もっと素敵な道具を作ってくれてもいいのよ?
(1)
side:れいか
「ふっふふ〜ん♪」
今日も普段より、少し早く登校して八幡君と一緒に花壇のお手入れです♪
『最近は何時も花壇の手入れを楽しみにしていますけど、何かあるんです?」
「ええ、三月の中頃に植えたお花がもうすぐ咲きそうなんです。初めて八幡君と一緒にお買い物に行った時に買ったお花なので、とても楽しみで……」
『はぁ……そうですか、でもなんだか妬けてしまいます。私は土弄りも好きでは無いですし、それに道具を置いているあの小屋って、私が寝泊まりしていた場所なので何となく好きになれなくて……』
あらあら、これは少し私の配慮が足りなかったのかもしれませんね……
きょうかがもう一人の私になったのは五月、それ以前の話を八幡君とするときょうか一人が蚊帳の外になってしまいますものね。それの所為か私と八幡君が一緒にするものはなんでも好きになっているのに唯一花壇のお世話だけはあまり好いてはいないようですし……
「ごめんなさいきょうか、少し配慮が足りませんでした。でも貴女もきっとお花が咲き誇る花壇を見れば少しは土弄りにも関心が湧くかもしれませんよ?八幡君もお家でも手を出し始めたって前に言っていましたし……」
『別に謝られる程の事でもありませんし別に良いですけど……それよりも八幡君がお家でも土弄りに手を出しているなんて初耳なんですけど?……はい、今私も土弄り好きになりました。これで八幡君とれいかとお揃いですね!」
「あらあら……ふふっ♪」
何時も過激な部分が目立ちもしますがこういう子供っぽいところはまだまだ可愛いですね♪
『あら?何か子供たちが集まっていますけど……何かあったのでしょうか?」
きょうかに言われ気付くと、確かに登校途中なのかランドセルを背負った子供達が集まって何かを囲んでいました。
『体調不良だったら大変ですね……少し声を掛けましょう」
私が動こうとするよりも先に体は動いていました。きょうかに優しい心がすくすくと育っているようで改めて安心します。
『おはようございます。皆さん何かありましたか?」
『おはようございます!』
「お姉ちゃん見て見てカメラ拾ったん!」
元気の良い挨拶です。きょうかの心配は杞憂だったようですね。
「あら、本当ですね。ではどうすればいいか、わかる人はいますか?」
「交番に届ける!」
問いかければ直ぐに答えは返ってきました。
「ええ、大正解です。落として困っている人がいるかもしれませんから今は時間が無くても放課後には届けてあげて下さいね?」
『はーい!!』
「皆さん良いお返事ですね。それでは……」
特に問題も無さそうでしたので、また学校へ向かおうとした時の事です――
「お姉ちゃん!」
「どうしました?」
「はいチーズ!」カシャッ
「きゃっ?!」
――呼ばれて振り返ると突然、かなりの光量のフラッシュが……驚きのあまり、つい小さな悲鳴を漏らしてしまいました。
『…………………』
まったく、子ども達ですね?この位の子はイタズラ好きな子が多いですからね。
「き、消えちゃった……」
「もう、驚きましたよ?あまりこういうイタズラは感心しません。もうしてはいけませんよ?」
『…………………』
あら?そんなに強く叱ったつもりは無いのですが……どんどん子供達の顔色が悪くなっているような……
『お、お化けぇぇぇ!!??』
『キャーーー!!!』
一目散に逃げていく子供達……
「え?…………えっ?」
『ぷふっ……お化けですって……れいか、子供達に怖がられ過ぎではないですか』
そんなっ?!そこまで強く叱ってないですよ?!本当にですよ!?
少し納得しかねる事がありましたが、私を待って居る八幡君の姿が見えたのでもう気にする事ではありません。既に些細な事です。
『はーちまん君♡おはようございます!」
「おはようございます八幡君、今朝もお早いですね」
「おお、二人ともおは……あれ?……幻聴か?」
「……………?」
『……………?」
不思議な事に、何時もは少しの照れと共に挨拶を返してくれる筈の八幡君が急に口を閉じたのです
「はぁぁぁ……やばいな///俺ちょっとれいかときょうかの事が好き過ぎるみたいだな……」
「はえっ?///ちょ、ちょっと……いきなり過ぎます///」
『そんな好き過ぎるだなんて///わ、私も貴方の事が大好きですよ///』
いきなりどうしたのでしょうか///何時もは主導権は私が握っているからこそ強気でいられますが///そんな事をいきなり言われたら照れてしまいます///
「また……いやマジで居る?」
……どういう事ですか?
『八幡くーん!!」
「おわっ?!」
『ん〜♡やっぱり好きです♡大好きです♡」
「この感じ……きょうかだな?」
『そうですよ!いきなり愛してるなんて言われたら……もう我慢が効かなくなっちゃいますよぉ///」
もう!この子は、私を置いてなにを発情しているんですか!何かおかしなことが起きているかもしれませんのに!
「え?そこまで言って無い……じゃなくて、待て待て待て!」
「きょうか待ちなさい!」
流石に
「うぉ?!……お、落ち着いたか?」
「ええ、きょうかがご迷惑をお掛けします」
「いや、まぁそれはいいけど……二人とも気づいてるか?」
ああ、やっぱり……
『……?なにかあったのですか?」
「私は少しですが……具体的には分かりませんけど……」
私ときょうかのこの身に何かが起きていることだけは分かります。
「あー……えーと、あっ!」
八幡君は、少し辺りをキョロキョロと見回した後に校舎のすぐ側へと駆け寄りました。
「二人とも、この窓が分かるな?」
「ええ」
『それは、勿論」
八幡君が指差した窓ガラスを注視します。しかし……特に違和感は感じませんが……
「じゃあ、こうすればわかると思うぞ」
そう言った八幡君は私達の少し手前まで来ると、また窓ガラスを指差しました。
「……何か変わりましたか?……八幡君が写ったくらい………っ!?」
『うーん……私には分かりませんね。れいかはわかったみたいですけどいったい何が違うんです?』
こんな事が実際に起こるなんて……
「きょうかは……気付かないのですか?」
『もう、勿体ぶらずに教えてください!二人だけ気付いててズルイですよ!」
きょうかが少し拗ねてしまった様ですが今の私には構ってあげられるほどの余裕がありません……
「勿体ぶってる訳じゃねーんだ。きょうか……落ち着いて聞いてくれ」
『え?……はい」
「正直に言うと今、俺にお前の姿は見えてねぇ。声だけしか聞こえないんだ。そして……あの窓ガラスもそうだ。俺の姿は写ってるのに二人の姿は写ってねーんだ……」
やっぱり、八幡君に今の私達の姿は見えていなかったんですね……
『それって私達は今、透明人間になっているって事ですか?」
「まぁ、何故かは分からないがそう言うことになるな」
これで子供達にも異様に怖がられたのに納得がいきました。……そうなると私達がこの様な体になった原因は……
「カメラ……ですね」
「カメラ?」
『ええ、ここに来る前に子供達にカメラで写真を撮られたんです」
「撮られたすぐ後に、その子供達が急に怖がって逃げてしまったので不思議に思ってはいたのですが……」
あのカメラが原因と考えれば辻褄が合いますね。
「撮られたら体が透明になるカメラ……か」
呟いた八幡君の表情が苦々しく歪みます。
「不思議な道具って聞いて一番に思い浮かぶのがなぁ……」
「そういう事ですか……」
私の頭にも一人、おそらく八幡君が思い浮かべた人物と同一人物が浮かんでいます。
『……?」
「あぁ、きょうかは初めてなんだよな……バットエンド王国側に一人おかしな道具を沢山作ってる奴がいてなぁ……」
『透明人間になるような道具が他にも……では今回の事も?」
「ああ……」
「ええ……」
『マジョリーナ』
「だよなぁ……」
「ですよねぇ……」
今回の件も出来るだけ早く解決出来れば良いのですが……
今回透明人間になったのはれかちゃん一人(きょかちゃんも)になりました!
きょかちゃんが透明人間になるんだぞ!後は……分かるね?