何の面白みのない、ロウリアが講和する回ですね。ドンパチはしないです。
これまでで一番退屈かも。
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「東方征伐軍は陸軍・海軍共に連絡が取れず、ワイバーン本陣は壊滅し、ほとんどの騎が撃墜乃至地上撃破。兵力の過半を失い、侵攻の目処が立たない、か…」
「仰る通りでございます…」
ロウリア王国国王ハーク・ロウリア34世は、戦闘報告を反芻して天を仰ぎ、戦況を齎したパタジンは、沈痛な面持ちで応えた。
御前会議での報告であったため、参加していた国王以外の国家運営に携わる高官たちもそれを耳にし、顔を青白く染めている。
(何とも…複雑な気分だ…)
パーパルディア皇国の圧力に屈し、望まぬ戦争を戦っている身としては、侵攻に失敗し、クワ・トイネ国民が犠牲にならなかったのは嬉しい報告だった。
しかし、それと引き換えに大量の将兵を失ってしまった。
亜人嫌いの兵士が大半を占める、異常者の集まりともいうべき東方征伐軍だが、その中にもこの戦に懐疑的だった者もいたはずだ。
亡国の危機とはいえ、自国民を死なせてしまったことに、ハークは国王としての自責の念にも駆られていた。
相反する感情が心中でぶつかり合っていると、テーブルを"ドンッ"と叩く音が、玉座の間へ響いた。
音の主は、パーパルディア皇国から派遣された使者。尊大な態度が気に食わない男だったが、彼に手を出せばパーパルディアが攻めてくるため、何とか怒りを抑えていた。
「貴様らには失望した。退役品とはいえ、兵器の供与をはじめ援助してやったのにも関わらず敗北するとは…。あまつさえ、貴様らの怠慢でヴァルハルを…皇国の人間を死なせた。万死に値する行いであるぞ」
(何ぃ…!?『援助してやった』だとッ!?貴様らがやってきたのはただの脅迫だろうがッ!!代理戦争を強制させるだけに飽き足らず、敗北の全責任を我が国に押し付けるとは…!!)
あんまりな物言いに、ハークのみならず、その場のロウリア王国関係者全員が、顔を怒りで真っ赤に染めた。
万死に値する行いという言い方からして、皇国は観戦武官を死なせたことを口実に、戦後のロウリア王国――国自体が残っているかは分からないが――へ戦争を仕掛け、占領する腹積もりだろう。
皇国のことだ。その後は資源と食糧を求め、ロデニウス大陸国家全てを併呑するのは目に見えている。
相変わらずの貪欲さ加減だ。
何より、戦って散っていった戦士たちを侮辱する発言が、ロウリア王国の中枢に位置する者――特にハークには許せなかった。
故に、これまで我慢してきた鬱憤が、一気に爆発してしまったのである。
「黙れぇぇぇぇぇッ!!」
「うぐぉぉぉぉッ!?」
ハークは玉座から立ち上がると、鍛え上げられた剛腕を使者の顎の付け根へ叩き込んだのだ。
国王という立場に甘んじることなく、己に鍛錬を課してきたハークの一撃を受けた使者は、"バキィッ!!"という不快な音と共に、豪快に吹っ飛ぶ。
「お、王よ…!」
国王の突然の行動に、パタジンやミミネル、スマークが声を上げた。
しかし、どこか胸の閊えが外れたことに喜んでいる様子が感じられた。やはり彼らも、日頃の尊大な態度に加え、たった今将兵を侮辱されたことが気に入らなかったのだ。
「あ…!が…!が…!!」
殴られた使者は、ハークを睨みつけて抗議の声を上げるものの、脳まで響くダメージの所為で、全く呂律が回っていなかった。
這いつくばる彼を横目に、ハークはその場の全員へ向き直る。
「…余の力不足により、パーパルディアの要求を撥ね退けることができず、多くの将兵の命を散らせてしまった。諸君、無力な余を許してくれ」
そう言って、ハークは深々と頭を下げる。
国王からの謝罪に、その場の全員が目を伏せ、目頭を押さえ、雲上人に頭を下げられていることに狼狽えた。
「余はこれからギムへ向かうつもりだ。そこで講和を申し出、この戦の責任を取る」
「し、しかし…それでは王は…」
ミミネルが今にも泣きだしそうな声を出した。
敗北を重ねた国からの講和の提案を受け入れるほど寛容な国はないだろうし、仮に講和の話が受け入れられたとしても、戦争の発端となったハークに何をされるか分からない。
「何。戦の責任すら取れぬようでは、余はこの玉座には座っておらぬ」
先ほどまで自身を預けていた玉座に腕を振りながら、ハークは何食わぬ顔で応える。
「余の命1つで事が済むのなら、快く差し出そうではないか。…それと、私の後任はパタジン…お前だ。他の者も、パタジンをよく補助してやってくれ。信じ難いことであるが、クワ・トイネ公国は我らの常識が通用しない、未知なる力を持っているようだ。彼の国と協力し、他国の侵略から民の命を守れるようにするのだ。そのためにも、彼らからの要求は可能な限り受けるように。…では、アルデバランに伝えてくれ。ワイバーンと竜騎士を貸してくれと」
「は…」
最期の命令になるかもしれない王の言葉に、パタジンと他の者は涙を流しつつ一礼した。
荷を纏めようと、ハークが身を翻したその時だった。
「クスッ…中々のお覚悟ですねぇ。正直、関心いたしました」
突然、玉座の間へ響いた声に振り向くと、そこにいたのは細身の、黒い革コートで身体を覆い、鍔の長いハットを被った男が立っていた。
微塵も気配を感じさせない登場に全員が身構える。
「「「…!!」」」
侵入者を取り押さえるよう命令を発そうとするも、謎の男から溢れ出る禍々しいオーラに、口を動かすことすらままならない。
「あぁ、失礼。私はクワ・トイネ公国政府の遣いとして参りました。貴国がパーパルディア皇国により代理戦争を強制させられていた情報は、既に掴んでおります」
「いつの間に…」
ロウリアでも限られた者しか知らない情報が、敵に筒抜けだったことに、ハークは内心で驚いた。
陸軍第109師団の幹部であり、『カミ』のお気に入りの1人でもある、藤堂鈴大佐の張り込みの賜物である。
「圧倒的強者からの圧力の中、戦争回避や他種族開放に動いていた貴方方の働きも、我々は全て知っています。ハーク・ロウリア氏及び貴国首脳の方々に、断頭台を登らせる気はございません」
元々、東方征伐軍を退けた後に、クワ・トイネ側から講和を申し入れる予定だった。ロウリアへの逆侵攻など考えてすらいない。
大国の圧力で始めざるを得なかった戦争で、多くの命を散らすこととなったこの国や民たちに向け、これ以上何かしようものなら、ロウリアにとって泣きっ面に蜂どころではない。
絶望的な状況でも、犠牲を最小に収めようと努力したハークたちを、戦犯として裁くなど論外だった。
「…貴国の寛大な措置に、感謝する…!!」
血の匂いを撒き散らす不気味な男が、今のハークたちには神からの救済のように思えた――正確に言うなら、"死神"からの救済だろうが――。
全員が涙を堪えきれず、男に向けて頭を下げていた。
「お止めください。私は一介の軍人に過ぎませんので…。あぁ、それと…」
頬を抑えて蹲るパーパルディア皇国の使者を一瞥する。
「そちらには、私共からたっぷりと聞きたいことがございます。身柄はこちらでお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「うむ。煮るなり焼くなり食わせるなり、好きにしてくれ」
ハークの許可が降りるや否や、瞬時に黒づくめの隊員2人が現れ、使者を後ろ手に拘束し、手錠をかけた。
その状態でも抵抗の意を示した使者の首筋に、隊員が容赦なく注射針を打ち込み、昏倒させる。
「講和会議の内容は、追って通達いたします。少なくとも、貴国の全土併合や国民の皆様の無差別虐殺等を行うことはありません。ご安心ください」
(アンタが言っても信用できなそうなもんだけどなぁ…)
にんまりと微笑む男――薙刃桐生大佐の言葉に、三度安心しきった表情を浮かべるロウリア側の面子を見、使者を拘束する"夜桜"の隊員は、内心でそう独り言ちていた。
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その後、クワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国の三国間で、平和条約が締結された。
・ロウリア王国は、クワ・トイネ公国及びクイラ王国に対し、謝罪する。
・ロウリア王国は、クワ・トイネ公国及びクイラ王国に対し、賠償金を支払う。
・ロウリア王国は、亜人解放運動を大々的に実施する。仮に迫害活動を行う者が存在した場合、ロウリア軍はクワ・トイネ軍、クイラ軍と協力して取り締まる。
・ロウリア王国は、奴隷制を取りやめる。
締結に際し、ロウリア王国はこれらの条件を呑む羽目になったが、敗戦国へ突き付ける条件としては、あまりにも軽いものであった。
閲覧ありがとうございました。
私ね、こういうドンパチしなかったり武器兵器が出てこない回を書くのは少し気乗りしないというか、特にこういった政治や条約云々の描写がほんっとに書けないんですよねぇ。
次回は魔帝の遺跡探しの旅(という名の島荒らし)にしようかな~。
また、前作はミリシアルを相当強化させましたが、今回はムーも戦間期レベルの技術力を持たせようと思ってます。
言葉の前に「クスッ…」があったら百パー薙刃大佐です。