白銀の烏と異世界母港【再演】   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 YouTubeに上げる動画を編集してたら遅れました。
 いい加減戦闘描写書きたいんだよなぁ。


戦争準備

 《烏の巣》との接触から1年が過ぎようとしているこの時期、クワ・トイネ公国とクイラ王国の発展ぶりは留まることを知らなかった。

 

 両国が何十年もかけて整備した石畳の街道は瞬く間にアスファルトで覆われ、50メートル以上はありそうな建物が足場に囲まれた状態で並び、生まれ変わった道路では、複数の自動車が走り回っている。

 

 「凄いものだな。ここまで発展するとは…」

 

 「えぇ。それに、《烏の巣》に派遣した研修生が続々と帰国し、発展に寄与していますから、これら技術の国産化も、そう遠くないでしょう」

 

 ヴィスカー社の自動車部門ロールスロイスの手になる高級リムジンの後部座席に乗るカナタとハンキが、街並みを眺めながら言葉を交わした。

 

 ハンキとヤゴウら視察団の帰国後、彼らは早急に《烏の巣》との同盟締結を会議にて訴え、反対派を黙らせた。

 その際、頑迷な反対派に対し両名が、字面に表すことができないほどのありとあらゆる暴言を叩きつけており、下手すれば辞任もあり得たという。

 

 カナタの計らいでそれは有耶無耶になったが、中々危ないところだったのだ。

 

 「そういえばこの1年、パーパルディア皇国からロウリアへの大規模な戦力供与が見られたとか…」

 

 「えぇ。≪烏の巣≫所属の潜水艦とその密偵が、ロウリア王国の港にパーパルディア国籍の船舶が停泊し、火砲らしきものやワイバーン、地を這う竜を降ろしているのを確認した…とのことです」

 

 すっかり扱いに慣れたタブレットを操作し、ハンキが告げる。

 

 火砲らしきものとは、文明圏国家の軍で採用されている魔導砲だろう。

 城壁を打ち崩し、射程も1キロを軽く超える、少し前のクワ・トイネ、クイラにとっては恐るべき超兵器だ。

 

 しかし、《烏の巣》よりM1931/37 122ミリ加農砲が導入された今、何程の脅威になるとは思えないが。

 だが、カナタの表情は優れなかった。

 

 「兵器の質はこちらが圧倒していますが、兵力では依然ロウリア側が圧倒的に優勢ですし、我が軍の兵士も武器兵器の扱いに習熟しているとは言えません。頑張ってくれてはいますが…」

 

 「現在、陸空軍及び海兵隊は《烏の巣》の各軍から将校を招き入れ、訓練を行っている最中であります。彼らからは、比較的良い評価を貰っていますが…」

 

 ハンキは各軍の訓練を視察したことがあるのだが、かなりスパルタなものだった。

 それこそ、虐待のように思えてしまうほどに。

 中でも、海兵隊の10キロ遠泳訓練は見ていられないほどだったという。

 

 なお、海軍出身の者たちは、見目麗しいKAN-SENたちの指導を受けられるとあって、かなり喜んでいたらしい。

 

 「仮に開戦した場合、《烏の巣》の軍も参戦する手筈になっています。彼らの助力があれば、負けることはありません」

 

 「一先ずは安心できるということですね」

 

 ホッと一息ついたカナタは話題を変えた。

 

 「それと、ギム再開発の案はどうですか?個人的にあそこは戦後、《烏の巣》より学んだ技術を用いて構成される実験都市としたいのですが…」

 

 「ギムは歴史ある街ですが、言い方を変えれば古すぎます。首都からも遠いですし、実験都市には向かないかと…」

 

 

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 ロウリア王国首都 ジン・ハーク――

 

 ジン・ハークにそびえるハーク城では、国内の重鎮たちが勢揃いしていた。今、ここでは王の出席のもと、国の行く末を決める会議が行われている。

 

 (糞っ!あと少しで亜人排訴運動の完全撤廃が叶ったというのに、パーパルディアめ…!)

 

 配下がクワ・トイネ公国侵攻作戦の概要を説明している中、ロウリア王国国王ハーク・ロウリア34世は心中で毒づいた。

 

 ロウリア王国は元々、人間至上主義を掲げる国家であり、エルフや獣人などといった人間以外の種族を"亜人"と称して迫害を続けていた。

 しかし、その政策は国を疲弊へと追い込むだけだと判断したハークは、異種族に対して比較的友好的な諸侯と密かにコンタクトを取り、陰ながら亜人の解放運動を支援していたのである。

 

 クワ・トイネ、クイラとの本格的な和解を目指し、計画を進めてきた彼だったが、第三文明圏の列強パーパルディア皇国の横槍が、その目論見を妨げた。

 

 ――「クワ・トイネ公国及びクイラ王国へ侵攻しろ。それで得た食糧、資源、奴隷を我が国に献上するのだ。支援はしてやるから、ありがたく思え」

 

 2国と敵対関係にあるロウリアを支援し、所謂代理戦争を行わせ、自身の手を一切汚さず利益を手に入れる…という魂胆だと考えられた。

 

 このような一方的な要求を突き返そうにも、相手は列強。

 ロデ二ウス最強の国家とはいえ、戦えば鎧袖一触されるのは目に見えている。

 

 要求を受けてからも、開戦までの時間稼ぎを続けていたが、皇国は使者を介して侵攻を急かしてきている。

 これ以上先延ばしにすれば、彼らの逆鱗に触れてしまうだろう。

 

 これより侵攻する両国には申し訳ないことこの上ないが、このままではロウリア王国は終わる。

 

 瞑目し、葛藤に耽る王を見た将軍パタジン・ファムニールが目を伏せる。

 彼はハークに長年仕えてきた身であり、彼の考えの賛同者でもある。主君の苦悩を思うと、我が身を斬られるような感覚を覚えた。

 

 「やっと決断されましたね、大王様…。フフフ…」

 

 「お前に言われずとも…!」

 

 パーパルディア皇国の使者が不気味に笑いながら語りかけてきたが、ハークは不機嫌さを隠そうともせずに返した。

 長い溜息をつき、覚悟を決めたような表情になると、玉座から立ち上がり、宣言した。

 

 「国王ハーク・ロウリア34世が命ず!クワ・トイネ公国及びクイラ王国へ侵攻を開始せよ!」

 

 その様子を、窓の外から伺う人影が1人。

 

 「…いざ事情を知ってしまうと、中々やるせない気持ちになるのぉ…」

 

 水色ショートカットに黒いカチューシャを付けた少女が、鉄扇を口元に当てながら、古臭い口調で独り言ちる。

 ハークに対する同情が含まれた言葉だ。

 

 「うん…?」

 

 外を見回っていた衛兵の1人は、月明かりに照らされる地面に人影らしきものが浮かんでいる様を見、咄嗟に城の屋根を見上げたが、そこに居る筈の人物は影も形もなく、気のせいかと思い直すのだった。

 

 

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 「国王ハーク・ロウリア34世は、我が国及びクイラ王国への侵攻を指示。報告した密偵は特に何事もなく帰還できるそうです」

 

 「それは良かったです。この情報はクイラ王国にも共有しておいてください」

 

 クワ・トイネ公国政治会議場では、密偵である少女の報告が入ったことで、戦争に向けての対策会議が開かれていた。

 

 「彼らは確実にギムを堕としに来るでしょう。現地住民全員には避難勧告…いや、避難命令を発して城塞都市エジェイまで疎開させてください」

 

 「「「はっ!」」」

 

 カナタは取り敢えず、ギムに住む民間人へ避難命令を発するよう命じる。

 エジェイは頑強な城壁が建てられており、さらに《烏の巣》から輸入したM1931/37 122ミリ加農砲、Flak 43 37ミリ連装機関砲、Flak151 15ミリ連装機銃、Dshk38 12.7ミリ重機関銃といった兵器を配置している。

 しかも、敵の侵攻を阻むべく、城壁前に鉄条網広範囲に渡って敷設された。

 兵士1人1人が装備するのも、九九式小銃やDP-28(SE)などの銃火器だ。

 

 元から簡単には堕ちないとされてきたエジェイは、これら近代兵器を導入することで、難攻不落の大要塞となったのだ。

 

 「首相。ギムを放棄するというのは…」

 

 「…元々あそこは古い街ですし、開発も難航する地域です。家々は戦果に焼かれることになりますが、戦後の補償を約束すれば、住民の皆様の不満は抑えられるでしょう」

 

 歴史あるギムの町だが、戦後を考えればいっそのこと壊し尽くし、新しく街を造ればいいという判断だった。

 直後、ノックの音と共に外務局の職員が駆け込んできた。

 

 「失礼します!クロウ殿より、『《烏の巣》は条約に則り、クワ・トイネ公国及びクイラ王国側に立って参戦する』とのことです!」

 

 喜色を浮かべた職員の報告に、室内の空気は緩んだ。

 ヤゴウ以下視察団から伝えられた《烏の巣》の兵器の威力、兵員の屈強さは、既に全員が共有している。

 

 《烏の巣》が参戦してくれるのであれば、負ける筈はない――とこの場の皆がそう思っていた。

 

 「クワ・トイネ公国軍は《烏の巣》と共同でロウリア軍へ充たり、これを叩いてください。無傷で切り抜けてほしい…とは言いませんが、なるべく被害が出ないようお願いします」

 

 

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 ロウリアとの国境から程近いギムでは、撤退に向けての最終準備が完了していた。

 

 「よし、井戸はこれで最後だ。食糧と飲料も運んだな?」

 

 「はい。鉄道に全て載せました。民間人も同じく」

 

 ギムを防衛する西方騎士団の団長モイジ・ガルントは、井戸を埋めながら部下に問い、その答えを聞いて満足そうな表情を浮かべながら、作業を再開した。

 

 「しかし、少々癪ですな。生まれ育ったこの街を捨て、あまつさえ戦場にするとは…」

 

 ベテランの騎士が、PPSh-41(SE)機関短銃のスリングを肩に掛けながら話しかけてくる。

 彼は、生まれも育ちもギムという境遇だ。そんな考えが沸くのも無理はない。

 

 「俺もそう思う。だが、街ならまた建て直せばいい。命は失ったらそれっきりなんだからな。…しかし、ただでここをくれてやるわけにはいかんな」

 

 悪童のような笑みを浮かべる。

 

 このモイジは、今でこそ人々を守る騎士団の団長という職に就いているが、幼少期はかなりの悪戯好きだったのだ。

 草原の長草を片っ端に結び合わせ、訓練を終えて帰還してきた騎士団がその即席トラップに引っ掛かり転ぶ様を、木陰から見て笑うという行為を何度も繰り返していた。

 

 その記憶が呼び起こされたのか、モイジは井戸を埋める作業を続ける傍ら、一部の部下たちの手を借り、無数のトラップを街のあちこちに仕掛けていたのだ。

 

 「少々えげつないが、敵の戦力と士気低下…最悪足止めにはなるはずだ。これで時間を稼ぐ。…さぁ、埋め終わった。俺たちも行くぞ」

 

 埋め終わった井戸をそのままに、モイジは部下たちを引き連れ、駅へと向かっていった。




 北連製のM1931/37 122ミリ加農砲を導入したのは、以前用いていた国産の96式150ミリ加農砲が重くて取り回しが悪く、また設営に時間が掛かるからですね。

 《烏の巣》の存在した世界では、射程の長い加農砲が注目されていた設定ですね。
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