(1)
「楽しみだなー、とうとう明日だよお兄ちゃん!」
「……そだな」
「なに?反応悪いなぁ、遂に明日はお
「いや、だってお前な、一昨日から飯の度に聞かされてたらうんざりするだろ……」
そうなのだ、小町はこの前の買い物以来、青木の事をお
俺は何時も青木に会っているし、前よりも話す事も増えた為、小町に話す分には別に苦ではないがこうも飯の度に『明明後日は読み聞かせ会だね』とか『明後日は読み聞かせ会だよお兄ちゃん!』なんて言われていれば流石に疲れてくる……
「えー、だって本当に楽しみなんだもん」
「まぁ、その気持ちはわからんでもないが……」
「でしょー、そういえば時間大丈夫?」
「おう、そろそろ行ってくるわ」
今日は、この前の買い物の時に買った苗がもう直ぐ届くらしく、その準備をすることになっている。
いつもの物置小屋に着くと青木は既に準備を始めていた。後ろからなので確認は出来ないが、あの日以降青木は俺の贈った髪留めを毎日着けてくれている。使ってくれているので気に入っては貰えたのだろうが、こうして毎日目に入るとなると、なんだかこそばゆい気持ちになる。
「おはようさん、悪い遅くなったか?」
「あ、比企谷君、おはようございます。そんな事は有りませんよ。今日はやる事が多いので少し早めに来て準備していたんです」
確かに青木の周りには大きな袋や小型のスコップ、軍手などが用意されている。俺が来る前に用意してくれたようだ。
「すまんな、助かる」
「いえ、気にしないで下さい」
「それで?今日は準備って聞いてたが何をするんだ?」
「今日は花壇に植えてあるお花の中で枯れてしまったモノを取り除くのと雑草抜きですね。次のお花を植えるためにスペースを確保しようと思いまして、それが終わればいつもの様にお花に水をあげて終わりです」
「わかった。ちゃっちゃと取り掛かるか」
「はい!頑張りましょう」
いざ始めてみると花壇の土が柔らかいためか、比較的楽に枯れた花は抜くことが出来た。雑草も一部を除いて楽に抜けたが偶に根がしっかりとしていてスコップを使わなくては取りづらいモノもあった。
抜いた花や草は袋に入れていく、二人で取った分を合わせると、用意していた大きめの袋がいっぱいになるまでの量になった。
「こんなもんかな」
「そうですね、これくらいで良いと思います」
「それじゃ時間も押してきてるし、片付けて水やりするか」
片付けと言っても、使った道具を元の場所に戻し袋をゴミ置き場へ捨てて来ただけだ。それが終わればジョウロに水を汲み、青木と二人で中側の花壇から外側の花壇に順々に水やりを行っていく。
「っし、これでラストだな」
俺の方の水やりは終わったので青木の方へ向かうと星空に絡まれていた。取り敢えずこっちが終わった事を報告する為声を掛ける。
「青木、こっちは終わったぞ。そっちはどんな感じだ?」
「比企谷君、ありがとうございます。こちらも終わりですので片付けましょうか」
キーン コーン カーン コーン
「あっ、もうこんな時間ですね。星空さん、遅れないようにしてくださいね。比企谷君、急ぎましょう」
一言返し俺も青木の後を追う。先程、道具類の片付けは終わっているのでジョウロを物置小屋に戻し、教室に向かう。
「この分なら間に合いそうだな」
「そうですね」
二人で廊下を歩いていく。最近は俺が青木と一緒に花壇の世話をしているのが知れ渡ってるので教室に入るタイミングをずらすことも無くなった。……嫉妬の視線はよく感じるが
「……そういえば、小町が明日の読み聞かせ会、楽しみにしてるって言ってたぞ。……俺も楽しみにしてるしな」
「まぁ!小町さんが……それに比企谷君もですか、それなら尚更頑張らないといけませんね」
「よろしく頼む」
「はい!」
無事
「………」
どーも視線を感じる……まぁ、もう誰が見てきているかは分かってるんだがその理由がわからん。
チラッと教室の後ろの方を見ると星空が目をキラキラさせながら青木を見ている。そして偶に俺の方も見てくる……
なんだこいつ?しかし青木は見られてる事に気付いていない様子だ。前に言ってたように見られてる事に慣れすぎて視線に鈍感になっているのかも知れないな。
まぁ、星空は朝の一件で青木の事が気に入ったのかもな……でもこっち見んな
昼休み
前に昼飯を食っていた場所を奪われてから、もう諦め今は鍵を借りて弓道場で食っている。此処が意外と快適な事に気付いたのはつい最近だ。日の照っている暑い日でも、射場は日陰だし偶に外から心地良い風が吹いてくる。雨の日でも屋根があるので気にならない。強いて不満点を挙げるなら偶に寒い事くらいだろうか……
ギィ ボーっとしていると床板が軋む音が聞こえてきた。どうやら誰かが入って来たらしい。何か言われるのも面倒なのでサッと片付けて隠れる。
「あら?比企谷君……いらっしゃいませんか?」
「……なんだ、だれかと思ったら青木か」
入ってきたのは青木だったようだ。青木が相手なら特に隠れる意味も無いので出ていく。
「あっ、いらしたのですね。ところで何故そのような所に?」
「……いや、知らない奴に話しかけられたくなくてな」
「……ああ、そういう事ですか……」
「……で?こんな所に態々どうしたんだ?何か用があって来たんだろ?」
「あ、そうでした。お願いしたい事があってきたんです」
「どうしたんだ?青木の頼みなら余程の事じゃなければ引き受けるが」
青木は一度深呼吸してから口を開いた
「実は明日の読み聞かせ会なのですが……比企谷君にも一緒に出て欲しいんです!」
「……正気か?」
「……流石にその言い方は自分を卑下し過ぎですよ」
「いや、まぁ、すまん……それでトラブルでもあったのか?」
「ええ、実は会長が風邪をこじらせてしまったようでして、その抜けた穴を比企谷君に埋めて欲しいんです」
そうは言ってもなぁ、俺が出て子供が怖がったらマジでショックなんだが……
「俺が出て本当に大丈夫なのか?怖がられるのはごめんだぞ」
「……?それについては比企谷君は眼鏡を掛ければ解決するのでは?」
「………それもそうだな」
そうだな、すっかり忘れてたわ。そういえばあの日以来眼鏡なんて一回もかけてねーしな……
「まぁ、そういう事なら引き受けるわ」
そう言うと青木はぱっと顔を綻ばせた。
「引き受けて頂きありがとうございます!準備は私にお任せ下さい。比企谷君は時間に小町さんと一緒に来ていただければ大丈夫なので」
「おう、それじゃあ明日はよろしく頼むな」
「ええ、よろしくお願い致します」
そうして、一礼し青木は弓道場出ていった。
「また小町が騒ぎそうだな……」
「たでーまー」
「お兄ちゃんおかえりー」
小町はソファに寝っ転がってドラマを見ていた。俺も適当に鞄を置いて向かいのソファに腰掛ける。
「小町さんや」
「え……なに?」
……え?なんでこんなやさぐれてんの?
「明日の読み聞かせ会何だが小町は何時に行くんだ?」
「あ、読み聞かせ会!それなら小町は小学校に一時半に集合で、お兄ちゃんとこの中学に移動でしょ、それで二時から中学の体育館で読み聞かせ会が始まる予定だよ!」
おう、一気にテンション上がんじゃん……
「へぇ、それ俺も出ることになったから」
「どゆこと?」
「なんか生徒会長が風邪引いたみたいでな、代わりに俺が読むことになった」
「ほうほうほう!良いじゃん良いじゃん、お兄ちゃんが王子様でお
「いや、何やるかは聞かされてねーけど……」
「え?会長の代わりなら王子様でしょ?」
「……確かに」
「いやぁ益々楽しみになって来た!お兄ちゃんも頑張ってね」
「へいへい」
流石に失敗は出来ねーし、明日に向けて練習でもしとくかね……
小町が不機嫌だった理由は楽しみにしてた読み聞かせ会の前日によく知らない男子から告られたからです(裏設定)