八幡君のなまけ玉はジョーカーの悪意100%で強化されてます。
(1)
ぐわんっ!
「うおっ?!」
歩いていたら一瞬、かなり強く、目眩のような、視界が揺れたような……不思議な感覚に頭を揺さぶられた。
『八幡君!?』
両側から伸びてきた
「助かったわ……
まだ少し頭はボーッとしているような気もするが、先程のような強い目眩は無い。支えてくれた二人に礼を言いながら立ち上がる。
俺を支えてくれたのは麗華と鏡華。見た目が恐ろしく似ている
「それなら良いのですが……本当に大丈夫ですか?」
『もしかして体調が悪かったりします?また
「ちょっと鏡華?言い方に悪意があるんじゃない?そりゃ……夜更かしさせちゃったのは事実だけど……」
話に入ってきたのは刹那。俺のもう一人の恋人で学生ながらラビリンスという会社に所属している。
「平気だから心配しないでくれ。本当に一瞬、クラっと来ただけだから」
「本当に?私のせいだったのならちゃんと言って欲しいわ」
刹那は少し不安そうな顔で見つめてくる。
「本当に大丈夫だ。……だから、そんな顔すんな。それに、鏡華もちょっと言い過ぎだったぞ」
『うぅ…ごめんなさい。家でも八幡君と一緒に居られる刹那が羨ましくて……」
「いいのよ、私が鏡華の立場だったらきっと同じ様に羨ましく感じてしまうと思うもの」
鏡華の言うように刹那とは同棲をしている。恋人だから、という理由では無い。そもそも刹那との出合いからして、母ちゃんが両親からネグレクトを受けていた刹那を何処からか連れてきて家に住まわせたのが始まりなのだから……
「そうです!でしたら八幡君は今晩、我が家に泊まりませんか?もちろん刹那も一緒に……お母様も久しぶりに八幡君に会いたいと言っていましたもの」
『いいですね!流石麗華です!八幡君も刹那も今日は一緒に寝ましょうね!」
「ええ、いいわよ。なんだがもう今から楽しみね」
何故かトントン拍子で青木家へのお泊まり会が決定していってるのだが……まぁ、みんなが嬉しそうならいいだろう。
「さあ、早く帰りましょう。今夜は久しぶりにみんなで夜が過ごせますね」
いつの間にか授業は終わった様だ。周りも帰り支度を始めている。
「……あれ?麗華は今日、生徒会も弓道部もなかったんだっけか?」
「ふふっ、良いんですよ。
「……そうか、そう言えば刹那の方もラビリンスが忙しくてなかなか会えなかった気もするけど大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。ラビリンスの事はウエスターとサウラーの二人がやってくれてるもの……
少し笑いながら刹那の指差す先では気付いた鏡華が手を振っている。
「気が早いな……じゃあ帰るか」
「ええ!」
「行きましょ!」
「ただいま帰りました」
『ただいま帰りましたー」
『お邪魔します』
麗華達の家に上がる。
特に誰にも会うことも無く二人の部屋に辿り着く。
「夕飯の時間までまだありますけど、どうしますか?」
『じゃあじゃあ私、八幡君とゆっくりしたいです!」
「ゆっくりってなによ……ん〜こんな感じかしら?」
言いながら刹那は俺の手を引き、壁を背に座らせると腕を抱き、肩に寄り掛かるようにして隣に座った。
「では、私はこちらをいただきますね」
そして、それを見ていた麗華も直ぐに刹那とは逆の腕を取り、刹那と同様に隣に座った。
『あっ?!ああぁっ!!ずっ、ずるいです二人とも!!」
刹那と麗華に両腕を取られ、涙目で抗議をする鏡華。……なんだこれ、可愛いが過ぎるかよ……
「……あー、鏡華?ここ……来るか?」
「わぁぁ……はい!」
流石にかわいそうになってきたので足を広げ少し胸を張ると意図がわかったのか、鏡華は嬉しそうに頷くと飛び込むように俺の足の間に収まると、胸に背を預けてこすりつけてくる。
『えへへ///あったかいです」
「あらあら、鏡華ったら」
「ふふっ、結局鏡華が一番いいポジションじゃない」
俺は三人の体温を感じながら、まだ少し靄がかかったような頭で感じる、僅かな違和感を思考の隅に追いやりながら襲ってくる眠気に身を委ねるのだった。
「……ま…くん」
……なんだ?
「……八幡君?」
「……ん?」
『あっ、やっと起きました」
「もう、ゆっくりするって言っても誰も寝ていいなんて言ってないのよ?」
「ふふっ、ねぼすけさんですね。さぁ夕飯の用意が出来たので頂きましょう」
「あ……あぁ、もうそんな時間だったのか」
いつの間にか眠ってしまったらしい。漂って来る美味しそうな匂いに顔を向ければ、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいた。
「あれ……さっきまで
「え?あぁ……そうでしたっけ?」
「どうだったかしら?」
『ねぇ、そんな事よりお腹が好きましたしお夕飯にしましょう?」
「あっ、ああ、そうだな。……あっ、そういえば麗華の母ちゃんは何時会えるんだ?今日お世話になるのにまだ挨拶も出来てねぇし……」
麗華の母ちゃんに挨拶したら次は、あの爺さんだよな……ぶっちゃけちょっと苦手なまであるんだよな……
「お母様ですか?」
『呼べば来ると思いますよ?お母様ー!」
「呼びましたか?」
「うおっ?!」
まるで、
「何ですか?その顔は……まぁ良いでしょう。貴方と居る時のこの
「あ、ありがとうございます!俺、この三人の為にもっともっと頑張って幸せにしたいと思います!」
こう言うの認められてるって感じがしてめっちゃ嬉しいな!
「……なぜ頑張る必要があるんですか?今のままで充分幸せなんですから……無理して貴方が頑張る必要なんてないのですよ?」
「……はっ?」
麗華の母ちゃん……何言ってんだ?
「そうですよ?八幡君は頑張らなくてもこの幸せな時間は永遠に続いて行くんですから」
『八幡君がいて、麗華がいて、刹那がいて、
「私達四人が誰もかけることなく普通に日常を過ごす……それだけで幸せじゃない」
麗華もみんなも………………………
「そうか……」
強い疑念を抱いた瞬間……ずっと思考にかかり続けていた靄がスーッと晴れた気がした。
「確かに、こんなに幸せなら抜け出したく無いって言うのもよく分かるわ」
「八幡君?」
「八幡?」
『八幡君?どうしたんですか?早く食べないとせっかくのお夕飯が冷めてしまいますよ!」
「一度気付くと、あんまり気にならなかったみんなの言動も確かにおかしいところがあったんだなって……」
普段のれいかなら、せつななら……決して俺の為とはいえ、他の人を蔑ろにする事は無かっただろう。
そして一番の違和感は……
「楽しかったか?きょうか……」
『…………ええ、とっても。言葉の通り夢の様な時間でした……」
鏡華……と言っても本人では無いはずだ。
『元を辿れば私もバッドエナジー……こんなバッドエナジーに溢れた空間の中に居て……普段は抑え込んでいる胸の内に秘めている感情が発露したとしてもしょうがないと思いませんか?」
れいかが、せつながただ、俺を肯定し、俺に甘える中で
「俺も楽しかった……だけど、気付いちまった以上帰らなきゃならねぇ」
現実に戻って……本当の幸せな時間を過ごすために。
「そう……ですよね。あっ現実の私の事もしっかり愛して下さいね!この世界での事を、あの子は全然知らないんですから!」
「……当たり前だろ。
我ながらかなり恥ずかしい事を言っている自覚はあるがそれでも伝えたかった。
『……私も愛しています。ずっとずっと……」
鏡華の言葉を最後に
という訳でなまけ玉という皮を被ったきょかちゃん回でした!
今回は難産とか言いながらよ書いてる時はめちゃくちゃ楽しかったです!