れいかが透明人間になってしまっているため、今日予定していた花壇の手入れを急遽変更して、人の少ないうちに水やりだけでもと手早く終わらせた。
俺だけでやると流石に時間がかかり過ぎるかられいかにも手伝って貰ったのだが……ぶっちゃけ軽くホラーだったわ。
ジョウロがひとりでに浮き上がり、水を汲んで花に水を撒いていくのだ。もしも、もっと早い時間帯で俺一人だったらまず間違いなく何も見なかった事にしてダッシュで逃げただろう。
水やりを終え、教室に着くとまだ誰も来ていなかった。かなり急いで水やりを終わらせたからか、一番乗りになってしまったらしい。
「どうやら私達が一番乗りのようですね……できるだけ早く皆さんに私の状態をお伝えしたいのですが……」
隣かられいかの声だけが響く。今はきょうかの発案で手を繋いでいるが、離れたら本当に何処にいるか分からなくなるな。
「あ……」
「……?どうしました?」
「いや、今日のれいかの出席……どうすっかなぁ」
れいかの話によると体や服だけでなく、持っていた鞄さえも透明になってしまっているという。
「制服だけでも消えてなければ、手とか顔を隠すくらいで何とかなると思うんだけどなぁ……」
「そうですね……ジャージも鞄の中に入れて持って来ているので消えてしまっていますし……皆さんには心配をお掛けしてしまうかも知れませんが、今日の所は欠席させていただくのが無難かもしれませんね」
「だなぁ……」
取り敢えず今日の所はれいかは欠席という事で周りには通すことに決まった……決まったのだが……
『はぁ……♡教室でこんなに堂々と八幡君とくっつけるなんて……透明人間も意外と良いかも知れませんね」
「ごめんなさい八幡君、でも周りの目がある時は流石にこんな事出来ませんから……もう少しだけでも、いい……ですよね?」
「……まぁ、あとちょっとなら///」
どんな状況かと言うと、俺が椅子に腰掛けるのとほぼ同時に、きょうかが前から覆い被さる様に抱き着いて来たのだ。初めはれいかも慌てていたのだがきょうかに促されるまま今に至る……という訳だ。……まぁ俺もされるがままになってしまっているのは事実だが……
合わさった胸部から伝わる鼓動の音は既に早鐘を打っており、どちらがどちらの音かさえも混じりあって分からなくなってしまっている。
もう既にこの状態の中、何人か教室に来ているので変な行動を取ろうものならすぐ様視線を集めてしまうだろう。
「なぁ……そろそr「八幡おはよう!今日はいつもより早いね?それにれいかも居ないし……顔も赤いね?……何かあったの?普段ならまだれいかと花壇の世話をしてる筈だよね?」っ……?!」
「はうっ……?!///」
突然掛けられた声に驚いて、強くれいかを抱きしめてしまったっ///
「あれ……?今れいかの声がしたような……」
「そ、そーだなお!ちょーっと着いてきてもらっていいか!?れいかの事で話があるんだよ!なっ?なっ!?」
このまま話してボロを出しても行けないので多少無理やりにだが立ち上がり、なおを教室から連れ出す。
「ひゃあ……?!///」
『……っ///♡」
「え?ちょっ?ちょっと?!」
無理やり立ち上がったので片手でれいかの腰を支えて、首元に抱き着かせているような状態だが…………
「もー……なんなん?挨拶も無しに会ったそばから着いてこいなんて……まだ鞄も教室に置けてないんやけど……」
なおを連れて朝は
「そうだよ……それに、なんだか息も荒いし……顔も赤いよ?大丈夫?」
「はぁ……///……ふぅ///…………だ、大丈夫だ」
屋上に上がっている最中もずっとれいかを
「ふぅぅぅぅ…………よし」
息を整えてゆっくりとれいかを下ろす。
『あぁ……もっと♡」
「やだぁ……♡」
『………え?』
平常心……平常心……
「八幡……?やっぱり今……れいかの声が……」
「いやいや、ちゅーか……だいぶ……」
「い、色っぽい声……だったよね……」
三人からジトッとした視線が突き刺さるが、今は無視だ無視!
「んん……///あー、まず質問は受け付けねーぞ。先に説明をさせろ」
「……という事がありまして、私は今透明人間になってしまってるんです……んっ///」
途中から復活?したれいかが引き継ぎ――説明中もちょくちょく声が乱れていたが……その都度こちらにジトッとした視線を向けて来たが……――説明出来たし大丈夫だろう!
「そういうこと……わかった!アタシもそのカメラを探すの手伝うよ!」
「わたしも、れいかちゃんのためだもん」
「ウチもや!……でも学校行ってる間、れいかはどうするん?先に探しに行くんか?」
あー、それも最初に考えたんだがなぁ……
「私も初めはそうするつもりだったのですが……」
「まぁ、それを俺が止めたんだわ」
「なんでや?」
確かにその方がより長く探せるから早くカメラが見つかる可能性も高いんだが……
「危ないんだよなぁ……」
透明人間……コレ、実はかなり危険だと思う。
「……あ、わたしわかったかも!」
「やよいほんま?」
「うん、れいかちゃんって今は見えないから、車とか自転車の人が気付かないって事だよね?」
「ああ、普通は自転車に乗って人の近くを通る時とかスピードを緩めたり、少し距離を取って追い抜くだろ?」
「確かに……」
「ホンマや……」
「ええ、ですのでこの透明人間の状態でいる時に外を歩くなら、必ず人の近くに居るようにって八幡君にキツく言われてしまって……」
「そりゃ八幡ならそう言うよね……」
「れいかも大事にされてるなぁ」
「まっ、そんな訳だ。みゆきにも後で同じ話をするが今日はそんな感じでよろしく頼む」
『うんっ!』
「今日は青木さんが欠席みたいね。授業でのプリントは……」
「あ、俺が持って行きます」
「え?あー……じゃあ比企谷君、よろしく頼むわね」
そのあー……はなんなんよ……
朝のHRが終わったので、一時限目の授業が始まるまでの間に急いでみゆきを呼び出して事情を説明する。
「いやぁぁぁぁ?!」
「オバケクルゥゥゥ?!」
「あはははははっ!みゆきめっちゃ叫んでんやん!」
「まぁ当然の反応だろ……」
あかね曰くこれが一番手っ取り早いだろうという事で、れいかに無言で二人の耳元で適当な事を囁いてもらった結果がこれである。……いやこれ説明してないから二度手間なんだわ……
「びっ……びっくりしたよぉ……」
「クゥルゥ……」
『ふふっ、ごめんなさい。あかねがどうしてもと言うものですから」
あっ……躊躇無くあかねを売ったわ……きょうかちょっと黒くなってる?……うーん、元からかも……
「あっ!きょうかそれ言ったらアカンやーん?!」
「あかねちゃーん!」
「あかねひどいクル!」
「やって思いついちゃったんやもーん!」
逃げたあかねを追いかけて行ってしまうみゆきとその肩に乗ったキャンディ……
「ふふっ、とっても仲良しですね」
「でも……説明しない内に行っちゃったよ……」
「きょうかが喋っても不思議に思って無かったしねぇ」
「しょうがねぇ、また次の………あ、戻って来た」
青い顔をしたみゆきとキャンディがダッシュで戻って来たかと思うと……
「い、今!ここに居ないのにきょうかちゃんの声がしたのっ!」
「きっと生霊クル!」
「いや、反応が遅せぇのよ……」
「と言うか、キャンディはどこでそんな事覚えてきたのさ?」
「……へ?」
「……クル?」
まぁ、戻って来たんならとっとと説明しようかねぇ……
きょかちゃんがアップを始めました……
れかちゃんがアップを始めました……
次回は授業ちゅう!……余談ですがこの話を考えてる時にAnotherの事を思い出しました。
次回もお楽しみに!