(1)
二人で手を繋ぎ、神殿跡へと歩みを進める。
崩れかけた石造りの柱が乱立する中を進み、遺跡跡へと続く階段を登っていると視界が開けたお陰で、少し遠くからこちらへ向かってくるみんなの姿が見えた。
「皆さんも覚悟を決めたようですね」
「ああ、みんなそれぞれ理由は違うだろうけど、一人で決めたんだ。かっけぇよな……」
例えば、俺一人で覚悟が決められただろうか?
……意味の無い想定だな……
俺達が神殿跡に到着したあと、直ぐに全員が揃った。
一番に、俺たちよりも早く到着していたみゆきは、全員が揃った事を確認すると急に手を合わせて謝ってきた。
「みんな、ごめん」
……このごめんはどうとったらいいんだ?
「わたしね、結局何が一番大切なのか、よく分からなかった。でもね、一つだけはっきりしたの……」
俺たちは静かにみゆきを見守る。
「わたし、キャンディが大好き……それと同じだけ、友達も、家族も大好き……だからみんな一緒がいい……みんな一緒の未来がきっと、わたしのウルトラハッピーなんだって」
みゆきの言葉を聞き終わると、あかねがそっと、手の平を下に向けて前に差し出した。
「わたし達の……やろ?」
「……んっ!」
その手を直ぐに手を重ねたのはやよいだ。
「……うん」
そして満足気に頷きながらも手を重ねるなお。
「ふふっ」
「…………」
俺とれいかもアイコンタクトでそっと手を重ねる。
「みんな……!」
みゆきも目を輝かせてその手を一番上に重ねる。
「せーの!」
『ハッピー!!』
お決まりになっている掛け声と共に手を掲げる。
「……行こう。キャンディが待ってる」
タンッ……
音が聞こえた方に視線を向けると、現れたのはポップだった。どうやら出てくるタイミングを伺っていたようだ。
「皆の衆、改めて感謝を伝えるでござる」
「ううん、キャンディを助けたい気持ちはわたし達も同じだから……」
「それでも……でござる。もうすぐ月が切り替わる故、切り替わったら出陣するでござる」
「月が……?」
「すぐ行くんやないの?」
疑問の声が上がるがポップは答えない。
そして……
「……来たでござる!」
ポップの声を合図にする様に満月が端から侵食されていくように紅く染まっていく。
「おいおい……」
「おどろおどろしいですね……」
そして、満月が紅く染まりきった時……
「ドロンッでござる!」
ポップが大きな鳥の姿へと変化した。
「さぁ!拙者の背に乗るでござる!そう長い時間繋がってはいないのでござる!」
「う、うん!」
「わかった!」
「ポップ、みんな乗ったよ!」
「皆の衆、しっかりと掴まっているでござるよ!」
その声と共に大きく羽ばたき、俺たち全員を乗せたまま、飛び上がった。
「きゃっ!」
「しっかり掴まっとけ!」
「あ、ありがとう」
一瞬、よろけたやよいを慌てて捕まえる。
ポップは飛び上がった勢いのままに紅い満月へと飛び続ける。
そして、
「ここが……」
「バッドエンド王国……」
赤紫の様な空の下、浮かぶのは真っ黒な雲ばかり、しかし雨が降っている訳でもない。
「見えてきたでござる!」
ポップの声に、みんなが正面に視線を向けると紅い月を背にそびえ立つ歪なものが見えてきた。
そこは岩山のようでありながら、所々に建物が立ち並び、洞窟の様な穴からも光が盛れ出している。
近づいてくると植物もあるにはあるようだが葉もなく、歪にくねっていて、枯れているのかさえ、定かでは無い。
「降りるでござる!」
地上付近まで近付いた所でポップの変化が解ける。
少し高いところから飛び降りた様なものだ。しっかりと着地する。
「霧が濃いな……」
霧が広がる中、近場の状況を確認しようと、みんな辺りを見回していると……
「やはり来たかプリキュア……!」
『えっ!?』
「くっ!」
濃霧の奥からウルフルンの声が響いてくる。
皆の意識が霧の向こうに集まると、まるで待って居たのかのように不自然に霧が晴れていく。その先には円柱状の岩が乱立しており、更にその先の切り立った崖の上にウルフルンだけでなく、三幹部が全員揃ってこちらを見下ろしていたのだった。
「ピエーロ様復活の邪魔はさせないだわさ!」
「キャンディは何処!キャンディを返して!」
「子羊ちゃんならあそこだぜ」
ウルフルンがそう言い親指で自身の背後を指す。その先には……
「キャンディ……」
三幹部達が居る崖よりも更に遠く、ここからでは上手く見えない程の場所に何かが立てられているのがうっすら見えた。
「あんな遠くに……」
「助けたいなら助けに行くオニ!」
「だーだーし!オレ達を倒せたらの話だけどな!」
「キャンディは絶対に助けるから!行くよ!みんな!」
『うん!』
みゆきの声にみんな一斉にスマイルパクトを取り出し光に包まれる。
光が収まってくると五人の姿が現れる。
「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!」
「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!」
「ぴかぴかぴかりん♪じゃんけんぽん!キュアピース!」
「勇気凛々、直球勝負!キュアマーチ!」
「しんしんと降り積もる、清き心!キュアビューティ!」
『五つの光が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!』
光の中から五人が進み出てくる。そして……
「えっ?」
ハッピーを後ろに庇うように更に数歩、四人が進み出た。
「コイツらはウチらに任しとき」
「ハッピーはキャンディをお願い!」
「えっ……でも!」
「私達の目的はキャンディを助けること……」
「まぁ、あれだ……誰かが此処で奴らの足止めをしとかねぇと、絶対邪魔して来るぞ?」
察した俺もハッピーに先に行くように促す。
「こ、ここは任せて先に行け!」
おい、ピースはフラグ立てんな……
「ハッピー!キャンディを頼むでござる!」
「……わかった。……でもキャンディだけじゃないから!ここからみんなで、帰るんだからね!」
ハッピーはそう叫ぶと三幹部のいる崖を迂回するように走り出した。
「はっ!逃がさねぇよ!行くぞ!」
ウルフルンの声に合わせてアカオーニ、マジョリーナもハッピーに向けて飛び出してくる。
「させぬ!煙玉でござる!」
ポップが投げた煙玉がハッピーと三幹部の間に落ちると凄まじい量の煙が巻き起こり何も見えなくなる。
『なぁっ!?』
「クソがっ!舐めた真似しやがって見えなくたって俺には鼻がってうぉっ?!」
「行かせへんわ!アンタの相手はウチや!」
「ここから先には行かせないよ!」
「わたしだってやれば出来るもん!」
各々が三幹部を足止めする為に一人ずつ連れ出してバラけさせる。
「八幡君はこっちへ!」
「おう!」
「ポップさんも!」
「承知でござる!」
肩にポップを乗せたビューティにお姫様抱っこの状態で運ばれ、三人が別々に降り立った円柱状の岩とはまた別の岩へと運ばれる。
「……まるでフィールドだな」
岩の上まで来て初めて気づいたが、岩の内側は少し凹んでいて外側の岩が壁のようになっているため、まるで奴らが戦う為に用意した様にさえ感じる。
「……来ました!はあっ!!」
「なぁっ?!」
岩の上に降りたって俺を下ろしてから
「ハッピー!貴女は気にせずキャンディの元へ!」
どうやら、隠れてハッピーに不意打ちをしようとしていたジョーカーを撃ち落としたようだ。
ドーンッ!
近くに落ちてきたジョーカーによって砂埃が巻き起こる。
「悪知恵の働く貴方のこと、こうして最後に現れると思っていました」
「んふふふ、キミ面白いなぁ……」
砂埃が晴れるとジョーカーはまるで、指で逆立ちをする様な格好でニヤニヤとこちらを見つめている。
「私達はキャンディを返してもらいます。そして、みんなで一緒に帰ります!」
「面白い、面白いなぁ……んふふふ、三幹部のみなさ〜ん!行きますよ〜!」
『世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!白紙の未来を黒く塗り潰すのだ!』
ジョーカーの号令に合わせて三幹部も一斉にバッドエンド空間を展開した。
それは何時もの様にただ広がる訳でも無く、各々が戦う岩の上のフィールドを覆うように、展開したのだった。
「キュアビューティ、一つ言っておきますが貴女達の願いは何一つ叶いません。……ましてやそんなお荷物を背負い込んでいるのなら……ね?」
ジョーカーがそう言って見つめてくるのは俺だ。
「八幡君はお荷物なんかじゃありません!私は貴方を全力で食い止めます。そして、貴方の言葉を覆して見せます!」
「ん〜ゾクゾクしちゃうなぁ」
こうして、ハッピーがキャンディを救出するまで、此処で三幹部とジョーカーを食い止める為の戦いが今、幕を開けたのだった。
はい!と言うことでバトルが始まりました!因みに八幡君視点なのでジョーカー戦のみの予定です!……予定です!
マジョリーナタイムとかいいなぁとか思いましたけど便利アイテムをくれねぇなら用はねーです!
それではまた次回!お楽しみに!