この世界線の今回のお話では満月って事でおなしゃす!
「お腹いっぱーい……」
「ウチも今は動けんわ」
「クルゥ……ゲフッ」
夕飯も完食し、今は食休み中だ。騒がしくも楽しい夕食だったが騒いでいたメンバーもご覧の有様で床に転がっている。本当はそろそろ家を出る予定だったのだがこれはもう少し先になりそうだ。あ、俺達はもちろんそんなぱんぱんになるほど食べてないし、ソファに腰掛けて雑談中だ。
『あっ、そう言えば転がってる皆さんの姿を見て思い出したんですけど、食べてすぐに寝ると牛になるって言うお話を前にしたじゃないですか」
「あー、そういやあったな」
「えっ、わたしは初耳よ?」
「ええと、確かせつなも一緒だった花火大会の少し前に海に言った事を話したと思うのですが、その時に少しそんな話題が出たんです」
せつなは普段、ラビリンスで仲間達と共に、一度根付いてしまった歪な価値観の修正や皆のより豊かな暮らしの為に奮闘している。その為せつなだけ知らない事が多いのだ。
だかられいかとせつなは毎日連絡を取り合い、お互いの近況報告をしてるし、れいかからせつと会う前の俺の事もかなり話しているらしい……いや、詳しくは知らんけど……
「ああ、そうなのね」
『ですです、それで調べてみたら行儀
「へえ……諸説ありますってやつね」
「まぁでもそういう話って、どっちも正解ってパターンも割と多いらしいけどな」
どこそこではこれが起源だったけど、向こうではあれが……的な。
そうして、話していると寝転がっていた牛さん達が起き上がって来た。
「そろそろお腹も空いてきたしお月見行こー」
「せやな!甘いもんは別腹って言うもんな」
こいつら……あんだけ食って、腹いっぱいで転がってたのに、もう団子を食うことを考えてんのか?!
「みゆきさんにあかねさん……そんなに直ぐに食べられるのですか?」
「うん!お団子の事考えてたらお腹減ってきちゃた〜」
「みたらし団子に胡麻団子……ジュル、ウチ小町ちゃん手伝ってくる〜」
「早く片付ければ早くお団子食べれる?わ、わたしも手伝う!」
「あはは……そうですか……」
『バケモノみたいな胃袋してますね……」
「きょうか……もう少しオブラートに包ましょう?」
「まぁ……事実だしな……」
片付けが比較的早く終わった――約二名が団子食いたさに手伝った為――ので各種団子と飲み物を持って家を出る。
「わー!大っきい!」
「十五夜お月様だぁ」
「ここから見る月でも十分綺麗だね」
「今の月も良いですけど高台に上がれば人工の明かりも減るのでより綺麗に見えると思いますよ?」
「うおぉ!めっちゃ楽しみになってきたわ!みゆき!競争しよ!よーいドン!」
「あっ!あかねちゃんズルい!待ってよー!」
「おっ!勝負ならアタシも負けないよ!」
止める間もなく走り出した三人の背中が、段々と小さくなっていくのを溜め息混じりに見送る。
「お兄ちゃん……止めなくて良かったの?」
「いや、止めてる暇無かったじゃん……それにいつもの事だしな」
「あっ……いつもなんだ」
「いつもなのね……」
小町とせつなが遠い目をするのを見て、ハッと気付く、俺っていつの間にかみゆき達の暴走に慣れてたんだな……もうあの純粋だった頃には戻れないだな……まぁ、俺に純粋だった頃があるのかはさておき……
「そろそろ追いかけるか……走りはしねぇけど」
「そうですね。あんなに走ったら更にお腹が空くでしょうに……」
れいかは片手に下げた団子を見ながら苦笑いをこぼす。
「あっ、本当だ……みゆきちゃん達、あんなに早く団子食べたいって言ってたのに誰も持ってって無かったんだね」
「まぁ、自業自得って事で俺達は自分のペースで高台まで行くぞ」
「ふふっ、ちょっとあの子達が可哀想かもしれないけどいい薬になるかしら」
『…………』
「……あら?」
うーん……果たしてあの元気娘達がこれで懲りるだろうか?
「れいかー!」
「みんなー!」
「だんごー!」
高台まであと少しという所で前から駆け下りてくる妖怪……もとい元気娘達。
「うお……なんか来た」
「なんかってなんや!」
「もうヘトヘトだよぉ……おなかへったぁ」
「れいか、八幡!アタシが一番に高台に着いたんだよ!」
……褒めてもらいたい犬かな?なんかキャラ違くね?
「貴女達、もう少し落ち着きなさい。……はぁ、しょうがないわね、小町」
「はいはーい!皆さんお待ちかねのお団子ですよー頑張ったで賞って言うことで一人一本までですよー、残りは高台に着いてからなので」
『やったー!』
「おっ、着いたな」
道の左右に生えていた木が途切れ、高台に出た。団子をやってからは物理的に口が塞がってたせいか、特に騒がしくも無く無事に高台にたどり着いた。
街の光が高台との間に植えられた木によって遮られているからか、家の近くでも見た月よりも、大きく……明るく感じられる。
「すごい……」
誰かがこぼした言葉が全てだ。
夜空に輝く満月は上手く言葉に出来ないような漠然とした凄みを感じる。
「すごいね……でもこんな綺麗な満月だと動物とかの遠吠えとかも聞こえそうだね」
確かに、もう日本には生息していないがオオカミなんかの遠吠えが聞こえてきそうだ。
片耳に手を添えて耳をすませる仕草をするみゆきの姿に自然と場に静寂が満ちる。
……すると先程まで聞こえなかった声が聞こえてきた。
「……二ー!」
「……なんか聞こえるな……」
「うん、もうちょっと近付いてみよ」
「えぇ……でもほんとに怖い動物だったら」
「気付かれる前に逃げれば大丈夫やろ」
「……二ー」
「……おい、これ俺達が近付かなくても向こうから近付いて来てねぇか?」
さっきよりも近くて聞こえた声に場に緊張感が満ちる。
「オニー!」
『………は?』
そして少し先の草むらから飛び出して来たのは凶暴な動物等では無く、凶悪な鬼だった……っていうよりもアカオーニだった……
「満月の夜は遠吠えがしたくなるとかウルフルンが言ってたからやってみたオニが、中々気持ちが良いオニ!これからは満月の夜にはオオカミだけじゃなくてオニも一緒に遠吠えするオニ!」
『……………』
「ん?……ってあああ!!お前達はプリキュア!急に俺様の前に現れるなんて何するつもりだったオニ!」
何するつもりっていやぁ……月見だわな。
小町も手に持つ団子を見やり冷めた目をしている。
「そんなの決まってるでしょ!」
「ウチらは団子を食べに来たんや!」
あれ?月見だよな?
「団子ぉ?ん?……あああ!!それはもしかして吉備団子オニ!」
「……あら、八幡君、吉備団子なんて買ったのですか?」
「いや買ってねぇけど……」
「桃太郎のお腰に着けてた吉備団子!そんなものはオレ様がぐちゃぐちゃに踏み潰してやるオニ!」
先ずアカオーニが目をつけたのは小町だった!
「その吉備団子を渡すオニィィ!!」
「きゃぁぁぁ!?お兄ちゃん!」
悲鳴を上げて飛びついてくる小町を受け止めみんなから団子を受け取ると急いで近くの木の影へ隠れる。
「もう!急になんなの!」
「これは普通の団子で吉備団子とは別物やっ!」
「はぁ?!吉備団子じゃないオニ!?」
「そうや!これはウチらが用意した普通の団子や!」
「………吉備団子じゃない団子ってなんだオニ!」
「団子や!」
「やっぱり吉備団子オニ!!」
「お兄ちゃん……この緊張感のない会話は何?」
「…………」
何時もの事とは言えねぇ……
「うがぁぁぁーー!!もう何が吉備団子で何が団子かなんて知らないオニ!世界よ!最悪の結末バットエンドに染まるオニ!白紙の未来を黒く塗り潰すオニ!」
キレながらバットエンド空間を展開するアカオーニ。
「うははははっ!人間……は居ないオニな。動物達の発したバッドエナジーが悪の皇帝ピエーロ様を蘇らせていくオニ!」
「動物さん達からバッドエナジーを奪うなんて許せない!みんな、いくよ!」
『うん!』
スマイルパクトを構えた五人とリンクルンを構えるせつな……それぞれが光に包まれた。
はいっ!という訳でバトルパートの導入まで進みましたね!(バトルの導入までしか行けなかったとも言う)
次回はササッとバトルして月見して終了!って感じでいくと思います!多分です!
それでは次回もお楽しみに!