本格的な戦闘は次からになります。
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島への艦砲射撃は、この海域に展開している艦隊総旗艦を任されたKAN-SEN『ネルソン』の合図で始まった。
「時間ね…砲撃はじめ!」
号令一下、戦艦『ネルソン』の前甲板へ、太陽が出現したかのような光が湧き出し、轟音が周囲を満たした。
前甲板へ3基の40センチ3連装砲を集中配置する特異な形状をしているネルソン級だからこそ、閃光と轟音が余計激しい。
若干遅れて、姉妹艦の『ロドニー』に僚艦の『レナウン』『レパルス』、各陣営の艦艇も、島へ向けて巨弾を撃ち出す。
直径40センチから28センチまでの大小様々な砲弾は、上陸地点の海岸に巨大なクレーターを形成し、豊かな緑を形成する木々を根本から吹き飛ばしていく。
戦艦の射撃からやや遅れ、彼女たちよりも島寄りに展開する巡洋艦・駆逐艦が、艦砲射撃を開始する。
戦艦の主砲に比べれば威力は劣るが、速射性能は上だ。艦数が多い分、発射弾数も多い。
彼女たちは主に海岸を中心に砲撃を行っていた。地中に潜る魔獣――百足蛇や巨大サソリ擬きのアノマーロを炙り出すつもりだろう。
駆逐艦たちは喫水が浅目なのをいいことに、島から3キロほどの地点で主砲を放ち、37ミリ機銃を撃ちまくる。主砲弾が吹き上げる土飛沫に交じって、砂浜のあちこちが小さく連続して弾ける。
『おっ。駆逐艦の子たちは元気いっぱいだねぇ~』
『レパルス!任務中ですよ!私語は慎んでください!』
駆逐艦の奮戦ぶりを見たレパルスが暢気な声を上げ、姉のレナウンが窘める。このやり取りは、もうお約束だ。
レナウンに釘を刺されたレパルスは、「はぁ~い…」と抗議的な視線を姉に向けながら、38.1センチ連装砲Mk.1/N RP12――指揮官の皆様には、381ミリ連装砲改といった方が通じるか――の射撃を続ける。
つい先ほどまで、魔獣が生息していなければ世界有数の観光地になっていたであろう海岸は、艦砲射撃によって散々に引っ搔き回され、潮の香りに変わって硝煙の臭いに満たされ、波の音が巨弾の飛翔音や炸裂音に掻き消されていた。
『ネルソンさん。間もなく、空軍の爆撃が始まります』
「了解…指揮官も大盤振る舞いしたものね」
巡戦『グナイゼナウ』の言葉に、ネルソンはそう言った。
転移前、セイレーン相手の戦闘における最前線となっていた《烏の巣》は、小規模とはいえ戦略爆撃機を配備していた。
重桜空軍第15戦略飛行大隊の四式陸攻"連山"、第142輸送飛行中隊の四式輸送機が、それぞれ64機。
黒烏は、陸攻64機全てを島嶼の攻略へ差し向けたのだった。
高度5000メートルからの水平爆撃で用いられたのは250キロ爆弾。
500キロ爆弾や800キロ爆弾に比べれば威力は小さいものの、投下数が多いため、艦砲射撃が届かない内陸部へ広範囲に散らばる。
『おっとぉ…。トカゲ共がでてきたな』
KAN-SEN『メリーランド』の言葉通り、島の影から無数のワイバーンが出現する様が、各艦の対空レーダーに捉えられていた。
速度はさほど速いとはいえない、この世界でのオードソックスな航空戦力であるワイバーンだが、数が半端ではない。少な目に見積もっても、1000騎はくだらない量だ。
住処を荒らされていることを考えれば、艦隊へ攻撃を行うのは当然の行動だと思うだろうが、ここは魔帝の遺跡が隠されていると思わしき島だ。
大方、再びこの世界へ魔帝が現れるまでこの島の遺跡を守るための、嘗ての光翼人による差し金だろう。
「直掩隊、敵騎を排除してちょうだい」
ネルソンが言うまでもなく、艦上戦闘機"烈風"22型、F8F"ベアキャット"、スーパーマリン・"シーファング"、ホーカー・"シーフューリー"、Bf-109Gをはじめとした、総勢16隻もの空母から発艦した戦闘機が、ワイバーンの群れへ突っ込んでいく。
空母の数が数なだけに、飛び立った戦闘機数も半端ではない。
ワイバーンの大編隊と相対した空母艦載機群は、一斉に主翼や機首の機銃を発射し、空間を埋め尽くさんばかりの猛烈な弾幕を展開する。
導力火炎弾の射程外であるため油断していたワイバーンは、複数の火箭で形成されたカラフルな弾幕に突っ込んだ。
7.92ミリ弾、12.7ミリ弾の奔流に包み込まれたワイバーン数十体が一瞬で細切れとなり、もの言わぬ肉片が空中へばら撒かれる。
MG151とAN/M2、イスパノ機関砲から放たれた20ミリ弾が固い鱗を叩き割り、首や四肢、翼を千切り飛ばす。
初撃で、1000を軽く超えるワイバーンの2割を堕としたが、彼女らは特に喜ばない。
同格以上の相手と熾烈な戦いを繰り広げてきた空母KAN-SENからすれば、時速300キロに満たないワイバーンなど、射撃演習の的にもならない。
圧倒的な物量差を誇るワイバーンは、その差を覆すほどの性能・技量を誇る艦載機によって、あっけなく追い散らされていった。
艦隊に取りつくことすら叶わない。仮にそれができても、各艦の対空火器の餌食になっていただろうが。
更に、全陣営正規空母KAN-SENの標準装備となっているDo335 A-12"プファイル"、軽空母が装備する艦上攻撃機"流星"、TBF"アベンジャー"といった機体も艦砲の射程外に飛び、魔獣が隠れていそうな森に爆弾を投下し、機銃掃射を浴びせていく。
「…よし。これで制空権も取ったわね。1030時まで艦砲射撃は続行。上陸部隊に随伴する者はそれまでに準備を整えておきなさい」
現在の時刻は0915時。これから1時間以上艦砲射撃を続けることになるが、その頃には上陸地点が耕されまくって逆に進撃し辛くなるのでは…と、頭の片隅で考えるのだった。
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『キーラ』を含む強襲揚陸艦4隻から発進した第1海兵師団の歩兵やSdkfz/247 AustB四輪駆動車、四式装甲兵員輸送車、五式機動装甲服を満載したMFP typeD揚陸艇は、艦砲射撃が続く中、海上で上陸の時が来るのを待っていた。
「すげぇ…。これじゃあ、俺たちの仕事がなくなっちまうんじゃ…」
そのうちの1隻に乗るモイジの耳に、同乗している獣人の海兵隊員の独り言が聞こえた。
少し前までのクワ・トイネ公国海軍では考えられない、超大型の艦船の大群による艦砲射撃だ。そう思うのも無理はないが…。
「油断はできんぞ。荒川殿の話では、艦砲射撃だけで上陸地点の敵が全滅するのは稀…というより、絶対に無いそうだ」
モイジの隣にいるエルフ族の副官…カーミラ・エルケゾフ大佐がその兵士を…というより、同乗している者全員へ聞こえるように窘めた。
「まぁ、それは敵が十分な防御陣地を形成していたらの話だが…油断はするな。特に、百足蛇やアノマーロの奇襲には十分注意しろ」
モイジも釘を刺した。
アノマーロとは、一言でいえば巨大なサソリである。
全長3~4メートルほどで、体の半分が尻尾で占められているが、その先端にはワイバーンすら死に追いやる猛毒を持った針が付いている。
その他、両腕の巨大な鋏で、人間だろうが家畜だろうが切り裂いてしまう。
砂中に生息しており、クイラ王国の砂漠地帯等で存在が確認されている。
これが砂浜から飛び出し、不意を衝かれる事態を、モイジは恐れているのだ。
暫し間を置いて、艦砲射撃の砲声が小さくなり、やがて完全に止んだ。
「時間だ!全船、上陸開始!」
号令と共に、海上を埋め尽くす特大型発動艇が一斉に海岸へ進んでいく。
特大型発動艇――通称"特大発"は、大型発動艇の拡大型として開発された上陸用舟艇だ。30トンの積載量を持ち、五式機動装甲服を纏った歩兵を2体、四式装甲兵員輸送車であれば4両を積載した状態で、15ノットの最高速力を発揮する。
船体後部にはDshk 12.7ミリ重機関銃2丁が備えられ、ある程度の自衛能力も持っている。
「ひゃー…。こりゃあ酷い」
分かり切っていたが、やはり海岸地点は酷い有様だ。
そこかしこが引っ掻き回され、弾片や甲羅のようなものも散らばっているのが、隊員たちが持つ双眼鏡越しに見えていた。
「そうでしょう?ま、私たちもこんな大規模なのは久しぶりなんだけどね」
「ん?」
艇外からかけられた声に、モイジらは縁から外を覗き込んだ。
「貴女は確か…」
「アイリス・ヴィシア所属、重巡洋艦アルジェリーよ。貴方の師団に同行させていただくわ」
水の上を滑るように進む女性。非常識な光景だが、海兵隊員に驚く者はいない。
縦ロールの銀髪に、肩に羽織った軍服、大型のメイスを持った女性――KAN-SEN『アルジェリー』は、連装の主砲を4基備えた艤装を携え、特大発と並走していた。
「貴女方が同伴していただけるとは、心強いですな」
KAN-SENは勿論海上兵器だが、簡易艤装の装着により、陸上戦もある程度可能である。
簡易艤装は、重火力艤装よりも火力・防御力・馬力で劣るものの、人間大まで小型化した機動装甲服と言える戦闘力を持つ。
旧ロウリア王国でも指折りの魔導士が召喚したゴーレムを素手で圧倒した他、艤装に装備された艦砲や機銃での遠距離攻撃――小型化した重巡の艦砲は47ミリ対戦車砲並み、機銃は小銃弾よりも少し劣る程度の威力である――も行える。
中には、色とりどりの弾幕を飛ばして攻撃する者もいる。
「あ、あの…っ!握手してくだs痛ッ!?」
「アホッ!!」
若い隊員が意を決したようにアルジェリーに握手を請うが、瞬時にカーミラの鉄槌が脳天に炸裂した。
――やがて、特大発の第一陣が、海岸へと上陸を果たした。
船首のドアが開き、それを足場にして九九式小銃やDP-28(SE)軽機関銃、PPSh-41(SE)機関短銃、一〇〇式火炎発射器、パンツァーファウスト75(SE)を構え、砂浜に伏せていく。
訓練で何度も繰り返した動作だ。
鉄血から輸入したホルヒ901、四式装甲兵員輸送車も次々と降ろされていく。
(内陸に入ったら、注意せねばなるまい)
内心でモイジが呟く。
一応、内陸にも爆撃が行われたが、艦砲射撃に比べれば細やかなものだ。魔獣の生き残りは必ずいるだろう。
「上陸した者は警戒しつつ、生き残りの魔獣排除へ努めよ。設営隊を、早めに陸へ降ろしてやるんだ」
第1海兵師団には、橋頭保や防御陣地の建設を担当する第2海兵設営隊3000名が随伴している。
重機や饅頭と共に、防御陣地や橋頭保を占領した敵地へ短時間で作り上げてしまう、土木のプロ集団だ。力仕事が得意な獣人が多い。
無論戦闘訓練も受けており、時と場合においては、銃火器を持って戦闘に参加することもある。
直後、僅かだが銃声と叫び声が聞こえてきた。
後者は、まるで化け物の叫び声のように聞こえる。どうやら、魔獣の生き残りがまだいたらしい。
「やっぱりいたか…全員、警戒を怠るな。下手したら死ぬことになるぞ」
改めて、モイジは麾下の将兵に命じたすぐ後に、MFP typeD揚陸艇の1隻が乗り上げた。
履帯を軋らせながら現れたA41A2"センチュリオン"Mk.1(SE)が、幅広の履帯で砂を踏みしめながら前進を開始した。
閲覧ありがとうございました。
次回は魔獣やら生物兵器やらがたくさん出てくると思います。
これの外伝が終わったら兵器開発→ムー接触→パ皇戦の流れです。