした。

 海軍へ入隊したての頃、ミスを連発して少なからず教官から鉄拳制裁を受けたことがある彼だが、その挙撃よりも強烈かもしれない。まだ、頭が少しクラクラする。

 

 「大丈夫ですか、ブルーアイさん」

 

 「…大丈夫です」

 

 黒烏の言葉に、彼は少なくとも表面上は問題なさそうに応えた。

 艦橋脇のデッキにて、主砲の斉射を見たいというブルーアイの要望で、黒烏は轟音と衝撃が酷いと勧告した上で案内したのだ。

 

 彼女の他、訓練を受け、戦艦の主砲発射に慣れている見張り員ならばそうでもないだろうが、ブルーアイはそうもいかなかった。

 

 「敵は…」

 

 「もうすぐ着弾よ」

 

 KAN-SEN『ニュージャージー』の声を聞き、備え付けの双眼鏡を覗くブルーアイ。

 遥か彼方の海面に6本の水柱が立ち上り、残骸のようなものが舞い上げられる様が確認できた。

 

 重量1トンの40センチ砲弾だ。

 それが音速の2倍を超越する速度で海面に突き刺されば、周囲の木造船など一溜りもないだろう。

 

 「この『ニュージャージー』が搭載する40センチ3連装砲Mk.7は、重量1トンの砲弾を最大38キロ先まで届かせることができます」

 

 目の前の敵に集中するニュージャージーの代わりに、黒烏が乗艦の攻撃力について解説する。

 

 「38キロ…」

 

 ブルーアイが、その言葉を反芻する。

 

 クワ・トイネ海軍にとって、未知の数字だ。

 やっと、改造ガレー船の運用に漕ぎつけたばかりの海軍にとっては当たり前だが。

 

 『指揮官!これより突撃するわ!』

 

 「了解。油断しちゃだめよ」

 

 『分かってるわよ!お姉さんに任せなさい!』

 

 KAN-SEN『アトランタ』と無線でやり取りする黒烏。

 『ニュージャージー』の横を、無数の小口径砲で甲板を占領している軽巡が通り過ぎ、混乱しているであろうロウリア艦隊に向けて進撃を開始する。

 

 直後、ニュージャージーの眉がピクリと動いた。

 

 「…指揮官、敵騎接近中。数は200よ」

 

 「『インディペンデンス』、『バターン』。大至急、全機発艦」

 

 ニュージャージーの言葉を受け、黒烏は後方の軽空母2隻へ指示を飛ばす。

 

 「「了解(分かりました)!」」

 

 

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 「ジュノー、行くわよ!」

 

 「は、はいッ!姉さん!」

 

 軽巡『アトランタ』『ジュノー』の2隻は、戦艦『ニュージャージー』の長距離砲撃で散り散りとなっているロウリア艦隊に向け、突撃を開始していた。

 妹の『サンディエゴ』『サンファン』は、軽空母2隻の護衛のため、後方へ下がっている。

 

 アトランタ級は、Mk.12 5インチ連装砲を8基16門を装備する他、ボフォース40ミリ四連装機銃6基、エリコン20ミリ連装機銃を4基を搭載している。

 このハリネズミさながらの武装で、防御力の弱い帆船を蜂の巣にしていくのだ。

 

 「ワイバーンが来るらしいけど、ほっといて敵艦を攻撃するわ!迎撃をすり抜けてきたら、機銃で適当にあしらうわよ!」

 

 同時に、彼女らの頭上を小柄な機影が通過した。

 『インディペンデンス』『バターン』から発艦したF8F"ベアキャット"合計48機が、ワイバーンを駆逐すべくやってきたのだ。

 

 艦の規模は、ヨークタウン級やエセックス級と比べて小さいが、練度に関しては彼女らに劣るものではない。

 鈍足のワイバーン程度、数の差をものともせずに対抗できるだろう。

 

 さらに、新鋭機であるF8Fの性能は、全陣営の空母KAN-SENが装備する艦載機の中でもトップクラスだ。

 

 「砲撃開始!」

 

 「ジュノーも、が…頑張るのですッ!」

 

 ロウリア船を射程に収めた5インチ両用砲が、次々と発射炎を閃かせる。

 距離は10キロ以上離れているが、最大1万5000メートルの最大射程を誇るMk.12 5インチ連装両用砲と、《烏の巣》所属のKAN-SEN全員に共通する高い練度のお陰で、初弾から次々と命中していく。

 

 直径127ミリの小口径榴弾が命中するや、風船が破裂するかのように吹き飛び、火の点いた木材や水夫の惨死体を舞い上げ、味方の船にそれらを降り注がせる。

 倒壊したマストが乗員を押し潰し、舷側を貫通して船内へ飛び込んだ榴弾の炸裂が、待機していた魔導士を一瞬で消し去る。

 

 ロウリア側は反撃したくとも、2隻のアトランタ級は10キロ先にいる。バリスタや魔法攻撃は届かない。

 

 鈍足かつ防御力など皆無に等しいため、『アトランタ』『ジュノー』の2隻は、各砲塔それぞれを敵艦へ指向させ、発砲していた。

 砲塔別の射撃は、著しく精度が落ちる砲撃方法だが、それでもほとんどを命中させている辺り、流石と言える。

 

 直後、頭上で待機するF8Fが動いた。

 ずんぐりした機体が向かう先には、無数の黒点。ロウリア軍のワイバーンだ。

 

 それらにF8Fが突撃した瞬間、黒い粒が蠅のように堕ちていく様が確認できた。

 

 

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 「何なんだ…これは…」

 

 ロウリア艦隊の直掩に駆け付けたワイバーン隊の隊長は、眼下の光景を見て声を失っていた。

 

 4400もの艦隊は少々の損害を受けるものの、遥かに小規模のクワ・トイネ海軍を殲滅し、マイハークへの上陸を成功させると確信していた。

 

 それがどうだ?

 美しく陣形を描いていた艦隊は散り散りになり、その間では沈みかけた船の残骸が浮き、その乗員が救助の声を上げている。

 敵とは見当はずれの方向へ向かっている船もいた。命令を無視して逃げ始めたらしい。

 

 状況は、隊長が予想していた以上に最悪なものだった。

 

 「あの船か!?なんて大きさなんだ…!」

 

 この状況を作り出した要因である3隻の大型艦を見、声を上げる。

 

 前方へ展開する2隻もそうだが、後方の1隻が信じられないほど大きい。敵艦隊の旗艦だと推察された。

 

 「全騎、あの大型船を狙うぞ!攻撃後は2隊に分離、前方の船を叩く!」

 

 司令官が乗っている旗艦を先に叩くことで指揮系統を混乱させ、残りの2隻を沈める構図である。

 

 騎を翻そうと、手綱を握る手に力を込めたその時だった。

 

 馴染みのない轟音と共に現れた妙な飛行物体が、その翼を断続的に光らせている光景が隊長の目に映った瞬間、彼の身体と愛騎は猛速で飛来した何かに貫かれ、海面へと堕ちていった。

 

 「な、何だ!?」

 

 隊長のあっけない最期に動揺する他の竜騎士たちだったが、そんな暇はない。

 得物を見つけた猛禽の如く急降下してきたF8Fが、両翼に4丁を装備するAN/M3 20ミリ機関砲から火箭をほとばしらせ、次々とワイバーンを食っていく。

 

 「ひい…ッ!!何だこいつらはッ!?」

 

 「逃げるなッ!!逃げれば我が隊の面目丸つb…ッ!?」

 

 もはや、勝負にすらなっていない。

 整然たる編隊を組んでいたワイバーン部隊は、小隊単位でバラバラになり、もしくは単騎で孤立し、F8Fに追い散らされていた。

 

 

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 「な、何なんだあの船はッ!?」

 

 ロウリア艦隊の1隻に乗船していた、パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハル・マールバラは、ロウリア艦隊に砲撃を加える巨艦を見て大声を上げていた。

 

 自軍の150門級――フィシャヌス級戦列艦が子供の玩具にしか見えない、無数の回転砲塔で武装した船の存在に、彼は西方の列強『ムー』の関与を疑った。

 

 帆がないにも関わらず高速で、黒煙を吐きながら進む特徴は、ムー海軍の艦船と一致している。

 

 本来、中立を掲げるムーは、このような僻地に肩入れするような国ではない。

 しかし、クイラ王国には多数の鉱物資源に、原油が埋蔵されている。

 同国と国交を結び、その権益を守るために軍を派遣してきた可能性は、十分考えられた。

 

 それにしては、資料で見たムー海軍の艦艇に比べ、随分と洗練されている気がするが…。

 

 「ワイバーンだ!」

 

 乗員の歓喜の叫びに、ヴァルハルは思わず頭上を見上げる。

 黒い黒点が多数、海域上空へ現れた。200騎はいるだろう。

 

 (ふむ。流石に、空からの攻撃にはどうしようもあるまい)

 

 ワイバーンの吐く導力火炎弾は粘性が高く、海水を少しかける位では消えない。

 沈みはしないまでも、火災が発生し、その状態が長く続けば、流石の鋼鉄製の軍艦でも無視できない損害を被るはずだ。

 

 そう考えていたヴァルハルだったが、"ブーン"という音と共に現れた飛行物体も目の当たりにし、顔色を変える。

 

 「飛行機械だとッ!?」

 

 先端に高速で回転する風車と、羽ばたかない翼は、紛れもなく飛行機械のそれだ。

 ムーの関与疑惑が濃厚になっていく。

 

 (いや…ムーの『マリン』ではないな。それに、遥かに洗練されているように見える…)

 

 ヴァルハルが見た飛行機械は、太く若干寸詰まりな胴体を、2枚の主翼で飛ばしているもの。

 

 その間にも、敵機は主翼から光弾を連射し、ワイバーンの固い鱗を砕き、血飛沫を上げさせて堕としていく。

 速度性能、運動性能、上昇性能、急降下性能のどれをとっても、敵飛行機械が優勢だ。

 

 ムーの『マリン』は、主翼を上下に重ねた複葉機と呼ばれる種類である。

 同国では最新兵器の1つとなっている機体だが、ヴァルハルが記憶している『マリン』と、今目の前でワイバーンを駆逐している飛行機械を比べると、どうしても前者が古臭く感じてしまう。

 

 (一体どこの飛行機械なんだ!?まさか、クワ・トイネ公国が独自に…)

 

 ショートしかけの頭で、必死に考える。

 だが、その答えが出るまでもなく、彼の乗る船へ『ジュノー』から放たれた5インチ砲弾が飛来した。

 

 「うわぁぁッ!?」

 

 喫水付近に着弾し、船体へ大穴が開いたのか、浸水が発生し、急速に船体が傾き始め、10秒もしないうちに甲板が急坂のような状態になる。

 

 ヴァルハルはその坂を滑り落ち、海面へと落下した。

 体を水面へ思い切り打ち付けたわけではないため、外傷はない。

 

 「糞ッ!ついてない…」

 

 幸運にも、近くに流れてきた材木を掴んで浮き替わりにしたが、この状況では、味方は友軍を救助している暇はないだろう。

 味方全滅からの、敵に拾われて拷問…という最悪の結末を想像し、彼は自決も視野に入れ始めるのだった。

 

 




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