俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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もうすぐこのお話を書き始めて三年になります。いやぁ感慨深いものですね……


(8)

 俺達の目の前には不気味な城が佇んでいた。魔王城と聞いてパッと想像する様な刺々しい中世のお城の様なモノを想像していたのだが、悪い意味で想像の斜めを上をいっていた。乱雑に大小の塔が突き出し、中心部から人の胴体ほどもある太い茨が溢れ出して城の三分の二程を覆い尽くしている。遠目からだと触手の群れにも見える。……ぶっちゃけキモイ……

 

 そんな城を()()()は鬱蒼とした険しい森を走り抜けて早々見る事になったのだ。SAN値がピンチまである。

 

 あ、俺?ビューティにお姫様抱っこだよ。体力と脚力の無い俺が鬱蒼とした森なんか突き進めるかよ……早々にダウンしてお姫様抱っこコースだよ……体力作りの決意をより強く固めたね。

 

 

 

 魔王城を見上げているとバルコニーに人影が現れた。

 

「……にこちゃん」

 

「何しに来たの……」

 

「ごめんなさい!」

 

 ハッピーが頭を下げる。

 

「絵本の続きを書くって約束したのに……本当にごめんなさい!」

 

「謝ったって許さない!」

 

「………」

 

「……返してあげるっ!」

 

 にこが踵を強く踏み鳴らすとにこの背後から何かが飛び出してきた。

 

「ぐっ!」

 

「ぎゃっ!」

 

「げっ!」

 

 それは、俺達の前に積み上がり……

 

「あなた達は?!」

 

「牛さん達クル!」

 

「牛さんって言うんじゃねぇ!」

 

 飛んできたのは残って戦っていた筈の牛魔王達だった。

 

「へっ……情けねぇ格好つけてお前らを送り出したのに負けちまったぜ」

 

「ねぇ、あれ……」

 

 俺たちはボロボロの牛魔王達に気を取られていたが最初に気付いたのはマーチだった。

 

「アイツらは!?」

 

 マーチの視線の先、にこの経っているバルコニーには悟空一行、一寸法師、ヘンゼルとグレーテル達、敵の主人公達が勢揃いしていた。

 

「わたしがどんなに辛かったか、寂しかったか……分からないでしょ!?」

 

「にこちゃん……」

 

「みゆきも苦しめばいいんだ!!」

 

 にこのその叫びを合図にする様に孫悟空と一寸法師が襲いかかって来る。

 

「みゆきちゃんの邪魔は」

 

「させへんでぇ!!」

 

 武器を振りかぶり、飛び込んで来る孫悟空と一寸法師の攻撃を割り込むようにピースとサニーが受け止める。

 

「ハッピー、にこちゃんにちゃんと気持ちが伝わるように」

 

「何回でも、しっかりと謝ってきぃ!道はウチらが切り開く!」

 

「二人とも……ありがとう」

 

 ハッピーは二人の間を駆け抜けにこ達の居るバルコニーへと駆けて行き、その後ろにマーチとビューティが続く。

 

「なんで、来ないで……来ないでよ!!」

 

 近付いて行くハッピー達をにこは拒絶する。

 

 その、にこの想いを叶えようとするかのように、まだバルコニーに残っていた主人公達も飛び出して来る。

 

「ブヒっ!」 「カッパー!!」

 

 ハッピーを挟み込むように、連携して襲いかかって来る沙悟浄と猪八戒。

 

 だが……

 

「ハッピーの邪魔はさせない!」

 

「ブギッ?!」 「カパッ?!」

 

 一瞬の隙を着くように横合いから飛び出してきたマーチに後頭部を捕まれ顔面から地面へと叩きつけられる。

 

 なにあの攻撃……えぐっ……

 

「ありがとうマーチ!」

 

 ハッピーはマーチに気付くと直ぐさまその場をマーチに任せ、またにこに向けて駆け出す。

 

「「行かせるか!」」

 

 その声と共にハッピーへ向かって何かが飛んでくる。

 

「させません!」

 

 しかし、即座にビューティが反応してハッピーの左右から道の様に氷の壁を作り攻撃を防ぐ。

 

「ハッピー、行ってください!」

 

「ビューティもありがとう!」

 

 そしてまたハッピーは走り出す。

 

 

 

 ビューティが氷の壁で防いでいたのはただの石ころだった。だがただの石ころだと侮ることは出来ない。投石だとしても当たり所が悪ければ人は死ぬのだ。それに投げているのはヘンゼルとグレーテルだ。何か変な呪いなどが込められていたとしてもおかしくは無い。

 

 ビューティは氷の壁を維持しながらも二体一で押され始めていたマーチに合流し、沙悟浄と猪八戒を押しとどめている。

 

 

 そこかしこで繰り広げられる戦いを並行して見ながら、どうすればこの均衡が俺達が有利な側に崩れるのか考える。

 

 ビュンッ!

 

 直ぐ横をなにかが通り過ぎて行った。

 

『ハッピーっ?!』

 

 一瞬、何が起こったのか分からなかったが、みんなの声ですぐに理解する。

 

 ハッピーだ。

 

 みんなの助けを借りて、にこの元へと向かっていた筈のハッピーが、最後方に居た俺のよりも更に後ろへと弾き飛ばされてきたのだ。にこが居るバルコニーの周りでは太い茨の蔓が触手の様にのたくっていた。あれに弾き飛ばされたのだろう。

 

「ハッピー!!」

 

 考えていた内容など吹き飛び、急いでハッピーを助け起こす。

 

「大丈夫か!?」

 

「あははっ……ありがとう八幡くん。ちょっと焦っちゃった……」

 

「お前、こんな時に何笑って……!」

 

「えへへ、こんな時だからこそ……だよ。どんな時でもスマイルスマイル」

 

 ハッピー……

 

「……わかった。お前のその気持ちを伝えればにこも気付いてくれる筈だ。もう一回、いや、何回だって行ってこい」

 

「うん!!」

 

 ハッピーは跳ねる様に駆け出す。その歩みは先程よりも早く、軽い。

 

 

 

 一方、他の四人も遠目からハッピーと八幡の様子を伺い、大丈夫そうだと安心すると、一気に攻勢に出た。上手く戦う相手を交換して、相性の良い相手を抑え込みにかかる。

 

「なんかで聞いた事有るんやけど豚って熱さに弱いんやろぉ!?」

 

「ブヒ……ブヒ……」

 

 サニーは自身の両手どころか全身を燃え上がらせながら猪八戒を追い詰め……

 

 

 

「お皿の水を凍らさせていただきました」

 

「カ……パ……」

 

 ビューティは沙悟浄の皿の水を凍らせ戦闘不能に……えぐい

 

 

 

「孫悟空さんってお話で読んだけどすっごく強くて格好良いよね!」

 

「へっ?……いやぁそれほどでも、あるかな!はっはっはっ!」

 

「……ごめんなさい!!」

 

「はっはっhぎゃぁぁぁ?!」

 

 ピースは孫悟空を(おだ)てて不意打ち……

 

 

 

「当たれ!当たるでおじゃる!」

 

「そんな大振りな攻撃じゃあアタシには当たらないよ!」

 

 マーチはその速さと身軽さで一寸法師を翻弄する。

 

 

「出して〜!」

 

「寒いよ〜!」

 

 そして、ヘンゼルとグレーテルは氷の壁に閉じ込められ隔離されていた。……えぐい

 

 

 

 ハッピーはもう主人公達に邪魔されることなくにこの元へと向かう。

 

「……来ないで!来ないでよ!」

 

 そしてまた、にこの声に反応するように、茨の蔓がハッピーに襲いかかる。

 

「ふっ!はっ!やあっ!」

 

 襲い来る茨を弾くハッピー。

 

「きゃ?!……っっ!はぁぁぁぁ!!」

 

 一度は数をさらに増やした茨に拘束されそうになるもサニーの炎の様に手から溢れさせたえねるぎーで打ち砕き、にこの元へと辿り着く。

 

「にこちゃん!」

 

 ハッピーは、にこへ飛び着く様に首に腕をまわすとそのまま抱きしめる。

 

「離して!みゆきなんて嫌い!大っ嫌いよ!」

 

「ごめん、ごめんねにこちゃん!」

 

「今になってごめんなさい。約束を守らなくてごめんなさい。にこちゃんの事を忘れていてごめんなさい。本当にごめんなさい!」

 

 にこの自由な両手でぽかぽかと背中を殴られながらも、謝罪を繰り返すハッピー。

 

「何よ……今更、離してよ……」

 

「わたしね、にこちゃんが居たから今みたいに助けてくれる友達が出来たの」

 

「わたし……が?」

 

「うん、にこちゃんは言ってたよね?『仲良くなるには笑顔が一番』って、あの言葉のお陰でわたしは友達が出来たの。だからわたしは笑顔が大好きなの」

 

 いつの間にかみゆきの背を叩いていた手の動きは止まっていた。

 

「みゆき……」

 

 おずおずとにこがハッピーを抱き締め返そうとした時……

 

『オオオオオオオオオォォォォォ!!!!』

 

 ドガァァンッ!!

 

 大きな唸り声と共にバルコニーが崩壊した。

 

 




っと言うわけでハッピーとにこちゃんの仲直り回でした!

 この調子なら次回かその次で映画編が終わりそうですね!

いやぁ、ぶっちゃけこの映画編、八幡くんを活躍させるのが難しくて書くのがめちゃくちゃ大変でした!

 まぁ何はともあれこのお話も三年続いてるんですねぇ。よくサボらずに投稿してるなぁ我が事ながら感心してしまいます。これも皆様のご愛顧があったからこそ!これからもこの作品と作者を宜しくお願いいたします!

それでは次回もお楽しみに!
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