シュテル(偽)がいくリリなの   作:『ユタカ』

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取引

 

 

 

「ちょっとあんた!いい加減にしなさいよ!」

 

 

 

 学校の昼休み、アリサちゃんが私の席に来てそう言った。

 

後ろにはすずかちゃんがハラハラした顔でこっちを見ている。

 

 

「いきなりどうしたの?アリサちゃん。」

 

 

 

 私は出来るだけ落ち着いて返事をする。

 

 

 

「いきなりじゃない!ここ最近何か話しかけても空返事ばっかり!何か悩んでることがあるなら言いなさいよ!」

 

「べ、別に悩んでなんか…」

 

「嘘おっしゃい!」

 

「ア、アリサちゃん落ち着いて…。」

 

「すずかは黙ってなさい!」

 

 

 

 すずかちゃんが宥めようとしたけど、アリサちゃんは聞かずにどんどん熱くなっていく。

 

 そんなアリサちゃんに私は

 

 

 

「…ごめん…。」

 

 

 

 ただ謝ることしかできなかった。

 

 

 

「っ!?もういい!!」

 

「ア、アリサちゃん!?」

 

 

 

 私の言葉にさらに激怒したアリサちゃんは肩を怒らせ教室から出ていってしまった。

 

 すずかちゃんも私とアリサちゃんが出ていってしまった方向を交互に見て、迷っていたみたいだけど

 

 

 

「…すずかちゃん、私は大丈夫だからアリサちゃんをお願い。」

 

「なのはちゃん…。ごめんね。」

 

 

 

 そして、すずかちゃんもアリサちゃんの後を追っていった。

 

 …本当はフェイトちゃんのことを考えていたの。

 

 フェイトちゃんのあの目…。とても寂しい目をしていたの。まるであの頃の私みたいな…。あの時はあかりが一緒に居てくれたんだっけ。

 

 だから…気持ちがわかるから…話をして何とかしてあげたいんだけど

 

 …戦うしかないって言ってたけど私は・・・

 

 そんなことを考えていたらアリサちゃんを怒らせちゃった。

 

 でも話せないし…。どうすればよかったのかな…。

 

 

 

 そんなことがあり、あっという間に放課後になった。

 

 私は一度家に帰った後、寂しさを押し殺しユーノくんと一緒にジュエルシードを探索し始めた。

 

 …あかり。いなかったな。

 

 探索に行く前に妹と会って寂しさを紛らわしたかったなのは。

 

 後ろ髪を引かれる思いで探索を続けていく。

 

 そんな時だった。

 

 

 

 ジュエルシードが発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

 

 

 

「ディバインシューター!!」

 

「フォトンランサー!!」

 

「シュート!!」

 

「ファイア!!」

 

 

 

 桜色の魔力弾と雷の槍がぶつかり合い相殺される。

 

 目の前には金色の魔導士…フェイトちゃん。

 

 地面にはフェイトちゃんと一緒に封印したジュエルシード。

 

 私達はジュエルシードを巡って空中戦をしている。

 

 

 

「シュート!!」

 

「ファイア!!」

 

 

 

 もう何度目かもわからない射撃魔法の衝突

 

 

 

「ブリッツアクション!」

 

 

 

 相殺すると同時、高速移動魔法を展開

 

 なのはの背後を取ろうとする。

 

 

 

「フラッシュムーブ!」

 

「なっ…!?」

 

 

 

 しかしなのはも高速移動魔法を展開しフェイトに追いすがる。

 

 

 

「くっ!?サイズスラッシュ!!」

 

「フラッシュインパクト!!」

 

 

 

 振り下ろされたバルディッシュをレイジングハートで受け止める。

 

 完全に拮抗し押しきれないと察したフェイトが距離を取る。

 

 

 

(強い…!この前戦った時よりも遥かに!こんな短期間で…!?)

 

 

 

 なのはの成長の速さに内心驚愕するフェイト。

 

 動きの止まったフェイトになのはが話しかける。

 

 

 

「言葉だけじゃ何も変わらない。そう言ったよね?」

 

「…」

 

「でもね、言わなきゃ伝わらないことだってきっとあると思うんだ。」

 

「…」

 

「お願い、教えて。どうしてジュエルシードを集めるの?」

 

「…私は」

 

 

 

 フェイトは一瞬返答しかけるが

 

 

 

「耳を貸しちゃダメだよ!フェイト!」

 

「アルフ…」

 

「私達の最優先はジュエルシード。それ以外のことは気にしなくていいんだよ。」

 

「…うん。そう…だね。」

 

 

 

 フェイトは揺れた気持ちを固めなおすとなのはは無視してジュエルシードへ向かう。

 

 

 

「っ!?待って!!」

 

 

 

 フェイトを追うなのは

 

 二人の杖が同時にジュエルシードを捉える。

 

 その瞬間

 

 

 

 ジュエルシードから光が溢れた。

 

 

 

 それと同時、二人の杖に激しい衝撃が加わり杖に亀裂が入る。

 

 

 

「きゃあ!?」

 

「くぅっ!?」

 

 

 

 衝撃に吹き飛ばされる二人。

 

 ジュエルシードは不吉な震動を起こしていた。

 

 そう、次元震を起こそうとしていた。

 

 いち早く体勢を立て直したフェイトはバルディッシュを待機状態に戻しジュエルシードへと走る。

 

 アルフの制止の声を無視して

 

 

 

(危険なのはわかる…。だけど母さんが、待ってるんだ…!)

 

 

 

 母親の為にと暴走しているフェイトはジュエルシードに手を伸ばす。

 

 が、横から別の手がその手を掴み投げ飛ばされた。

 

 

 

「えっ!?…くっ、誰!?」

 

 

 

 再び体勢を立て直すフェイト。そして乱入者は誰だと投げ飛ばした者を見据える。

 

 そこには

 

 

 

「シュテル…ちゃん?」

 

 

 

 あの日、町を守ってくれた女の子が恐ろしく冷たく無機質な目をして立っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「シュテル…ちゃん?」

 

 

 

 あの白い魔導士…高町なのはっていったっけ。がキツネのお面の子に戸惑いながら話しかける。

 

 しかしキツネのお面の子…なのはっていう子がいうにはシュテル?はそれに答えずジュエルシードを一瞥する。

 

 すると

 

 

 

「…えっ!?」

 

 

 

 空間が歪みジュエルシードが吸い込まれていく。

 

 そしてジュエルシードはなくなった。

 

 

 

「…いったい何をしたんです?」

 

「…」

 

 

 

 こちらの質問に答えずただこちらを見つめる。

 

 その特徴的な赤い瞳に寒気が走るがそれを抑え込む。

 

 

 

「ジュエルシードを渡してください。」

 

 

 

 何をしたのかわからないけど、少なくともジュエルシードは目の前の子の手にあるのは間違いない。

 

 そう考えバルディッシュ…は破損してしまったから素手で構える。

 

 すると

 

 

 

「条件次第です。」

 

 

 

 予想外な返答が返ってきた。

 

 

 

「シュテルちゃん!?」

 

 

 

 なのはが驚いた声を出す。

 

 けどそれよりも

 

 

 

「条件?」

 

「そうです。」

 

「その条件というのは?」

 

「それを伝えるためにもあなたに指示を出している人に会いたい。」

 

「っ!?そんな人いな」

 

「いないと惚けるのは無しです。何なら名前を言いましょうか?プレ」

 

「ま、待って!」

 

 

 

 私が止めるとシュテルは口を止める。

 

 この子…私の母さんを知ってる!?

 

 

 

「…それで?応じますか?それとも断りますか?」

 

「…」

 

 

 

 フェイトは悩む。

 

 元々フェイトは認めたくないが誰かを傷つけてでもジュエルシードを手に入れたくはないのだ。話し合いで譲ってもらえるならそれに越したことはない。

 

 しかし、目の前の正体不明の存在を自分の大切な母に会わせていいのか?何の感情も感じさせない冷たい瞳を見ると不安を感じる。

 

 応じるか、力ずくか。その二択で揺れるフェイト。

 

 

 

 ところで余談だが使い魔という存在は常に主と繋がっている。

 

 その繋がりにより主の心理状態を感じ取ることができる。

 

 つまり何が言いたいかというと

 

 そんな心理状態になっているフェイトの代わりにアルフが動くのは当然のことで

 

 

 

 フェイトが思考の海から這い上がった時にはアルフがシュテルに背後から腕を振り下ろすところだった。

 

 

 

「!?ダメ!アルフ!」

 

「フェイトを惑わすなぁ!!」

 

「シュテルちゃん!」

 

 

 

 振り下ろされる腕

 

 この場にいる誰もが完璧に不意を打った一撃がシュテルに当たると思った。

 

 しかし

 

 

 

「!?」

 

「なっ!?」

 

「は!?」

 

「えっ!?」

 

 

 

 全員が驚愕の声を上げ、自分の目を疑う。

 

 そして当の攻撃を仕掛けたアルフも今起きた現象を信じたくなく

 

 

 

「こ、のぉ!!」

 

 

 

 今度は腕だけでなく自身の体ごと突進しながら拳を打ち抜く。

 

 今度こそ当たる。と思ったが

 

 

 

スカッ

 

 

 

 …見間違いじゃなかった。

 

 アルフの攻撃は突進したアルフの体ごとすり抜けた。

 

 

 

「い、いったい何が…?」

 

 

 

 さすがに困惑するアルフ

 

 

 

「なるほど。確かに本来取引というものは対等な力を持つ者同士でなければ成立しません。

取引なんてする前に奪い取ればいいんですから」

 

「…」

 

「ですが…その上で言います。

あなた達は私に傷一つ付けることすらできません。」

 

 

 

 その言葉にアルフは激怒した。

 

 再度殴りかかる。ただし今度は一発で終わらず連続で

 

 時にはフェイントをかけ、時には打ち込む角度を変えて

 

 打って打って、ひたすら打った。

 

 しかし、一つも当たらず、その全てがすり抜けた。

 

 そして

 

 絶え間無い連続攻撃で鈍くなった拳を掴み、ぶん投げられた。

 

 

 

「アルフ!!」

 

「ち、ちくしょう…!」

 

 

 

 特に大きな怪我は無かったが体力を消費したからか立ち上がらないアルフ

 

 

 

「今一度、聞きます。取引に応じますか?それとも」

 

 

 

 シュテルの手のひらの空間が歪み…さっきのジュエルシードが現れる。

 

 

 

「このジュエルシードを諦めますか?」

 

「…」

 

 

 

 赤い瞳が私を見つめる。

 

 諦めるのは論外、かといって力ずくも正体不明の力とバルディッシュの破損により難しい。となれば答えは一つしかなかった。

 

 

 

「…わかった。あなたを連れていく。」

 

「賢明な判断です。今から戻りますか?」

 

「…ううん。明日報告に戻る予定だからその時に」

 

「わかりました。」

 

「合流の仕方だけど…」

 

 

 

 フェイトはなのはの方を少し見るとなのはに聞こえないようにシュテルに耳打ちする。

 

 そして

 

 

 

「…じゃあ。」

 

「ま、待って!?」

 

 

 

 なのはが声をかけるがそれを無視して私とアルフはその場から離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「ま、待って!?」

 

 

 

 なのは姉さんの声は届かずフェイトさんは去っていった。

 

 フェイトさんがいなくなった方を名残惜しそうに見ながらもこちらに振り向く。

 

 

 

「…シュテルちゃん。どうして…」

 

「…」

 

「どうしてジュエルシードを僕達ではなくてあの人達に渡すんですか?」

 

 

 

 なのは姉さんが言い淀み、ユーノが代わりに私に聞く。

 

 しかし

 

 

 

「…」

 

「答えてよ…。シュテルちゃん…。」

 

「…話すことは何もありません。」

 

 

 

 そう言うと私は神威を発動させる。

 

 発動間際

 

 

 

「どうして…。」

 

 

 

 というなのは姉さんの悲しそうな声が聞こえた気がした。

 

 

 

……

………

 

 

 

 翌日、待ち合わせ場所である公園に行く。

 

 時間は早朝ということもあり公園には誰もいなかった。

 

 フェイトさんとアルフさんを除いて

 

 私はキツネのお面を被ると警戒しながらフェイトさん達に合流した。

 

 そして

 

 

 

 目の前には古びた建物

 

 所々蔦で覆われ古びたイメージを加速させている。

 

 まるで自分達が小人になったのではと錯覚させるほど巨大な門。

 

 原作知識にもあった時の庭園へと転移した。

 

 

 

「結構広いからね。ちゃんとついてきてよ?」

 

「…」

 

「返事くらいしな。クソガキ」

 

「アルフ!ほら行くよ。」

 

 

 

 ギスギスしながらフェイトさんの案内で中に入り、歩いていく。

 

 数分後、一つの扉にたどり着く。

 

 フェイトさんはここで待つように言い、緊張しながら扉を開け一人中へ入る。

 

 アルフさんは私の見張りなのだろう。一緒に部屋の外にいる。

 

 だけど

 

 

 

「…いいんですか?」

 

「あ?何がだい。」

 

「傷つきますよ?フェイトさん。」

 

「は?それってどういう」

 

 

 

 次の瞬間、部屋の中から悲鳴が聞こえた。

 

 明らかにフェイトさんの声です。

 

 

 

「なっ!?フェ、フェイト!!」

 

 

 

 慌てて中に入るアルフ。

 

 …まあプレシアがフェイトさんを傷つけたのでしょう。原作通りに

 

 私?私は普通に部屋の外にいます。

 

 私としては私の大切な人達…家族以外がどうなったって別に構わないと思っています。大樹の一件だって町に被害が出たらこの先、生活に支障をきたすと思い介入したんです。なのは姉さんみたいに不幸になる人を減らしたいと思ってはいないのです。

 

 ………なのに何でしょう。この気持ちは?何で私は罪悪感を感じているんでしょう…。

 

 アルフさんの怒号が聞こえる。プレシアに突っかかっているんでしょう。

 

 そして数分後

 

 フェイトさん達が部屋から出てきた。

 

 

 

「母さんがあなたに会うって。…中に入って」

 

 

 

 それだけ言い終えるとフェイトさんはアルフさんを連れて去っていった。

 

 そして私は部屋の中に入っていく。

 

 とても広い部屋だった。

 

 天井は吹き抜けになっておりとても高く薄紫のカーテンが周りにかかっている。

 

 部屋の中心には魔法で使うのだろうか巨大なレンズが鎮座しており

 

 そしてレンズを挟んで部屋の反対側に椅子に深く腰かけた女性がいた。

 

 長く紫がかった黒髪に紫を基調とした露出が多めな服、プレシア・テスタロッサである。

 

 

 

「あなたね。あの子が言っていたジュエルシードを持つお面の子供というのは」

 

「初めましてですね、プレシア・テスタロッサ。私は」

 

ドギャアァァァァァン!!

 

 

 

 次の瞬間、雷の槍があかりに襲いかかった。

 

 しかし

 

 

 

「…ふぅん。あの子から聞いた時は頭がおかしくなったのかと思ったけれど…。あなたなかなか厄介なレアスキルを持ってるわね。」

 

「…」

 

 

 

 煙が晴れるとそこには何も変わらずあかりは立っていた。

 相手はプレシア、警戒していないわけがなく神威を常に瞬時発動できるようにしていたのだ。

 

 

 

「気はすみましたか?」

 

「ええ、そうね。あなたを害するのは難しそうだとわかったわ。」

 

「母さん!大きな音がしたけどいったい」

 

「フェイト!あんたは引っ込んでいなさい!!」

 

 

 

 魔法の発動した音を聞きつけフェイトさんが中に飛び込んできたがプレシアは苛つきながら退室を命じる。

 

 

 

「で、でも…!」

 

「ちっ、私の魔法よ。いいから下がりなさい。」

 

「…はい。」

 

 

 

 私を睨み付けながら部屋から出ていくフェイトさん

 

 

 

「さて、本題に入りましょう。何が望み?」

 

 

 

 私は異空間からデバイスを取り出す。

 

 それを見ていたプレシアは眉を潜めるが何も言わなかった。

 

 

 

「ここにデバイス…ルシフェリオンがあります。

これと同じデバイスをインテリジェントデバイス(・・・・・・・・・・・・)にして作成してください。」

 

「…理由は?」

 

「…」

 

「デバイスが目的だというなら今持っているそれを使えば済む話よね?

何故わざわざ新しいデバイスを?」

 

「…このデバイスはジュエルシードを核として生成されています。」

 

 

 

 ジュエルシードという言葉に眉を吊り上げるプレシア

 

 

 

「ここまで言えばわかりますよね?」

 

「…呆れたわ。そんなものに魔力を通したら暴走するに決まってるじゃない。むしろよく今まで無事だったわね。」

 

「…引き受けてくれたのならそのデバイスは差し上げます。

中のジュエルシードも自由にしてくれていいです。

そして作成が完了し渡してくれたのなら」

 

 

 

 再び空間が歪み、ジュエルシードを取り出す。

 

 

 

「成功報酬としてこのジュエルシードを渡します。

つまり平穏に取引が成立したのならジュエルシードが二つあなたに渡るということです。」

 

「…」

 

「どうしますか?」

 

 

 

 あの人形が持ってきたジュエルシードはたった三つ。

 

 アリシアを生き返らせるには全然足りない。

 

 怪しい奴だがジュエルシードをデバイスにしたりと抜けているところがある。裏切ったりされても直ぐにわかるだろう。

 

 何より、一つではなく二つ手にはいる。

 

 

 

「…いいわ。その取引乗るわ。」

 

 

 

 プレシアはその取引…デバイスの作成依頼を引き受けることにした。

 

 

 

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