白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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こんばんは。夜叉烏です。

 今回はちょっとつまらないかもです。
 
作者のYoutube
(https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg)



人はそれを"フラグ"と呼ぶ

 

 「久しぶりの《烏の巣》だな…」

 

 戦艦『ラ・メイス』の艦橋で、司令官席に腰かけているマイラス・ルクレール中尉は、ガントリークレーンや倉庫が建ち並ぶマイハーク港を眺めながら呟いた。

 KAN-SENという未知の存在をどう扱うか、ムー上層部は悩みに悩んだが、当の2人がマイラスを何よりも信頼しているということで、彼が2人の面倒を見ることになったのだ。

 

 軍港のあちこちには、視察団の一員として赴いた際に見学したチョモール級空母や、ムー海軍のものよりも洗練された外観の戦艦、巡洋艦、駆逐艦が停泊している。どれも、かなりの大きさだ。

 所々、スクリューがついた紡錘形の細長い物体を甲板上へ搭載した小型ボート――ボスパー3型魚雷艇――も20隻近くが停まっており、あれが魚雷を搭載した小型艇かと結論付けた。

 

 「…メイス、メイン。本当に今のままじゃ、グラ・バルカス海軍相手だと力不足なのか?」

 

 「はい。残念ながら…」

 

 「うん…。もっと強い主砲が欲しいかな~」

 

 懐疑的なマイラスの問いかけに、悔しさを滲ませるかのように肯定するKAN-SEN2人。

 今のムー海軍からすれば、ラ・メイス級戦艦は火力・防御力・速力のすべてを高い次元で備える最強の戦艦だ。

 

 そんな高性能艦でも、グラ・バルカス相手にはまだ足りないのか…と、マイラス含めたムー海軍軍人は、まだ見ぬ敵の強大さに震えた。

 

 ――『彼女ら2人が望むのなら、《烏の巣》での近代化改修を行います。どうしますか?』

 

 黒烏の提案にメイス・メイン両名は即希望し、戸惑うマイラスを引っ張って上層部へ直訴、これが通ったのだった。

 一部、不必要なのではという声ももちろんあったが、ムーで現在最もグラ・バルカス帝国を知っている存在であるKAN-SENの意見を無視することはできなかったのだ。

 

 改修実施への対価も提示されず、ムーにとってメリットしかない話だったため、比較的簡単に認められた形だ。

 

 「でも、良かった!指揮官と一緒になれて!」

 

 「えぇ、本当に…」

 

 無邪気に歯を見せて笑いかけるメイスとは対照的に、メインは何処か含みのある笑みをマイラスに向けた。

 可愛らしく加護欲を掻き立てられるメイスと、そこらの女優が不細工に見えてしまうほどの美貌を持つメイン。2人の視線が集中したマイラスは、ドキドキしながら赤面し、目を逸らす。

 

 (う…2人とも綺麗すぎる…。というかメイス、笑顔が何か怖いんだが!?)

 

 年相応の無邪気な笑顔を向けるメインとは異なり、メイスの笑顔はまるでよからぬことを企む悪党のように感じられた。

 例えるなら…いつもニコニコしているKAN-SEN『ローン』のような…。

 

 背中を冷や汗が伝うのを感じながら、手元の紙を一瞥する。密かにマイラスへ接触したユニオン人技術者の男が持ち掛けてきた、ユニオン製航空機の売却に関する書類である。

 

 半ば押し売りのような形だったのだが、確かに供与する航空機・エンジンはどれも先進的且つ高性能であり、価格も商品のレベルと比べて安価なもの。

 技術者の派遣や教育、生産設備の供与などといった支援体勢も完璧であり、驚喜したムー統括軍上層部は、取り敢えず試験的に航空機各種をそれぞれ1個飛行中隊12機、エンジンを10基購入することに決まったのだった。

 

 供与されたエンジン――R-1820-66エンジンを搭載し、各部の改良を加えた新型の"アナクス"も開発途中だと、開発者のグラディアから話を聞いていた。

 

 (レーダーの供与も許可してくれるとは。…ロデ二ウス連邦、気前が良すぎないか?ムーにとってはメリットしかないが…)

 

 マイラスが提出した《烏の巣》の軍事調査レポートに記載されていた電測兵装――レーダーに対して、ムー統括軍上層部は愕然とした。

 《烏の巣》のKAN-SENらの標準装備となっているSG・SKレーダー。対水上用の前者は大型艦に対し最大41キロの最大探知距離を持ち、後者は高度3000メートルを飛翔する航空機を185キロの距離で探知するという。

 さらに、レーダースクリーンへ補足した目標である輝点が映ることで、敵の接近が直感的に分かる。それに加え、レーダーの諸元を計算機に入力し、砲の仰俯角と旋回角度を出力する『FCS』の存在。

 

 見学していたマイラスはレポートに、『数十キロの彼方にいる敵の位置が丸わかりで、突発的な遭遇戦を回避することができる。また、レーダーを用いた照準射撃は、KAN-SENたちの練度の高さも相まって恐ろしいほど正確であり、初弾命中などザラであるようだった』と記している。

 

 一応、ムーはテレビや識別信号を実用化しているため、開発・配備には思ったほど時間は掛らないと見積もられていた。

 

 「至れり尽くせりだなぁ…」

 

 「ロデ二ウス連邦も、グラ・バルカス帝国を要警戒国と認定したとのことですし、我が国を簡単に決壊しない防波堤としたいのでしょう」

 

 思わず呟いたマイラスに、メイスが自らの考えを言った。『グラ・バルカス帝国』の名を口にする際は、前世の経験のせいか憎悪を隠そうとしない、冷え冷えとした声音になっており、思わずマイラスはゾッとしてしまう。

 

 実際、ムーが簡単に破れ、全土がグラ・バルカス帝国の勢力下に落ちることはロ連にとって不都合でしかない。

 彼の国の情報から推測される技術水準から、長距離戦略爆撃機を保有している可能性が高く、占領したムー国内へ飛行場を建設されれば、中央世界や第四文明圏が爆撃範囲に含まれる可能性があるからだ。

 それに、オタハイトの港を接収されて使用されることがあれば、グラ・バルカス帝国海軍の活動も活発化する。

 

 それを防ぐためにも、格安での兵器売却や技術支援を積極的に行い、ムーの軍事力強化に努めていた。

 

 言ってしまえば、ムーはロ連に良いように使われているわけであるが、グラ・バルカス帝国軍に対抗できる高性能な兵器を配備できるのは喜ばしいことであるため、メイスがロ連に対して不満を覚えることはなかった。

 

 彼女にとって、祖国と無辜の民が無事にこれからの戦乱を乗り越えることが何よりも重要なのだ。第二文明圏最強国家であるムーが文明圏外国の手を借りるなど言語道断…などという考えは持っていない。

 議会席でふんぞり返っている一部の官僚とは違って。

 

 (そういえば…パーパルディア皇国が不穏な動きを見せているみたいだな)

 

 ふと、マイラスは《烏の巣》の見学時に黒烏から聞いたことを思い出す。

 旧ロウリア王国と旧クワ・トイネ、旧クイラ王国の戦争にて、前者にパーパルディア皇国が魔導砲やリントブルムをはじめとした陸戦兵器、同国ではすっかり使われなくなったガレー船多数の供与を行っていたというものだ。

 

 ロデニウス大陸が統一された後、援助費用の返済をしつこく迫ってきたが、『貴国が支援してきたのはロウリア王国であってロデニウス連邦ではない。我が国に返済の義務は一切ない』と一蹴していることも、その時に聞いていた。

 

 文明圏外からあしらわれた格好となったパーパルディア皇国が黙ったままとは思えないし、機を見てロデ二ウス連邦に対する戦闘行動に移ると考えられる。

 

 「ま、仮に戦争になったとはいえ、皇国が勝てるわけないわな…」

 

 「マイラス?」

 

 艦橋から外を眺めていたラッサンが、独り言ちたマイラスに怪訝な視線を向ける。

 マイラスとラッサンは、この度ロデ二ウス連邦の駐在武官として任命され、ラ・メイス級2隻の改装ついでに乗艦していたのだ。

 

 「いや、もしパーパルディアとロ連が戦争になったときのことを考えてな」

 

 「あぁ~…皇国の性格を考えればこのまま泣き寝入り、とはならんだろうなぁ。でも大丈夫だろ。ロ連との軍事技術差から考えれば」

 

 パーパルディア皇国は、第三文明圏を統べる列強国であり、多数の属領を有する覇権国家であるが、軍事技術に関してはムーやロ連に遠く及ばない。

 

 第三文明圏を脅かす皇国海軍は、射程2キロの魔導砲を搭載し、対魔弾鉄鋼式装甲で身を固める魔導戦列艦を優に100隻以上、その他竜母も多数保有しているが、ロ連海軍の近代的な海軍戦力の前では、射撃演習の標的に等しいだろう。

 ワイバーンも高性能な航空機で蹂躙できるし、マスケット銃を装備した歩兵やリントブルムが主力の皇国陸軍も、ボルトアクション小銃や機関銃、戦車、機動装甲服で武装したロ連軍には敵わない。

 

 パーパルディアがロ連へ戦争を仕掛けるのは、木の枝1本で魔王に挑むようなものだ。

 

 「それに、我が国がロ連の提唱する『第四文明圏構想』を支持するとなれば、皇国だってロ連をただの"蛮族国家"と見るわけにはいかんだろう?皇国だって、全員が現実を見ない馬鹿ばかりってわけじゃない」

 

 「そう…だよな。流石にな…」

 

 ラッサンの言葉にマイラスも頷き、納得した…のだが、心の片隅では言いようのない不安感を覚えていた。

 それを打ち消すように、再び別の書類を手に取り、目を通し始めた。

 

 





 ラ・メイスは隼鷹や大鳳ほどじゃないけど愛が重いタイプ。ヤンデレレベルは赤城クラス(分別つけるタイプのヤンデレ)かな?
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