白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 敬愛してやまないサモアオランウータン様に黒烏ちゃんのAIイラストを描いていただきました!本当にありがとうございます!
 ※サモアオランウータン様の許可の元、イラストを掲載しておきます。


【挿絵表示】


作者のYouTube
 (https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos)


並行世界からの警鐘

 

 「簡潔に纏めますと…マイラスさん。貴方にはKAN-SENを率いる指揮官の適正があります。彼女たち2人を建造できたことがその証拠です」

 

 イレギュラーなKAN-SEN2人と、未知との遭遇で茫然自失となっていたマイラスとラッサンを引き連れてやってきたホテルのレストランにて、黒烏は上品に盛り付けられたサーモンのステーキを切り分けつつ、そう説明した。

 

 何気なく事実を伝えている黒烏とは裏腹に、ムー人2人――特にムー国KAN-SENを建造した張本人であるマイラスは、( ゚д゚)とした表情を浮かべたままだった。

 KAN-SENの存在が日常的な黒烏とは違い、つい数日前に知ったばかりの彼らにとって非現実極まりない内容なのだから、仕方ないと言えばそうなのだが。

 彼我の常識の違いが影響し、黒烏は彼らの動揺を推し量れない。

 

 「それで…『ラ・メイス』と『ラ・メイン』だったかしら?貴女たちはマイラスさんによって設計された最新鋭戦艦で、グラ・バルカス艦隊と交戦して沈没した…ということで合ってる?」

 

 未だ料理に手を付けることができずに茫然としているマイラスとラッサンを横目に、同じテーブルを囲むKAN-SEN『ラ・メイス』、『ラ・メイン』に視線をやりながら問いかける。

 件のKAN-SEN2人は、姉の方は巧み且つ上品なナイフ・フォーク捌きで食事を摂っており、妹はあまり行儀が良いとは言えない手つきで、口の周りを汚しながら食べていた。

 

 「うん!そうだよ!指揮官が私たちを造ってくれたの!ちょっとしか戦えなかったけど、楽しかったよ!んぅ…」

 

 無邪気な子供のような、一切の悪意がない満面の笑みを浮かべながら黒烏に返答するラ・メイン。

 ラ・メイスが紙ナプキンで彼女の汚れた口元を拭うと、補足するように話を続けた。

 

 「はい。私たちはラ・トゲフ級戦艦の後継として、数多くの新機軸を投入し建造されたクラスです。攻防走全ての性能で前級を上回る他、新型のオール・ディーゼル機関、球状艦首、新型測距儀、対水上・対空兼用の両用砲の装備等、ムーの技術力の粋を結集したのが私たち、ラ・メイス級なんです」

 

 「ちょ、ちょちょちょ…待ってください」

 

 漸く現実に戻ってきたラッサンが、未だ混乱しっぱなしの頭脳を無理やり働かせ、会話に割って入る。

 

 「確かにラ・メイス級はムー海軍艦隊整備計画の構想にありましたが、技術的難度と予算不足で建造は凍結されているのですが…」

 

 「そ、そうです。設計図も描かれていませんし、残っているのは要求性能が書かれた紙切れや簡単なイメージ画位で…」

 

 ラッサンの言葉に続き、マイラスも混乱する頭を動かし言う。

 そんな2人に向かい、黒烏は事もなげに説明した。

 

 「恐らく、並行世界のムーで建造されたのでしょう。予算が下り、建造に相応の技術力を持った、違う世界線のムーで」

 

 そんな非科学的なことが…という言葉が出かかるが、マイラスはその言葉を飲み込む。

 ムーも《烏の巣》も、別世界から土地ごと転移してきた当事者なのだ。その経験がある以上、違う世界の存在を否定することはできない。

 

 「あ…えっと、『ラ・メイス』…さん?」

 

 「『メイス』で構いません。指揮官」

 

 「そんなタニンギョーギだとこそばゆいよ~」

 

 にこりとマイラスに告げるメイスと、抗議の視線を投げながらそう言うメイン。

 美少女2人に見つめられたマイラスは、胸の内がドクドクと波打つのを感じた。

 

 「あ、あぁ…そういえばさっき、俺のことを"指揮官"って…」

 

 「はい。指揮官は最後の戦いで私とメインの2隻を率いた御方ですから…」

 

 それを聞き、マイラスは目を見開いた。

 一介の技術士官、一介の中尉に過ぎない自分が、2隻の戦艦を率いていたというのだから。となると、マイラスの肩書は"戦隊司令官"となるわけで、階級は低くても少将が妥当となる…。

 

 「マイラスが戦艦2隻を擁する戦隊の司令官…というわけか?一介の技術士官に過ぎないというのに?」

 

 ラッサンも驚愕に顔を染めている。

 

 「はい。実は…」

 

 ラ・メイスが、自身や別世界のムーに起こった出来事について話し始めた。

 

 ――列強国であるレイフォルを下したグラ・バルカス帝国が、その魔の手をムーにも伸ばしてきた。

 レイフォル国境を越境し、侵攻してきたグラ・バルカス帝国陸軍によって、アルーをはじめとした諸都市は陥落、ムー国全土が空襲されるようになった。

 統括空軍の防空戦闘機隊も奮戦するが、圧倒的な質と数の暴力により段々と押し込まれていく。

 

 強大な海軍力を前面に押し出したグラ・バルカス帝国海軍による通商破壊も行われ、ムー大陸近海のシーレーンを喪失。グレードアトラスター級戦艦をはじめとした艨艟たちにムー海軍艦艇は蹂躙されていった。

 

 そんな中、就役したラ・メイス級戦艦『ラ・メイス』、『ラ・メイン』の2隻が、神聖ミリシアル帝国へ疎開するべく出港した移民船団護衛のため、生き残った少数の小型艦とともに出撃。

 

 人材不足が祟り、寄せ集められた乗員が各艦に乗り組む中、ラ・メイス級の設計者であり、この2隻をよく知っているマイラスが、戦時特例という形で昇進・戦隊司令官として着任、『ラ・メイス』に将旗が掲げられた。

 

 統括空軍防空戦闘機隊との共闘で頭上の安全を確保しつつ、移民船団を狙ってくるグラ・バルカス帝国艦隊を迎撃。

 両用砲の猛射で迎撃網を潜り抜けてきた艦爆・艦攻を撃墜しつつ、長砲身33センチ砲の斉射を敵戦艦に叩きつける。

 

 重装甲で被弾に耐えつつ、2隻のオリオン級戦艦を殴り倒し、ヘラクレス級1隻を『ラ・メイン』と共同で戦闘不能に追い込んだが、ここで『ラ・メイン』は損傷により戦列から脱落。

 

 『ラ・メイン』喪失という犠牲を払つつ、何とか敵艦隊を撃退したものの、その直後に戦艦『グレードアトラスター』率いる艦隊と遭遇した。

 絶対的不利を承知で撃ち合うが、攻防の性能ははっきりしており、46センチ砲の1斉射で叩き潰されたのだった…。

 

 ――端整な顔を歪め、悔しさと恨みを滲ませながら、ラ・メイスは自身のカンレキを語り終えた。

 足をプラプラさせながら姉の話を聞いていたラ・メインも、途中からグラ・バルカス帝国に対する憎悪を隠せない様子で黙って大人しくしていた。

 

 (…確かに、ここ最近のグラ・バルカス帝国の挑発行為は目に余る。いつ戦争になってもおかしくない)

 

 ラ・メイスの口から語られた、グラ・バルカス帝国によるムー侵攻、そして滅亡。

 戦争になって祖国が滅ぶなど有り得ない、想像するだけでも烏滸がましい…そんな思いがマイラスとラッサンの胸中を渦巻く。

 

 しかし、この世界のグラ・バルカス帝国も、ムーを含む周辺国への示威行動を実施しており、明日にでも侵攻を開始しそうな状況だ。

 それに、ラ・メイスの話が本当なら、グラ・バルカス帝国はムーよりも高性能な兵器を多数保有していることになり、現状で相まみえようものなら不利は必須である…。

 

 支離滅裂な言動と思われても仕方ないだろうが、ラ・メイスの言うことには説得力があるし、何よりそれを語る彼女の表情は真剣そのものだった。

 …と、彼女とラ・メインが黒烏に身体を向ける。

 

 「お願いします。このままではムーの滅亡は必須です。どうか…どうか、貴女方のお力を貸してください!」

 

 「お願い!皆を守りたいの!」

 

 必死の懇願だった。これを見てしまえば、流石に戯言だとは欠片も思えない。

 訴えを聞いた黒烏は沈黙したまま、レモンスカッシュが入ったグラスを口に運んでいる。

 

 「…メイス。ロ連と協調すれば、ムーの滅亡は回避できるのか?」

 

 「…正直、ロデ二ウス連邦の実力がどれほどなのかは分かりません。ですが、ムー独力で立ち向かうよりも、遥かにマシな戦いが行えるのは間違いないと断言します」

 

 確認するように問いかけるマイラスに、メイスは確信めいたものを感じさせる口調で応えた。

 そのやり取りを見ていた黒烏がグラスを置き、背後に控えるザイドリッツに目配せすると、彼女から書状を受け取る。

 

 「大統領カナタ氏、首相アルブ氏、副首相ハーク氏は、貴国への兵器供与に積極的です。お望みとあらば、貴国が納得いただける支援を行うと誓います。ただし…」

 

 意味ありげな微笑みを浮かべる黒烏。

 

 「我々も、慈善活動で兵器を輸出するわけにはいきません。ちょっとした"条件"を呑んでいただく必要がございますが…」

 

 何か有り得ない要求でもされるのかと、マイラスとラッサンは身構えた。

 

 「…貴国の上層部へお渡しください。賢明な判断を期待しております。悪い話ではありませんよ?」

 

 ロデニウス連邦首脳の総意が書かれた書状が差し出され、マイラスは震える手でそれを受け取ったのだった。

 

 





 ここだけ見ると黒烏ちゃん悪役みたい…。
 重ね重ね、サモアオランウータン様には感謝の意を表します。
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