side:ビューティ
「ほんとに八幡君なんですね?……大丈夫ですか?体に痛み等はありますか?」
突然頭に響いてきた愛しい人の声……ただ、今の状況だと嬉しさよりも心配さの方が勝ってしまいます。
(「ああ、大丈夫。今はポップに変化させてもらってるんだ」)
良かった……
「幾らポップさんでも八幡君に何かあったらどうしてやろうかと思ってしまいました……」
「ござっ?!」
視界の端でポップさんがザザっと離れた様な気もしますが気にしません。
(「何も無かったのならそれで良いじゃないですか!それより今は私達が一つになっているかのようなこの全能感!素晴らしいです!最高です!』)
「ふふっ♪そうですね。今の私達ならなんでも出来そうです」
先程までは、
(「ええ!今私達は一つになっているのです!そう、それはまるでセック(「アウトォォ!今何を言おうとしたきょうか?!」)3Pです!』)
(「ああああ!?もうっ!言ってる様なもんだし!」)
あらあら……と二人の微笑ましい会話につい、頬が緩んでしまいますが視界の先の砂煙。そこにうっすらと影が浮かんで来ました。
「二人とも、嬉しいのは分かりますが相手は待ってはくれないようですよ」
(「まったく、あの腐れ道化師……馬に蹴られて死んでしまえばいいんです』)
(「タイミングが良いんだか悪いんだか……」)
砂煙を
「しっ!しっ!」
砂煙の中にいる間に用意したのかジョーカーの手にはレイピアが握られ、それを連続で突きこんできます。
先程までの私達ならこの攻撃で多少なりとも怪我をしていたでしょう……しかし、今は違います。
「視えますっ!」
そう、視えるのです。ジョーカーが何処に突きを放とうとしているのか、次に何をしようとしているのかが、視えるのです。
(「視えるんだから無駄に大きな動きで回避をすることも無い。全部逸らしてやればいいんだ」)
八幡君の言う通りに、突き出されるレイピアの剣先にそっと手を触れ、その攻撃を逸らして行きます。
もちろん素手でそんな事をすれば、私の
(「れいかはただ逸らす事に集中して下さい。私が絶対に貴女を傷付けさせませんから』)
私の手が剣先に触れる瞬間、その一瞬の間だけ、私の手は氷に覆われるのです。
きょうかが氷、氷結の力の制御を一手に引き受けてくれるているから私はこの身体を動かす事だけに集中する事が出来るのです。
「くぅぅ!!」
唸り声と共にジョーカーが此方にレイピア投げつけ、後ろに大きく跳躍して距離を取ります。
「小癪な真似しやがって!……ん!んん!ふぅ……ここまで気を荒立てさせられた相手は初めてですよ?」
ジョーカーは咳払いをすると先程の荒々しさとは打って変わり、いつもの様な飄々とした態度に戻りました。ただ、その仮面の奥からは此方を観察するような、じっとりとした視線を感じます。
(「チッ、正気を取り戻したのか?めんどくせぇな」)
(「気持ちの悪い視線を向けないで欲しいですね……潰したくなります』)
「貴方は私達が倒します。そして、そのよく回る口を閉じてさしあげます!」
「……んふ、アハハッ、アーッハッハッハッハ!ならば閉じさせて見せてくださいな!この数全てを!」
『アーッハッハッハッハ!』
ジョーカーが両腕を広げ、カードの束を撒き散らすと、その落ちたカードから這いずる様に沢山のジョーカーが姿を現したのです。
(「うわっ……」)
(「気持ち悪い……虫みたいですね』)
「そんな事を言っていないで殲滅します…よっ!」
言いながら強く踏み付けた足元からは放射状に氷が地を走り、そこから無数の氷剣が地面に突き立つ様に乱立します。
「わざわざ武器をいただけるので?」
「……誰が」
「ひぎっ!?」
ニヤニヤと氷剣の柄に手をかけたジョーカー達は軒並み氷漬けになります。
「貴方の様な下衆が触れて良いものではありませんで……」
「チッ……!呑み込んでしまいなさい!」
ジョーカーが手を振り上げると、凍って数が減ったとはいえ凄まじい数のジョーカー達がレイピアを手に、片やジャグリングのボールや巨大化させたトランプ等、武器とは呼べないような物を構えている姿も見えます。
「どこまでもおふざけが染み付いているようですね!」
踏み出す先の氷剣を引き抜き、駆け出します。
数十本と一度に襲いかかってくるレイピアを打ち払い、砕け散る氷剣を新たに氷の礫へと変え打ち出します。
(「そこです!』)
きょうかが踏み込みと同時に足元を覆う氷を通じて、こちらに巨大化したトランプを投擲しようとしていたジョーカーを氷柱で刺し貫きます。
(「あはっ♪』)
ドドドドッ!っと音を立てて更に数体のジョーカーが串刺しにされます。そして氷柱から更に左右にも氷の針が生えてきて、串刺しにされたジョーカーをまるで
………少しやり過ぎな気もしますが……
(「れいか!」)
八幡君の声に逸れかけていた意識が引き戻されます。思考の隙を突くかのように投げ込まれるのは色とりどりのボールでした。それも全て対処の難しい場所に正確に投げ込まれています。
ただ、それも全て視えているのなら話は変わってきます。
足下の氷剣を引き抜き、近付いて来るボールから順に刺し貫き、最後のボールを貫いた勢いのままに、ニヤニヤとこちらの様子を伺っていた本体らしきジョーカーに向けて投げつけます。
投げつけた氷剣はジョーカーに当たると爆発し、砕け散りました。貫いていたボールが爆発したのです。
しかし、当たった筈のジョーカーの位置にはトランプが撒き散らされているだけでした。
(「この密集した戦いで爆弾かよ……!」)
「自分の分身が幾ら傷つこうとも関係ないのでしょう」
むしろ、此方に組み付いてから自爆しなかっただけでも御の字でしょう。
襲い来るジョーカー達の顎を撃ち抜き、その勢いのまま次の氷剣を引き抜き本体らしきジョーカーを切り捨てます。
「はぁ……はぁ……キリがありませんね……」
しかし、今回もトランプが撒き散らされるだけで周りのジョーカー達に変化はありません。
もう何体切り捨てたでしょうか?ジョーカー達の物量は最初こそ、こちらの殲滅速度の方が上回っていたものの段々とそれは覆され……
「ばぁっ!」
「キャッ?!」
今では潜り抜けたジョーカーの攻撃を受ける事も……
(「くぅぅ!しつこいですね!早く死ね!』)
長時間の戦闘の疲労かきょうかも氷柱を外してしまう事も増えてきました。
『そろそろ終わりましょう?』
重なるように聞こえるジョーカー達の声。
「八幡君……!」
そして、暫く前から突然聞こえて来なくなった。愛しい彼の声……
このままでは……
心に影が差し掛かった時……待ち望んでいた声が……遂に聞こえました!
(「れいか!きょうか!」)
『八幡君!』
この声を聞くだけで心に差した影は消え去り、逆に勇気が湧いてきます。
(「心配しました!』)
(「す、すまん……だけど、見つけたぞ!」)
「見つけたとは?」
(「ああ、さっきから俺はずっとジョーカーの本体を探してたんだ……」)
八幡君の話を聞きながらも私は先程と同じ様に少し苦戦しながらも戦い続けます。私達の動きが隠れたジョーカーに悟られない様に……
そして……
(「きょうか!」)
(「はいっ!死っねぇぇ!!!』)
地を這う氷から先程までとは比べ物にもならない程の速さで大氷剣が何かを貫き、突き出します。
きょうかが力を込め、全力の氷剣で貫いたのは先程の戦闘中には全く気づかなかった……一枚のジョーカーのトランプでした。
「ギャァァァァッ!!!」
その叫び声と共にトランプはジョーカーへと姿を変え、周りを囲んでいたジョーカーの分身達はトランプの束となって崩れ落ちます。
そして私もそれを見越して溜めていた力を解き放ちます!
「プリキュア・ビューティブリザード!!」
氷剣に貫かれたままのジョーカーを、私の手から放たれた冷気の奔流が呑み込みます。
「ああ、ピエーロ様……」
その声を最後にジョーカーの声は聞こえなくなりました。倒した……の、ですよね?
(「殺りました!』)
(「ああ、やったな!」)
内から聞こえてくる二人の声にやっと勝利の実感が湧いてきました。
「あ、これも忘れてはいけませんね」
足下に落ちていた星デコル……ジョーカーに奪われていた物です。
「ふぅ……あ、そういえばハッピーは無事にキャンディの所へ辿り着けたでしょうか?」
はいっ!と言うことで3人VSジョーカー戦でした!
いやぁ結構大変でした!でも個人的にはきょかちゃんの氷柱でジョーカーを貫く戦い方がツボでした!かっこいいと思います!
今章はおそらく次回でピエーロ戦をして終了の予定です!いつものように言っておきますが、おそらくです!
それではまた次回もお楽しみに!