近くのホールの前で雨の中黄色い傘をさして佇むやよい………と、それを塀越しに覗き見ている五人の影……まぁ俺達なんだが……
「ここまで着いて来ちまったが本当に平気か?」
「そうかたいこと言わんと、それにもう八幡も共犯やで?」
小癪な……
「あっ、こっち向く!」
ザッ……
全員一斉に屈んで塀に隠れる。……あれ、コレ俺も隠れたらマジで共犯じゃん……
「やよいー?」
「ママっ!」
塀の向こうから聞こえてきた声に、ゆっくりと塀から顔を出す。
「あれがやよいちゃんのママ?」
「うん、キッズファッションの会社で働いてるらしいよ?」
「なおは何処からそんな話を聞いてきてん……」
『八幡君、私達の子供の服はやよいのお母様のところにお願いしませんか?」
「きょうか……貴女はもう少し自重してください。今はやよいさんの悩みを取り除く事が大切です。邪魔になる様な事はいけませんよ」
「しょうだ……ん゛っ、そうだな……まぁ俺達に出来ることは殆ど無いだろうけど……」
きょうかはちょっと自分に正直過ぎないかしら///いきなり子供とか言われたら……そ、想像しちゃうだろ?///
「ぷふっ……や、やよいちゃんに、ふふっ……心からの笑顔がもふっ……ふっ、もど、戻ったら……黙って静かに帰ろう?……ぶふっ」
「…………」
はっ?キレそう……
「みゆき……台無しや」
「あの……やよいさんが中に居るとはいえ、勝手に入ってしまってよかったのでしょうか?」
「いやぁ、駄目じゃね?多分」
受け付けとか無かったから入れちゃったけど流石にまずいよな……
「……そうだよね。やよいちゃんの事は心配だけど悪い事は良くないし……帰ろっか」
「せやな、やよいの事は明日の様子を見ればわかるやろ」
「ははっ、そうだね。やよいちゃんって結構わかりやすいからね」
「じゃま、そう言うことで……」
言葉を続けようとした時、辺りが急に重苦しい空気に包まれた。
『………っ!?』
「みゆき!」
「なお!」
急に走り出す二人。窓から空を見上げれば満月が……
「出て、ねぇな……?」
………雨だからとか?
「八幡君?なおたちを早く追いましょう?」
「お、おう。行くぞ」
みゆき達に続き、開け放たれた扉を
「こんな大勢の方達を……許せません!」
「はんっ!なーにが許せませんだよ?オマエらは大人しく負けてりゃーいいんだよ!出てよ!アカンベェ!!」
『アカンベェ!!』
今度のは狐か?……狐?!動物型なんて初めてだぞ?!
「はちまんくん!ママを!」
「え?……お、おし!任せろ!」
強い眼差しのやよいからやよいの母ちゃんを預かる。
「みんな!どうしてここに居るかは聞かないから、ウルフルンを倒すのに力を貸して!」
『ええ!(うん!)』
やよいに声に続くように五人が光に包まれる……。
光が収まってくると五人の姿が現れた。
「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!」
「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!」
「ぴかぴかぴかりん♪じゃんけんぽん!キュアピース!」
「勇気凛々、直球勝負!キュアマーチ!」
「しんしんと降り積もる、清き心!キュアビューティ!」
『五つの心が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!』
光から変身した五人が現れる。
『アカーン!!』
しかしアカンベェはプリキュア達には目もくれずにドアを蹴破り、外に飛び出して行った。
「って、ちょっ?!逃げんなや!」
「おいアカンベェ!プリキュアはこっちだぞ!」
お前の指示じゃねーのかよ……
「みんな!追うよ!」
『うんっ!』
アカンベェの後を追って蹴破られたドアから外へと向かうビューティ達。
「…………」
「…………ちっ!」
一瞬取り残された者同士、ウルフルンと目が合ったが、ウルフルンも舌打ちを残して出ていってしまった。
全員出ていった為やよいの母ちゃんを壁際の座席に座らせ、俺も後を追うように外に出る。すると、想像以上の光景に出くわしてしまった。
「すっげぇ……」
圧倒的……それ以外のなにものでも無かった。
「おいおいどうなってやがる?!アカンベェ!!もっとしっかりしやがれ!!」
ウルフルンも何時ものニヤケ顔から一転して慌ててアカンベェに檄を飛ばしている。
「はぁぁせいっ!」
『アカンッ?!』
ハッピーがアカンベェの懐に潜り込み、腕の力で飛び上がる要領で顎をカチ上げると……
「やぁああっ!」
「はぁああっ!」
アカンベェの更に上に飛び上がったビューティとマーチが踵落としで、先程の巻き戻しの様にアカンベェを地面に叩き落とす。
『アカァァァン!ベッ!ベッ!』
「ふっ!」
「やっ!」
『アカンベェ?!』
プリキュア達に翻弄されているアカンベェも闇雲に腕を突き出し、捕まえようとするがサニーとピースに逆に腕を弾かれ、隙を晒す事になってしまう。
「ビューティ!」
「はいっ!」
『せぇぁああ!!』
その隙をビューティ達が見逃す筈もなく風を
『ンベェェェ?!?!』
弾き飛ばされたアカンベェは向かいのビルへと叩きつけられる。
横浜でのフュージョン戦を経て、何度も戦い、先輩達の戦い方を近くで見た事が影響しているのか、戦い方が洗練されている。
『ンべッ?!ベッ!ンーベッ!』
手足が壁に食い込んでしまったのか身動きの取れないアカンベェ。
「わたしがパパに贈った贈り物でみんなを傷つけようとするなんて絶対に許さない!」
何時もの気弱な姿とは違い、大切なモノをアカンベェにされた怒りか、目に涙をため、しかし、気丈に振る舞うピース。
「ふっ!プリキュア・ピースサンダー!!」
自身の手に落ちる雷に驚いていたのも前までの事、歯を食いしばって耐え、帯電した指からアカンベェへ向けて雷を解き放つ!
『アカンベェェ……』
雷に飲み込まれたアカンベェは浄化され、元になった物――折り紙の狐――に戻りピースの手によって拾い上げられた。
「クソっ!次こそこうはいかねぇからなっ!」
捨て台詞を残して消えていくウルフルン。
「ピース!デコルも拾って欲しいクル!」
「あっ!ご、ごめんね」
まぁ、思い出の品に比べたらキュアデコルも霞んじまうか……
「ママっ!ここの教会で昔、パパと結婚式を挙げたんだ」
やよいは、母ちゃんから思い出の品と昔の話を聞かされているうちに父親との記憶が蘇って来たそうだ。
「ええ?やよいずるいなぁ、じゃあ今度はママと結婚式挙げましょ?」
「もーからかわないで!それにここでわたしの名前の由来も教えて貰ったんだから!」
「ほんとに!?やよいお願い。教えて?」
「ママったら、頼まれなくても教えるのに……」
親子二人が
「なぁ、やよいの笑顔も見れたし、そろそろ退散しようぜ?邪魔しちゃ悪いし……」
「……うん。やよいちゃんも名前の由来の事思い出せたみたいだし本当によかった」
「雨も上がったし、いいもんも見れたし」
「やよいちゃんの力になれたし、もう言うことなしだね」
「名前にはみんなそれぞれ素敵なエピソードが込められているんですね」
「じゃあねー!」
「ええ、なおもまた明日!」
「じゃあな」
『やっと三人きりになれましたね」
「……?どうかしたのか?」
「いえ、私は聞いてませんけど?」
『実はやよいの結婚式の話を聞いて子供の名前を考えてみたんです♪」
「ごほっ!……はっ?!」
「なっ?!まだ私だってそこまで考えて無かったのに!」
『
『………………まともだ(です)』
『二人とも……私をなんだと思ってるんですかねぇ?」
オールスター回を経て、五人の戦闘センスは爆上がりしているのです!
やよいちゃんの名前の由来はママの名前が千春なのですが、そこからママの様に優しい子になってほしいから春の月の名前をパパがつけて上げました。
さぁて!次回は遂にマジョリーナ先生のアイテム回ですよ!!お楽しみに!