今作、前作以上にオリジナル兵器&魔改造兵器が多くなりそうな予感…。
それと、今後の陸軍はイスラエル感が増してくるかもしれん。
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急造病院船『大永丸』船内は、ロウリア海軍の救助者で溢れ返っていた。
1200床ものベッドは直ぐに重傷者で一杯となり、腕や足の軽い骨折や切り傷、打撲等で済んでいる者は、船室を改装した護送区画で過ごしてもらっている。
圧倒的な力を戦場で見せつけられたこと、心身共に傷つき、疲弊していること、黒づくめの恰好をした"夜桜"や海兵隊員の威圧もあってか、今のところロウリア兵は大人しくしていた。
その2つもあるのだろうが、彼らが大人しくしている一番の理由は…。
「…はい、異常なしですね。移動の際は、他者の手を借りてくださいね?」
「は、はい…」
軽症者の手当てを担当する医者や軍医に交じり、包帯を手際よく巻いていくKAN-SEN『ハーマイオニー』の言葉を受けた若いロウリア兵の1人は、顔を赤くしながら応える。
丈の短いナース服に、黒いニーソを着込んだ彼女は、傷病者治療の手伝いとして、この船に乗っているのだ。
積極的に傷病者の治療に当たる美女に毒気を抜かれたのか、ロウリア兵は反抗することなく、鼻の下を伸ばしながら、ハーマイオニーを目で追っている。
彼女に対する性的暴行の動きも見られない。一応、それを最も警戒しているのだが…。
(こいつら、大人しくしてるのって彼女たちがいるからだろ…)
監視の任を言い渡された重桜特殊部隊"夜桜"副隊長の
というのも、救助されたばかりのロウリア兵の一部が反抗的な態度を取り続け、治療を拒否していたことがあった。
敵の手解きを受けるのが、それほど屈辱的だったらしい。
しかし、そんな態度に手を焼く医者たちをかき分けてやってきたハーマイオニーを見るや否や、彼らの態度は一変した。
優しく諭すような言葉で治療を受けるよう、彼女に促された彼らは、言う通りに手当てを受け、現在も大人しくしているようだ。
(まぁ、いいか。暴れられるよりは数十倍マシだ)
そんなことを思いつつ、我妻もハーマイオニーを目で追いながら、煙草を取り出した。
そこらの女優が霞んで見える美貌の持ち主なのだから、無意識に目が行くのも無理はない。
「…ちょっと」
「ん?」
唐突な呼びかけに振り向くと、地面に着きそうな長さの桃色の髪をツインテールにした、これまた丈の短いナース服を纏う女性。
「…煙草なら甲板で吸ってよ」
「…これは失礼」
KAN-SEN『パーシュース』の苦言を受けてしまった。
意図してるのかしてないのか、大きく開けられたナース服から覗く谷間をなるべく見ないようにしながら、煙草を仕舞い、口元を隠して配置に戻る。
後1時間で交代だ。それまでは真面目に待とうと決めた。
そんな彼を無視し、パーシュースは聴診器でロウリア兵の軽い診察を始める。
「…鼓動が速い。苦しかったりする?」
「い、い、いや。何でもないよッ?」
パーシュースの谷間が目の前まで迫り、ドキドキしてしまったようだ。
さらに、ロウリア兵の手が彼女の太ももに触れ、これまでにないほど彼は顔を赤くしているのだが、パーシュース本人は心音を聞くのに集中しているのか、気付いていない。
(デレデレしやがって…)
内心で呆れつつ、有事に備え、忍刀へ手を掛けるが、誰一人として反抗することなく、彼女たちにも他の医者にも、暴行を働こうとする者はいなかった。
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「では、お大事にしてくださいね?」
「はいッ!ありがとうございました!」
これまた年若い、20歳前後と思われるロウリア兵の軽い手当てを終えたハーマイオニーは、30人入りの大部屋から出て行った。
その背中に、病人全員の視線が刺さっていたのは言うまでもないだろう。
と、ポケットに入っていた通信端末が鳴った。
『ハーマイオニーさん、19号室を手伝ってくれないか?』
「はい!わかりました!」
徴用された医者の1人からだ。
膨大な数の沈没船から投げ出される負傷者の治療には、軍医だけでは足りないことが予想されたため、《烏の巣》の病院からも、医者や看護師が何人か参加している。
カルテを抱え、船室を改造した治療部屋が並ぶ廊下を、ヒールを鳴らしながら歩いていく。
(皆様、意外と素直ですね…)
治療を受けるロウリア兵の態度を思い出し、ハーマイオニーはそんなことを思った。
最初こそ、治療を拒否する捕虜が少数いたものの、自分が諭したことで何とか手当てを行うことができた。
やはり、男ばかりの軍では、女性は貴重なのだろう。圧倒的な力の差があるからこそ、大人しくしているのがほとんどだろうが。
彼女らの他、監視任務に当たる"夜桜"と海兵隊の隊員が最も危惧している、KAN-SENに対する性的暴行の動きもない。
地味に危険な任務であることは、パーシュース共々承知の上だったのだが、拍子抜けだった。
とはいえ、警戒するのに越したことはない。
人間よりも優れた身体能力を持つKAN-SENとて、艤装を纏わない状態で不意を衝かれれば、無事では済まない。
人気のない中甲板までやってきたところで、医者に症状を聞いておこうと無線を手にしようとしたその時だった。
「おい姉ちゃん。ちょっと腕が痛くてなぁ…診てくれねぇかなぁ?」
「俺も足が悪くてなぁ」
「頼むよぉ」
厳つい男たちが、わざとらしく腕や足を抑えながら頼んできた。
思わず、ハーマイオニーは顔を顰める。
(その割には、随分と元気そうですね…)
というのも、この場所はトイレの前であり、入り口から中が見え難い造りになっている。
患部を抑える手つきや、痛みを耐える表情がどう見てもわざとらしく、何よりもその下種な笑み。
人目の利かない場所で、性的に暴行する気満々なのがバレバレだ。
最も警戒していた事態へ、見事に巻き込まれてしまったわけである。
「…分かりました。他の者を呼びますので、少々お待ちください」
無線を取り出して言うが、これは噓。
連絡先は、この船に乗る海兵隊員たちの責任者だ。一報を入れれば、指示を受けた隊員が駆け付ける。
まぁ、ハーマイオニー自体戦闘力が高いのだが、念のためである。シェフィールドならともかく、彼女は人間に対する暴力をあまり好まない。
「うるせぇ!とっとと診やがれ!!」
他人を呼ばれるのは、やはり都合が悪いらしい。先ほどとは打って変わり、いきなり怒鳴ってきた。
腕を抑えていた男が、ハーマイオニーへ腕を伸ばしてくる。
患部を抑えていた方の腕だ。やはり仮病だったらしい。
ハーマイオニーは男の手首を掴むと、合気道の要領で投げ飛ばした。
「ふッ!」
「うおッ!?」
《烏の巣》では、KAN-SENが街を出歩く際、その美貌のあまり、男に声を掛けられることが当たり前といった有様となっている。
拒否して諦めてくれればいいのだが、それでも付き纏う者への対処法として、合気道等の非殺傷体術を学ぶことが義務付けられているのだ。
KAN-SENが戦闘で用いるような体術は、一般人への配慮が乏しい。本気で殴るなり蹴るなりすれば、訓練を受けていない一般人など、内臓破裂・複雑骨折待ったなしだろう。
「こ、この糞アマぁッ!!」
あっけなく仲間が投げ飛ばされたことに驚いたのか、2人目が少々落ち着きなく拳を振り上げる。
こちらも、重桜のKAN-SENから学んだ柔術で対処しようとした途端、ハーマイオニーは何者かに抱え上げられ、宙を舞っていた。
「ひゃっ!?」
「失礼」
ハーマイオニーをお姫様抱っこしたその人影は、全身が黒色だ。
海兵隊員も、黒い制服を着用しているが、彼は口元を黒子で隠し、顔も黒く塗られている。
「貴方は…"夜桜"の」
「我妻だ」
垂直に跳躍し、空中で回転しながら数メートル上の階へ着地するという離れ業をやってのけた"夜桜"副隊長我妻大志中佐は、着地と同時にハーマイオニーを降ろした。
「海兵隊へ連絡した。直ぐに来る」
言うまでもなく、現場に到着した海兵隊員が、例の男たちへ重桜刀を突き付けている様が見えた。
なおも抵抗しようとするが、隊員たちは峰打ちで男たちの脛を殴打し、痛みに悶えているところを、後ろ手にあっさり取り押さえた。
「ふぅ…。やはり、ああいった御方もいらっしゃるのですね」
「性的暴行を取り締まる決まりがないからな。正直、こんな場に君らを連れてくること自体、俺自身懐疑的だった」
手錠を掛けられ、俯きながら連行されていくロウリア兵を見下ろしながら、腕を組んでそう言う我妻。
彼の視線に気付いた海兵隊員が歩きながら敬礼し、我妻もそれに応えた。
「…ですが、助けを求める方がいる以上、KAN-SENとしては黙っていられません」
「あいつ等のような、文字通りの蛮族が相手でもか?…まぁ、大体の連中は大人しくしているが」
ハーマイオニーのお人好しさ加減に、少々の呆れを感じながらも、我妻は彼女のその気持ちを評価した。
我妻自身、無駄な虐殺は好まない性格であり、その件に関しては、偶に上司である薙刃と衝突することもある。
ハーマイオニーの考え自体には、ある程度理解を示していた。
「あの、怪我人が…」
「あぁ…そういえば、医者に呼ばれていたんだったな」
着地の際に落ちたカルテを拾い直し、彼女は近くの階段から下に降りて行った。
閲覧ありがとうございました。
オリキャラ紹介。
・重桜特殊部隊"夜桜"副隊長:我妻大志中佐
薙刃桐生大佐に目が行きがちになるが、それでも人外の巣窟である"夜桜"の副隊長を務めるだけあって、KAN-SENドン引きな身体能力の持ち主。
副長として隊員たちに指示を出したり、サイコパスな上司を宥めたりと忙しく、作中上位の苦労人。
重桜拳法が最も得意だが、ボクシングやジークンドー、ムエタイ、テコンドーも中々の腕前で、戦艦のKAN-SENともタイマンで互角以上に渡り合う。
武器術では剣術全般の他、鉤爪、分銅鎖、投げナイフが得意。