白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんばんは。夜叉烏です。

 陸戦描写をもう少し細かく描いてみようかな…と思ってたら結構長くなりました。

 You tubeやってます。執筆に影響しないよう努力しますが、予期せず投稿が遅れる可能性もございますので、ご了承ください。
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【外伝1⃣】第1海兵師団の初陣③

 「ゴー!ゴー!ゴー!」

 

 ロデニウス連邦海兵隊第1歩兵大隊第A中隊の面々は、特大発の船首ハッチが解放されるや、次々と砂浜に躍り出、伏せていく。

 

 特大発は、全長32メートルの大型揚陸艇であり、歩兵1個中隊176名を積載できる。

 かなりの大人数だが、訓練を繰り返してきた彼らは、狭い船内で揉みくちゃになることなく、整然とした動作で訓練通りに動いていた。

 後部には兵2人が残り、Dshk 12.7ミリ重機関銃の押し込み式トリガーに指を掛ける。

 

 「全員、気を抜くなよ。魔獣共はどこから出てくるか分からん」

 

 A中隊中隊長のアーサー・ロイミュード大尉は、自前の九九式小銃を構えながら中隊全員に指示を送る。

 彼は、元クワ・トイネ公国軍出身の兵士だ。

 

 特大発のエンジン音や波の音、将兵のやり取りだけが響く海岸に伏せつつ、周りを注意深く伺う。

 あちこちが耕され、クレーターが開いた砂浜には、砲弾の弾片に交じって固い殻のようなものが散らばっており、砂中に潜んでいた百足蛇やアノマーロが艦砲射撃で粉砕されたことを物語っていた。

 

 「しかし、分かり辛いですよこれは」

 

 「あぁ。全員無事に済むといいがな…」

 

 第55大隊A中隊所属B小隊小隊長アエラ・フェイ少尉が、犬耳を動かし、僅かな砂音も聞き逃さまいとしているが、生憎周りが煩くてやり辛く感じているようだ。

 

 そのとき、海岸の一角が微妙に盛り上がり始めたのを、アーサーは辛うじて視界に収めた。

 

 「あそこだ!」

 

 誰かが叫び、九九式小銃の銃口を向ける。

 直後、砂煙を上げながらアノマーロが空中へ飛び出した。あたかも、鮫が海面から飛び出して獲物を捕らえるかのようだ。

 

 空中から落下するアノマーロが、着地点にいる海兵隊員に向けて鋏を叩きつけるが、その隊員は素早く砂上を寝転がり、難を逃れる。

 奇襲に失敗したアノマーロが体勢を整え、今度は尻尾の先にある毒針を突き出そうとした。

 

 アノマーロが毒針を突き出す速度は、秒速50メートル。ほぼ矢の速度に匹敵する。

 常人が躱すのは不可能に近い一撃だが、それを相手に食らわす前に、近場の海兵隊員たちはそれぞれの得物を構えていた。

 

 「撃て!」

 

 九九式小銃から放たれた7.7ミリ弾が、固い外殻を次々と吹き飛ばし、内部の組織片と体液を撒き散らす。

 絶叫を上げるアノマーロだが、即座にイサカM37を持つ隊員が、至近距離で頭部にスラグ弾を叩き込み、跡形もなく粉砕した。

 

 頭を失ったアノマーロは二、三度痙攣した後に力尽き、砂浜に突っ伏したが、それが呼び水になったらしく、黒く焦げた砂浜から、次々と巨大なサソリが這い出てくる。砂の深層に潜んでいた個体は逃げおおせたらしい。

 

 「撃て撃て!近づかせるな!」

 

 「意外と多いぞ!?」

 

 出現したアノマーロは、海岸全体で300体ほどだ。艦砲射撃を潜り抜けたにしても、多すぎる。

 

 (繁殖力が強いっていうが、こんなに生き残りがいるとは…)

 

 アーサーは内心で独り言ちる。

 アノマーロは繁殖力が強い生物だ。しかもここは長い間無人島となっていた場所。

 天敵がいない環境で長期間繁殖しまくった結果、長時間の艦砲射撃でも駆逐しきれないほどの数にまで膨れ上がったのだろう。

 

 「おい!早くあいつらをやれッ!」

 

 「了解ッ!」

 

 アーサーの指示を受けた特大発の機銃員が、Dshk 12.7ミリ重機関銃を発砲する。

 重々しい連射音と共に放たれた12.7×108ミリ弾が、アノマーロの外殻を木っ端微塵にし、尻尾を中程から千切り飛ばす。

 ユニオン製のM2 12.7ミリ重機関銃と口径は同じだが、ストッピングパワーはこちらが強い。そのような代物を食らって、無事で済むはずがなかった。

 

 特大発のみならず、揚陸されたホルヒ901の銃座のDshkも射撃をはじめ、巨大なサソリを次々と仕留めていく。

 

 「ふぅ~!流石に頼もしいな!あいつらに生まれてなくてよかったぜ…」

 

 口笛を鳴らしながら、アーサーは感嘆の声を上げる。

 その直後だった。

 

 「大尉!」

 

 「ッ!?」

 

 すぐ横の地面が爆ぜ、巨大な影が宙へ舞い上がった。3~4メートル上方から、アノマーロが鋏を構えて落下してくる。

 

 咄嗟に、アーサーは地面を転がる。先ほどまで彼がいた場所へ鋭い鋏が振り下ろされ、ヒヤリとさせられた。

 瞬時にレッグホルスターからごつい軍用トマホークを引き抜くと、その刃をアノマーロの蝕肢へ叩き込んだ。

 

 鍛え上げられた膂力で放たれた一撃は、狙い誤らず脆い関節部へ直撃し、一見頑丈そうな触肢を断ち切る。

 

 「うぜぇんだよッ!!」

 

 九九式小銃を、絶叫する巨大サソリに向けて発砲する。軽い反動とともに放たれた7.7ミリ弾が外殻の一部を吹き飛ばしたが、まだ足りない。

 痛みに悶えながらも、小癪な敵を排除しようと尻尾を突き出そうとするが、素早くコッキングしたアーサーの第2射と部下たちの集中射撃で力尽きた。

 

 「銃が効かない…ってわけじゃないが、タフな奴だぜ。連射できる小銃が欲しいな」

 

 「軽機も最低5発は食らわせないとダメっぽいです」

 

 アエラとそんなやり取りを交わしている間にも、また1体のアノマーロがDP-28の集中射撃を浴びる。

 猛速で飛来する7.7ミリ弾が外殻を次々と抉り飛ばされるが、バースト射撃1回では斃れない。すかさず第2連射を撃ち込み、沈黙させた。

 外殻自体は7.7ミリ弾で貫通できるが、生命力が高いせいか、簡単には死なないようだ。

 

 「おいジェフ!あそこにサソリ共が溜まってる!お前たちで吹っ飛ばせ!」

 

 「了解!」

 

 数匹のアノマーロが窪みに陣取っているのを確認したアエラが、対戦車分隊の分隊長に指示を飛ばす。

 ジェフと呼ばれたヒト族の分隊長が九九式小銃を構え、部下と共に前進していく。

 

 ロ連海兵隊・陸軍の小隊は、3個歩兵分隊と1個対戦車分隊で構成されている。

 後者は小銃や軽機、小銃擲弾の他に対戦車兵器を装備しており、敵戦車と随伴歩兵への対処を行う。

 

 対戦車分隊各員が自衛用の小銃やサブマシンガンをスリングで肩に提げ、背負っている箱を開ると、丸っこい弾頭を装着した全長1メートルほどの鋼管のようなものを取り出した。

 パンツァーファウスト75(SE)――鉄血製対戦車擲弾発射器の重桜軍仕様だ。普通は使い捨ての消耗品だが、貧乏性な重桜軍上層部の要望により、その場で再装填できるよう改良が施され、兵員は予備弾頭を持っていくことになっている。

 

 「後方の安全よし!」

 

 フロントサイトを起こし、肩へ担ぐようにパンツァーファウストを構える隊員たちは、後ろに誰もいないことを確認した上で引き金を引いた。

 バックブラストを噴出させて放たれた直径50ミリの弾頭が放物線を描いて飛翔し、次々とアノマーロが潜む窪みへ落下する。

 

 胴体に命中した成形炸薬弾頭が炸裂し、高温高圧のジェットが外殻を貫通し、内部へ吹き込んだ。

 外殻に守られていた組織がメタルジェットにより焼き尽くされ、胴体が木端微塵に爆ぜ、脚や触肢、組織片が八方に飛び散る。

 周囲へ落ちた弾頭も複数の破片と爆風を撒き散らし、直撃を免れた個体を傷つけた。

 

 更に、歩兵の何人かがM7(SE)小銃擲弾を一斉に撃ち放ち、複数のアノマーロを爆炎で包み、体液や外殻の残骸を舞い上げる。

 

 「むぅ…燃料食らいの戦車部隊はまだ来ないか?」

 

 「まだのようですが…五式とお姫様方の艦載機が援護に来てくれましたよ。戦車揚陸艦も上陸間際ですね」

 

 歩兵に遅れ、後続の特大発動艇から漆黒の巨人が降りてきた。

 旧ロウリア王国との戦争でも活躍したパワードアーマー――五式機動装甲服だ。今回は防御力の高い魔物も相手にできるよう、MG151 15ミリ機関砲を両腕に1門ずつ取り付け、背部の弾薬嚢にはその弾薬を各門500発積んでいる。

 人間らしい軽やかな動きで砂浜に降り立った五式は、すぐさま両腕の15ミリ機関砲をアノマーロに向けて発砲する。

 

 先ほどまで重機関銃が放っていた12.7ミリ弾以上の威力を誇る15ミリ弾は、命中するやアノマーロの巨体を弾けさせた。外殻を組織や内臓諸共抉り飛ばし、触肢の先端にある頑丈な鋏を砕き、瞬時に生命を奪っていく。

 さらには、巨体からは想像もつかない機動力で肉薄し、鋼鉄の拳を叩きつけ、全重を掛けて踏みつけて潰す好戦的な装着者――五式に身を預ける搭乗員の総称。着る…というよりは搭乗する形なのにも関わらず機動装甲()という名称なのはなぜか、という疑問が小規模ながら囁かれている――もいた。

 

 隙を衝いて毒針を突き出すアノマーロもいるが、37ミリ対戦車砲のAPDS弾(距離500メートルでの貫徹力93ミリ)も耐える防御力を持った五式機動装甲服に効くわけがない。

 自慢の毒針は、突き立てられた瞬間にぽっきりと折れ、直後に五式に尾を掴まれ、地面に思い切り叩きつけられて潰された。

 

 「うおぉ…!こりゃあすげぇな!」

 

 「サソリ野郎が木っ端微塵だぜ!」

 

 機動装甲服分隊の奮戦に、第1海兵師団の面々は歓声を上げた。

 

 そんな彼らの耳に、レシプロ機の轟音が聞こえてくる。

 少し前の準備攻撃にて活躍したDo335A-12"プファイル"と、小型空母から発艦した"流星"とTBF"アベンジャー"が爆装を施してやってきたのだ。

 

 なお、Do335には500キロ1発、250キロ4発、M-13B 8発を積載し、"流星"と"アベンジャー"にはそれぞれ四式八十番三号爆弾1発とM19ナパーム弾4発を抱えていた。

 

 後者二機種をあっさりと置き去りにし、低空へ殺到したDo335が、次々と爆撃を開始する。

 胴体と両翼から離れた爆弾が次々と炸裂し、アノマーロたちが絶叫を上げる間もなく爆炎に呑み込まれた。

 第2海兵師団の面々は、自分たちの目の前に炎の壁が出現したかのような錯覚を覚えた。

 

 一航過したDo335の群れはそれだけで飽き足らず、反転して今度は両翼のM-13B 132ミリロケット弾を一斉に発射する。

 

 これはBM-13B"カチューシャⅡ"に使われているものと同じ、直径132ミリ、全長1930ミリの大型ロケット弾だ。

 最大射程9キロ、飛翔速度時速1278キロの性能を持ち、前型のM-13よりも弾道の直進性や炸薬量で優れている。

 

 HVAR 5インチロケット弾よりも性能面で優れていると判断されており、重桜へ同兵器の売り込みを行っていたユニオンの技術者らは、歯軋りをして悔しがったという。

 

 細長い弾体が突き刺さった巨大サソリが一瞬で細切れになり、至近距離で着弾したロケット弾の余波が吹き飛ばした。

 追加武装を使い切ったDo335は、プロペラスピナーと両翼の23ミリ機関砲、機首の20ミリ機関砲で機銃掃射を始め、砂浜中にアノマーロの残骸をばら撒いていく。

 

 一方、"流星"とTBF"アベンジャー"は比較的後方の区域を目標に、水平爆撃を行っている。

 三号爆弾から撒き散らされた無数の子弾が複数のアノマーロを穴だらけにし、油脂を満載したM19があちこちに落下して形成された火の海で絶叫を上げさせた。

 

 「う~ん。正しく地獄のような光景だ」

 

 「まったくですな」

 

 火の海で藻掻くアノマーロを見ながら、アーサーはそんな感想を漏らし、アエラもそれに同意した。

 

 その時、やっとビーチングしたMFP typeDが大きな音を立てて砂浜に乗り上げ、前方の昇降扉が開かれる。

 履帯を軋らせながら現れたA41"センチュリオン"Mk.1(SE)が、海兵隊員たちの間をすり抜け、前方へ躍り出た。

 

 

 





 閲覧ありがとうございました。

 この世界線のセンチュリオンは120ミリ砲を載せられそうですねぇ!将来的にオリファントみたいにするのもアリかも?
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