白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 新設海兵師団を任せる人がどうしても思いつかないのでモイジさんに丸投げ。

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外伝纏め
【外伝1⃣】第1海兵師団の初陣①


 「ふぅ~…っ」

 

 ロデニウス連邦海兵隊第1師団師団長モイジ・ガルント少将は筋力トレーニングを終え、深く息を吐いた。

 彼が指揮する部下たちは、身体能力が高い獣人を除き、ほとんどが疲れのせいで泥のように這いつくばっている。

 

 重桜海兵隊第12師団――最近FATO軍海兵隊第1師団に名称変更された――による、新設海兵隊師団の教育プログラムを受けている真っ最中なのだ。

 幹部をはじめとした重桜海兵隊員の指示の下、第1師団に所属する種族問わない凡そ15000名の隊員が、広大な演習場の各地に散らばり、交代で肉体訓練に励んでいる。

 

 また、ロデニウス連邦は最低でも3個海兵遠征軍――9個海兵師団を創設する予定であり、元々三国の陸軍に所属していた兵員に募集を行っている。

 

 (随分とキツイものだ…。重桜の海兵隊は、これを毎回こなしているのか…)

 

 騎士団の団長という経歴を持つモイジからしても、こう言わせる程の訓練。部下たちが終わるや否や這いつくばるのも無理はない。

 しかし、クワ・トイネ軍は敵が占領する島嶼へ上陸して戦闘を行うなど想定していなかったため、この教育プログラムは、何から何までが新鮮だった。

 

 "猛将"モイジの武勇伝は旧クワ・トイネ公国のみならず、旧クイラ王国や旧ロウリア王国でも広く知られており、彼を尊敬している者が多い。

 「"猛将"モイジに続け」をスローガンに、彼を慕う部下たちは、必死で厳しい訓練に食らいついていた。

 

 そのお陰か、訓練から脱落する者は皆無だった。

 

 「部下の皆様は、中々粘り強いですね」

 

 息が整ったところで、突然話しかけられた。

 

 振り向くと、そこにいたのはFATO海兵隊第1師団長の荒川玲少将だった。

 ロウリア戦におけるエジェイ防衛戦で初めて邂逅した人物だが、少女のような見た目とその若さに驚嘆したものである。

 

 「いや、貴方方のようにこの訓練を乗り切るには、まだ時間が掛かりそうです」

 

 「ご謙遜を。うちの連中も息切れするのが多いですよ」

 

 別の場所で筋力トレーニングに励んでいた第2師団所属の隊員に交じり、共に身体を鍛えていた第12師団の重桜海兵隊員らも、疲れからか肩で息をしていた。

 しかし、耳障りな呼吸音は目立っておらず、地面に這っている者は1人もいない。ロ連海兵隊第1師団の面々程は疲れていないように見えた。

 

 彼らに追いつくにはまだ先だというのが、モイジの感想だった。

 

 「それでなんですが、モイジ少将…」

 

 「うん…?」

 

 若干神妙な顔つきになった荒川に、モイジは身構えた。

 

 「近いうちに、ロ連南西海域に点在する無人島の探索に向かう予定というのは、ご存じですか?」

 

 「えぇ。聞いておりますが…我が師団には、縁のない話でしょう?」

 

 今のような肉体訓練の他、上陸戦のイロハを散々叩き込まれてきたとはいえ、モイジ自身はまだ実戦に出る時ではない、荒川の第1師団が派遣されるだろうと思っていた。

 目的地の島嶼には無数の魔獣が生息していると予想されており、銃火器で武装しているとはいっても、安心できる場所ではない。

 

 「いえ、貴方方の実戦を経験させるのにいい機会だと、ハンキ総司令が仰ってましてね…」

 

 ロデニウス連邦海兵隊の総司令官としては、荒川がその椅子に座るべきだとの意見が多勢を占めていたのだが、黒烏や重桜海兵隊、重桜陸軍の面々の意見により、それはなしになった。

 

 海兵隊総司令官は、勇猛果敢な海兵隊員たちの頂点に位置する職位だが、仕事の多くは書類の決裁や組織の管理だ。

 荒川のように、有能な現場指揮官を後方で腐らせるのは言語道断…という《烏の巣》面々の意見が尊重された形である。

 

 そうした経緯から、元クワ・トイネ公国軍務局であるハンキが、総司令の椅子に座ることとなった。

 海兵隊という、当時のクワ・トイネ公国からすれば未知の存在に興味を持ち、第12師団の元へ赴いて熱心に研究していた彼は、ロデニウス三国で最も海兵隊について詳しい人物ということで、防衛大臣に就任したパタジンより任命されたのだ。

 

 なお、荒川は特定の国家に依らぬ多国籍軍事同盟FATO軍海兵隊第1師団長という役職を拝命している。

 

 「我が師団を…ですか?」

 

 「えぇ。他に第2、第3師団も投入する予定だそうですが、揚陸艦の建造がまだなので、今回は見送ることになりそうですね」

 

 話に出た2つも第1師団と同様、新設されたばかりで実戦経験皆無の師団だ。交代で重桜海兵隊からの直接指導を受けているが…。

 

 (…なるほど。パーパルディア皇国との戦争までに実戦を経験させるためか)

 

 無論モイジも、先のロウリア戦の裏にはパーパルディア皇国が絡んでいたことを知っている。同国の傲慢さ加減もだ。

 

 しかも、旧ロウリア王国はパーパルディア皇国から代理戦争を強要され、軍事支援を受けている。

 その見返りを求め、圧力をかけてくるのは目に見えていた。最悪、戦争を仕掛けられる可能性が高い。

 

 もしそうなった場合、装備の差でゴリ押しできそうな気もするが、全員が実戦経験皆無の師団では頼りない。

 軍事技術の格差に胡坐をかいていれば、痛い目を見ることになるだろう。

 

 「武器の扱いや近接格闘術、上陸演習にも随分と慣れてきたと思いますよ?相手は銃火器等を持っていませんし、艦隊や航空機の支援体制は万全です。難易度はそう高くはありません」

 

 「…そうですな。パーパルディア皇国は、こちらの事情は一切考えてくれません」

 

 そう言って笑うと、疲れ果てた部下たちへ集合の指示を出した。

 

 

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 彼らの実戦は、1週間後に訪れた。

 ユニオン人技術者の尽力で建造されたアシュランド級強襲揚陸艦8隻が、多数の戦闘艦艇や支援艦艇に囲まれ、目的の島――面積は現実世界の台湾と同程度だろう――を前にしている。

 

 そして、2師団分の兵員と戦闘車両を抱える船団を守るのは、重桜海軍より戦艦『扶桑』『山城』『榛名』『霧島』、空母『信濃』『飛鷹』『隼鷹』『龍鳳』『龍驤』、重巡『青葉』『衣笠』、軽巡『長良』『五十鈴』、駆逐艦『暁』『響』『雷』『電』『朝潮』『大潮』『満潮』『荒潮』。 

 

 他、ロイヤルから戦艦『ネルソン』『ロドニー』『レナウン』『レパルス』、空母『ハーミーズ』『チェイサー』『セントー』、重巡『ケント』『サフォーク』、軽巡『フィジー』『ジャマイカ』、駆逐艦『アカスタ』『アーデント』『マッチレス』『マスケティーア』『グレンヴィル』『グローウォーム』『ハーディ』『ハンター』。

 

 ユニオンから戦艦『コロラド』『メリーランド』『ウェストバージニア』『オクラホマ』『カリフォルニア』、空母『レキシントン』『イントレピッド』『バンカー・ヒル』、重巡『ポートランド』『インディアナポリス』『ペンサコーラ』『ソルトレイクシティ』、軽巡『フェニックス』『ボイシ』『ホノルル』『セントルイス』、駆逐艦『デューイ』『エールウィン』『カッシン』『ダウンズ』『グリッドレイ』『クレイブン』『マッコール』『モーリー』。

 

 鉄血から戦艦『シャルンホルスト』『グナイゼナウ』、空母『ヴェーザー』『エルベ』、重巡『アドミラル・ヒッパー』『プリンツ・オイゲン』『ドイッチュラント』『アドミラル・グラーフ・シュペー』、軽巡『ライプツィヒ』『ニュルンベルク』、駆逐艦『Z24』『Z25』『Z26』『Z28』。

 

 アイリス・ヴィシアから戦艦『ガスコーニュ』『シャンパーニュ』、空母『ベアルン』、重巡『サン・ルイ』『アルジェリー』、軽巡『ジャンヌ・ダルク』『エミール・ベルタン』、駆逐艦『ル・マルス』『フォルバン』『ル・テレメール』『ルピニャート』。

 

 サディアから戦艦『コンテ・ディ・カブール』『ジュリオ・チェザーレ』、空母『インペロ』、重巡『ザラ』『ポーラ』、駆逐艦『マエストラーレ』『リベッチオ』『ニコロソ・ダ・レッコ』『ヴィンチェンツォ・ジョベルティ』『カラビニエーレ』『ポンペオ・マーニョ』。

 

 北方連合から戦艦『ガングート』『アルハンゲリスク』、空母『ヴォルガ』、重巡『タリン』、軽巡『キーロフ』『チャパエフ』、駆逐艦『グロズヌイ』『ストレミテルヌイ』『グロームキィ』『グレミャーシュチ』。

 

 過剰戦力と思われるだろうが、黒烏は万全を期す性格だ。銃火器をはじめとした近代兵器を持たない敵が相手でも、この位の兵力は振り分ける。

 それだけでなく、最近出撃がなかったり、ロデニウス三国や文明圏外国家海軍の指導任務に選ばれなかった者、新たな艤装の受領までに時間が掛かるなどして暇を持て余している者を、積極的に編成へ組み込ませたため、より参加艦艇が多くなった。

 

 「これが、本物の無敵艦隊か…」

 

 戦艦から駆逐艦まで、大小の主砲を陸地へ向け、待機している様を、LST-1の船上から見た旧ロウリア出身の海兵隊員が、その迫力に独り言ちた。

 この艨艟たちの主砲が一斉に火を噴いたら…と思うと、少しばかり背筋が固くなる。

 

 ――強襲揚陸艦『キーラ』の食堂では、上陸を前にしたロ連海兵隊第2師団が食事を摂っていた。

 

 出された料理は、旧クワ・トイネ公国領で育った餌を与えられ、丸々太った肉牛のステーキである。

 ヒト族、エルフ族、獣人族が入り混じった海兵隊員全員が満面の笑みを浮かべ、油とソースを纏って光る肉を、次々と口に入れていく。

 

 「重桜の海兵隊は、戦の前にこんなご馳走を食べているんですねぇ」

 

 「あぁ。クワ・トイネは確かに豊かな食糧が自慢だが、こんなにもガッツリとした食事は久方ぶりだ。船の上で調理したものとは思えん」

 

 大きく分厚いステーキを切り裂きながら、副官の言葉に同意するモイジ。

 少々手狭な食堂のテーブルには他に、シーザーサラダのボウルやパンが入ったバケットも並べられている。

 

 もしかしたら、これが最後の晩餐になるかもしれないのだ。この豪華な食事も、将兵の恐怖を少しでも和らげるためのものなのだろう。

 

 (…我儘はあまり言いたくないが、これ位はしてもらわないと困る。作戦中は、いつ死ぬかも分からない恐怖の中で戦わなければならないんだからな)

 

 内心で呟きながら、談笑しつつの食事を楽しむ部下たちの様子を眺める。

 

 「お前たち!ハンキ将軍より派遣が認められ、荒川殿から一番槍の任務を任されたのだ!モリモリ食べて、ビシバシ働くぞ!」

 

 「「「おうッ!!」」」

 

 モイジの激励に全員が返事した直後、艦隊が艦砲射撃を開始し、轟音が僅かながら食堂内にも聞こえてきた。

 




 閲覧ありがとうございました。

 次回は上陸戦ですから、お楽しみに。
 センチュリオンって意外とノッポだよね。もうちょっと横幅あった方がどっしりしててカッコいいと思う。
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