因みに章タイトルはあかねちゃんの恋愛観への作者の願望です。別れが決まっているのなら最後までその思いに気付かないふりをしてあかねちゃんらしく明るく笑顔で見送ってほしい……的な?
(1)
〜♪〜♪
「くぁ……ふぁぁ……」
目覚ましのアラーム音で目が覚める。今日は何時もよりも早くセットしていたこともあり、まだ眠気が少し残っている気がする。
「……よし」
身体の動かしやすい服装に着替え部屋を出て、眠気覚ましに顔でも洗おうかと洗面所へ向かおうとすると近くの扉が開き、目元を擦りながら小町が出てきた。
「……んん、お兄ちゃん?朝からそんな格好してどしたの?」
そうか、そう言えばまだ小町には言ってなかったな……
「今日から体力作りにな、朝から少し走る事にしたんだわ」
「……え゛っ?!」
何そのクマが二足歩行でアスリート走りしてるのを見たような反応……
流石に酷くない?
「ははっ……夢か」
「ちょっと待てや……」
乾いた笑みを浮かべ部屋に戻ろうとする小町の肩を掴み引き戻す。
「……マジで言ってます?」
「大マジだわ……まぁ、思うところがあってな」
思い返すのは、最近あった殆ど何も出来なかった物語の世界での出来事だ。
「……ふーん。何があったのかはわかんないけど頑張ってね」
小町は何かを察した様にそう言うと今度こそ自分の部屋の中へと戻って行った。
「よし、行くか」
数十分後
「ひぃ……ひぃ……はぁ、……死ぬ」
特に宛もなく適当に走って近場の公園まで来たはいいが……
「……自分の体力の無さを見誤ったみたいだな」
ベンチにどかっと勢い良く腰を下ろし、タオルを顔にかけぐでーっとベンチにもたれて息を整える。……あ、寝そう。
「……八幡君?」
「れいか?………れいか?!」
一瞬、途切れかけた意識の中で聞こえた声に、顔の上のタオルを取りながら体を起こし慌てて前を見ると目に飛び込んできたのは、ぱぁぁっと顔を綻ばせるれいかと、前にも一度顔を合わせた事のあるれいかのお兄さんがジャージ姿で足踏みをする姿だった。
『わぁぁっ!やっぱり八幡君でした!なんだが逢えそうな気がしたんです!」
「凄いな……本当にれいかの言う通りに来たら比企谷君が居たよ」
「……えっ?なんで居んの?…………あっ!お兄さんと朝のジョギング!」
なんか前にれいかから聞いた事があった気がするぞ。そうか、ここもそのコースだったのか……
「ええ、お兄様と走っていたら急にきょうっ……ビビッと来まして……」
……あぁ、そう言えばきょうかの事はれいかの母ちゃん以外にはまだ言ってないんだっけか?
「これも愛のなせる技って事なのかな……少し寂しい気もするけど……あっ、もしかして僕はお邪魔かな?れいか、僕は先に帰るかられいかは比企谷君に着いて居てあげなさい」
「はい、ありがとうございます。お兄様」
れいかのお兄さんは爽やかに手を上げるとそのまま走って行ってしまった。
「ところで八幡君はどうしてこんな所に?見た所かなり疲れているようですけど、私と同じ様にジョギングをしていたのですか?」
「あー、それなんだけどな……」
特に隠す様な事でもないので今の状況をれいかに説明する。
物語の世界で言ったように体力作りを始めた事、魔王との戦いで無力感を感じた事、もう少し体力作りが着いたら護身術の指導をお願いしようと思っている事。
『はぁぁん♡つまり八幡君は私達の為に体力作りを始めたって事ですよね♡」
「ま、まぁ、そうなる……のか?」
きょうかの中では俺は二人の為に体力作りを始めた事になっているらしい……いや、合ってることには合っているのだが……このボタンを掛け違えたかのような感覚よ……
「……話を聞くに八幡君は自分の走るペースなどをもうちょっと考えた方が良いかもしれませんね。初めて走るのですから無理もないのですが、今日もおそらく私がここに来なければ八幡君、寝ちゃってましたよね?」
「確かに、意識が一瞬飛んでた気がするわ……」
危な……言われてみればそんな気がするわ。そしたら学校にも遅刻してたかもしれないわな……
「八幡君は明日も今日の様に走るつもりで?」
「ああ、そりゃ勿論。ここで辞めてまたあんな思いをするのはごめんだからな」
そもそもそんな生半可な覚悟で始めた事じゃない訳で……
「それは良かったです♪でしたら明日からは私達と一緒に走りましょう。お兄様には私は明日から八幡君のジョギングに付き合うと言っておきますので」
「……いいのか?」
そもそもこのジョギングでの体力作りも、れいかに護身術を教えてもらう為に必要最低限の体力を補う為に始めたものだ。それなのにジョギングの段階かられいかに付き合ってもらうのは迷惑なんじゃないかと考えてしまう。
「勿論です!もしも迷惑になる……なんて考えがあるのならそれは完全に間違いだと最初に言っておきます!」
「……お、おう」
「そもそも私は八幡君とずっと一緒に居たいくらい貴方の事が大好きなんですから、こうして一緒に何かを出来る時間が増える事は私としては大歓迎なんです!」
「そ、そうか///その、ありがとな///」
突然のれいかの大好き発言に頬が緩むのが隠せない。
「ええ、ですから今日の放課後から護身術の指導も始めますよ♪」
「……え?」
……なんか話が飛んだ?
「護身術の指導も体力作りの一環としてしまうのです。その方が効率良く、八幡君の体力向上にも繋がって行くと思いますので一緒に頑張りましょうね♪」
「……うす」
「ふふっ♪約束ですよ!それでは名残惜しいですが私も一度帰りますね。また学校でお会いしましょう!」
『八幡くーん、楽しみにしてますねー!」
手を振ってれいか達を見送る。
れいかの背が見えなくなってからそっと息を吐き出す。
「……………コレ、思ったよりハードになりそうじゃね?」
筋肉痛大丈夫かなぁ、なんていう現実逃避じみた考えが浮かんでは消えていくのだった。
放課後
「今日はこれくらいにしましょう」
「はぁ……はぁ……ありがとうございました」
放課後、俺は弓道場の端でれいかに護身術の指導をしてもらっていた。
端と言っても畳敷きの休憩スペースのような場所で狭いということは無い。
それに最初の頃は護身術の指導をする都合上、れいかの身体と密着する訳で少し変な気分になりそうだったのだが……うん、そんな考えは途中から吹き飛んだわ……その、指導がガチなんよ……下手に掴みかかると投げられるし、その投げられた後にも俺の受け身が下手だった様で……危ないからと何度も受け身の練習をさせられた。その後はそのまま筋トレ三昧……最後の方であれぇ護身術は?とか考えてた俺は悪くないと思う。
因みに休憩中に弓道部の奴らにこっそりと邪魔になってないか聞きに行ったら、れいかの圧が強くていい緊張感の中練習が出来るからこれからもよろしくとかほざいていた。……じゃあお前達もやってみろよ!
弓道場の鍵を職員室に返したれいかと話しながら帰路に着く。
「そう言えば八幡君、今朝はどれくらいの時間から走っていたんですか?」
「一応、五時くらいだったな」
今日の朝、起きた時間を元に大体の時間をれいかに伝える。正直眠かったから、あんまり家を出た時の時間を覚えてないんだよな……
「そうですか……出したら五時に八幡君のお家の前に私達が行きますのでそこから一緒に走りましょうか」
「それだとれいかが大変じゃないのか?」
至れり尽くせりのれいかの提案に少し戸惑ってしまう。
「大丈夫ですよ?私は何時もその時間よりも早くからお兄様と走って居ましたし、お兄様にも明日からは八幡君と走る事は伝えてありますので」
「そ、そうか……ありがとな///」
「はい♪」
なんとなしに照れくさくなり視線をれいかから外すと珍しい光景が目に入った。
「……んん?あれってあかねか?」
「どこですか?あらあら、ほんとですね」
歩いていた橋の欄干から見下ろした河川敷、そこで外国人らしき男性と二人で何か話しているようだ。
「……道案内か?」
「どうでしょう?あかねさんはかなり英語が不得手だったと思うのですが……」
「あっ別れた……」
「なんだったのでしょうか?」
「まぁ、なんかあったらあかねの方から行ってくるだろ」
「そうですね。もしも何かあったのなら、私達でしっかりと話を聞いてあげましょう」
「おう」
俺達は止めていた足をまた進め、再び帰路に着くのだった。
っと言うわけでOP前のパートが終わりましたね!基本的に今話は八幡君の体力作りをメインにあかねちゃんの初恋をサブ的な感じで書いていこうと思っています!
それでは次回もお楽しみに!