白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 おはようございます。夜叉烏です。

 大丈夫じゃない、大問題だ(絶望)

 作者のYouTube
 (https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos)


こんな面子で大丈夫か?

 

 「ロデニウス連邦…はい。ニュースでは聞きましたが…」

 

 外交官から話を聞いた、話題に上がっていた国家を反芻しつつ、マイラスはそう応えた。

 『世界のニュース』にて、ロデニウス三国が統一された、『第四文明圏』…通称FATOの設立は聞いていたが、どこか遠い所で起きた、自分たちには関係のない出来事としか思っていなかった。

 

 「うむ。2日前、彼らの船舶が我が国の領海に侵入し臨検したんだが、ロデニウス連邦…これからはロ連と呼ぶが、その船に乗っていた特使が国交を開設したいと申し出たんだ」

 

 「はぁ。しかし、それが自分とどういう関係が…?」

 

 一技術士官に過ぎないマイラスを呼び出すような要件とは思えず、聞き返すマイラス。

 

 「その船なんだが…機械動力船だったんだ。帆もないし、魔力反応もなかった」

 

 「第三文明圏外に機械動力船…?」

 

 僅かな驚きを以て、マイラスは外交官の言葉に返した。

 

 「驚くのはまだ早い。会談の日時を指定したら、飛行許可を申請してきたんだ。ワイバーンで来るのかと尋ねたんだが…飛行機械で来ると言われたんだよ」

 

 「え…飛行機械で、ですか!?」

 

 思わず、驚愕の声が出てしまったマイラス。

 ムーとミリシアル以外で、飛行機械を実用化している国はない。

 

 同時に、どのような機体で来るのかという個人的興味が湧き出る。

 "ラ・カオス"のような大型機の可能性が高いと思うが、あのような大型の飛行機械を文明圏外の国家が開発したとは考えにくい。

 

 「そこでなんだが…君に外交官に扮してもらって、彼らの技術力を探って欲しいんだ。此方の技術を見せるのも構わない」

 

 「…分かりました。喜んで引き受けさせていただきます」

 

 個人的に気になっていたこともあり、マイラスはこの件を引き受けた。

 彼としても、未知の国の技術を知れるのはいい機会だと考えたのだ。

 

 「では決まりだな。会談は5日後の午前10時半から。よろしく頼んだぞ」

 

 

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 会談当日、FATO軍総司令兼外交官を担当する黒烏、秘書艦エクセター、どうしてもと同行してきたKAN-SEN『準鷹』、『デューク・オブ・ヨーク』、その暴走止めとして『飛鷹』、『ハウ』を乗せた四式輸送機旅客型――両翼下に増槽を取り付けることで無理やり航続距離を1万キロ以上まで伸ばした――、爆弾倉を廃し23ミリ機関砲の銃塔と弾薬を極限まで搭載した四式陸攻"連山"の編隊援護機兼地上掃射機仕様1個小隊4機、Do335A12を並列に繋げた双子機Do335Zの1個小隊4機だ。

 

 …配備数の少ない四式陸攻の改造機とDo335の双子機仕様を引き連れるとは、戦争でも始めるつもりか。

 

 『え~~ご搭乗の皆様、間もなくムーの領空へ侵入致します。出迎えの戦闘機が来るらしいので、驚かずに…いや驚くわけないか。高度を下げますので、今暫くお待ちくださいよ~っと』

 

 やけに適当な機長のアナウンスを聞きながら、黒烏は暇つぶしのため持ってきたタブレット端末を見る。

 一応、高高度へ有線の通信気球を複数上げているため、ネット環境は繋がっている。

 

 四式輸送機は民間航空会社でも採用されているもので、清潔な機内は完全与圧され、サービスの設備も充実しているため、今回のような長距離飛行でも体の負担は少ない。

 

 「なんて適当さだよ機長さん…」

 

 どこぞの銀髪怠慢侍を思わせる機長のアナウンスに一抹の不安を覚えたのか、飛鷹が苦い顔をする。

 いざとなればKAN-SENの特権で空も飛べるのだが…。

 

 (…これでも、《烏の巣》に駐留する空軍の総司令なんですよね)

 

 呆れたように心中で機長の経歴を確認するエクセター。

 

 彼女たちの乗る機体の操縦を担当するのは、第142・143爆撃飛行隊、第26・27戦闘飛行隊を纏める重桜空軍葉池江利徒(はいけ えりと)少将。

 戦闘機パイロット、陸攻パイロット、空挺隊員と戦場を転々としてきた男。

 

 …何で少将自ら操縦桿を握ってるんだか。

 まぁ、《烏の巣》に身を置く者からすれば、指揮官先頭は当たり前と言っていい。

 

 (それに…確か()()()()って…重桜人数百万に1人の素質って聞いたけど、人材いすぎでしょう!?)

 

 音楽を聴き始め、若干リズムに乗っている黒烏を慈しむように眺める姉を気にしながら、ハウも葉池の経歴に舌を巻いていた。

 出発前の挨拶で、彼の瞳に映るパターン…『カミ』に最も近い人間であることを示す証を見た彼女は、その時のことを思い出しながら、稀有な人材の層の厚さに声が出ない。

 

 黒髪短髪・グラサン・黒スーツに白ワイシャツという、空軍の軍人にしてはかなりラフな格好で操縦桿を握る彼の姿を想像する。

 20代に見える彼も、年齢の割に意外とおじいちゃんなんだろうなぁ…などと勝手な妄想を抱いた。

 

 なお、人材の層の厚さの原因は、妹に対する過保護が売りの『カミ』が原因である。

 《烏の巣》はセイレーン大戦における最前線であったことも、精鋭を配置する理由の1つだったが。

 

 「……ん!?」

 

 突然、ガタリと備え付けの机を鳴らしながら腰を上げる黒烏。

 窓の外に映るものが、余程衝撃的だったのか。

 

 「指揮官殿…?」

 

 「指揮官、どうしたの?」

 

 エクセターと隼鷹が不思議がるのを横目に、黒烏は饅頭を呼ぶと、機長である葉池への伝言を頼む。

 暫し置いて、彼の声が与圧された客室へ響く。

 

 『はいはい元帥殿、何か御用ですかい?』

 

 「何で()()()がここにいるのよ?」

 

 窓の外を睨みながら黒烏が問う。

 若干の怒り、呆れ、困惑が見て取れる。

 

 『いや~何か知らんうちに乗り込んでいたようで。まぁ、害はなさそうなので許可した。護衛ってことでよろしくぅ』

 

 「適当…」

 

 苦々しい思いを抱いたように、黒烏は表情を歪めながら呟く。

 彼女の後ろに座る隼鷹が、黒烏を困らせる存在とは何事かと窓の外を覗いた。

 

 着かず離れずの位置に、飛行する四式陸攻の改造機。増設されまくった23ミリ機銃の銃座の内、尾部に位置する銃座に取り付く人影が、黒烏たちの乗る陸攻へしきりに手を振っている。

 

 「…あの機体と交信したいわ。直接話を聞く」

 

 『えぇ~面倒臭ぇ…いいよ』

 

 (((いいんかいッ!!)))

 

 気だるげな返答と共に拒否される…かと思いきや、最後の『いいよ』に全員――饅頭までも――がずっこけ、キャラを忘れて内心でそんなことを叫ぶ。

 

 『はい、此方元帥親衛隊の1号機です~』

 

 問題の人物を乗せた陸攻の機長が、能天気な声音で無線越しに報告してくる。

 

 「何であの娘が…武宮大佐が乗っているの?」

 

 そう。転移騒動以前から、何かと黒烏やKAN-SENたちを性的に狙ってきている陸軍の幹部。

 鋏を持って戦場を駆け抜け、得物と身体を血に染めるサイコパス兼筋金入りの同性愛者。何気に彼女も()()()()()、《烏の巣》でも有数の実力者で、KAN-SEN相手に互角にやり合う人外だ。

 

 『そりゃあ、鋏をチラつかせながら乗せてって言われてしまったもんで。まぁ、器用なものでして尾部銃手を担ってもらってます。…あぁ、出発してすぐに野良ワイバーンに絡まれて堕としたでしょう?あれやったの大佐ちゃんですよ』

 

 本気で頭を抱える黒烏。

 恐喝染みた行動で、FATO軍元帥の護衛機に搭乗した行動は軍法会議では済まないレベルだ。最悪、彼女の上司である栗林がクビを切られる……酷ければ腹を切る(物理)レベルである。

 

 だが、彼らは混沌の極みを具現化させた《烏の巣》に所属する、『やるときはやる、それ以外は自由』がモットーの軍隊出身。

 セイレーン大戦では過酷な最前線となったこともあり、多少の荒事では危険・理不尽とは感じない。

 

 美少女副官と幹部たちを常時傍に侍らせ、「ハーレムだぁ~~!!」と騒いでいる栗林が、軽い気持ちでお願いした武宮に二つ返事でOKを出す光景が容易に想像でき、何度溜息をついてもモヤモヤが晴れない。

 

 『あれ、黒烏中将…あ、今は元帥か!お~い!元気~~~~!?!?』

 

 『あ、ヤベッ。機内アナウンスONにしたままやんけ。…おい大佐ちゃん!うるせぇって!!こっちまで響いてるぞ、どんな声帯してやがるッ!?』

 

 尾部銃座に座っている武宮の声が、はっきりと操縦席のレシーバーまで届いている。黒烏や他の面子も思わず眉を顰める声量だ。

 

 『あ~こっちも耳痛くなってきた。おいチビナス、そのお嬢さんを黙らせとけ』

 

 面倒臭そうに葉池がその機長へ命ずる。ひよっこ(チビナス)扱いしている辺り、彼にとってはこの機長もまだまだのようだ。

 

 『あ~~!?葉池ちゃん!こんな美少女に向けて「黙れ」なんて言っちゃいけないんだよ!』

 

 『よ~し、気が変わったぞチビナス。衝撃と急減圧に備えろ』

 

 どうやら、武宮を黙らせる策を思いついたらしい。

 

 『俺が翼端をぶつけて尾部の銃座だけを機体から叩き落t…』

 

 『黙る!!黙りますッ!!』

 

 流石に、この高度から海のど真ん中へ叩き落されるのは嫌だったようで、即座に武宮はブンブンと残像が出るほど頷く――無線越しのやり取りのため、その姿は見えなかったが――と、そのまま静かになった。

 

 「フン。興が削がれた…」

 

 「ホントにやっちゃえばよかったのに」

 

 「「やめろお前等(やめてください2人とも)ッ!!」」

 

 黒烏を狙っている女の騒ぎが耳に障ったのか、デューク・オブ・ヨークと隼鷹が嘆息しながら愚痴り、見かねた2人のブレーキ役が声を荒げる。

 

 「はぁぁ~~~~…」

 

 黒烏は思った。

 果たして、この面子を連れて行って大丈夫だったのか?と…。

 

 「し、指揮官殿…?え…///」

 

 不安に駆られた黒烏は無意識に、隣に座るエクセターの頭を抱くことで精神安定を図るのだった。

 

 (あ…エクセター、シャンプー替えたんだ…)スンスン

 

 …不安に駆られ過ぎた影響なのか、少しばかり変態的な感想を心中で漏らしながら。

 急に黒烏の胸元へ抱かれたため、すっかり顔を真っ赤にしてしまったエクセターは、困惑と羞恥を覚えながらも、思わず口元を緩ませてしまう。

 

 その様を見ていた愛が重い勢(隼鷹)愛が重い勢予備軍(デューク・オブ・ヨーク)が、羨望・嫉妬(隼鷹はそれに加えて怒りと妬み)を含んだ視線を向けていたのだが、当の2人が気付くことはなかった。

 





 ま、まずい…前作でも問題だった『KAN-SENよりも人外な人間の主張が強すぎる問題』が出てきたぞ…!
 
 いや、これはこれで新鮮かな?KAN-SENが人間にビビるってのは。
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