白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 ムー編進める前に、以前書こうと思ってた兵器開発の回ですね。

 作者のYouTube
 (https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos)


(幕間)戒めの解放

蔵王重工の他、世界各国の有名企業の支社が集う《烏の巣》の工業地区。

 その一角にある、他の工場よりも一回り以上広い敷地に建てられた建造物に、技術者たちが顔を連ねていた。

 

 「はいはい~。お好きな席へどうぞにゃ~」

 

 巨大な机を技術者らが囲うように座り、スクリーンの前にKAN-SEN『明石』が彼らに呼び掛ける。

 新兵器の開発会議等で見慣れた光景だ。

 

 「今回の議題は、これからの戦いを乗り越えるための新兵器開発についてにゃ~」

 

 明石の緩い言葉によって開幕した会議。それが終わったのを見越して、KAN-SEN『夕張』がパソコンを操作してプレゼンを表示した。

 

 ・ラヴァーナル帝国遺跡発掘調査において遭遇した、同国製生物兵器の動きが敏速で、パンツァーファウストでは命中率が極端に低く、対処しきれない。

 砲口初速が速く、命中率の高い個人携行対戦車兵器が求められる。欲を言えば、3キロ以下の軽量設計が望まれる。

 

 ・九九式小銃では、数で押してくる魔獣軍団に押し負けてしまう。自動小銃を配備するべき。反動が酷ければ、最悪口径は多少小さくても良い。

 

 ・センチュリオンの17ポンド砲が魔帝生物兵器には威力不足である。

 

 ・空中にホバリングし続け、継続的に地上部隊の火力支援を行えるヘリコプターのが必要。

 

 ・魔帝生物兵器に対する四式装甲兵員輸送車の防護力・自衛力の低さが顕著。また、今回のような軟弱地盤での戦闘の場合、戦車に追従するのが困難。装軌式で強力な武装を施した兵員輸送車が必要。

 

 ・二式大艇、四式陸攻よりも航続距離が長く、旅客機としても使える大型戦略爆撃機の開発。

 

 ・ロデニウス連邦外洋艦隊の設立。遠方へ出向いての作戦行動を行うため、戦艦・空母・巡洋艦・駆逐艦・潜水艦を配備した艦隊を複数設立し、訓練を実施する。

 

 …等々、現時点における軍の問題点や要望が映し出される。

 

 「そして、これが遺跡から発掘されたラヴァーナル兵器にゃ」

 

 新たに映し出された異形に、技術者たちは一様に驚きの声を上げ、前のめりになった。

 

 「…これは、文字通りのUFOだな」

 

 北連人技術者の1人が呟く。

 傍らには、『空中戦艦パル・キマイラ』と書かれている。

 

 直径250メートル以上の巨大なリングの中心に艦橋らしきものがあり、その2つは3本の支柱によって支えられている。 

 支柱にはガトリング砲らしきものが、リング部の下面には15センチクラスと思われる3連装砲が、それぞれ6基装備されていた。

 明らかに、航空力学を全力無視した構造だ。SF映画でもあるまいし、こんなものが飛ぶなど想像もつかない。

 

 搭載されている主砲は、空中から地上乃至海上の目標を砲撃するためのものだろう。

 

 「まぁ、人ひとりが宙へ浮かぶ魔法とかもあるし、それを発展させれば不可能ではないのか。ましてや光翼人だしな…」

 

 「あ~。無理して造ろうとしなくていいにゃ。あくまで現実的なやつをだにゃ……」

 

 真面目に造れないか考える各陣営の技術者たちに、明石はそう釘を刺す。UFO擬きの開発のために、他の兵器が疎かになるのは許されない。

 

 「これは…ジェット機か。後で実機を見せてもらえるか?」

 

 「見せるのは良いけど、会議が終わったらにゃ」

 

 「この人型兵器、戦車で対抗できるか?」

 

 ジェット機――クフィルC2に酷似した機体――の写真を見、冷静に評価するロイヤル人技術者。

 こちらも、魔帝が装備していたものと思しき主力戦闘機と思われ、重要な発見であることに間違いないのだが、空中戦艦の衝撃が大きすぎ、インパクトは少なかった。

 

 そして、全高10メートル程度と思われる二足歩行兵器。これが戦車のような立ち位置にいる主力陸戦兵器として量産されていると考えると、相当高い技術力を持っていると言わざるを得ない。

 

 全高が高いというと、見つかりやすく的になるなど陸戦では不利に感じるが、武装の装備位置が高い関係上、装甲厚の薄い戦車の車体上面や砲塔天蓋を狙われやすいということでもある。

 

 「事前に伝えたと思うけど、指揮官からの指示で、軍事データベース・レベルⅢまでの閲覧が許可されたにゃ」

 

 人類の9割が死滅し、荒廃した嘗ての世界にて、残された人々の希望となったデータベース……戦争以前のあらゆる技術・文化等の情報が記録された情報群。

 軍事技術の情報もそのデータベースには記録されているのだが、戦争に懲りた人類は最新兵器の情報閲覧を固く禁じ、封印した。

 

 お陰で、高度な民生品が人々の生活を支える中、軍事技術だけは何十年も前のレベルに留まっていると、ある意味異質な世界観となっているのだ。

 

 しかし、様々な派遣国家がうようよしている異世界に飛ばされた現状、平和を唱えてばかりではいられない。

 特に、今回の議題に挙げられたラヴァーナル帝国は、光翼人以外の種族を当たり前のように奴隷として扱う畜生の集団なのだ。

 

 こういった状況を鑑みた黒烏は、データベースの閲覧制限緩和を指示したのだった。

 

 補足しておくと、軍事技術情報はそれぞれのレベルに分けられている。

 現状装備しているものと同等の兵器がレベルⅠ、現実世界における西暦1965年までの兵器レベルがⅡといった具合だ。

 1975年までの兵器情報が記録されている領域がレベルⅢである。

 

 この指示を伝えられた明石は、『随分と思い切ったことをするにゃ~』と感心する傍ら、自分たちの仕事が増えることに一抹の落胆を覚えていた。

 

 「自動小銃に関しましては、比較的早めに開発できそうです」

 

 ある鉄血人技術者が発言した。

 

 「黒烏中将の指示が伝えられた際、早速データベースレベルⅢまで閲覧してみたのですが、高性能な自動火器をいくつか発見しました。恐らく、来年までには開発が完了するかと。また、その設計をベースに新型の軽機関銃や半自動狙撃銃も開発予定です」

 

 「あ!対戦車兵器に関しては我がユニオンに素晴らしいものがございます!」

 

 続いて、ユニオン人の技術者が大声で挙手した。

 

 重桜にとって、北連・鉄血・ロイヤルは頼もしい武器商人という関係だ。

 装備武器や兵器も、勿論重桜国産品もあるが、ほとんどが北連や鉄血、ロイヤルから輸入したものばかり。

 

 彼らばかりを贔屓して商売をするあまり――重桜~ユニオン間の航路がセイレーンによって封鎖されたこともあるが――、ユニオンは重桜という商売相手を失う羽目になったのだった。

 それっきり、ユニオン人技術者たちは何が何でも自分たちが開発した兵器を採用してもらおうと、心を燃やしてていくようになり、他陣営の技術部門の者が心配するレベルで技術開発に没頭していた。

 

 「それと、ジェット艦上戦闘機について、データベースに良い物がありました。これが配備されれば、魔帝の戦闘機などあっと言う間に駆逐できます」

 

 続いて、ユニオンの航空技師が言う。

 冷静ではあるが、自信に満ちたような声音である。それだけ、性能に自信があるようだ。

 

 「戦車と新型の二足歩行兵器はどうするにゃ?」

 

 「センチュリオンの後継を開発したいと思います。議題にあった兵員輸送車も、このシャーシを利用して開発できると思います。機動力に関しましては、鉄血と共同で軽量小型のディーゼルエンジンを開発・搭載します」

 

 「我が鉄血の生体技術を用いれば、五式よりも戦闘能力に秀でた歩行兵器が造れるでしょう。ラヴァーナルの人型にも有利に立ち回れるはずです」

 

 ロイヤル・鉄血の技術陣が、明石の言葉へ応える。

 紅茶に思考を侵されている傾向はあるがやるときはやる前者も、全体的にキャラが濃いが生体兵器に関しては陣営の中で右に出るものはない後者も、自信満々といった様子だ。

 

 「失礼、よろしいでしょうか?」

 

 ユニオン人の航空技術者が突然挙手し、発言を求めた。

 

 「最近国交を結んだムー国への兵器売り込みに関してなのですが…。我がユニオンの()()を売りに出したいのです。技術的にも丁度いいかと」

 

 (あ~~。もしかして"疾風"のせいで採用されなかったの、まだ根に持ってるにゃ……?)

 

 四式戦"疾風"は、諸々の事情が重なって重桜・北連の共同開発となった機体であり、後者では"La-9"の名称が与えられている。

 設計に関しては北連の要望も取り入れられ、その結果()()における"疾風"とは似ても似つかない機影――史実ソ連のLa-9そのまま――となった。

 

 この時には、重桜~ユニオン間のセイレーンによる海域封鎖は限定的となっており、対潜・対空兵装を満載した護衛駆逐艦に厳重に護衛されながらの海上輸送が行われ始めていた。

 そこでユニオンは、自慢の高速戦闘機P-51"マスタング"の配備によって余剰になった()()()()()の改良型を重桜へ売り込もうとしたのだが、"疾風"の配備によって没になったという苦々しい記憶があった。

 

 「それと、倉庫で埃を被っている余りものの艦爆・艦攻も格安で全部売りに出したらどうです?在庫一掃セールですよ」

 

 「……まぁいいにゃ。彼方さんも(ムーにとって)先進的な航空機は欲しいはずにゃし、がっぽり稼げそうだにゃ~~」

 

 その時、部屋のドアが開かれ、胸元を開けた黒い軍服の上に白衣を纏った長い金髪の女性が入ってきた。

 

 「失礼、遅れたわ」

 

 鉄血KAN-SENを纏めるビスマルクだ。

 鉄血陣営のリーダー的存在であり、研究者としての一面も併せ持つ彼女は非常に多忙であるため、遅れてしまったのだろう。

 

 「いやいや、あの面子を纏めながらの研究職は大変でしょう?」

 

 「……それ、地味にうちの娘を貶してないかしら?」

 

 とはいえ、それも事実であるため反論はできない。

 思考を切り替えるかのように、目の前の兵器データに目を通す。

 

 「……これが、話にあった空中戦艦?」

 

 「にゃ~。ファンタジーの権化らしい代物にゃ」

 

 確かに、空中戦艦のインパクトは、遺跡から発見された天の浮船や人型兵器に比べ大きいが、軍艦を獣を模した陸上兵器に変形させたり、はたまた獣そのものに変化させる等、この世の法則を無視する存在とでもいうべきKAN-SENに慣れたこの場の面々は、その技術力に感心はすれど、戦慄するほどではない。

 

 「空を飛べる以上、普通の軍艦と違って陸戦の最前線に持ってくることができる。これほど強力な火力支援要員はないでしょうね。おまけに本体の防空力と素の防御力も高い」

 

 (まぁ、私たちもやろうと思えばできるけど……)

 

 内心でそんなことを思っていたビスマルクだったが、ふと"パル・キマイラ"を見て、彼女は何か考えに至ったのか、ほんの少しだけ目を見開いた。

 

 「……これ、もしかしたら()()()んじゃないかしら」

 

 「「「え?」」」

 

 一様に声を上げる明石と技術者たち。

 その一方で、鉄血の技術者は「()()()()()()()()」に心当たりがあるのか驚きは少なかったものの、「え、マジで造るの?」と言いたげな表情を浮かべたのだった。

 





 閲覧ありがとうございました。

 軍事技術に関しては古さの中にSFが入り混じるよく分からんアズレン世界……実在の兵器だけじゃなくてSFに出てきそうな兵器も出してみようかな。
 セイレーン由来の技術ですって言っとけば何とかなる(適当)
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