俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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渾身の一句、寒暖差 ああ嫌だやだ 寒暖差

という訳で体調管理に気をつけましょう

作者?もちろんやられましたとも


(3)

 学級会当日、自分の名前に込められた意味の発表をクラスメイトそれぞれがクジを引いてその順番で次々に発表していく。

 

「わたしのみゆきという名前は、どんなに辛くても幸せを見つけられる子になって欲しいという願いが込められているそうです」

 

 丁度今は、星空が発表を終えたところだ。

 

「はぁぁ、ええなぁ!まさに名前通りに育ってるやん」

 

 今日までに黄瀬は、偶にぼーっと何かを考えている事もあったが、深刻に思い悩んでいるような様子は見せなかった。自分の中でまだ整理しているのか、それとも吹っ切れたのかは分からないが、俺達が無理に聞き出す様な事はせずに済んだのは幸いだ。

 

 

 

 カッカッカッ 【麗華】

 

「私の名前は漢字で書くとこう書くそうです」

 

 れいかの発表だ。麗華という字は結構バランス良く描くのが難しい筈なのだが、れいかの書く字は、書き慣れているのもあるだろうがそれを抜きにしてもとても綺麗でバランス良く書けている。

 

「華のように麗しく、美しい心を持った子になるようにとお爺様がつけて下さいました」

 

 あのお爺さんが……小町にも良くしてくれたらしいし、厳しそうな見た目だったけど、めっちゃ良い人だったよな……

 

 

 

 

 緑川、俺、と終え発表も終盤に差し掛かった時、遂に黄瀬の順番が回ってきた。

 

「わたしの名前のやよいっていうのは、昔の暦で三月の事で草木の芽吹く時期だから、生き生きとした日が始まる、という意味が込められているそうです……」

 

「なるほどなぁ」

 

「やよいちゃんいつもいきいきしてるもんね!」

 

「あ、うん、あはは」

 

 日野と星空が明るく声をかける。だが、黄瀬からの笑みは傍目からは分からないだろうが、あれは愛想笑いだろう。

 

 

 

「起立!……礼!」

 

 黄瀬の事を考えながら話半分に残りの発表を聞いていたらいつの間にか学級会が終わっていた。あの様子だとまだ吹っ切れた訳では無さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 今日も天気は雨だ。六月もそろそろ終わり、来週には七月に移るというのに相も変わらず雨の日が多くて嫌になる。まぁ、梅雨だからと言われればそれまでなんだがな……

 

 六人で傘をさしながらの下校中、今日は久しぶりに全員揃っての下校だ。

 

 普段は日野や緑川が部活で居なかったり、れいかが生徒会だったり、はたまた、れいかと俺の二人きりで下校させてもらったりと六人全員が揃うことはなかなか無いのだが、この雨で部活も無く、れいかの生徒会も今日は無いようなので全員揃った訳である。

 

「まさに雨さまさまだな……」

 

 さっきは嫌になるなんて思ってたが(てのひら)なんて回してなんぼだ。

 

 そんな事を考えながら、れいか達に歩く速さを合わせていると……

 

「……あ、あのね!みんなに、聞いて欲しい事があるの!」

 

 突然立ち止まった黄瀬が声を上げたのだった。

 

 

 

 あのまま歩きながら話す事でもないと俺達は近くの公園の東屋(あずまや)へとやってきた。

 

 

「へぇ、じゃあさっきの名前の由来はやよいちゃんが自分で調べたの?」

 

 黄瀬の話を聞き終えた時の星空の第一声がこうだ。

 

 どうやら黄瀬がここ最近悩んでいたのはこの事だったようだ。

 

「うん、名前を考えてくれたパパは天国へ行っちゃったし、ママも知らなかったから……」

 

 本当の悩みは父親との事なのだろう。自分の名前の由来をきっかけに今は亡き父親との事を改めて見つめ直す事になったのかもしれない……

 

「そう……か」

 

「もう、そんな顔しないで!あーあ、どうしてわたしの名前はやよいになったんだろ?」

 

 余程深刻な顔になってしまっていたのか、張本人の黄瀬にまで気を使わせてしまった。

 

「え、ええやん!ウチなんか呼びやすいようにあーから始めたくてあ・か・ねーやで?単純過ぎるわぁ」

 

「でもそれはパパの理由でママには別の理由があったんでしょ?」

 

「あー、発表の時に言うたヤツなぁ。ウチが生まれた時、空か茜色で綺麗やった。娘にもあの空のように綺麗な心を持ったええ子に育ってほしい、だからあかねにしたんや……ってヤツな……あらぁ多分後付けやな」

 

「そんな事ないってぇ」

 

「だったらアタシなんかもっと単純だよ……俺の願いはただ一つ、真っ直ぐな子に育ってほしい……だから一直線のなお()!……そんなもんやで?」

 

「関西弁真似すな……」

 

「ふふっ、でもその通り真っ直ぐなっ子に育ってますよ?」

 

「れいかぁ……!!」

 

「今はめちゃくちゃクネってるけどな……」

 

 はぁ……なんだか気が抜かれる感じだな、もっと楽に考えればいいのかねぇ……

 

「そういうは・ち・ま・んも連想ゲームやったなぁウチらの仲間やんな!」

 

「あ、あかねちゃん……!」

 

 そう言って肩を組んでくる日野に辟易していると、急に星空が慌てたように声を上げた。

 

「んぁ?………あっ!ごめんな比企谷……」

 

「あ?……何がだ?」

 

 日野も日野で急に大人しくなるし……

 

「ふふっ、八幡君は覚えていますか?私が初めてプリキュアになった日のことを」

 

 そしてれいかは心底嬉しそうな顔をして急に懐かしい事を聞いてくる。

 

「そりゃ覚えてるが……なんで急に?」

 

 今この場で聞くことか?…………ああっ!

 

「もしかして名前呼び……か?」

 

「……うん、あの時の比企谷くん……ちょっと怖かったし……」

 

 あぁ、それでか……

 

「あの時は……まぁ、悪かったな……」

 

 あの時はこいつらともこんなに深い関係になるとは思ってなかったしな……

 

「えへへ、あたしこそごめんね」

 

「……なぁれいか、その、いいか?」

 

 あの時喜んでくれた、れいかの少し照れた顔がよみがえる。

 

「ええ、今更そのくらいの事で嫉妬なんてしませんよ。それに私の大好きな人達同士が、より仲良くなるを事を喜ばないほど、小さな器のつもりはありませんから」

 

「そうか……」

 

 それじゃあ……

 

「なぁ……二人だけで分かり合ってへんでウチらにも分かるように言ってくれへん?」

 

「ああ、すまんな。そのぉ……なんだ?」

 

 改めて言うのってかなり恥ずいな……

 

「ふふっ♪八幡君はもう名前で呼んでもいいって言いたいんですよ」

 

 すかさず、助け舟を出してくれたれいかに乗っかる。

 

「まぁ……そういう事だな///」

 

 照れ臭くて直接顔を見ることが出来なくて、顔を少し背けながら告げた。

 

『八幡くん……!』

 

『八幡……!』

 

「お、おう……」

 

 こうやってれいか家族とれいか以外に呼ばれるのは、なんか変な感じだ……けど悪くは無いな。

 

「あたしも!あたしの事もみゆきって呼んで!」

 

「ウチもあかねでいいで!」

 

「わたしも!やよいって呼んでくれると……」

 

「もちろんアタシの事もなおって呼んでよね!」

 

「お、おう、わかったから落ち着けって……」

 

「ふふっ、仲良きことは美しきかな……ですね」

 

『私は少し嫉妬しますけどねっ……ふんっ」あらあら……」

 

 

 

 

「ねぇみんな、実はまだ聞いてもらいたいことがあるんだけどいい?」

 

「もちろんだよ!なんでも言って!」

 

「まぁ、話を聞くくらいなんてこと無いしな」

 

 黄瀬がそれで楽になるなら何よりだしな……

 

「……みんなありがとう!さっきの話の続きなんだけど、実はわたし、パパから名前の由来を聞いたん事があるんだって……でも、五歳の時だったから覚えてなくて……」

 

「そうだったんですね」

 

「それに、小さい頃はもっと沢山パパの事覚えてた筈なのに、今じゃパパとどんな風に暮らしてたのかさえ思い出せなくなっちゃってて……」

 

 大切だった筈の事さえ忘れてっちまうのは、ままならねぇよなぁ……

 

「時々思うんだ……パパはわたしのこと、どう思ってたんだろって」

 

『……………………』

 

 一瞬沈黙が場を包む。

 

「そんなの決まってるよ」

 

 だがそこで星空……いや、みゆきが声を上げた。

 

「やよいちゃんのパパはやよいちゃんの事を愛してた。絶対に、何よりも……」

 

「ありがとう。そうだといいんだけど」

 

「やよいちゃん、ここはもう一度、お母さんとちゃんと話をした方がいいと思うな」

 

「ええ、お父様とやよいさんの思い出のエピソードがある筈です」

 

「……うん!そうしてみる」

 

 そうやって頷くやよいの顔にはもう、(うれ)いの影は残っていなかった。

 

「よっしゃ!じゃあ早速お母ちゃんと話さなあかんな!」

 

「ええっ?!」

 

「やよいちゃんのお母さんは今どこにいるの?」

 

「え?今はこの近くのホールに居ると思うけど……」

 

「なら、直ぐにそこに行った方がいいな」

 

 なんだか何時もこいつらと一緒にいた所為か、俺も少し考え方が寄ってしまった気もする。

 

「思い立ったが吉日と言いますしね」

 

「えっ、えっ?」

 

「ほらっ!やよいちゃん!お母さんのところに行って!」

 

「えっ!?でも……うん!わたし、行ってくるね!」

 

 傘をさし、雨の中を小走りでかけていくやよいを東屋から手を振り見送る。……いい結果になるといいな。

 

 

 

 

 やよいの姿が小さくなると急にみゆきが立ち上がった!

 

「……よし、それじゃあ追いかけるよ!」

 

「………はっ?」

 

 謎の宣言と共に……

 




はい、という事でやよいちゃんのお悩み相談兼名前呼び回でした!

実はオールスター編の時に他のプリキュア達を名前呼びしてたのが伏線でした(伏線って言えるのか分からないですけど……)

予定では今章は次回のバトル回で終幕となる筈です!あくまで予定ですけど?

それでは次回もお楽しみに!
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