ちょっと普段より少ないです……
先に動き出したのはビューティだった。
「はっ!」
身を低くしてジョーカーに近づくと、下方から高速で跳ね上げる様に顎へと掌底を叩き込む。
「おっと!」
しかし、ジョーカーは絶えず笑みを浮かべながら、体を反らせるように楽々と躱す。
「やっ!ふっ!はぁぁっ!!」
「ほっ!まだまだぁ!ざーんねんっ!」
続けて放たれる回し蹴り、裏拳、ジャンピングニー……繋げていく連撃は恐ろしい程にあっさりとジョーカーにいなされ続ける。
「はぁ……はぁ……」
「この程度ですかぁ?キュアビューティ、貴女には聞きたいことがたくさんあるんですよねぇ……例えばバッドエンドビューティの事……とかねぇ?」
ジョーカーは気持ちの悪い笑みを浮かべながら語りかける。
「ワタシの記憶ではバッドエンドビューティは決して助からない運命……しかし、数時間前にワタシを蹴り飛ばしてくれたのは確かに、バッドエンドビューティでした。……これは一体どうなんっているんですかねぇ?」
やはり、ジョーカーはきょうかの事は把握していないようだ。
「それとも?そこにいる比企谷八幡くんに聞いた方が速いですかねぇ?」
「……くっ」
ビューティから、ぬめりとジョーカーの視線がこちらに移った瞬間言いようのない寒気が全身を襲う。
『愛の為です!」
ジョーカーの視線を遮る様に、ビューティがジョーカーとの間に立つ。
「……愛?」
『ええ、愛だと言ったんですこの腐れ道化!その気持ちの悪い視線を八幡君に向けないで下さい!」
「腐れ……酷い言われようですねぇ……ですが、そのキュアビューティとは似つかない言葉遣い……やっぱり
ジョーカーは嬉しそうに舌なめずりをしている。
『れいか……私も殺ります」
「……わかりました。二人でジョーカーを打ち倒しましょう」
左半分の衣装の白かった部分がじわじわと影を落とすように黒く染まって行くのだ。
「んふふふっ、ブラボー!ブラボー!素晴らしい!まさかあのキュアビューティがバッドエンドビューティを身の内に取り込んでいたなんてっ!まさしく想定外過ぎますよ!アッハッハッハッハッハッ!」
「いきます!」
一言呟くとビューティはジョーカーへ向けて駆け出し、攻撃をくりだす。
「ノンノン!勢いが足りないですよ!」
先程の様に煽る様な物言いで攻撃さばいていくジョーカー。
「はい、バーリア!」
「ふんっ!」
「へっ?えごぉぉっ?!」
振りかぶったビューティの拳を、未だにふざけながらトランプを大きくし、防ごうとしたジョーカー……しかし、防いだ筈のトランプは凍りつき、氷を突き破ったビューティの拳が喉仏に突き刺さった。
『これで少しは静かになりますね」
「あまり褒められたものではありませんが貴方が相手ならば躊躇う理由もありません」
「げぼっ!げっげっ!……ごろ゛ず」
喉仏への一撃が相当頭に来たのかジョーカーからふざけた雰囲気が消え去った。
喉を抑え、なにごとかを呟いたと思ったら、高速でビューティに接近し
先程よりも更に苛烈さを増した攻撃に晒されながらも、ビューティはその全ての攻撃を躱し、払い、受け流していく。
「すげぇ……」
激しさを増していく二人の戦いに俺は圧倒されていた。半日程前にはふざけながらも五人のプリキュアを制圧してしまったジョーカー。……そして、そのジョーカーと今では拮抗しているビューティ。
このまま戦っていればあのジョーカーも倒せるんじゃないのか……そう思い始めた時だった。
「……不味いでござる」
俺と一緒に戦いを見守っていたポップが不吉な言葉をこぼした。
「おい、どういう事だ?拮抗してんじゃねぇか」
「それが不味いのでござる……ビューティ殿のあの力、拙者はビューティ殿の奥の手と見るでござる。しかし、その奥の手を使っても力は拮抗……相手はあのジョーカー……あやつにもまだ隠している力がある筈でござる」
じゃあジョーカーにその力を使われたら、またビューティが劣勢になるのか?また、れいかときょうかが傷付くのか?
……認められねぇ。今でも鮮明に思い出せる、鏡華の終わりを悟った儚い笑顔が脳裏を過ぎる。麗華の悲痛な声が思い起こされる。
……覚悟は決まった。
「ポップ、さっき頼んだ事……出来るか?」
それはここに来る前ポップにある相談をしていた。
「なっ?!それ危険だと何度も!」
「それでもだ……頼む」
「本気でござるか……」
「……ああ」
視線の先では未だに拮抗した戦いが続いていた。しかし、それもいつ崩れるか分からないのだ……
「わかったでござる。……ではしっかりとイメージを固めて下され……」
ポップの言葉に俺が思い浮かべるのは一枚のマスカレード。
白地に雪の結晶をあしらった思い出深い、ドミノマスクだ。初めて
ポップの手が背中に触れる。
「いくでござる!ドロンっ!」
言葉と共にポップの触れていた感触が消える。……いや、手足の感覚すら今は感じない。あるのは視覚と聴覚、そして若干の触覚だけだ。
「ビューティ殿ぉ!!」
side:ビューティ
無言で激しい攻撃を続けるジョーカー。きょうかと
(「もう!もう!なんなんですか!こんなに急に強くなるなんて聞いてません!』)
きょうかも、せっかく訪れた報復の機会に、中々攻撃を決めきれずに焦れてしまっています。
今は耐えて反撃のチャンスを待ちましょう?
でも!このままでは……
……私達の方が、押し切られるかも知れませんね……
せめて後一手、なにかあれば……
「ビューティ殿ぉ!!」
『っ!』
「やぁぁ!」
予想外の所からの大声に、一瞬……私達とジョーカーの動きが止まります……が、咄嗟に動き出すのが速かったのは私達です!
ジョーカーの胸に両手で掌打を叩き込み、吹き飛ばすと同時にバックステップでポップさんの所まで下がり、ジョーカーと距離を取ります。
「ポップさん、何があったんですか!いえ、それよりも八幡君は何処へ?!」
「今は時間が無い故、取り敢えず、先ずはこれを着けるでござる!」
渡されたのは見覚えのあるドミノマスク……
吹き飛ばした、ジョーカーの動向にも気を配りながらマスクを着けると……
(「……れいか、きょうか、聞こえるか?」)
『八幡君?!』
急に八幡君の声が、普段のきょうかの声のように頭の中に響いて来るのでした……
はい、という訳で八幡君も遂に戦闘に参加出来るようになりました!
流石にこの場面で見てるだけって言うのはちょっと……という感じの苦肉の策です……
この戦いが終われば八幡君一人でドロンッを出来るわけも無いので何時ものよわよわ八幡君に戻ります!戻します!
八幡君がお姫様なので!(夜以外)
それではまた次回もお楽しみに!