白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 久しぶりの投稿です。そろそろ切り上げてムー編に行かないと…。

 作者のYoutube
 (https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg)


【外伝1⃣】第1海兵師団の初陣④

 海兵隊第1師団が上陸を開始し、砂浜に巣食うアノマーロの大群を粗方殲滅したとき、島のほぼ中央へ聳える山の麓には、明らかに人工物だと分かる石造りの遺跡が、山肌から覗いていた。

 外壁を構成する石の繋ぎ目は殆ど目立たず、石材の大きさも均一であり、長い年月をかけて苔や蔓がこびり付いているため分かり辛いものの、表面も比較的滑らかだ。

 この世界に存在する殆どの文明では、このような高度な建造物を造るのは不可能だろう。

 

 木々で覆われ、日の光が殆ど届かない遺跡の入り口の中から、獣の唸る声と巨大な足音が聞こえてきた。

 

 暫し間を置いて、禍々しい姿をした二種の生物が姿を現す。

 一体は、全長5メートル、全高2メートル少しの巨躯を持つ、狼をそのまま巨大化させたかのような外観の生物だ。

 その額には角が生えており、背中には退化している翼もある。

 

 もう一体は、若干前屈みな体勢のオークを思わせる巨体を持った、二足歩行の生物だ。

 しかし、その身体は余すところなく機械部品で覆われており、一見血の通った生物には見えない。長いドレッドヘアを思わせる太く長い毛のようなものが後頭部から無数に生え、赤く光る4つの義眼と突き出した下顎が特徴的である。

 両腕には機関砲らしきものが装備されており、明らかに人の手が加えられたものだということが伝わってくる。

 

 前者は魔獣"ゴウルアス"、後者は機甲生命体"ドレッド・オズ"。いずれも、魔帝の手になる生物兵器だ。

 高コストの魔王ノスグーラよりも廉価な陸戦兵器を目指して開発されたこの二種類の生物兵器は、遺跡の防衛のためそれぞれ1000体が配備されているのだ。

 

 もう少し多い方がいいのではと思うが、他種族を見下しがちな光翼人は、これだけで十分だと判断したようだ。

 

 二種類の狂獣は、涎を撒き散らしながら猛速で駆け出し、長い封印から覚めた悦びを体現しているかのように咆哮を上げる。

 地の底から湧き上がるような、悍ましい声音で目覚めの一鳴きをした生物兵器群は、獲物を求めて我先にと駆け出して行った。

 

 

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 「設営隊は、いい仕事をしてくれるな」

 

 アノマーロが駆逐された海岸に建てられる建造物を前に、モイジはそう呟いた。

 

 第1海兵師団所属の第1海兵設営団は、パワーショベルやブルドーザーといった重機、六式強化作業服を駆使し、砂地を掘り下げ、セメントを流し込んで土台を作ると、その上にモルタルの建物を建てていく。

 物資の集積場、車両置き場、防御陣地、そして飛行場の設営工事も行っている。

 

 「流石に、毎日野営は気が滅入る。簡易とはいえベッドで横になって休みたいものだ」

 

 「隊員のコンディションにも影響しますからね。個人的に、入浴できるというのが一番ありがたいです」

 

 モイジとカーミラが言葉を交わす前では、貯水タンクやポンプ、水道管、濾過装置が積み込まれた三式六輪自動貨車が、作業現場に次々と足を運んでいる。

 別の三式は、室外機を大量に運んでいた。

 

 ここは島嶼調査の前哨基地となり、海兵隊撤退後はロ連陸軍の師団を常駐させることになっているため、かなり大規模な施設が建設される予定だ。

 

 「陣地防衛用の火砲はどうだ?」

 

 「はい。砲陣地は粗方完成しています」

 

 若干掘り下げられ、コンクリートで固められた陣地には、1個砲兵大隊64門の122ミリ加農砲が並べられている。

 長大な砲身を持ち上げている様は、何とも頼もしい光景である。

 

 「結構だ。よし、斥候を放って内陸部を偵察させよう」

 

 「分かりました、人選を進めておきます」

 

 《烏の巣》から派遣された艦隊に所属する空母より艦上攻撃機Do335A12"プファイル"、"天山"、TBF"アベンジャー"が発艦し、内陸部の警戒に当たっているが、如何にKAN-SENが操作する艦載機とて、上空から密林に潜む魔物を見つけるのは容易ではない。

 歩兵1個小隊、装甲車と兵員輸送車数両で斥候部隊を編成し、進軍ルートの偵察に当たらせる予定だった。

 

 「押せぇッ!根性見せろぉッ!!」

 

 「「「うおぉぉぉ…ッ!!」」」

 

 砂の粒子が思いの他細かく、四式・三式の車輪が浜へ埋まり、スタックしてしまったため、付近の隊員が総出で車体を押していた。

 彼らの軍靴にも砂が入り込み、足裏のシャリシャリとした感触が不快に感じるが、そう言ってはいられない。

 

 「うーむ…。戦車と同じ装軌式の兵員輸送車が必要だな…」

 

 「師団長!上空哨戒中の『信濃』機より連絡!陣地前方100キロ地点へ土煙多数!」

 

 直後、第1師団の通信参謀が報告を上げた。

 

 「何?魔物か?」

 

 「いえ、詳しくは…。ですが、報告によると土煙はかなりの速度でこちらに向かっているようで…」

 

 数瞬、モイジは考えを巡らせたが、彼はこれが魔物だと判断する。

 こちらへ一直線に向かっていることから考えて、上陸した第2師団の殲滅を目的に行動している可能性が高い。魔帝が遺した兵器か何かだろうか。

 

 「通信参謀、『信濃』機に連絡して奴らの正確な座標を突き止め、砲兵隊に送れ!カーミラ、斥候を出すのは中止だ!全員に戦闘配置を下令しろ!」

 

 すぐさま、全ての部隊へ命令が伝わり、全員が得物を手に取って防御陣地へ身を潜め、車両へと乗り込む。

 

 砂浜から草地へ切り替わる地点に築かれた防御陣地は、全長3キロに渡って塹壕を掘ってモルタルで固め、更に戦車をダッグ・インさせるための穴も掘られている。

 如何に設営隊が優秀で、大量の重機があったとはいえ、半日未満でこの工事を成し遂げたことを踏まえれば、「いい仕事」どころでは済まない完成度である。

 

 小銃や軽機、パンツァーファウストを持った隊員は塹壕に身を潜めて得物を構え、迫撃砲を扱う者はモルタル整備されていない急造の蛸壺へ砲を据えて発射準備を整える。

 戦車兵は築かれた陣地に車両をダッグ・インさせて待ち構え、四式・三式は搭載されているDP-28軽機やDshk38を構える。

 

 「モイジ師団長」

 

 「ん?レナウン殿、何か?」

 

 部隊が戦闘準備を整えていく様を確認し、自分も得物を確認していたところ、モイジはKAN-SEN『レナウン』に呼び止められた。

 手にはタブレット端末を持っている。民間に出回っているものと似ているが、頑丈さではそれらとは比べ物にならない、軍用の一品だ。

 

 「本艦隊の旗艦『ネルソン』より、空爆と艦砲射撃は必要か、とのことです。座標は把握してますから、今すぐにでも可能ですが…」

 

 「おぉ!是非ともお願いいたします!ただし、誤射は勘弁願いますよ?」

 

 一応、敵との距離は何十キロも離れているため、高練度を誇るKAN-SENたちからすれば、誤射の可能性は万に一つもない。目を瞑って撃ってもあり得ない。

 それでも、艦砲射撃の威力を目の当たりにした彼は、それが自分たちに向けられるのを何よりも恐れていた。

 

 「それで…航空偵察では、どのような敵なのかはわかりませんか?」

 

 「はい。密林を移動しているようで…」

 

 タブレットを弄り、艦隊へ支援要請を送りながら、モイジに応えるレナウン。

 

 直後、頭上からレシプロエンジンの轟音が聞こえてくる。

 爆装したDo335艦上戦闘攻撃機隊が先陣を切り、胴体下と両翼から500キロ爆弾と250キロ爆弾を次々と投下した。

 続いて、天山、アベンジャーの水平爆撃も行われる。

 

 森林の只中へ次々と爆炎が沸き立ち、火が付き炭化した樹木に混じって、何やら黒っぽい影が吹き飛ぶ様が、遠巻きに確認できたが、敵の進撃は止まらない。

 

 「モイジ師団長、艦砲射撃を開始します」

 

 レナウンが報告を上げた直後、彼らの後方…つまり海側から、遠雷を思わせる砲声が聞こえた。

 列車が頭上を通過するような不安になる音を響かせながら飛翔した戦艦の巨弾が、次々と着弾していく。

 

 空爆の時よりも更に巨大な爆炎が次々と噴き上がる。僅かに遅れて巡洋艦の中口径弾が落下し、小規模ながら遥かに多い黒煙を沸き立たせた。

 空爆に続くこの大破壊に、海兵隊員は思わず全滅か…との期待を抱く。

 

 『随分少なくなった…しかし、まだ凶暴な気配がある…』

 

 「まだか…」

 

 Do335へ跨り、攻撃兼観測に従事していたKAN-SEN『信濃』の連絡に、モイジは歯噛みする。

 しかしそれも一瞬のこと。直ぐに砲兵参謀を呼び出し、射撃命令を発した。

 

 「加農砲、撃てっ!!」

 

 直後、砲兵陣地に展開されていた122ミリ加農砲が一斉に火を噴く。

 122ミリ砲と聞けば小口径というイメージが出てくるだろうが、それはあくまで軍艦基準。陸戦における122ミリ砲は、十分大口径だ。

 

 1個砲兵大隊64門から一斉に放たれた122ミリ榴弾は、未だ収まらない艦砲射撃と空爆によって構成された爆炎の前方へ、新たな炎を上げさせる。

 砲兵隊は奮闘し、1分間に3~4発の発射速度で次々と砲弾を送り込んでいく。

 

 一応弾着観測のための艦載機が飛んでいるが、森林を進む敵の姿を正確に把握しているわけではない。

 そのため、「そこら辺にいるな」程度の感覚で照準を行い、砲弾をばら撒いているだけである。命中しているのかどうかは不明だ。

 お陰で、広範囲に渡って緑が耕され、煙が一帯を支配していた。

 

 「全戦車部隊に命令。突発戦闘に備えよ」

 

 命令一下、第1師団に所属するすべてのA41A2"センチュリオン"が、APDS弾が込められた17ポンド砲を爆炎に向ける。

 910メートルで192ミリの均質圧延鋼を貫徹するAPDS弾なら、大抵の相手を蹴散らすことができるだろう。

 

 そして、戦闘が開始された直後、漸く敵の姿が露になった。

 

 「何だありゃあ…?」

 

 海岸に近づくにつれ草木が薄くなっていったことで判明した相手の正体を双眼鏡越しに見た海兵隊員の多くが、その言葉を漏らした。

 

 現れたのは2種類の巨体。

 四足歩行の狼を思わせる、小さな翼と角が生えた生物。片方はオークを思わせる、長い髪のようなものを後頭部から生やした、二足歩行の機械的な生物。

 

 どちらとも、何とも禍々しい印象を受ける。

 人によってはトラウマになりそうな外観だ。爆炎に撫でられた跡や、顔や胴体の一部が欠損し、体液を流しながら迫る様も、その外観に拍車を掛ける。

 

 『敵生物との距離、およそ10キロ!』

 

 「…巨大狼は兎も角、あのオーク擬きは生物なのか…?まぁいい。砲兵隊、敵のスピードは速い。よく狙えよ!距離5キロを切ったら徹甲榴弾に切り替えろ!」

 

 122ミリ加農砲は、榴弾を使用した長距離砲撃など、榴弾砲的な扱いがなされる代物だが、徹甲榴弾を使用した戦車等の装甲目標に対する直射…つまり対戦車砲としての運用も可能だ。

 

 敵を目視でき、距離が近くなってきたため、ここからは徹甲榴弾を用いることで、対戦車砲として運用させた方が効果的だと判断した。

 

 そうしている間に、2種の怪物はどんどん距離を縮めてくる。少なくとも、センチュリオン戦車よりかは機動力が高いことが伺えた。

 

 122ミリ加農砲が尚も火を噴き、疾走する魔帝製陸戦兵器の前後左右に弾着の土煙が沸くが、機動力の高い相手に命中弾が中々出ず、至近弾の弾片は頑丈らしい敵の外殻に弾かれる。

 それでも、超至近距離で炸裂した122ミリ榴弾によって前足を捥がれたゴウルアスがバランスを崩して転倒し、運悪く胸部へ直撃を喰らったドレッド・オズの上半身が消え去った。

 

 迫撃砲も撃っているのだが、口径が小さく、殺傷範囲も狭いためか、脱落する敵はいない。

 残りは同胞の脱落に目もくれずに突進してくる。

 

 距離5キロを切り、砲兵隊の射撃が止む。弾種を徹甲榴弾に切り替え、照準をやり直すためだ。

 その隙を埋めようと迫撃砲の砲撃が着弾していくが、結果は同じだ。

 

 援護のため、Do335が低空まで舞い降りる。

 プロペラ・スピナーと両翼から23ミリ弾発射を報せる断続的な閃光が走り、パンター中戦車やティーガー重戦車の砲塔天蓋を容易く叩き割る凶弾の雨を降らせた。

 

 ゴウルアスの背面を23ミリ弾が抉り、外殻や翼の肉片を舞い上げ、痛みに堪えかねたかのように絶叫を上げて倒れ伏す。

 ドレッド・オズの1体が被弾の度に部品や体液を撒き散らし、激痛のあまり被弾箇所を押さえながらも突撃を続けるが、頑丈なことを察した空母KAN-SENが機銃掃射を集中した。ゴウルアスより頑丈とはいえ、無限に被弾を耐えきれるわけがなく、顔も胴も四肢も穴だらけになって横たわる。

 

 「装甲服中隊、前へ!」

 

 モイジの指示と共に、待機していた1個中隊44体の五式機動装甲服が、陣地から飛び出した。

 陸軍・海兵隊の師団には1個装甲服中隊が配備されている。

 

 (頼むぞ…)

 

 陸上選手を思わせる軽やかな動作で戦場を駆ける五式を見ながらモイジは内心で呟くと、砲兵部隊へ弾種切り替え、測的・照準の催促と、戦車部隊への戦闘準備を命じるのだった。





 閲覧ありがとうございます。

 いっそ次回からムー編行って、本編を更新していく合間に外伝を進めようと思ってます。
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