こんにちは。夜叉烏です。
いよいよ接触ですが、マイラス君が驚くシーンは次回に回します。
作者のYouTube
(https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos)
『ふぁ~……まったく、ロデニウス連邦とかいったか?もう少し遅い時間に来いよ……』
ムーの首都防衛航空隊に配属されているとあるムーのパイロットは、欠伸を嚙み殺しながらまだ見ぬ文明圏外国の使節団へと恨み節を吐く。
首都防衛を担う航空隊の中では真っ先に先行量産型――絶対に採用させる、という意気込みにより、正式な量産許可が出されていないのにも関わらず先行量産機として20機を揃えていた――の最新鋭戦闘機"アナクス"を与えられ、現在は一撃離脱戦法の研究に余念がない部隊だ。
"マリン"等の複葉戦闘機の操縦に慣れた彼らは、"アナクス"の速度性能や急降下性能、パイロットに配慮された設計に惚れ込む傍ら、どうしても"マリン"に劣る旋回性能に手を焼かされた。
というのも、敵へ後ろに衝かれた際、"マリン"に乗っている時の癖で、水平旋回で回避してしまうことが多く、模擬空戦相手の"マリン"に簡単に背後を取られ、撃墜判定を与えてしまうのだ。
寧ろ、良好な急降下性能を利用して敵を振り切る方が良いと、マイラスや設計主任のグラディアから説明がなされ、それを反射的に行えるようになるまで訓練を施している最中だった。
操縦特性の違う機体に翻弄され、最新鋭機を与えられたのにも関わらず負け続けの部隊と揶揄され、心身共に疲弊しているところに、文明圏外国の使節が来るからと出迎えを頼まれ、少々不機嫌になっていた。
最新鋭機を見せびらかしたいという気持ちがあるのだろうが、ただ広告のために存在するだけの部隊に成り下がってしまった感を覚える。
「任務中だぞ、私語を慎め」
首都防空第1飛行戦隊所属の第1中隊長兼第1小隊長ジャルゲ・メラーヌ中尉が、恨み節を吐いたパイロット――メラーヌが直接指揮する小隊の2番機であるカール・ダッツ少尉を咎める。
首都の空を守る部隊なだけあって、皆腕のいいパイロットばかりだ。
『しかし中隊長。文明圏外国の特使が飛行機械で来るとは……』
「向こうが直接言ってきたらしい。間違いはないだろう」
文明圏外の国といえば、ムー基準で何百年も前の文明であり、飛行機械や鋼鉄製の軍艦、自動車は疎か、重工業の概念すらないイメージしか知らなかった彼らにすれば、上から伝えられた内容は懐疑的に映った。
気を取り直し、操縦桿を握り直す。
「うん…?」
前方空域に何かを見つけたメラーヌが疑問符を発した。
彼が見つけたのは、ゴマ粒ほどの大きさの黒点。背景に蒼空と雲が広がっている状態ではよく目立つ。
4つの小さめな点と、3つのやや大型のそれは急速に距離を詰め、飛行機の形を整えてくる。
「あれは…!おい、お前たちも見えてるな!?散会して編隊の横に付け!」
予想外の高速で接近してくる飛行機械に驚きつつも、即座に部下へ指示を飛ばす。
小隊4機が2機ずつのペアに分かれ、Uターン。
一旦未確認編隊を見逃し、その両脇に占位することで、監視とエスコートの任務を行うのだ。
しかし…。
「追いつけない…!?」
異形の飛行物体は、"アナクス"よりも優速だ。
小さめの、護衛の戦闘機と思われる機影は勿論、大型機にも追いつけない。あれほどまでに驚喜していた"アナクス"の速度性能を以てしてもだ。
いや、それ以上に……。
『デケェ……』
小隊3番機のビンズ・ゼルダ少尉の呟き通り、その飛行機械はあまりにも大きすぎた。
3機の大型機は、武装の有無を除けばほぼ同型機のようで、その全長は軽く30メートル越え、全幅に至っては40メートルを上回っている。
胴体と一体化した光翼配置の主翼には、『ラ・カオス』が搭載するものとは比べ物にならない4基の巨大な発動機が取り付けられており、尾部にはこれまた巨大な垂直尾翼が屹立していた。
まるで、空を飛ぶ鯨のようだ。
この機体の前では、ムーの『ラ・カオス』など子供の玩具同然である。
『小隊長!あのデカブツもそうですけど、護衛機も凄いですよ!』
小隊4番機を担当するシェリー・グスタフ少尉の指摘通り、護衛機も大きい……のは確かなのだが、それ以上に異形が過ぎる。
胴体と操縦席が2つ、繋ぎ合わせたかのように存在しており、各胴体の前後にプロペラが…つまり合計4つも装備されているのだ。
元は1つの機体を繋ぎ合わせたのか――そんな印象を抱く。胴体自体はほっそりとした感があり、如何にも速そうだ。
実際その通りであり、あの4発機を上回る速力を発揮している。"アナクス"とレースすれば、あっという間に置いてきぼりされるだろう。
(ロデ二ウス連邦……凄そうな国だな……)
そう、メラーヌは認識を改めた。
此方の速力に合わせて速度を落とすロデ二ウス連邦使節団の編隊を眺めながら、エスコートの任務を続けるのだった。
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「……よーし、その速度維持しろよ。
「了解」
四式輸送機の巡行速度では、ムーの戦闘機が追随できないことが分かったため、速度を300キロまで落とすよう葉池に指示された副操縦士が、スロットルを慎重に操作する。
彼らの機体に合わせ、護衛に就いていた陸攻とDo335Zも速度を落とし、足並みを揃える。
そんな中、輸送機の客室では黒烏たちが窓の外を覗き、迎えに来たムー軍機を観察していた。
「I-16そっくりね……単葉機を自国開発できる程度の技術はあるみたい」
単発単葉、密閉されたコクピット、引き込み脚の3要素を満たす、意外にも近代的な航空機を持つムーの技術力に、黒烏は素直に関心した。
「指揮官殿、これは……」
「えぇ。あまり油断はしない方が良さそうね……」
I-16のそっくりさんが主力と推察されるムー空軍。
それだけで軍事力を図れるわけがないが、技術的には格下だと予想される。
しかし、魔法技術で成り立っているこの世界において、唯一の科学文明だ。
それも、航空機を独力で開発・配備するレベルの技術力を持っている。技術的優位はロ連側にあるとはいえ、何気にムーはとんでもない偉業を成し遂げているのである。
「これは失敗できないわ……」
ムーは、この世界第2位の国力を持つ国家だ。
それだけに、政治的な発言力・影響力は強い。
ロ連がどれだけ強大な力を持っていようと、名立たるこの世界の列強からすれば新興国家に過ぎず、将来的にそれら国家と接触する際に舐められたり、足元を見られたりする可能性が高い。
この交渉に成功すれば、ムーとのコネクションが形成され、ロデ二ウス連邦の実力を保障してくれる存在を手に入れることができるのだ。
今後を考えれば、絶対に失敗できない。
(ここの人たちは良い人間かしら?もし指揮官に害をなすことがあるなら……)
「隼鷹?私たちは戦争をしに来たんじゃないのよ?」
危ない思考に耽っていた隼鷹の心中を察したのか、黒烏が咎めるように言った。
ローンや大鳳と並んで危険人物の対象になっている彼女に暴れられれば、無辜のムー国民どころか、世界からの信頼も失ってしまう。
「あ……う、うん。分かっているわよ指揮官……(指揮官に心を読まれた……フフフ)」
自分の考えていることを読まれたのがそれほど嬉しかったのか、彼女の口元は見るからに緩んだ。
「ほら、ヨークも抑えて。威嚇したまま対面するわけにはいかないんだから」
「フフフ……❤汝に仇成す存在を、この剣の錆にしてやろうと思ったまでよ……」
頬に片手を当てながら、剣の柄を軽く握っているデューク・オブ・ヨークにも牽制を入れる。
その様は何とも妖艶で美しいが、いざ黒烏の身に何かあれば、実行者その他を皆殺しにすることも厭わないだろう。
『そうそう!いざとなったら私が全部切り刻んで……あ❤げ❤る❤』
「死ね」「黙れ」「殺す」
『酷くない!?ねぇ酷くない!?』
先ほどまで黙っていた武宮が無線越しに軽口を叩いたが、黒烏、デューク・オブ・ヨーク、隼鷹から同時に容赦なく一蹴されたのだった。
武宮に自身の他、専属艦を性的に狙われている黒烏。
武宮に自らが
そんな3人にとり、馴れ馴れしさ前回な彼女の声は耳障りなことこの上ないものであった。
『えー、ご搭乗の皆様。間もなく降下し着陸態勢に入るので、さっさと席についてシートベルトをしやがれください』
相変わらず適当なアナウンスに従い、彼女らは大人しく席に着いたのだった。
大佐ちゃんの扱い……。