重苦しい空気の中、病院の廊下を歩く。
誰もが一言も発せず、できるかぎり早く歩く。
私となのは姉さんは、母さんに手を繋がれ歩いています。
ただその手はとても強く握ってきます。
そして、一つの病室の前にたどり着く。
母さんが握っていた手を離し、ドアの取っ手を掴み開ける。
そこには・・・
最初に感じたのは強い消毒液の臭い。
この臭いだけでもこの病室の主が重い病体だということが分かる。
次に目についたのは一つしかないベッド。
そしてベッドから伸びている沢山の電極がモニターに繋がっており電極図が一定の間隔で音を鳴らし、電極に繋がれた者の命が風前の灯だと思わせる。
これらを見て、ベッドに近づきたくない。現実を見たくないという思いがよぎる。
そう尻込みしていると母さんが優しく手を繋いでくる。
…私は母さんに手を繋がれベッドの近くへと行く。
ベッドの中は
・・・酷い状態だった。
体のあちこちに包帯が巻かれて、所々赤黒くなっていて、出血量の凄まじさが容易に想像できる。
内出血しているのか包帯から青紫になっている肌がはみ出ており外部だけでなく内部もぼろぼろになっているいることが分かる。
唯一包帯が巻かれていない顔は青白く、一見死人のように見える。
私はその状態の父さんを見てただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
そうして見ていると医者がやって来て母さんを連れだす。
…ドアから僅かに母さんと医者の話し声が聞こえる。
「…主人は、大丈夫なんですよね?すぐに目を覚ましますよね?」
「・・・」
医者はしばらく沈黙する。
そして残酷な現実を告げる。
「…手は尽くしました。しかし体全体の無数の切傷、打撲による内出血、そして胸から腹にかけてついた大きな傷。それらによる大量の出血。・・・こんなことを言いたくはないのですが」
「ご主人はいつ目覚めるか分からない状態です。」
その後母さんは病院に残り、恭也兄さん、美由希姉さん、なのは姉さん、私は自宅に戻りました。
私は自宅の一室に一人います。
…今回の一件、原作知識という形で当然のように私は知っていました。
しかし、知識という形で知っていただけで、実際に現実で起こるとこんなにも私はショックを受けるのかと、
「多分私は、心のどこかでこれは現実ではなくまるでアニメの中に入ったみたいに思っていたんでしょうね…。」
自らの甘く楽観的な思考に歯噛みする私。
「事前に動けば父さんはあんな大怪我を負わずに済んだのでしょうか…?」
と、疑問を持ち
「いえ、道場で見たかぎり父さんはかなりの実力者でした。魔力を多少使えるだけで身体ができあがっていない私が居ても何も変わらないはず・・・」
しかし、でもと何かできたことがあったのではないかと自分を責めるあかり。
そして
「父さん…ごめんなさい。」
そう自分しかいない部屋で一人つぶやくあかりの眼は、
二重の三枚刃の手裏剣の紋様…万華鏡写輪眼になっていた。
ーーーーーーーーーー
妹…あかりは天才だったの。
病院で出会って、その後少し経って家に来て一緒に生活することになったの。
大人しく寝ていると思い、ちょっと目を離したらまだ小さい手足をジタバタさせて暴れていたりしていた。
それだけなら元気がいいで済ませれるけど、それが原因で痣になったりした時には、本気で怒ったの。…涙目になりながらだけど
(まだ赤ちゃんなんだから理解しているわけがないけど…)
私はまったく世話がやける妹なのと苦笑していたの。
そんな風に世話をしながら日々が過ぎていき、
ある日・・・
「姉…さん」
急なことで一瞬頭が真っ白になったの。でもすぐに正気に戻ったの。
「しゃ、喋った!?お母さん、あかりが喋ったよぉ!?」
私はすぐにお母さんを呼びに行ったの。
「えっ!?本当、なのは!?・・・ほ~らママですよ~。マ・マ」
「・・・母…さん」
…今思えば「ママ」じゃなくていきなり「母さん」と呼んだということもすごいと思うの。
でもこの時はあかりが初めて喋ったということと、初めて口にした言葉が私のことだったので、ただただ嬉しかったのです。
それから月日は流れて
あかりはすくすくと育って自力で歩いたり喋ったりできるようになったそんな時、
あかりが物置の奥で埃を被っていた折り畳み式の将棋盤を持って来たの。
興味本位でお父さんが私とあかりに遊び方を教えてくれるけど、駒が沢山あって覚えきれないの。
あかりもこの家に来たばかりの頃のお転婆だったイメージがあったから分からないだろうと思ったの。多分それはお父さんも同じだったと思うの。
…でもあかりは。一回聞いただけでお父さんと遊び始めたの。
お父さんの表情を見るかぎり駒の動かし方はあっているみたい…。
一時間が経ったの。
お父さんが勝ったみたい。
でも途中お父さんのあの真剣な表情から接戦だったみたい。
その後お父さんは仕事でいないことが多いからお兄ちゃんとお姉ちゃんが相手をしているみたい。
しかも将棋だけじゃなくてチェスもやっているみたい。
この時、私達はあかりが凄く頭が良いということに気付いたの。
お父さんが仕事で大怪我をした。
その報せを聞いて私達は今病院にいる。
前に来た時はあかりが産まれた時だったっけ
でもあの時はみんな幸せそうな顔をしていたのに、今はみんな怖い顔をしているの。
ベッドには包帯だらけとなっているお父さん。
悲しみで胸が張り裂けそう。
あかりの様子が気になって見てみる。
あかりは基本的に無表情であまり感情を表に出さないけど、本当はとても優しい、いい子だということを私達は知っている。
だから驚いた。
今にも泣きそうな歪んでいる顔、こんなに感情を表に出しているあかりを初めて見たから
お父さんが大怪我をして、これまでの幸せだった日常は崩れちゃった。
お母さんは病院に通い続けて、
お姉ちゃんは家事を片っ端からこなして、
お兄ちゃんは何かに憑かれたかのように毎日道場に。
そして、あかりは部屋に引きこもってご飯の時以外出てこない。
私は家族から相手にされない寂しさを抱え込み今日も公園で一人ブランコに乗っている。
抱え込んだ寂しさは晴れることなく、日が経つにつれどんどん積み重なっていきます。
そんな日々が二週間続きました。
いつものようにブランコに腰掛けて、前を見れずに俯いている。
すると、いつもとは違うことが起きた。
私の足下に影が落ちる。
…どうやら私の前に誰かが立っているみたい。
私はゆっくりと顔を上げ影の主を見る。
そこには
あかりが立っていた。
いつものように無表情で感情が分かりにくい顔をして、
私の前に立っていた。
「あ、あかり?」
「なのは姉さん」
「え?」
「一緒に遊んでくれませんか?」
私は衝撃を受けた。
なぜならあかりはいつもどこか遠慮しているのか自分からお願いをすることはめったにないから
何よりずっと引きこもっていたのに急に出てきたかと思えば遊びに誘ってきたから
だから私は、
「きゅ、急にどうしたの?あかり?」
と聞いてしまった。
私も一緒に遊びたいのに…
「一人は寂しいんです。もう嫌なんです。だから遊んでください。」
まるで私の心を代弁するかのような言葉
その言葉に私は
(…ああ。あかりも私と同じなんだ。)
天才だと思っていたあかりにも自分と似ている所があると知り、嬉しくなった。
そして
「・・・うん!じゃあ一緒に遊ぼう!」
あかりと一緒に遊ぶことにした。
続こう