きょうかの過去を振り払う叫びが響いた。
きょうかの蹴り抜いた先には何かを引きずった様な跡が
「ジョーカーは……」
誰かの呟きが聞こえた……その瞬間、砂煙を吹き飛ばし、腹回りに手を当てたジョーカーが現れた。
「まさかこの様な隠し球を用意していたとは、ワタシも驚かされましたよ?しかし、残念です。もう少し早く来ていれば楽しめたのでしょうが今はあまり時間がないのです」
『では手早くその憎たらしい仮面を粉々にしてあげますから大人しく
きょうかが凄むと、ジョーカーは慌てた様に手を振り大袈裟に距離を取った。
「ノンノンノン!残念ながらその時間もないのですよ。プリキュアの皆さんのバッドエナジーを奪うことが出来ないのはひじょーーに!残念ですが、今回はこのメルヘンランドの皆さんのエナジーで我慢するとしましょう……それでは、アディオス!」
ジョーカーはそう言い残すとその場で一回転するとトランプが吹き荒れ姿を消していた。
『逃がしましたか……はっ?!八幡君!大丈夫でしたか?ああ、私がもう少し早く起きていれば……」
苦々しげにジョーカーが逃げた跡を睨みつけていたきょうかだったが、ハッとこちらを振り返ると文字通り飛ぶように駆けつけて来て甲斐甲斐しく傷がないか確認し始めた。
「ああ、ありがとうな。助かったわ。……けど、みんながな……」
ジョーカーにボロボロに負け、初めての大敗北を喫したのだ。その心中は察して余りあるものだろう。
「あっ……雨」
そしてその心を映すように空からは冷たい雨が降り始めたのだった。
あめが降り始めたため俺達は場所を移すことにした。少し歩いた所にある東屋の様な建物だ。
「……最後のデコルも取られちゃって……わたし達、これからどうしたらいいの?」
やよいの現状確認であろう言葉に誰かの答えを期待してか、一瞬空気が張り詰める。
「……拙者は行くでござるよ。キャンディを助けに……」
ポップが口にしたのは最初の目的。キャンディを救出することだった。
「そうだね。奪われたものは増えたけどアタシ達はキャンディを助ける為にここに来たんだし」
「う、うん!そうだよね!キャンディを助けに行かなくっちゃ!」
「……待って下さい。ジョーカーに全く歯が立たなかった私達に……一体何ができるんでしょうか」
みゆきに待ったをかけたのはれいかだった。
『それなら私がやります!私がジョーカーをこの手で!」
そうだ、さっききょうかはジョーカーに対して優勢に見えた。
「きょうか、貴女の身体は私の身体でもあります。無理をしていたのでしょう?今でも、手足に痺れが残っていますよ?」
『それはっ……」
れいかの言葉に愕然とする。じゃあ、もしあのままジョーカーと戦い続けていたられいかは危険な状態になっていたのか?
「あ、安心して下さい。あそこまでの無理はもうしませんし、させません」
れいかは俺の変化に気付いたのか、安心させるように俺の膝を擦りながら優しく微笑んだ。
「じゃあ……どうしたらええの?ジョーカーの言ったことが本当やったら最後に持ってったバッドエナジーで、あのピエーロが復活するんやろ……」
あかねのその言葉にみんな沈んだ表情になる。
「……ねぇ、もしそのまま、ピエーロが復活しちゃって、デコルも取り戻せなかったら……わたし達どうなっちゃうの?」
「……え?」
やよいは最悪の想像をしてしまったのか涙目で問いかける。
「もしそうなっちゃったら元の世界に帰れなくなっちゃうのかな?ママにももう会えなくなっちゃうのかな?」
『………………』
それは、もしかしたらと考えていても全員が目を逸らし続けていた未来だった……
「もし……もしもそうだったら……わたし……怖い」
やよいの悲痛な声は俺達全員の心情を表しているように感じられた。
「じゃあ、キャンディは?」
みゆきの問に返したのはなおだった。
「このまま帰るなら……見捨てることになる」
「なっ!そんなこと誰も言うてへんやん!」
「言ってなくても!そういう事に……なっちゃうんだよ……」
悔しそうに項垂れるなおに俺はかける言葉が見つからないでいた。
そんな時、静かに立ち上がったのはポップだった。
「皆の衆、こんな危険な事に巻き込んですまなかったでござるな……」
「ポップ?」
「いまならまだ、お主達の世界へ帰れるでござる。皆も大切な家族画ござろう。もとより拙者達の国の事。あとは、拙者に任せるでござる」
そう言ってポップは踵を返した。
「無茶や!」
「承知の上……それでも!拙者は……行くしかないのでござる……!そうしないと……キャンディが……妹が!うう、ああああ゛あ゛!」
あれほどまでに男らしさに拘っていたポップが今は俺たちの前で大粒の涙を流していた。
「……わたしね、この事はしっかりと考えなくちゃ行けない気がするの。上手く言えないけど、自分にとって……何が一番大切なのか」
普段とは違う、おちゃらけた雰囲気の無いみゆき。
「……それは全てを捨ててでもキャンディを助けるか、この身と大切な人の為にキャンディを見捨てるか……ということですか?」
れいかの問に、答えは帰って来ない。
「ならば……」
長く感じた沈黙の中口火を切ったのはポップだった。
「ならば、こうするでござる」
「ポップ……」
「バッドエンド王国は満月の間しかその姿を見せないのでござる。そして、その満月の日は今夜……拙者、夜まであそこに見える神殿跡で待つでござる。あとは皆の衆、それぞれご自身で決めてくだされ」
そう言い残してポップは一切振り返らずに神殿跡に足を向けた。
「やよいさんの言ったようにもう自分達の世界には帰れないかも知れません」
れいかがわざと脅す様な言葉を選ぶ。
「うん、だからみんなちゃんと自分で考えよう。自分にとって……何が一番大切なのかを」
みゆきの言葉にみんな頷きだけを返し、おのおのが別の方向へ歩いて行く。れいかもサッと俺の手を取ると誰も行かなかった方へ歩き出して行った………いつの間にか、雨も上がっていた……
『どうするんですか?」
あてもなく会話も無く、泉の近くまで歩いて来た時、きょうかがぽつりと呟いた。
「私達にとって本当に大切なもの……」
大切なもの……まず初めに思い浮かんだのはれいかときょうかだ。俺にとって何よりも大切になった人。次に浮かぶのは家族だ。小町、母ちゃん、ついでに親父。
『始めに言っておきます。私は帰る事に賛成です。非情だと思われようが、私にとって八幡君とれいか、あなた達二人が私の全てです。メルヘンランドやキャンディが危険でも二人にはかえられません」
きょうかの言葉に俺は何も返すことが出来なかった。何故なら俺も一理あると思ってしまったからだ。
「そう……ですか」
れいかもそう返すのみだ、否定する事は出来ない。出来るはずがない。
無言の時間が長く続いた。時計がないから分からないが数時間は経っただろう。
「なぁ、れいか」
「どうしました」
「もし、ここで俺達が帰ったとして……元の生活に戻れると思うか?」
「…………」
「俺はれいかときょうかが居ればそれで幸せだ。小町が居ればなお良い」
俺は言葉を続ける。
「でも、偶にキャンディ達の事が頭を
『心の底から……」
「笑えない……」
呟いたれいかは思い出した様にワンピースのポケット探ると短冊を取り出した。それはキャンディの書いた短冊だった。
「私も、もしそうなったとしたら心の底から笑える気がしません……」
『……確かに、それは嫌です……」
れいかもきょうかもその景色を想像したのか苦い表情だ……
「これで、答えは出ましたね」
『ええ、私はしぶしぶですけど……」
お互いに頷き合う。
「キャンディを助けよう……俺たちの笑顔の為に」
「『笑顔の為に……」」
三人の答えは決まった。
はい!という訳で決意を固めた三人でした!
キャンディの為に全てをかける……普通そんな決断は出来ません。ただ、見捨てるにしても後味はめちゃくちゃ悪いでしょう。大人びていてもまだ中学生です。心の傷になって心から笑えることはないでしょう。
だからこそ、キャンディの為ではなく、ただ大切な人の笑顔の為に……その為ならぜつぼうてきな状況にも立ち向かえるのではないでしょうか?
少しあとがきが長くなってしまいましたが次章はジョーカー&三幹部との対決回です!戦闘がシーンが多くなるでしょう。私も頑張って書くのでお楽しみに!