白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 使節団に対する兵器解説になります。


鋼鉄の巨人

 ――硫黄島 重桜陸軍・海兵隊合同演習場

 

 近未来的な外観に変わった硫黄島の中で、唯一元の土壌が露出しているこの場所には天幕が設置され、その前に視察団の面々が並んでいた。

 テーブルや荒れた地面には複数の武器・兵器が置かれており、視察団の面々はそれらに興味津々だったが、それ以上に目を引くものが天幕の後ろへ陣取っていた。

 

 ゴーレムを思わせる、全高5メートルほどのいかつい体格をした漆黒の巨人だ。

 

 俯き気で停止しているが、その双眼が自分たちを見下ろしているように感じ、少し怖気づいてしまう。

 

 「では、皆様。これより提供予定の兵器について説明を始めさせていただきます」

 

 黒烏はそう前置きし、横に立っている壮年の男と、銀髪を伸ばした少女を紹介した。

 

 「こちらは、《烏の巣》へ駐屯する重桜陸軍第109師団長の栗林忠泰(くりばやしただやす)大将、同じく重桜海兵隊第12師団長荒川玲(あらかわあきら)少将です」

 

 「「よろしくお願いします」」

 

 2人は敬礼し、握手を求めてきた。

 この場にいるということはそれなりに階級の高い人物だと使節団たちは思ったが、栗林はともかく、荒川は若すぎるのではないのか疑問が浮かぶ。

 

 「その、失礼を承知でお聞きしたいのですが、アラカワ少将はおいくつなのですか?」

 

 「あぁ、19ですよ」

 

 瞬間、ヤゴウたちは目を見開く。

 

 「若いでしょう?しかし、重桜は15歳以上の男性を対象に徴兵制を実施しておりまして、毎年若い兵士が入隊してくるのですよ。才能を開花させた奴が兵・士官学校を卒業し、現場で経験を積んで昇進を重ね、玲のように若年で将官になる者も極稀にいます」

 

 「それに、現在の重桜軍は実力主義を採っています。年齢関係なく実力によって昇進の速度が決まりますからね。彼は、それだけ優秀なんですよ」

 

 「成程…」

 

 いくら優秀とはいえ、20歳足らずの若年に将軍の位を与えるなど、クワ・トイネ軍では考えられないことだ。

 早速のカルチャーショックである。

 

 「失礼します。陸軍はわかりますが、海兵隊とは一体…?」

 

 「はい。島嶼の占領や奪還のため、上陸戦闘に重きを置いた軍隊になります。基本的な装備等は陸軍と変わりません。なお、第12師団は転移の約半年前に編成されたばかりなので、若手がほとんどなんですよ」

 

 ハンキの問に荒川が応えている間、栗林が部下の1人を呼んできた。

 

 「彼女は神奈川煌香(かながわこうか)少将。爆発物のプロフェッショナルですが、戦略家でもありまして、私の副官を務めています」

 

 長い黒髪をツインテールにし、指定の黒いブレザーと同色のロングスカートを穿いた、生真面目そうな少女である。

 丸眼鏡越しの双眼は、鋭く使節団を捉えていた。

 

 「お初にお目にかかります、神奈川です。僭越ながら、各種武器の実演を担当させていただきます」

 

 敬礼した彼女へ、ハンキが答礼した。

 

 「クワ・トイネ公国軍務局にて、将軍の位を拝命しているハンキ・ウーズドヴェルと申します。我々は貴軍の武器兵器に多大な関心を寄せておりますが、何分見たことのないものばかりです。そのため、何度も質問することになると思いますが、そこはご容赦願いたい」

 

 「いえ、構いませんよ」

 

 天幕下の机に置いてある中で、一番小さな得物を手に取った。

 

 「こちらは重桜の蔵王重工にて開発された十四年式拳銃二型です。…その前に、まずは銃について説明します」

 

 十四年式のスライドを2回引くと、7.62ミリトカレフ弾が排出され、机上にころりと転がる。

 

 「そもそも銃とは、この弾丸を高速で発射する武器になります。銃本体が弓、弾丸が矢と考えてください。こちらは拳銃という種類で、持ち運びに優れる銃になりますが、より強力な弾丸を発射するものも存在します」

 

 数名の兵が、塗料の入った樹脂製の標的を持ってきた。

 この標的の外皮は、人間の皮膚と同程度の強度だと、栗林から説明される。

 

 「それでは、早速射撃を行います。少々大きな音がしますので、ご注意ください」

 

 神奈川がそう警告した後、淀みない動作で14年式を構えると、引き金に添えた指へ力を込めた。

 乾いた破裂音が周囲へ響き、10メートルほど離れた標的から緑色の液体が滴る。

 

 12発まで普通の射撃を実施した神奈川は、最後の3発をとどめとばかりにトリプルタップで叩き出すと、十四年式二型のスライドが後退し、マガジン内が空になったことを伝えた。

 標的には銃声と同じ数の穴が開いており、未だに液体がボタボタと零れている。

 

 その様を見たハンキたちは、無意識に息を呑んだ。

 剣よりも遠い間合いから、弓矢よりも早い発射速度で、1発で重症を負わせる攻撃を放つことができる。

 

 原理はともかく、それをどうにか理解できた彼らは、《烏の巣》が持つ武器へ恐ろしさを抱いた。

 

 (《烏の巣》が友好的で本当に良かった。仮に敵対してしまえば、我々は間合いに入る間もなく撃ち倒されてしまうだろう。これは何としてでも、彼女たちの支援を取り付けなければ…)

 

 内心でそう独り言ちたハンキは、一層真面目な表情になり、兵器の解説に耳を傾ける。

 続いて神奈川が取り出したのは、丸い物体と穴の開いた角型銃身が目を引く、大型の銃だった。

 

 「こちらは、北方連合という国家で開発されたPPsH-41(SE)という短機関銃です。我々重桜人は北連人に比べて小柄なので、採用に際しては全長の短縮や軽量化が行われております」

 

 圧倒的装弾数・発射速度に上層部が目を付け、重桜人の平均的な体格に合うよう小改良を施されて採用に至ったこの銃は、生産性にも優れており、さらに多少雑な扱いをしても大丈夫という特徴が、多くの兵に好かれている。

 

 「短機関銃とは…まぁ、百聞は一見に如かずと言いますし、実演してみましょう」

 

 説明している間に、新たな標的が用意された。

 先ほどとは違い、何の変哲もない瓶に砂を詰めたものが、20本ほど並べられる。

 

 ボルトを引いて構えると、神奈川は引き金を引いた。

 その直後、使節団たちは顔色を変える。

 

 先の拳銃射撃とは比べ物にならない勢いで、銃弾が発射されていったのだ。

 行儀よく並んだ標的の瓶は、端から順番に砕け散り、後にはガラス製の底面しか残らなかった。

 

 「…このように、先の十四年式と同じ弾丸を高速で撃ち出す武器になります。遠距離戦には向きませんが、室内などの近距離で敵を制圧する際に威力を発揮します。発射速度は毎分900発で、71発の弾丸が入るマガジンを使用できますが、35発入りの方が使いやすいので、使用機会はこちらが多いですね」

 

 35発入りマガジンを指さしながら説明する神奈川だったが、ハンキたちは圧倒的な発射速度を誇るPPsH-41の前に言葉を失い、あまり耳に入っていないようだった。

 

 ――その後、九九式短小銃やDP-28(SE)軽機関銃、"パンツァーファウスト75(SE)"対戦車擲弾発射器、DShK38(SE)12.7ミリ重機関銃、九九式手榴弾甲型、九九式軽迫撃砲といった銃火器の解説と実演が終了し、使節団員が一番気になっていた鋼鉄の巨人を紹介する番になった。

 

 「これは五式機動装甲服と呼ばれる、我が軍の最新鋭兵器になります。全高約5.5メートル、全備重量8.4トン、走行速度は最大60キロ毎時。防御力と汎用性、整備性、操縦性に優れており、多彩な兵器を搭載できますが、強力なパワーで敵を捻じ伏せる肉弾戦も得意です。この機体には現在、腕部のShKAS(SE)7.7ミリ機銃が4丁搭載されています」

 

 これは、異世界から流れ着いた超技術――アーマード・トルーパーを元に開発したパワードアーマーだ。

 新規開発されたリアクターで動作し、最高12時間の連続運転が可能な性能を持っている。

 

 また、五式の開発において最も重要視されたのが、機体と搭乗者を守る防御性能だ。

 ごつい見た目らしく、37ミリ対戦車砲のAPDS弾程度なら動じない強度を誇り、いざという時の脱出装置も搭載している。

 

 「操縦…ということは、人が乗って操作をするのですね」

 

 「はい。構造を簡素化した型も、民間に多数出回っています」

 

 直後、五式の背後から1人の男が現れる。

 手入れが行き届いているとは言えない白髪に鋭い目つき、何よりも目を引く傷跡だらけの顔が、凶悪そうなイメージを醸し出している。

 

 「おい玲ァ。資格取ったのはついこの間だってのに、いきなりこんな大舞台で操縦させるたァ…」

 

 「悪かったって。ていうか(ほむら)、お前初心者の癖にそこらの操縦者よりも上手いんだからしょうがないだろ」

 

 「ケッ…」

 

 男は手に持ったリモコンを操作すると、頭部が開き、人が入れるほどのスペースが露になる。

 その様子に驚く視察団の面々を尻目に、彼はいそいそと乗り込むと、再びリモコンを操作し、開放されたハッチを元に戻した。

 

 双眼が白く光り、下を向いていた頭部が正面を見据える。

 大きな足音とともに人間とほぼ同じ動作で歩き出し、次第に走行速度が上がっていく。

 

 「おぉ!?は、速い!馬よりも速いじゃないか!」

 

 「あんな巨体で、なぜあれほど速く動けるんだ…?」

 

 ハンキたちの自問を背にしながら、05式は助走をつけたまま跳躍すると、足裏のスラスターを噴かした。

 

 「えぇッ!?飛んだ!」

 

 「はい。一応、飛行も可能ですよ。行動可能時間に響くので、あまり推奨はしていませんが…」

 

 十数秒の飛行の後に着地すると、巨体に似合わない速度で走って元の場所へ戻った。

 頭部が開き、男が下りてくる。

 

 「上出来じゃねえか」

 

 「うるせぇ」

 

 荒川と男が言葉を交わし、それを尻目に解説を続ける神奈川の解説が続いたが、先ほどまで真剣な顔つきで説明を聞いていた使節団は、05式のインパクトが強すぎるあまり、放心状態となって固まっていた。

 




 ここでのセイレーン兵は、実写版『宇宙戦艦ヤマト』に出てきたガミラス兵みたいな感じです。

 05式はアイアンマンスーツの1つ、"ハルクバスター"みたいな感じですね。
 因みにSE→Sakura Empire(重桜)です。

 あれ?米装備ないやん?と思った読者諸君。
 大戦中は太平洋がセイレーンによって閉鎖されたお陰で、設計図や実品の供与ができなかったためだ!
 重桜は足の速い有人・無人の水上機母艦や駆逐艦、潜水艦を使って強行したこともあったけど、悉く未帰還に終わってるぞ!

 今回の《烏の巣》は割と赤い&エウロパの装備が多くなりそうで。

 あぁ、因みに戦車はロウリア戦で初登場させるので待っててください。
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