「あの、何故浦島太郎さんがお菓子の家に?」
俺が衝撃で固まっていると、れいかが今一番の疑問点を口にする。
「あー、それが自分にもよく分からないんッス……亀を助けたら、急に目の前が真っ暗になって……」
もしかしてその時にヘンゼルとグレーテルの物語に迷い込んだとかか?
「……熱中症でしょうか?」
「……え?」
れいかマジか?
「ねっちゅうしょう……?分からないけど多分そうッス」
いや絶対違ぇだろぉ……
「それで、目が覚めたら森の中だったッス。その後はこの家の甘い匂いに引き寄せられて……勝手にお邪魔させてもらってるッス」
「なるほど……」
なるほど……じゃないんだが?
『では竜宮城には行けなかったんですね」
「はいッス……自分も亀を助けたら連れて行ってもらえると思ってたんッスけど……世の中そんなに甘いもんじゃなかったッス……」
『それはお気の毒に……」
「ッス……でもまぁ竜宮城に行けなかった代わりに、ここでお腹いっぱいお菓子が食べられるからいいんスけどね……んぐんぐ」
言いながら自分で持ってきたクッキー頬張る浦島太郎。
どうでもいいけど浦島太郎にクッキーってなんか似合わねぇのな……
「そうなのですね……ありがとうございます」
「この位全然いいッスよ。浜辺の近くに住む者の知恵ってやつッス」
……意外な事だが浦島太郎と雑談が盛り上がっている。
丁度今はれいかが昆布での美味しい出汁のとり方を教わっていた。……平和だなぁおい……
因みにお茶請けのクッキーはそこら辺の壁から剥がしたタイルの代わりだったらしい。
「あっそうだ。お二人に……んむんむ、聞きたい事があったんスけど……」
浦島太郎がクッキーを頬張りながら口を開く。
「浦島さん、喋る時は口の中のものを飲み込んでから喋って下さい」
「あ、はいッス……すみませんッス」
なんかもうれいかに手懐けられてる感ない?
「実の所、お二人は夫婦だったりするんスか?」
「ブッ!?」
「まぁ……!!」
この浦島太郎なんか下世話だぞ!?
「ええ……よく分かりましたね」
設定兄妹ですけど?!
「そりゃ分かるッスよ!いやぁ、でも羨ましいッスね。自分もそろそろ結婚考えてるんすけど………出会いすら無いッス」
項垂れる浦島太郎……そして、その背後でゆっくりとナニカが立ち上がった。
『っ!?』
ガタンッ!
俺とれいかはそのナニカに気付いた瞬間、座っていた椅子が倒れるのも構わずに、即座に距離をとる。
「あれ?お二人ともどうしtッごぼっ?!」
まだ背後のナニカに気付いていなかった浦島太郎。そしてそのナニカは俺達の目の前で浦島太郎に覆い被さり、スライムの様な粘液状の体の中へと取り込んでしまった。
『…………』
俺達はその
ナニカは浦島太郎を呑み込んだ後もその動きを止めず、一度大きくその身体を波打たせた後、一気に収縮していき、人の形をとる……いや、あの体型は……
「浦島……さん?」
スライムが剥がれる様に落ちるとナニカの中からは呑み込まれた筈の浦島太郎が現れた……ただ、所々おかしな姿に変わっている……
「許さない……」
浦島太郎、いや人間に着いている事自体が
「許さない……許さない……」
先程から許さないとしか発しない浦島……
「こりゃ絶対ぇ正気じゃねーな……」
許さないとブツブツ呟きながらゆっくりと此方に歩み寄って来る。
「浦島さん……何を許さないのですか?」
れいかが問いかけた瞬間、その足が、口が、ピタッと止まった。
そしてバッ!と顔を上げると……
「自分に……自分に嫁が来ないのはお前らのせいだァァァ!!」
全然関係ねぇぇぇぇ?!!
叫びながら掴みかかって来る浦島を二人で左右に分かれるように躱す。
「自分も嫁が欲しいッスゥ!!」
「しまっ!?」
浦島は本能なのか、分かれた際にれいかの方を追いかけ、勢いのままにれいかへ手をのばし――
「はぁあっ!!」
「ぐぺっ?!」
――逆にれいかに胸ぐらを掴まれて投げられていた……
「全く、女性に気軽に触れようとするなんて言語道断です!」
「…………」
つっよ……そりゃ俺が不甲斐なくも感じるか……いや、俺もいつかれいかをこうやって守れる様に……
「……ゔゔぅぅぅぅ……」
床に叩き付けられてもまだ意識があるのか、うめき声を上げ、立ち上がろうとする浦島……
しかしその頭上ではれいかが足を振り上げていて……
「……ゔぅぅ、ぐぴっ?!…………」
『慈悲は無し……です!」
マジで慈悲ないじゃん……
再度、頭を床に叩き付けられ沈黙する浦島……先程までの和やかな雰囲気が見る影もない。
「どうにも物語の様子がおかしいようですし一度、外に散策に出てみましょうか」
「そ、そうだな」
そうして俺達は若干ピクピクしていた浦島をお菓子の家に放置し、森の中へと再度入って行った。
「ここは特に変化も無く、先程通った時と同じですね?」
れいかと森の中を暫く歩いて見たが特に変わった所は見当たらない。
「もしかしたらなんだが、物語ってよりも登場人物がおかしくなってるんだと思うんだわ」
『それは、どういうことです?」
きょうかの言葉に俺は先程歩きながら考えていた予想を話す。
「そもそもここはヘンゼルとグレーテルの物語の筈なんだ。だけどお菓子の家に魔女が居ないだけじゃなく、ここに居ない筈の浦島太郎が現れた」
「ええ……」
「だけど思い出して見てくれ、今の浦島太郎はなおの筈なんだ」
「あっ……」
れいかも気付いたのか、一瞬驚きに口を開け慌てて手で口元を隠した。……可愛い。
「つまり、あの浦島太郎は元の童話から弾かれた本当の主人公なんだ」
「……では私達に弾き出された本当のヘンゼルとグレーテルも何処か別の場所に居るかも知れない……という事ですね?」
「ああ」
「でしたら直ぐにでも探しに行きましょう。こうしている間にも本物のヘンゼルとグレーテルが何処かで寂しい思いをしているかもしれませんし……浦島さんの様になっていたのなら一度
最後が少し物騒な気もするが……
「そうだな、じゃあ一度森を出るか」
「ええ!」
森を抜けると直ぐに異変に気付く。
ドシーンッ!! ドシーンッ!!
「これは……!」
森の木々で遮られていたせいで今まで見えなかった様だが、森を抜けた今その異常に直ぐに気付いた。
巨大な……そうまるで巨人の様なドレス姿の女性が歩いていたのだ。
「あの翼っ!」
「ああ、あの子も浦島みたいな状態になってるっぽいな」
「ええ、ですが放ってはおけません私達もあの方の近くまで急ぎましょう!」
「まぁてぇぇぇ!!」
誰か追われてるみたいだなっ!
巨大な女性の近くまで近寄るとその女性が何者かを追いかけ回しているのが分かる。
「よく分からねぇが誰かを追っかけ回してる見てぇだな……」
「ええ、追いかけられている方も無事だと良いのですが……」
「無事やでー!」
するとれいかの心配の声に答えるように聞き覚えのある声が聞こえて来た。
この声は……!
「あかねさん!!」
「そこかぁぁ!!」
れいかの声に反応して此方に気付いた女性。
どうやら一寸法師のあかねの事をこの大きな女性は追いかけていたようだ。
「やばっ!逃げるで!」
お互いの無事を喜び合いたい所だが、そうも言っては居られないようだ。
と言うか……
「あかねテメェ!俺の頭の上で休んでんじゃねぇ!」
俺が楽するのは良いが他人が一人だけ楽するのは許せねぇ!
そんな最低な事を考えながらも、れいかとあかねと一緒に大きな女性から逃げ出すのであった。
はいっ!というわけでやっと他の子と合流しましたねー!
因みに浦島くんはここで退場です!お菓子の家でピクピクしててこれ以上は出てきません!
次回でやっと久しぶりにニコちゃんが出せるかな?
それでは次回もお楽しみに!