俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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正月そうそうキツめのインフルにかかってこの投稿がかなり危なかったです……頑張りました……


(2)

 電車を乗り継ぎ、バスに乗り換え、漸く着いたと思ったのだが……

 

「じゃあここからは歩いて行くよー!」

 

「まだ……かかるんか?」

 

「遠いねー」

 

「ですが、街中から離れている分自然が綺麗ですね」

 

「確かに、空気も美味い……気もするな」

 

 まぁ、ぶっちゃけ空気の味とかよくわからんよな……

 

 

 

 バス停から歩き始めて二、三十分位はたっただろうか?

 

「みゆきちゃ〜ん……まだつかないぉ?」

 

「もうすぐだよ。がんばって!」

 

 見るからに限界が近づきつつあるのがやよいと、珍しい事にあかねだ。

 

「アカン……ちょっと休憩させて〜」

 

 そう言うとあかねは道の脇を流れている沢にかがみ込み。ペットボトルに水を汲み出す。

 

「あかねがへばるなんて珍しいね」

 

「最近暑くって食欲全然ないねん。やから力がでーへん……」

 

「夏バテか……」

 

「八幡君は大丈夫ですか?」

 

「俺は基本冷房の効いた部屋から出ないからな」

 

「それは自慢げに言う事じゃないでしょ?」

 

「ふふっ」

 

 それにしても本当に暑いなぁ……

 

「かー!効くぅ!」

 

 あかねのオッサンじみた声に視線を向けると沢で汲んだ水を首元に掛けていた。

 

「おや、無闇に川に近付くと河童に引っ張られるよ?」

 

 誰だ?

 

「おかえり、みゆき」

 

「おばあちゃん!!」

 

 

 

 みゆきのおばあさんが迎えに来て、歩き始めたら直ぐに民家や田んぼ、畑が目につくようになった。

 

「おお、マジであとちょっとだったんだな」

 

「いっぱい歩いて大変だったでしょう?」

 

「あっ、いえ、そんな事は……」

 

「事実なんだから気を使わなくてもいいのよ。あたしだって大変だと思うもの」

 

「はぁ……」

 

「それにしてもみゆきがこんなにもお友達を連れて来るのは初めてだから嬉しいわ」

 

「えへへ、みーんな大切なお友達なんだ!」

 

「あらあら、それじゃああたしも精一杯おもてなしをしないとね」

 

 

 

 

 

「うわぁぁ、家からこんな綺麗な景色が見えるなんて凄いね」

 

「ええ、本当に素敵なところですね」

 

「ありがとう。ほら、暑かったでしょう麦茶もって来たから飲んでね」

 

「あっ、アタシやります!」

 

「あら、ありがとう」

 

「おばあちゃん、今年も野菜いっぱい作ったんだね。美味しそう!」

 

「下の川で冷やしてあるわよ。食べる?」

 

「うん!」

 

 

 麦茶を飲んで少し休んだらみゆきのおばあさんの案内で木々に囲まれた道を進み川までやって来た。

 

「ひゃー涼しいなぁ!」

 

「ね、少し森に入るだけで全然違うね」

 

「近くに川が流れているのも一因なのかもしれませんね」

 

 みゆきのおばあさんが川の近くでかがむと、きゅうりやトマトなどが入った籠を引き上げ微笑む。

 

『わぁぁぁ!』

 

 

「あーむ!めっちゃ美味しい!」

 

「でしょー!夏バテは?」

 

「もー!ちょー治ったわ!」

 

 トマトは苦手だから俺はきゅうりをいただく。

 

 あっ、うめぇわ……

 

「おばあちゃんが作った野菜はとっても美味しいんだよ!」

 

「川ってこんなに冷えるんだねぇ」

 

「天然の冷蔵庫ですね」

 

「きゅうりって今何も美味かったんやなぁ」

 

「トマトも甘いくて美味しい」

 

 いや、本当に美味いのな……

 

「なおちゃん?」

 

「へ?!」

 

「どうかしたの?」

 

 ん?確かになんか顔が強ばってる……か?

 

「あの、その、河童って本当にいるのかな?って」

 

「怖いん?」

 

「そんなこと!」

 

 あー、ホラー耐性無さそうだもんな……

 

「あらあら、それなら、みゆき」

 

「うん!」

 

 おばあさんはみゆきにきゅうりを渡す。みゆきは渡されたきゅうりを持って川へ近付くとそれを流してしまった。

 

「河童さーん!きゅうりあげるから悪さしないでねー!」

 

 まさかの買収……

 

「河童さんは大好物のきゅうりをあげれば悪さはしないんだって……ね!おばあちゃん」

 

「うん」

 

「へ、へぇ……」

 

「それは……居るって言う事?」

 

「ちょっと寒くなってきたかも……」

 

 迷信だろ……だよな?

 

「おばあちゃんにちっちゃい頃いっぱいお話聞かせてもらったんだ。河童に子供が助けられる話に、天狗に助けられる話、座敷わらしに助けられる話に……」

 

「なんや助けられてばっかやな……」

 

「でも優しい妖怪さんで良かった……」

 

「……あと、子供が連れ去られる話!」

 

『……………』

 

「いくら優しい妖怪でも禁を(おか)せば牙を剥くこともあるんだよ」

 

 急に話が物騒に……

 

『……………』

 

「でも、優しくすれば贈り物をくれたりもするんだよ」

 

「贈り物?」

 

「ええ、魚やお酒、お餅なんかも持ってきてくれるんだよ」

 

「……それは体験談で?」

 

「……さぁ、どうかしら」

 

 え?怖い……

 

 

 

 

 

 

 

「準備出来たよー」

 

「わぁ美味しいそう!」

 

「あれ?おばあちゃーん、一人分多いよ?」

 

「あら、その子も食べるでしょ?」

 

 みゆきのおばあさんの視線の先にはぬいぐるみのフリをしているキャンディ……

 

「キャンディも食べていいクル?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「やったークル!」

 

「ええっ?!キャンディ……えぇぇ!?」

 

 

 

『いただきまーす!』

 

「おばあちゃん、キャンディの事よくわかったね!」

 

「そう?ちょこちょこ動いていたから、気付かない方が不思議だけど」

 

 そりゃそうか……

 

「きゃ〜ん〜でぃ〜?」

 

「キャンディ知らないクル……」

 

「それでその子は付喪神かなにか?」

 

「キャンディは妖精さんクル!」

 

「あら、じゃあ西洋の方の子なのね」

 

「そうクル!……ん?」

 

 話が噛み合ってねぇ……

 

 

 

『ご馳走様でした!』

 

 

 夕食の片付けをしたらみゆきのおばあさんが花火とスイカをを出してきてくれた。

 

「ねえ、おばあちゃん私達と一緒に暮らさない?」

 

「八幡君」

 

「ああ」

 

 スイカに齧り付いていたあかねも強制的に連れ出す。

 

「え?何、ちょっ?!」

 

 込み入った話みたいだしな……二人だけの方がいいだろう。

 

 

 

「あっ、八幡達も花火する?」

 

「おう、俺達も入れてくれ」

 

「はい!線香花火!」

 

 それはてめぇには線香花火がお似合いだぜ!ってこと?

 

 

 

 夜

 

「あら……どうしましょう布団が一枚足りないみたいなの」

 

「え?どうしよう……」

 

「あ、それなら心配いらんやろ」

 

「う、うん、そうだよね……///」

 

「え?どうして?」

 

『だってあれ』

 

「聞きましたか?八幡君」

 

『誰か一人だけ畳に直接だなんて不憫ですよね?」

 

「ですからここは私達二人で一緒の布団を使いましょう」

 

「お、おう///」

 

『さぁさぁ入ってください。あっ、では皆さんおやすみなさい!」

 

『………………』

 

 

「あらあら、お盛んね」

 

「そんな和やかなもんか?」

 

 そして夜は()けていった。

 

 

 

 

 

 

 翌日はみんなでみゆきのおばあさんの畑の世話の手伝いをしている。

 

「おおー!いっぱいなっとるなぁ!」

 

「豊作だと言っていましたが本当に沢山成ってますね」

 

「トマトときゅうりだけじゃなくて他にも色んな種類の野菜を育ててるるだなぁ」

 

 まだシートに覆われている畑もあるし、春夏秋冬一年を通して色んな野菜が取れるんじゃないだろうか。

 

「私達も将来庭に小さな畑を作って世話をするのも良いかもしれませんね」

 

「そうだなぁ……ん?なっ///………まぁ、おいおいとな」

 

『土いじり、これはもう雑草との戦いですね……」

 

 

「パォーン」

 

「ぱおーん?」

 

「キャンディが象に乗ってる?!」

 

「はあっ?!」

 

 意味不明な言葉に慌てて振り向くとマジで小さな象の上にキャンディが乗って、その象は畑の野菜に水やりをしていた。

 

「ゾウデコルクル!」

 

「ガチ象やん……」

 

「アタシ、もっと可愛いジョウロみたいなの想像してた……」

 

「わたしも……」

 

 

「みんなー!トウモロコシ焼けたわよー!」

 

『はーい!』

 

 

 

 

 

 

「おいひいね」

 

「昨日のきゅうりで分かってたがトウモロコシも美味いな」

 

「ねー」

 

 

「だっふー!?わほほ?!」

『ん?』

 

 なんか変な声が聞こえたな……

 

 

 

「ゴホッ!な、なんだありゃ?」

 

 庭の奥、昨日野菜を冷やしていた川の方からびしょ濡れで現れたのは……

 

「ウルフルン?!」

 

 




みゆきちゃんのおばあちゃんはかなり良い人ですよね……あの性格だから妖怪達にも好かれているのでしょう。

この話を書いている時無性に野菜スティックを食べたくなりました。

 それでは次回もお楽しみに!
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