こんにちは。夜叉烏です。
マイラス君が壊れないかが心配だ。
※今作のムーは強化入れてます。
作者のYouTube
(https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos)
翌日、何とか昨夜の衝撃から立ち直ったマイラスにより、歴史資料館に案内された黒烏たち一行。
「あの…昨夜は本当に…」
「いえ…。元はと言えば騒がしくした私たちの責任ですから。謝罪すべきは此方の方です。誠に申し訳ございませんでした」
朝会ってから何度も謝罪された黒烏たちは、何度も頭を下げてくるマイラスを宥める。
実際、彼に落ち度など全くなかった――女性の部屋へノック無しで飛び込むのはいただけないが、状況を考えれば仕方のない行動である。
「は、はい。それでは…」
気を取り直したマイラスが、資料館案内を前に説明を始めた。
「実を言いますと、我々の先祖はこの世界の住人ではないのです」
「…と、言いますと?」
予想外の告白に、肩眉を吊り上げて僅かな驚きを露にする黒烏。
やっとムー側が驚かせることができたことに、マイラスは気が良くなった。
「我が国は元々別の世界にあったのですが、12000年前に大陸大転移が発生。ムー大陸全土がこの世界に飛ばされてきたのです。…他国の方々は誰も信じていただけませんでしたが。しかし、これは当時の公式記録に残っておりまして、紛うことなき真実なのです」
地球儀を回しながら説明していくマイラス。
「これが嘗てムーが存在した惑星――地球です。巨大な大陸の近くにある細長い列島は、嘗て我々の友好国だった『ヤムート』と呼ばれる国家ですが…恐らく、今頃は『アトランティス』に吸収されているでしょう」
「…失礼します」
マイラスの口から語られた事実の数々に僅かな動揺を覚えながらも、黒烏はタブレットを操作し、前世界の地図を表示させると、それをマイラス直下の机上へ置いた。
「こ、これは…地球…?」
「貴国がいた世界と同一…とは限りませんが、我々も異界から転移してきたのです。正確には、我が国の一部…ですが」
地球儀をそのまま平面にしたような地図――ムー大陸がないことを除けば、嘗てムーが存在した世界と瓜二つ――を見、絶句するマイラス。
黒烏は地図に描かれている重桜…ムーでいうヤムートを拡大させた。
「我々は重桜人…貴国でいうヤムートの民です。我々の世界ではとある脅威に対抗すべく、世界規模の大同盟が存在しており、重桜もそれに参加していました。そして、人類反抗の要となった拠点が…」
タッチパネルを弄り、重桜帝都から1200キロ南にある小島――硫黄島を拡大表示させる。
「硫黄島です。内外では通称《烏の巣》と呼ばれております。私共はそこで任務に就いていたところ、転移に巻き込まれてしまったのです」
昨日から驚愕しっぱなしだったマイラスだったが、今回はそれ以上に驚いた。
10000年以上前に離れ離れになった友好国の末裔――ムーがいた世界のヤムート人そのものとは限らないが――と、このような形で再開することになろうとは…。
「先ほどのお話にあったアトランティスですが、恐らくはこの南極大陸のことでしょう。貴国が転移した影響で惑星の地軸がずれてしまい、気候変動が発生、人の住めない氷の大地と化し滅びたのかと。私たちの世界にも、大昔に海底に沈んだ大陸があった…という伝説がありますし、もしかしたら…」
「いや…まさか…このような歴史的発見の場に立ち会えるとは…。個人的には、貴女方とは仲良くしていきたいですね」
驚愕により放心状態だったマイラスだが、漸くはにかんだ笑顔を浮かべたのだった。
――その後、マイラスにより歴史資料館を案内されながら、この世界におけるムーの歴史が説明された。
転移直後は無論混乱に見舞われ、覇権国家による理不尽な侵略、魔法文明に対する劣勢、科学文明国家としての出発、この世界第二位の国家になるまでの道のり。
転移直後、理不尽に侵略戦争を仕掛けられ、領土も良いように削られたにも拘わらず、たった一国で地道に機械文明を築き上げ、他種族を差別なく受け入れ、世界二位の大国となった今でも嘗ての報復・領土回復に走らないムーに、黒烏は素直に関心していた。
この世界の洗礼を浴びてきた身からすれば、無理もないことである。
(ムーって聖人しかいないのかしら?)
そんなマイラスに応えるように、黒烏も前世界で人類の9割が死滅した戦争、それからの復興、セイレーン大戦の勃発と終結、セイレーンに対抗するための兵器――KAN-SENの存在、黒烏の出自もマイラスが理解できる程度にかみ砕いて説明した。
しかし、それでもマイラスにとっては壮大に過ぎる話だ。
「黒烏さんがセイレーンの手で造られた個体…それに、エクセターさんも飛鷹さんも、貴女方全員がKAN-SENと呼ばれる兵器…だと?」
「はい。…私の出自は兎も角、
「え、えぇ…。申し訳ございませんが、やはり…」
それはそうである。マイラスの…というよりこの世の常識から外れている存在だ。
これを真面に受ける者がいる方がおかしい。いたとすれば、そいつは相当な脳内お花畑だろう。
一方、黒烏が元々セイレーンの手になる人造兵器であり、色々あって人類に与し戦っていることに関しては、それほど疑われるようなことはなかった。
『最初は敵だったが寝返って人類の味方に就いた』と、比較的簡単に解釈できたためだろう。
「確か、午後は貴国の海軍を見学させていただけるとか。その際に、証明ができると思いますよ」
「はぁ…」
混乱する頭で何とか応えると、資料館近くの高級レストランへ案内を始めた。
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ムー海軍基地に到着した一行。
マイラスがまず案内したのは、記念艦として係留・保存されている古臭い戦艦だった。
「これはラ・カサミ戦艦のネームシップ、『ラ・カサミ』です。本格的な戦争に参加したことはありませんが、海賊に対する示威行動、殲滅作戦に投入され、シーレーンの確保に貢献しました。その戦果を称え、後継艦の竣工とともに予備役に編入、その後に博物館へ改装され保存されています」
敷島型戦艦『三笠』に瓜二つの、所謂"前弩級戦艦"と呼ばれる艦だ。
40口径30.5センチ連装砲を前後に2基、他に口径15センチの補助砲が備えられ、唯一『三笠』との外見的差異として8ミリ機銃が多数装備されている。
航空機による対艦攻撃など攻撃されていない『三笠』と違い、ワイバーンという航空戦力が存在したためだろう。
「「「三笠…」」」
「ミカサ…?」
異口同音に独り言ちた黒烏たちに、マイラスが怪訝な表情を向ける。
「はい。KAN-SENの1人に『三笠』と呼ばれる戦艦がいるのですが、それにあまりにも似ているものでして。彼女はKAN-SENとしてはほぼ引退しておりまして、現在はアドバイザー的な立ち位置におります。…飛鷹、まさか三笠が無断で駆け付けた、とかはないわよね?」
「流石にないだろ、指揮官」
(『ラ・カサミ』に似た戦艦が引退している…やっぱりロ連は高性能な戦艦を持っているんだ。
内心でそう呟くマイラス。ムーを圧倒する航空技術を持っているだけあって、高性能な軍艦を建造する技術を持っているようだ。
――やがて、ムー海軍艦艇が停泊している広大な軍港へと到着した。
黒烏らからすれば古さが残る時代遅れな艦が大勢を占めるが、その中でも目を引く巨艦が鎮座している。
ラ・カサミ級の45口径30.5センチ砲よりも明らかに太く、長い砲身が三連装砲に収められ、それが前後に2基ずつ背負い式に搭載されていた。
中甲板と第2、第3砲塔上には90ミリクラスと思われる露天砲架の高角砲のようなものが据えられている。12.7ミリクラスの機銃座も多数あるようだ。
外見は、オーストリア・ハンガリー帝国のテゲトフ級戦艦にそっくりだ。全長は170メートル程度と、それよりも遥かに長いが。
ラ・カサミ級よりも遥かに洗練された、近代的な艦様だった。
「こちら、ムー海軍の最新鋭戦艦ラ・トゲフ級の1番艦、『ラ・トゲフ』になります。武装は45口径33センチ三連装砲4基12門、50口径89ミリ単装速射砲12基、13.9ミリ四連装高角機銃8基、同連装高角機銃4基。全長180メートル、基準排水量27900トン、最高速力は24ノットです」
さぁ、どうだ――ムー海軍最新鋭戦艦の雄姿を目の当たりにしたロ連使節団の反応を待った。
ここまでほとんど一方的に驚くばかりだったマイラス。少しでもロ連側を驚かせたい…そんな一心だった。
「素晴らしい戦艦です。決して、世辞などではなく」
「それはそれは。ありがとうございます」
どうやら本当に素晴らしい艦だと思ってくれているらしい…黒烏の表情や声音からそう判断したマイラスは、どこか安心していた。
ここからが本番。ロ連がどのような戦艦を何隻配備しているのか…それを聞き出すのだ。
「差し支えなければ、貴国はどのような戦艦を保有しているのかをお教え願いませんか?」
「そう、ですね。50隻…は超えていますよ」
驚愕するマイラス。
ムー海軍は、ラ・カサミ級の後継として建造されたラ・トゲフ級8隻(現在4隻竣工済み・完熟訓練中)を揃える計画を実施しており、これが完遂されれば、ミリシアル帝国の艦隊とも渡り合えると言われていた。
だが、少なくとも『ラ・カサミ級が退役している程度に軍艦の建造技術が優れている』のは確実のロ連海軍。
技術力の差が大きくないと仮定しても、50隻以上という数の暴力には勝てる気が全くしない。
「ん、ムーには空母もあるのか」
「え、えぇ…。あれはラ・ヴァニア級航空母艦です。昨日紹介した"アナクス"であれば24機を搭載できます。また、複葉機の"マリン"なら30機を搭載可能で、最高速力は25ノットを発揮します」
軍港を見回していた飛鷹が見つけた空母――ラングレーに似た外観――の解説を行うマイラス。
竜母に対抗するため開発・建造された、ムー海軍でも比較的新しめの艦種である空母。今のところラ・ヴァニア級4隻が、前級のラ・コスタ級4隻が竣工、同級1隻が艤装作業中であり、合計9隻の空母を保有している。
「あの、貴国の海軍は空母も保有しているのですか?」
「えぇ。詳しくは機密ですが…こちらも同じく50隻以上です」
「え…!?」
ムーでも新しい艦種を、50隻以上も持っている…それほど前から空母の有用性を見つけ、大量に建造し運用してきたのか。
「…この水深なら大丈夫ですね。指揮官殿」
「よし。それじゃあ皆、準備OK?」
マイラス経由で港の使用許可を得た黒烏が、エクセター、隼鷹、ヨークに目くばせする。
彼女らの真の姿を見せることで、KAN-SENの存在を証明するのだ。
「マイラスさん、これからうちの娘たちの正体が見れますよ。気をしっかり持ってください」
「は、はい!」
深呼吸し、もう驚かないぞ…と心中で呟く。
そんな覚悟はしたものの、本当に大丈夫だろうか?
「3人とも、お願い」
黒烏の指示を受けたエクセター、隼鷹、デューク・オブ・ヨークは頷くと、何処ぞから現れた青白いキューブが3人を取り囲む。
眩い光に顔を覆うマイラス。光が収まり、恐る恐る腕を退けると、そこには重々しい艤装を纏ったエクセターとデューク・オブ・ヨーク、飛行甲板を象った大きな巻物を浮遊させた隼鷹が立っていた。
「え!?そ、その姿は、一体!?」
驚くマイラスを横目に、3人は躊躇なく岸壁から海へ飛び込む。
周りで見ていた水兵やらが浮き輪等を投げ入れようとするが、まるでスケート選手のように着水した3人を見て固まった。
そのまま、港の機能を阻害しない場所まで滑っていくと、三度大量の青白く輝くキューブが彼女らの身体から溢れ出す。
先ほどを上回る光芒に、黒烏たちを除く全員が顔を覆い、やっと光が収まったと思ったら、そこには巨大な鋼鉄の艨艟が3隻並んでいた。
ラ・カサミの30.5センチ砲に近いが、砲身長は遥かに長く、装備数も3基9門と多い。艦橋はビルを思わせる、重厚且つ巨大なものを備えた戦艦。
明らかにラ・トゲフ級の33センチ砲よりも口径の大きい長大な主砲、それを4連装2基、連装1基という特異な配置で搭載した戦艦。
右舷側に配置されている、ちょっとした砦を思わせる大きさの、煙突と一体化した島型艦橋が特徴的な空母。
そのどれもが、ムー海軍の主力艦よりも遥かに大きく、力強く、洗練されたものだった。
間違いなく、軍艦を建造する技術もロ連が上だ。国力、技術力…双方共に、ムーの完全敗北が決定したのだった。
(こ…こんな戦艦や空母を、50隻以上だと…!?何が『ラ・トゲフ級は素晴らしい戦艦』だ!絶対お世辞で言っただろ!?しかも四連装って…)
決してそんなことはないのだが、このような巨艦を見てしまえば、そう思うのも無理はなかった。
いや、それよりも驚いているのは、こんな大戦艦・大型空母が1人の女性に姿を変えてしまうこと。
先ほど、水上を滑っていた場面から、敵に見つかるギリギリまでその移動法で接近、超至近距離で艤装を展開して奇襲攻撃…ということもできるだろう。
そして、特にマイラスが驚いていたのは、『デューク・オブ・ヨーク』が搭載する四連装の主砲。
ラ・トゲフ級の主砲は、ムー海軍が初めて開発した三連装砲である。故に開発初期は故障等が頻発し、曲者扱いされていた。今ではその問題も解決されたが。
そんな苦い経験のあるムーからすれば、機構の複雑さが容易に想像できる四連装砲を採用するなど、愚の骨頂であると考えられてきたのだ。
それもだが、やはり他2隻よりも圧倒的な戦艦――海の王者としての存在感が、マイラスの視線を釘付けにしていた。
「どうでしょう、見学…いたしますか?」
「是非…是非!!」
その後、何事かと停泊していた軍艦から出てきたムー海軍の水兵たちも交え、3隻の見学会が日が沈むまで実施されたのは言うまでもなかった。
ラ・トゲフ級戦艦:
全長:180メートル
全幅:29メートル
基準排水量:28400トン
速力:24ノット
主機:ディーゼル機関(41000馬力)
《武装》
・45口径33センチ三連装砲×4
・50口径89ミリ速射砲×12
・73口径13.9ミリ四連装高角機銃×8
・同連装機銃×4
ミリシアル海軍の近代的な艦艇を見、野心を燃やしていた海軍の一派が一部の造船会社も巻き込んで計画・建造された艦級。
本来なら、ラ・カサミ級の後継艦は史実日本海軍の河内型戦艦に準ずるものになるはずであり、彼らが提出した提案書は不受理になるはずだったが、保守的に過ぎるのも駄目だと判断されたのか、または海軍一派による"謎の力"が働いたのか、この提案書が通ってしまった結果誕生した。
数多くの新機軸導入による技術的課題、工期の大幅な遅れといった問題が多発したが、技術陣の奮闘によりなんとか解決、同型艦建造を行えるようになるまでになった。
主砲の配置案には33.4センチ連装砲5基10門の案もあったが、全長の短縮化のため、ムー海軍史上初の三連装砲を搭載した艦となった。
なお、速力の向上も視野に入れられ、新型のディーゼル機関が採用された他、縦横比がラ・カサミ級よりも大きくなっている。
本級の登場でラ・カサミ級を含む既存の戦艦全てが時代遅れとなってしまった。