崩壊したバルコニーから二人が投げ出される。
「きゃぁぁぁ!?」
「にこちゃん!」
離れる二人の体、咄嗟に手を伸ばしたハッピーから掠め取るかのように伸びてきた茨がにこの体を掠め取る。
「にこちゃぁぁぁん!!」
『オオオオオオオオオォォォォォ!!!!』
魔王城を内側から突き破り蠢く闇が溢れ出す。
溢れ出した闇は以前に、にこの影から現れた怪鳥を寄り禍々しくした様な姿を取る。
『ガァァァァァァァァ!!』
闇の怪鳥は雄叫びを上げると凄まじい衝撃波が放たれた。
「くぅぅ」
俺は咄嗟に身を低くして、吹き飛ばされないように耐える、
『うぁぁぁぁぁ!!??』
そしてその風圧に耐えている中、突然聞こえた異様な叫び声の方へ咄嗟に視線を向けると叫び声を上げて苦しんでいたのは主人公達だった。
ひとしきり叫び声上げ倒れ込むと、その体から黒い影のようなモノが抜け出し、闇の怪鳥の方へと飛んでいくとその体へと吸収された。
影から解放された主人公達からは悪魔の様な羽が消え、元の姿に戻っている。やはり主人公達がおかしくなった原因はあの怪鳥だったのだ。
「痛ぅっ……ったく、アイツは一体何者なんだよ……」
にこを利用していたのだろうと言う事は何となくわかる……が、それでその相手がなんなのかというのがわからないのだ。
怪鳥の直ぐ傍には茨で作られた鳥籠の様な籠が垂れ下がり、その中にはにこが囚われていた。
籠の中で起き上がったにこが周りを見回し、自分が囚われている事を理解すると籠の端に駆け寄り叫ぶ。
「魔王!」
魔王だと?この怪鳥がか?魔王とはにこの絵本に登場する人物でにこを攫ってしまう悪役らしいのだが……
『にこ……どうしてみゆきを攻撃しない……アイツは憎い相手だろう』
「……喋った」
おま……喋れたのかよ……
『約束を忘れ、お前を孤独と哀しみの底に突き落とした……全てはアイツが悪い……』
いや、それは攫ったお前が悪いだろ……
『みゆきを憎め……!そしてその憎しみの力でオレがこの世界を支配する!』
「マッチポンプじゃねーかよ……」
『………みゆきを憎むにこの想いがオレの力となり笑顔のない憎しみだけが続く終わりの無い世界を作り上げるのだ!!』
おい、お前一瞬こっち見ただろ!
「そんな事させない!」
『黙れ!!』
怪鳥……いや魔王はハッピーに向けて周囲に生成した黒い影の様なモノを解き放つ。
キシャァァァァ!!
黒い影は無貌の怪物の様な姿を取り、個々が意志を持つかのように地面を潜航したり、左右から襲いかかったりと多様な方法でハッピーに迫る。
「やぁ!!」
「はぁぁ!!」
「らぁぁっ!!」
しかしそれをピースが、サニーが、マーチが……雷を打ち込み、炎で焼き切り、風で吹き散らす!!
キシャァァァァ!!
そんな中何をトチ狂ったのか一匹が俺に狙いを定めて迫って来る!そして一瞬だが確かに魔王の視線を感じた……やっぱお前俺の声聞こえてただろ!?
「八幡君!!」
そして俺の目の前まで迫って来ていた影の怪物は俺の大好きな声と共に降ってきた拳に地面へと叩きつけられ……
ギュッ!?……カッ??
……一瞬で凍りつき、砕け散った……
「良かった……八幡君は牛魔王さん達の所へ!そこならここよりも幾らかは安全な筈です!」
「……ああ!助かったありがとう!」
言葉では感謝の意を伝えるが、大好きな相手が危険な目に会いながらも戦っているのに、自分だけ安全な場所に居ろと言われるのはなかなか
「……俺にも何か出来る事がある筈だ」
ビューティに言われた通りに牛魔王達の所へ向かいながらも必死に頭を回転させる。
「八幡!無事だったクル!?」
牛魔王達の所へ着くとキャンディに出迎えられた。牛魔王達も少しは回復したのか今は立ち上がり、プリキュア達の戦いを見守っていた。
「ああ、ビューティのお陰でなんとかな……」
言いながら牛魔王達の視線の先、プリキュア達の戦いに目を向けると無貌の怪物達とプリキュアの一進一退の攻防が繰り広げられていた。プリキュア達もなんとか怪物達を打ち倒すのだが魔王が延々と怪物達を補充し続けているので倒しても倒してもキリがない状態のようだ。ここままだと消耗を強いられ続けているプリキュアが押し切られてしまうかも知れない。
なんとか魔王の補充を止められないだろうか?……っ!
「……そうだ。魔王が言ってたじゃねぇか。にこの憎しみの想いが魔王の力になるって魔王からにこを引き離せればあなんとかなる……か?」
ただ俺自身にそんな事をする力はない。だが俺に無いなら有る奴を使えばいい……!かっこ悪かろうがビューティ達の力になれるのならばなんだってしてやる!
「……牛魔王、鬼、魔女、三人ともちょっと手伝ってくれねぇか?」
「何しにきたの……」
俺達は牛魔王達を率いて、にこが囚われている茨の籠の所まで来ていた。鬼と魔女は茨の根元でバレない様に少しずつ茨の茎に切れ込みを入れようと頑張っている。
「決まってんだろ!お前を助けに来たんだよ!」
牛魔王の言葉ににこがビクッと震える。
「どうして……わたし、助けてなんて言ってないもん!」
「お前、さっきからプリキュア達が攻撃される度に泣きそうな顔してんだよ……本当はなんとかしてやりたいんだろ?なにも出来ないのが辛いんだろ?」
にこは俺の事を睨みつけ叫ぶ。
「わかったような事言わないでよ!」
「わかるんだよ!!」
珍しく大きな声を出した俺ににこは押し黙る。
「俺が今なんでここに居るかわかるか?」
口調としては問いかけているが、答えなんて求めていない為また直ぐに口を開く。
「牛魔王達の傍が一番安全だからだ!……今も大好きな、大切な人が危険な目に会っているのにだぞ?」
にこの視線が俺とプリキュア達の戦いとの間で行き来する。
「俺にはなんの力も無い……だから、嫌がらせをしてやるんだよ……にこ!お前を助ける事でな!」
「そんな理由で……」
わたしを助けるの?……という言葉は紡がせない。
「そうさ!お前を助けたら魔王はさぞかし嫌がるだろ?悔しがるだろ?俺にはこんな汚いやり方しか出来ねぇんだよ!」
「八幡……」
「でも!……お前ならビューティを、ハッピーを真っ当な想いで助けられるだろ!俺には出来ないことがお前には出来るんだよ!お前は笑顔のにこなんだろ!?だったら何時までもそんな顔して無ぇでみんなを笑顔にして見せろよ!!」
「……っ!」
俺の叫びに何かを感じたのか定かではないがにこは涙をゴシゴシと袖で拭うと茨の籠に手を伸ばし外に出ようと動き出した。
『……っ!?にこ、なにをしている!?』
にこと繋がっているからか、魔王はにこが動き出した事に直ぐに気付いた。
「私、ここでみんなの事を恨んでるだけじゃダメだって気づいたの……」
『お前はそれで良いのだ……お前の憎しみの想いが強ければ強いほどオレの力は強くなり笑顔の無い、憎しみだけの世界を作り上げる』
「魔王……わたしはもうみゆきを憎めない……気付いちゃったの。わたしの本当の気持ちに……」
『本当の気持ちだと?!』
「わたしはもう、みゆきから笑顔を奪いたくない……誰からも笑顔を奪いたくないの……だって、だってわたしは!いつも笑顔のにこだもん!!」
にこがそう声を張り上げた瞬間、にこの傍らに落ちていたにこと魔王の登場する絵本が目も開けていられない程の強い光を放った。
『なっ?!なんだコレは!?』
光が収まり、ゆっくりと目を開けると目の前には絵本を持ったにこの姿……ただ、周りを茨の檻に囲わる事も無く。敗れていた筈の絵本は白紙ではあるのだが破り取られたページが蘇っている。
「絵本が………っ!魔王、もうやめよう!絵本が治ったんだよ!みんなを笑顔にして、一緒に……」
『……もうよい……』
「え?」
一瞬、魔王もにこの考えに同調したのだと思った。
「魔王……?」
しかし……
『お前など、もうよい!憎しみを忘れ、お前がそこまで笑顔を望むと言うのならば笑顔など、笑顔などオレが全て奪い尽くしてくれるわ!!』
にこに否定された魔王は、今迄の攻撃がまだ手加減だったのかと思う様な、おどろおどろしい闇の球体を顔の前まで浮かび上がらせた……!!
はいっ!という訳でにこ救出、魔王ブチ切れ回でした〜
原作ではもっとにこの心、本心に問いかける様な感じでにこは覚醒?的な感じで脱出するのですが八幡君の見せ場を作る都合上、無理矢理心を揺さぶって覚醒を促す様な感じになりました!
次回は恐らくラスト!多分!きっと!Maybe!
それでは次回もお楽しみに!