シュテル(偽)がいくリリなの   作:『ユタカ』

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ユーリ

 

 

 

 イリスさんが消えた後、原作通り管理局から事情聴取の要請が来ました。

 

 ディアーチェさん達はそれに応じるみたいです。

 

 私は………

 

 正直行きたくはないのですが、ディアーチェさん達が私の正体をばらさないとも限りません。

 

 誠に遺憾ではありますがディアーチェさん達についていきます。

 

 …最悪イリスさんから奪い返した夜天の書を盾にしましょう。

 

 我ながらゲスい考えですが…

 

 

 

……

………

 

 

 

 そう身構えていましたら何故か特に何事もなく事情聴取が終わりました。

 

 シュテルさんのコピーであり、シュテルさんを宿した経緯については話しましたが、それ以上のことは黙秘を主張しましたらあっさり引き下がりました。

 

 事情聴取が終わると私達は別室へと通されました。

 

 寛げと言わんばかりの広間です。

 

 無論油断はできませんが…

 

 

 

「さて、シュテルよ」

 

《はい、我が王。ユーリについて、ですよね》

 

「そうだ。我とレヴィには記憶がない。イリスの奴めに消されたからな」

 

《…》

 

「故に命ず。我らとユーリとの間に何があったのか。それを話せ」

 

「ボクも知りたい!」

 

《…わかりました。話します。私達と…ユーリについて》

 

 

 

 そしてシュテルさんは話しました。

 

 自分達は元々猫であったこと

 

 本来であれば死んでいたところをユーリさんが拾ってくれて命を救われたこと

 

 その後も面倒を見てくれたこと

 

 そしてエルトリアで起きた惨劇についても…

 

 

 

「…」

 

「…」

 

 

 

 話を聞いたディアーチェさんとレヴィさんは大切なことの筈なのに思い出せずもどかしそうにしていました。

 

 そうしているうちに扉が開かれます。

 

 入ってきたのは

 

 

 

「三人…いや四人ともお疲れ様や」

 

 

 

 はやてさんでした。

 

 はやてさんは入りながらページの断片を取り出します。

 

 

 

「ユーリの残したページの断片か」

 

「王様達なら復旧できるんやないかなって…。それと…」

 

 

 

 はやてさんがこちらをチラチラと見てきます。

 

 …まあ言いたいことは察せますけど

 

 私は神威を発動させ異空間から夜天の書を取り出します。

 

 

 

「…これ、ですよね?」

 

「そうや。返してくれへんか?大切な物なんや」

 

「…渡した瞬間、捕縛したりしないでしょうね?」

 

「そんなことせえへんよ!」

 

 

 

 はやてさんはとんでもないと言わんばかりに首を横に振ります。

 

 …正直どうしましょう。

 

 持っててもしょうがない上に狙われる材料が一つ増えるだけなので返すこと自体は問題ないのですが…。

 

 こんな敵陣のど真ん中で交渉材料となるものをむざむざ渡して、その直後に騙して悪いが…という展開にならないでしょうか?

 

 うーん…。

 

 私がそう悩んでいるとそれが伝わったのか

 

 

 

「あのな。私は君に感謝しているんや。

イリスからその本を取り返してくれた君を。

その恩を仇で返すようなことは絶対にせえへん」

 

「…」

 

「…確かに君の捜索命令は出ているけど、今はそれよりもイリスの対処を優先したい。

だからそんなに心配せんでも大丈夫や」

 

 

 

 あー…。だからあっさり引き下がったんですね。

 

 リスクが完全にゼロになったわけではありませんが、恨みを買う行為も出来る限り避けたいので…

 

 私は無言で夜天の書をはやてさんに差し出す。

 

 

 

「!あ、ありがとう!」

 

 

 

 はやてさんはお礼を言いながら夜天の書を受け取りました。

 

 

 

「ホンマに、…ホンマにありがとうな…」

 

 

 

 その後はレヴィさんがユーリさんの残したページを時間は掛かりましたが復旧しました。

 

 部屋には、はやてさん以外にもシグナムさん達守護騎士、通信越しで本局からなのは姉さん達も見ています。

 

 ページには

 

 

 

〈私達惑星再生委員会は…〉

 

 

 

〈人がいる…?子供だよ〉

 

 

 

〈ユーリ・エーベルヴァインです〉

 

 

 

 ユーリさんとイリスさん達、エルトリアの惑星再生委員会の出会いから

 

 

 

〈私はどちらかというと…こんな風に育てるのに使うのが好きです〉

 

 

 

〈ユーリお願いがあるの!私達に力を貸して!ユーリの魔法が私達の希望なの!〉

 

 

 

 ユーリさんがエルトリアに身を寄せることになった経緯

 

 エルトリアでの平和な日常

 

 そして

 

 

 

〈どうして…?なんで!?ねえユーリ!?〉

 

〈私が…やりました〉

 

 

 

 惑星再生委員会の惨劇までの記録が入っていました。

 

 重苦しい空気が部屋を満たします。

 

 そんな時でした。

 

 分散した群体イリスさんが各地で暴れているという報告が入りました。

 

 その中にはユーリさんもいました。

 

 なのは姉さん達はイリスさんの群体の対処を私はディアーチェさん達についていきユーリさんの対処をそれぞれすることになりました。

 

 

 

……

………

 

 

 

「王様ー!シュテるーん!」

 

《レヴィ》

 

「あちらはもういいのか?」

 

「うん!」

 

 

 

 夜の闇の中、私達はユーリさんの下に向かって飛んでいます。

 

 途中レヴィさんが管理局の魔導士達の救援のために一時離脱しましたが今戻ってきました。

 

 原作通りにフェイトさんが救援に入ったのでしょう。

 

 そして私達は大きな橋の下に佇んでいるユーリさんの下にたどり着きました。

 

 ユーリさんは

 

 

 

「敵勢存在三基確認。排除します」

 

 

 

 やはりと言いますか操られている状態に戻ってしまっているみたいですね。

 

 何の感情も感じられない瞳でこちらを見ています。

 

 

 

《行きますよ!あかり!!》

 

 

 

 シュテルさんが内側でのみ響く声で私に発破をかけます。

 

 そしてレヴィさんと同時にユーリさんへと飛び出し、私はルシフェリオンをレヴィさんはバルフィニカスをそれぞれ振り下ろします。

 

 しかしユーリさんは当然の如く腕型のユニットを二つ使い防ぎます。

 

 そこに

 

 

 

「アロンダイト!」

 

 

 

 ディアーチェさんが砲撃魔法を打ち込みます。

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

 直撃したにも関わらず僅かによろける程度で大きなダメージはありません。

 

 すかさず私が殴りかかります。

 

 当然それを阻むユニット

 

 しかしそれをすり抜け前に出ます。

 

 

 

「やあぁぁぁ!」

 

 

 

 そしてひたすらラッシュを仕掛けます。

 

 大したダメージにはならないですが動きくらいは封じられるでしょう。

 

 ディアーチェさんも別方向から射撃魔法で援護してくれてます。

 

 

 

「シュテるん達!離れて!」

 

 

 

 レヴィさんの言葉にユーリさんから距離を取ります。

 

 

 

「雷光招来!雷神槌!」

 

「ああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 レヴィさんの声と共にレヴィさんに空から雷が降り注ぎ、その電力を蓄えユーリさんに砲撃魔法を放ちます。

 

 その砲撃魔法は電力を蓄えただけあって以前三人で放ったそれよりも威力が段違いです。

 

 それをもらいユーリさんは悲鳴を上げます。

 

 

 

《ユーリを操作しているのはフォーミュラシステムによる行動強制プログラム!》

 

「連続攻撃で負荷を与え続ければ…ユーリを縛っている糸は焼ききれる!」

 

「ユーリ…ごめんね。泣かないで。ユーリが泣いてるとボク達も悲しいんだ」

 

 

 

 その言葉が届いたのか、はたまたレヴィの砲撃のお陰か、ユーリさんの瞳に光が戻ります。

 

 レヴィさんはそれに気づき砲撃を止めます。

 

 

 

「…シュテル、…レヴィ、…ディアーチェ。

イリスは私が止めます…。ですから…」

 

「馬鹿者が!動けもせず泣いてる子供の言うことか!」

 

「あなた達まで!失いたくはないんです!!」

 

 

 

 叫びと共に放たれる無数の光線

 

 意識は戻っていても身体はまだ自由にはなっていないみたいです。

 

 ディアーチェさん達はそれをかわす。

 

 私はかわさずすり抜けます。

 

 そしてユーリさんがディアーチェさんの下へ飛び出し、その拳を振るう。

 

 ディアーチェさんは砲撃魔法を放ちその勢いを殺そうとするもユーリさんは構わず突き進みます。

 

 

 

「あの惨劇の中で残せたのはイリスの心とあなた達だけだった!

いつか故郷に帰るため!誓った夢を叶えるために!

あなた達までいなくなったら…私は!!」

 

 

 

 そして拳がディアーチェさんの下に届きますがディアーチェさんはそれを受け止めます。

 

 その時

 

 

 

「「ッ!?」」

 

《…》

 

 

 

 ディアーチェさんとレヴィさんがハッと何かを思い出した顔になりました。

 

 どうやら過去の映像が頭に甦ったみたいですね。

 

 シュテルさんも黙っていますが記憶があるものの同じ映像を見ているかと思います。

 

 ユーリさんが無数の光線と共にユニットも飛ばして手数を増やしてきます。

 

 私には当たらないので狙いはレヴィさんとディアーチェさんです。

 

 

 

《あかり!これを!》

 

 

 

 そうシュテルさんが内側で私に呼びかけると赤色の鎖が左手に現れます。

 

 レヴィさんの右手には青い鎖が現れます。

 

 

 

《レヴィ!!》

 

「うんわかってるよ!シュテるん!!」

 

 

 

 そして私とレヴィさんで鎖をユーリさんに投げ、私は右腕をレヴィさんは左腕をそれぞれ拘束します。

 

 

 

《ディアーチェ!助けますよ。私達の主人を!》

 

「ボク達の大切な子を!」

 

「おう!お前を苦しめる枷を今!打ち砕く!!」

 

 

 

 そう宣言するとディアーチェさんの前方に巨大な魔法陣が現れます。

 

 そして魔法陣からユーリさんに黒い魔力弾が放たれ

 

 

 

「ジャガーノート!!!」

 

 

 

 巨大な爆発を引き起こしました。

 

 爆発に呑み込まれるユーリさん

 

 そして

 

 爆発が収まるとそこには

 

 気を失ったユーリさんが海上を漂っていました。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ユーリ…。しっかり」

 

 

 

 私達はユーリさんの周りに集まった後、レヴィさんが心配そうにユーリさんに呼びかけます。

 

 そしてユーリさんの目が開きます。

 

 

 

「…レヴィ、シュテル、ディアーチェ。

…ごめんなさい。…私が…」

 

「…よかった。元に戻ったんだね。

…よかった。よかったよぉ…」

 

「レヴィ…、みんな…、ごめんなさい…ありがとう…」

 

 

 

 そして涙を流すレヴィさんとユーリさん

 

 

 

《…やりましたね》

 

「ああ」

 

《あかりも…ありがとうございました》

 

 

 シュテルさんも嬉しそうな声を出し私にお礼を言い、ディアーチェさんも笑顔です。

 

 …ここで終われば楽なんですけどね

 

 

 

《…あかり?》

 

 

 

 私が黙っているのを見てシュテルさんが怪訝そうな声を私にかけます。

 

 魔力感知にばっちりかかってるんです。おそらくですけどあの人(・・・)

 

 戦闘中大人しくしていたのもそっちに気を張っていたというのもあります。

 

 そう思っているとあの人が銃を

 

 

 

「ブラストファイア!!」

 

 

 

 取り出すより早く砲撃魔法を放ちます。

 

 突然の行動にみんな目を丸くします。

 

 

 

《あかり!?》

 

「突然一体何を…!?」

 

 

 

 しかしそれらの言葉は私の耳には入りません。

 

 何故なら

 

 

 

「…驚いたな。まさかとは思っていたが私の存在に勘付いていたとはね」

 

「!?あなたは…!」

 

 

 

 この事件の黒幕であるフィル・マクスウェルが現れたからです。

 

 突然の乱入者に驚愕するディアーチェさん達

 

 

 

「なかなか思い通りには行かないものだね。

ユーリと猫と魔女達、その上君のようなイレギュラーまでいるとなるとイリスだけでは手に負えないな」

 

 

 

 そう言いながらも全く悔しい様子はなく笑顔を絶やさないでゆっくり近いてきます。

 

 そして

 

 

 

「アクセラレイター・オルタ」

 

 

 

 そう呟くと同時マクスウェルの姿は消え、一瞬にして私の目の前に現れます。

 

 

 

(速いっ!!だけど…)

 

 

 

 マクスウェルはそのまま剣を振るいます。

 

 だけど私は既に神威を発動しています。

 

 当然の如く、すり抜けます。

 

 しかし

 

 

 

「なっ…!?」

 

 

 

 そのまま私をすり抜けながら前に出て素早い動きでレヴィさんを切り裂きます。

 

 

 

《レヴィ!!》

 

「マクスウェル…あなたっ!!」

 

 

 

 私を無視して別の人に攻撃したからか、レヴィさんを守れなかった自分への苛立ちか、私は激怒してマクスウェルに殴りかかります。

 

 しかし圧倒的な速さでそれをかわすマクスウェル

 

 

 

「思った通りだ。君の能力は絶大だが誰かを守ったりするには致命的に向いていない」

 

 

 

 マクスウェルの言葉が私を突き刺します。

 

 そして

 

 マクスウェルがその剣を私に

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

 突き刺そうとした時何かが私にぶつかり押し出します。

 

 顔を上げ目に入ったのは

 

 

 

「ディ、アーチェ…さん」

 

 

 

 マクスウェルの剣に貫かれたディアーチェさんの姿でした。

 

 マクスウェルが剣を引き抜くと同時にディアーチェさんが崩れ落ちる。

 

 

 

《我が王!!》

 

 

 

 なんで?

 

 ここであなたが倒れたら、ユーリさんを誰が…

 

 マクスウェルがユーリさんの方に向かいます。

 

 完全に私は無視する腹積もりみたいです。

 

 ふざけないでください。

 

 

 

「このまま行かせるわけないでしょう!!」

 

 

 

 今までは人に使えば死ぬと思い使いませんでしたが

 

 ここまで虚仮にされて黙っている訳には行きません!

 

 私は神威をマクスウェルを対象に発動!!

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 その身を上下二つに引きちぎってくれます!

 

 そう覚悟して神威を発動したのですが

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 

 マクスウェルは右に高速でサイドステップ

 

 結果

 

 

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 

 

 マクスウェルの左腕を神威で持っていきました。

 

 もがれた左腕の断面から太いケーブルが何本か出ています。

 

 やはり全身を機械化しているみたいですね。

 

 

 

「ちっ!外しましたか。ならもう一回」

 

 

 

 私は舌打ちしながら再び神威を発動。

 

 しかし

 

 

 

「ふっ!!」

 

 

 

 マクスウェルは右手に銃を取り出し私に魔力弾を放ちます。

 

 神威発動中ですり抜けができません。

 

 シールドを展開して防ぎます。

 

 しかしその一瞬で

 

 

 

「…恐ろしいな。まさか空間ごと私の身体を引きちぎるとは」

 

 

 

 マクスウェルがユーリさんの下にたどり着きます。

 

 右腕には気を失っているユーリさんを抱えています。

 

 

 

《ユーリ!!》

 

「正直君も私の子供にしたいところではあるが、欲張ってユーリを手放したくはない。

これで失礼させてもらうよ。…トラブルしか起きていないが何、最後に笑えればそれでいいのさ」

 

「行かせません!!」

 

 

 

 私は再び神威をマクスウェルに向けて発動しようとしますが

 

 

 

「いいのかい?ユーリにも当たるよ?」

 

「!?」

 

 

 

 マクスウェルはユーリさんを神威の有効範囲内に入れます。

 

 私は慌てて神威の発動を止めます。

 

 そうしているうちにマクスウェルはユーリさんを連れて姿を消しました。

 

 

 

……

………

 

 

 

「我らの力を持っていけ」

 

 

 

 ディアーチェさん達に応急処置を施しマクスウェルを追撃しようとした時、ディアーチェさんからそう指示を受けました。

 

 

 

《我が王…しかしそんなことをすればあなたとレヴィは》

 

「わかっておる。再びあの猫の姿に戻ってしまうであろう。だが我らはもう動けぬ。

だからこそお前達に我らの力と想いを全て託す」

 

「話ができなくなるのは残念だけど…それでユーリが戻ってくるなら、平気」

 

《ディアーチェ、レヴィ…》

 

「…何故ですか?」

 

 

 

 会話の流れを遮ってしまいましたがそれでも私はディアーチェさんに問いかけずにはいられませんでした。

 

 

 

「何故私を庇ったのですか?」

 

「…」

 

「仮に私が死んだとしても中にいるシュテルさんは無事なはずです。デメリットは精々猫に戻ってしまうくらいです。

そして私を庇ったことで逆にあなたが戦えなくなりました。

何故…自分ではなく私を戦力として残したのですか?」

 

《あかり…》

 

 

 

 しかし、そんな私の問いを

 

 

 

「たわけ。わからぬか?」

 

 

 

 ディアーチェさんは一刀両断します。

 

 

 

「我がお前を庇ったのは戦力がどうとかそんな打算的なものでは無い

我がお前を庇ったのは…」

 

 

 

 そして私の問いの答えを言います。

 

 

 

「お前が我が臣下の…シュテルの縁者だからだ」

 

 

 

 その答えに私は黙ることしかできませんでした。

 

 

 

「…」

 

「君に何かあればシュテるんが…ううんシュテるんだけじゃない。王様もボクも悲しむ。だから王様は君を庇ったんだよ。

それくらいボクにもわかるよ」

 

《…あなたは私にとって妹のような存在です。そしてそれはこの二年間で一層強くなりました。

私はあなたも失いたくはないのですよ》

 

「お前が我のことを気にするのであればさっさとユーリを助けてこい。

うじうじ悩まれるよりそちらの方が数段マシだ」

 

 

 

 そしてディアーチェさんとレヴィさんは私に全ての力を渡し、猫へと戻ってしまいました。

 

 

 

 

……

………

 

 

 

 高層ビルが建ち並ぶ一直線の道路

 

 そこを駆け抜ける金色の魔導士が前方に見えます。

 

 フェイトさんです。

 

 その後ろには巨大な機械の鎧を身に纏ったユーリさんが追走しています。

 

 原作通りユーリさんを引き付けているみたいです。

 

 唯一原作と違うのはこの場にディアーチェさんではなく私がいるところでしょう。

 

 フェイトさんが私に気づいたみたいです。

 

 

 

「君は!?」

 

「…ここは私が、私達が引き受けます」

 

「一人じゃ無理だよ!私も!」

 

「一人じゃありません。少なくとも今は…。

シュテルさんもそしてディアーチェさんとレヴィさんも一緒にいます」

 

 

 

 そう言うと同時に私は砲撃魔法を放ちます。

 

 今までの赤の砲撃だけではなく青と紫の二つ砲撃が追加され、合計三つの砲撃がユーリさんを襲います。

 

 それをもらったユーリさんは後方へと吹き飛びました。

 

 

 

「今あなたがいるべき場所はここではありません。

あなたのいるべき場所は…なのはさんの隣です」

 

「…!」

 

「行ってください。そしてなのはさんを助けてください」

 

「…わかった。君も気をつけて」

 

 

 

 そう言い残しフェイトさんはこの場から離脱しました。

 

 そして吹き飛ばされたユーリさんがこの場に戻ってきます。

 

 

 

《ユーリ!ディアーチェとレヴィから力を預かりました!

この力で私達は今度こそ絶対にあなたを助けてみせます!

だから…もう少しだけ辛抱してください!》

 

「シュテル!ダメです!逃げてください!」

 

 

 

 さっきの砲撃の影響かそれとも行動強制プログラムが弱まっているのか。ユーリさんは、身体は自由にできないものの意識はしっかりとあるみたいでした。

 

 

 

《私は…私達はあなたに暖かで幸福な日々をもらいました。本来であれば死んでいたはずの私達に!だからこれは、その恩返しです!》

 

「恩返しなんて…。私の方がずっとたくさんの幸せをもらったのに…!

シュテルの依り代のあなた!お願いです!シュテルと共に逃げてください!」

 

 

 

 シュテルさんを説得できないと覚ったからか、シュテルさんではなく私に逃げろと言ってきました。

 

 

 

「そういうわけにはいきません。

確かに私とあなたの間には何の絆もありません」

 

「そうです!あなたには何の関係も…」

 

「でもディアーチェさん達がそしてシュテルさん…、シュテル姉さんがあなたを助けたがっています」

 

《…!?》

 

「それだけで十分です。私が戦う理由は」

 

《あかり…》

 

「う、ああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 そしてユーリさんが絶叫すると共に襲いかかってきました。

 

 まずユーリさんはその巨大な機械の右拳を私に放ちます。

 

 私はレヴィさんの魔力を使い青白く輝く大剣を生成。

 

 そして右拳を神威ですり抜け

 

 

 

「はっ!!」

 

 

 

 すり抜けざまに右腕を切断!

 

 右腕は爆発と共に砕けユーリさんは再び後方に少し退きます。

 

 距離が少し開いた瞬間ディアーチェさんの魔力を使い無数の射撃を放った後、砲撃をユーリさんに向けて放ちます!

 

 無数の射撃でユーリさんが纏う巨大な鎧がボロボロになっていき、その後砲撃が突き刺さります。

 

 しかしそれでも止まらないユーリさん

 

 砲撃を浴びながらも前に出て残った左拳を私に放ちます。

 

 私はそれを再び神威ですり抜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すり抜けた瞬間

 

 胸に鋭い痛み

 

 視線を下に下げてみます。

 

 するとそこには

 

 

 

 マクスウェルの左腕が私の胸を貫いていました。

 

 

 

 何故?

 

 …そうです。マクスウェルの左腕は

 

 神威で飛ばして異空間にそのままに…

 

 

 

 腕だけでも動く…とか、ゴキブリか何か、ですか…あの人は

 

 

 

《…あかり!?》

 

 

 

 シュテル姉さんの悲鳴が聞こえてきます。

 

 しかし私の身体は力を失い膝をつきます。

 

 

 

「…避けてください!!」

 

 

 

 視線を前方に戻すとさっきすり抜けた左拳が再び唸りを上げ私へと振るわれるのが見えました。

 

 写輪眼の所為か死の間際だからでしょうか、全てがスローモーションに見えます。

 

 

 

『君の能力は絶大だが誰かを守ったりするには致命的に向いていない』

 

 

 

 あの人の放った言葉が私の心を抉ります。

 

 まるで私を嗤っているように感じます。

 

 やはり無理なのでしょうか…?

 

 私なんかではディアーチェさんの代役を果たすことなんて…

 

 

 

『我らはもう動けぬ。

だからこそお前達に我らの力と想いを全て託す』

 

 

 

 ……………いや

 

 

 

『話ができなくなるのは残念だけど…それでユーリが戻ってくるなら、平気』

 

 

 

 …そうです。私はディアーチェさんとレヴィさんに

 

 

 

『お前が我のことを気にするのであればさっさとユーリを助けてこい。

うじうじ悩まれるよりそちらの方が数段マシだ』

 

 

 

 …確かに私の能力は人を守ることには向いていません。

 

 そして私はどうしようもなく場違いで本来ここにはいない人間です。

 

 それでもディアーチェさん達は私を信じ、全てを託してくれました。

 

 私には責任があります。

 

 本来の流れに割って入ってしまった責任が

 

 私の存在によって誰かの悲劇を加速させることになってしまった、なんていうことは絶対にあってはならないのです。

 

 故に

 

 私は負けたくない。

 

 ここにおいては絶対に

 

 負けるわけにはいかない。

 

 

 

 その時

 

 私の視界の端に

 

 ゆらりと

 

 青色の炎が上がったように見えた。

 

 

 

「!?」

 

《あかり!しっかりしてください!!あかり!!》

 

 

 

 目の前にはシールドが展開されユーリさんの機械の左拳を防いでいました。

 

 シュテルさんが張ってくれたみたいです。

 

 しかし所々ひび割れて、長くはもたないのがわかります。

 

 

 

「…」

 

《…あかり?》

 

 

 

 私は徐にマクスウェルの左腕を掴むと、一気にそれを引き抜きます。

 

 

 

「ぐううっ!」

 

《あかり!?血が…》

 

 

 

 出血が激しくなりますがそんなものに構っていられません。

 

 私はその左腕を跡形も残らないように燃やします。

 

 

 

「…シュテル姉さん」

 

《…はい?》

 

「私に魔力を、…全ての魔力をください。賭けになってしまいますが、次で決めます」

 

《…》

 

「お願いします」

 

《わかりました。ディアーチェ達と同じように、あなたに全てを託します!》

 

 

 

 その言葉を最後に声は止み、膨大な魔力が私になだれ込みます。

 

 私はその魔力とディアーチェさんとレヴィさんから託された魔力、そして私自身の魔力を全て両目に注ぎ込みます。

 

 

 

「うおおああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 そして

 

 

 

須佐能乎(スサノオ)!!!」

 

 

 

 青色の巨人が姿を現します。

 

 

 

「なっ…なっ…なっ………!?」

 

 

 

 その大きさは大きかったユーリさんの機械の鎧を優に超え近くの高層ビルをも超えているためか、ユーリさんが驚愕の声を上げます。

 

 しかしそんなユーリさんの心情を身体は無視して須佐能乎に機械の左腕で殴りかかります。

 

 しかし

 

 

 

「!?」

 

 

 

 左腕が激突しても須佐能乎はびくともしません。

 

 私は返す刀で須佐能乎の右手に剣を生成

 

 そして

 

 

 

ズドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

 

 ユーリさん目掛けて振り下ろしました。

 

 轟音と共に粉塵は舞い上がり地面は真っ二つに割れます。

 

 そして粉塵が晴れるとそこには

 

 ユーリさんが纏っていた鎧と周りに浮かぶユニットの全てが完全に破壊され、気絶しているユーリさんが地面にうつ伏せに横たわっていました。

 

 私はそれを確認すると胸の激痛に意識を手放しました。

 

 

 

……

………

 

 

 

「にゃ~」

 

 

 

 猫の鳴き声が聞こえます。

 

 私はその鳴き声を頼りに意識を集中させ重い瞼を開けます。

 

 するとそこには

 

 

 

「あっ!?よかった…!気がつきましたね!」

 

「にゃー!」

 

 

 

 私の胸に手を乗せ治癒魔法をかけているユーリさんと赤いスカーフを巻いた猫…シュテルさんが私を覗きこんでいました。

 

 

 

「…ごめんなさい。私の所為でこんな…」

 

「にゃー!!」

 

 

 

 ユーリさんが謝罪するとシュテルさんはユーリさんの所為ではないとばかりに鳴き声をあげます。

 

 

 

「シュテルさんの言う通りです。この怪我はユーリさんの所為ではありません。

この怪我は…私の不手際で生じたものです。

ユーリさんが謝る必要はありません」

 

「でも…」

 

「それよりも、身体はどうですか?まだ操られている感覚は?」

 

「それは大丈夫です。あの一撃で私を拘束するプログラムは完全に破壊されました。…ありがとうございます」

 

「そうですか…。それなら、よかった…」

 

 

 

 どうやら私はディアーチェさんの代役を果たせたみたいです。

 

 

 

「私は…どれくらい気を失っていました?」

 

「…ほんの数分くらいかと。私もさっき意識を取り戻したばかりなので詳しくは…」

 

 

 

 つまりまだ事件は続いているかもしれないということですか。

 

 大丈夫だとは思いますが敵がいないか一応魔力感知を行います。

 

 ……………これは

 

 魔力感知の結果、周囲に敵はいませんでした。

 

 しかし……

 

 なのは姉さんの魔力が地上にない?

 

 いったいどこに…?

 

 探していると見つけました。

 

 上空です。それも今までの比ではないくらいの高さです。

 

 いったい何故…?

 

 目覚めたばかりで頭が回りません。

 

 

 

 そして私は思い出します。

 

 この事件の最後を

 

 なのは姉さんがどうなるのか

 

 次に浮かんだのは今となっては過ぎ去った過去の出来事

 

 病院の冷たい一室で血が滲む包帯を身体中巻き付けベッドに寝たきりの父さんの姿

 

 

 

「にゃっ!?」

 

「待っ!?ダメです!?動いちゃ」

 

 

 

 気づいた時には体が勝手に動いていました。

 

 その時、頭の中に出てきたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転生直前の

 

 嗤っていた邪神の顔でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 私は今地球の大気圏にまでその身を上昇させていた。

 

 マクスウェルさんが衛星砲を町に向けて放とうと画策していたからだ。

 

 私はそれを阻止するためにここまで飛翔していた。

 

 そして目の前には衛星砲とそれを守護する群体イリスさんがいる。

 

 

 

「はじめまして。武器を下ろして、少しお話しできないかな?」

 

 

 

 しかしそんな私の問いかけには答えず、相手は右手に持った銃口をこちらに向け魔力を溜める。

 

 私はそれを受けストライクカノンを相手に向け魔力を込める。

 

 そして互いに同時に引き金を引き魔力砲が発射される。

 

 魔力砲が衝突すると同時に私は高速で相手目掛けて動き出す。

 

 相手は近づかせないように連続で砲撃を飛ばす。

 

 

 

(いろんな場所でいろんな人がいろんな事を考えて)

 

 

 

 私はその砲撃をかわしながら前へと飛ぶ。

 

 

 

(時々こんな風にわかり合えずに折り合えずにぶつかることがあって)

 

 

 

 かわしきれない砲撃は私の周囲に浮かぶユニット、フォートレスで防ぐ。

 

 二個あったフォートレスのうち一基が破壊される。

 

 

 

(戦って意志を通すなんて本当は良くない)

 

 

 

 最後のフォートレスも破壊される。

 

 

 

(だけど戦わなきゃ守れないものもある!)

 

 

 

 相手の下にたどり着きストライクカノンを突き刺す。

 

 相手はそれを右手の銃をストライクカノンに合わせる。

 

 ストライクカノンにひびが入り破壊される。

 

 

 

(守りたいもの、守れなかったもの。私の背中にある大切なものを守るため!)

 

 

 

 アミタさんから預かった銃を取り出し相手に突き付けた後発射。

 

 ゼロ距離で打ち相手のお腹に穴が空くけど銃が衝撃で壊れる。

 

 だけど止まらない。止まるわけにはいかない!

 

 私は右手を構える。

 

 相手もそれを受け右手を構える。

 

 

 

「私達の魔法はそのためにあるんだ!!」

 

 

 

 私の右拳が相手の左頬に入る。

 

 それと同時に相手の右拳が飛んでくるけど、私はそれを左手で受け止め

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 そのまま左の手のひらから全ての魔力を込め砲撃を放った。

 

 私も少し痛いけど、相手は背後にあった衛星砲と共に桜色の光の奔流に呑み込まれる。

 

 そして光が収まり残ったのは、辺りに散らばる細かい機械の部品

 

 衛星砲か若しくはそれを守っていたあの人の部品だと思う。

 

 町を守れた安堵と話ができなかった残念さとで複雑な気持ちになる。

 

 するとその時

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 私の背後からさっきの人が左腕を首に巻き付ける。

 

 首だけで振り向いてみるとそこには

 

 顔左半分の皮膚が剥がれ機械が完全に露出しているあの人の姿

 

 また左眼部分は赤いランプが埋め込まれていて、チカチカと点滅している。

 

 そしてどんどん点滅の速度が速くなっていく。

 

 

 

(自爆する気!?)

 

 

 

 私は焦り拘束から逃れようとするけど

 

 

 

(まずい…!抜け出せない!)

 

 

 

 そして今にも自爆する。

 

 その時だった。

 

 

 

「…えっ!?」

 

 

 

 誰もいなかったはずの私の左隣から腕が伸びあの人の頭をもぎ取る。

 

 いったい誰が?と左を見てみると

 

 

 

「シュテ…!?」

 

 

 

 あの子がいた。

 

 あの子はもぎ取った頭を私の位置とは逆方向に投げると同時に両手を広げる。

 

 次の瞬間

 

 

 

 投げた頭が爆発した。

 

 

 

「ぐ、うっ…!」

 

 

 

 爆発の衝撃を受ける私

 

 衝撃は私を拘束していたあの人の体を容易く引き剥がす。

 

 でもそれだけで予想していた程の衝撃じゃなかった。

 

 その理由は当然あの子が私を庇ってくれたからだ。

 

 

 

(…あの子は!?)

 

 

 

 私は爆発が収まると同時に周囲を見回す。

 

 すぐに見つかった。

 

 あの子は胸から血を流し防護服は爆発で全て消し飛びダラリと力を失い宙を漂っていた。

 

 完全に気絶しているみたいだった。

 

 本来の私ならすぐに治癒に走ると思う。

 

 でもこの時の私はその行動に移れなかった。

 

 その理由は

 

 

 

 

 

 あの子のお面

 

 

 

 

 

 爆発であの子のお面の左目部分からひびが入っていて

 

 今もひびは広がっている。

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お面が割れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………あ……か……り……?」

 

 

 

 私は見間違いかと思い何度も目を瞬かせる。

 

 でも光景は変わらない。

 

 胸とそれから、爆発の際破片が目に入ったのか左目からも血を流して気絶しているあかりの姿

 

 

 

 嘘

 

 嘘だよ。

 

 だって…だって、あかりは…

 

 頭はいいけど、運動が苦手で、上手く人と話せなくて、少し引っ込み思案で、いつも私の後ろをついて歩く、どこにでもいるような普通の子で

 

 私の守るべき大切な妹

 

 なのに

 

 

 

「………なんで、………どうして…」

 

 

 

 そんな私の問いに答えてくれる人は誰もいなかった。

 

 

 




後少しで最終回の予定
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