玄関の扉を開けて、早朝のまだ薄暗い外出て先ずは戸締りをする。
「くぅぅぅ……」
伸びながら肺の中の空気を吐き出すと、早朝の冷たい空気が入ってきてなんだか目が覚める様な気がする。
れいかとの集合時間よりも少しだけ早く外に出たので当然だが、まだれいかの姿は無い。
「いっちに、さんし……」
れいかを待つ間にするのはストレッチだ。昨日はそのまま走っていたのだが、後でれいかに言ったらマジで怒られた。ただ、それは俺の事を心配してくれているからこそなのが分かるだけに少し口角が上がってしまい、もっと怒られた。……ちょっと怖かったのは内緒だ。
「おはようございます八幡君!」
『八幡君おはようございます!」
ストレッチも終わりに差し掛かった頃、一人で二度、俺に声を掛けてくる人物が現れた。まぁもちろんれいか達なのだが……
「ああ、おはよう。れいかにきょうか。ん?決めてた時間より少し早くないか?」
俺が時間より早く出て来ているのでストレッチが終わった後に少し待つ事を考えていたのだが……
『えへへ、実は八幡君に会いたくて少し早く出て来てしまいました」
「ええ、きょうかの言う通りですので八幡君は特に気に病む必要はありませんよ」
「そうか……そう言ってもらえるのは素直に嬉しいな」
「ふふっ♪それならこれからも、しっかりと私の想いを伝えていきますね」
「……っ///ああ、頼むよ」
こうやって気持ちをぶつけて来られると嬉しいよだが、つい、照れが出てしまう。
「よ、よし!ストレッチも終わったし走ろうぜ」
「ええ、ですがペース私の指示に従って下さいね?」
『それでは、しゅっぱーつ!」
俺達は軽く辺りを走り、昨日と同じ公園で小休止をとっている。
「どうですか?ペースをしっかりと管理すれば疲れも溜まり辛いんですよ」
「ああ、れいかにペースを管理してもらって良かったわ。昨日よりもまだ時間に余裕があるのに此処に着いたし、まだ体力に余裕がある気がするぞ」
れいかの言う通りで俺が如何に下手なジョギングをしていたのかが分かる体験だった。と言うよりも俺のはそもそもジョギングですらなかったらしいが……
『それじゃあご褒美タイムですね!」
「……ご褒美タイム?」
……聞いてないんだが?
「きょうか?!それはまだはや『ぎゅ〜っ!」
一瞬慌てたれいかを無視して、きょうかは無理やり体の主導権を奪った様で両手を広げ言葉通りぎゅ〜っと抱きしめてくる。
「きょっ///きょうかっ?!」
『むふっ♡すんっ……すんすんっすぅぅ……はぁん♡』
ふわっと香る汗の甘い香り、下着越しだが確かに感じる柔らかい胸の潰れる感触、そして……首元で確かに聞こえる何かを嗅ぐ様な息づかい……
「あっ……♡止めなきゃなのに……この匂ぃ……クセになりそう///」
『……んれぇ♡」
そして首筋を
「っ///ストーップ!!」
咄嗟にれいかの両肩に手を置きグッと引き離す。そして
「れいか!」
「っ!?……あっ、その〜///い、今のはきょうかが……」
こちらへ一切視線を向けないまま、れいかは珍しく顔を真っ赤に染めて口にする。
『ふ〜ん?まぁ今回はそういう事にしておいてあげますね!」
「そ、そうだな!じゃあまた家まで同じペースで戻る感じで良いんだよな!」
「は、はい!では出発しますよぉ?」
れいか自身まだ混乱が収まっていないのか妙なイントネーションで出発を告げるのだった。
「おはようございます。八幡君」
「ああ、おはようれいか」
教室に入ると直ぐにれいかから挨拶をされるので俺も返す。
朝、あの後は俺もれいかも妙なテンションのまま、ジョギングを再開し、家に着いて別れたのだが……流石にれいかも学校に来るまでには持ち直したらしい。俺も家に着いてからどうにも落ち着かなかったので一度、賢者になり煩悩を振り払い落ち着いたのだ。
「あっ……あの、八幡君」
「どうした?」
れいかの口の横に手を壁のように当てる動作に、あまり大声で言えないような事なのだと察し、荷物を下ろしてれいかに耳を近づける。
「あ、あの……これからも毎日///今日みたいな……その///ご褒美を貰ってもいいですか?」
「ん゙っ!!」
エロ可愛いいかよ!!
俺の声なき声にクラスの奴らが一瞬振り返るが机の上に伏して震えてながらも両手で
「……ありがとうございます♡」
伏せたまま耳元で聞こえたその声に俺はHRが始まるまで悶え続けているのだった。
「はーい、みんなおはよう。知っている人は知っているかもしれないけど今日から交換留学生がうちのクラスに来るわ」
教室の扉を開ける音と佐々木先生の声に顔を上げるとそこには見知らぬ外人が……
「あああああっっ!!?大丈夫!!」
あかねの馬鹿でかい声が教室に響く……急にどうした……お前こそ大丈夫かよ?
「……日野さん?」
「あー……オォウ!」
あ、なんか二人共知ってるぽいな……
「まぁいいわ、という訳で交換留学生としてイギリスから来たブライアン君です。今日から三週間みんなと一緒に勉強します」
「ヨロシク、おねがいしマース」
「あ、そうだ。日野さん、知り合いみたいだし放課後、ブライアン君に学校を案内してあげてね」
「え、ええ……」
押し付けられてるー
放課後
「なぁなぁみんな〜ウチ一人で留学生の相手なんて出来ひんよぉ!……誰か手伝ってくれへん?」
帰りのHRも終わり帰りの支度をしているとあかねが拝み倒してきた。………が
「ごめーん!実はこれからやよいちゃんと図書館で絵本を見る約束しちゃっててぇ」
「……ごめんねあかねちゃん」
みゆきとやよいには断られ……
「アタシもこれから部活があるから……ごめん!」
なおには逃げられ……
「すみません。これから八幡君と護身術の稽古でして」
「まぁ……がんば?」
俺達も普通に断った。
「そ、そんなぁ……ウチ、英語なんて分からへんのに……」
後ろからそんな悲痛な声が聞こえてきた気がしたが……多分気のせいだろう。
今日は弓道部が休みのため弓道場には俺とれいかの二人きりだ。
「そう言えばなんかあの留学生……見た覚えがあるんだよなぁ……」
護身術の指導の休憩中、壁に背中を預けながら独り言を口から零すと……
「あら?八幡君は気づかなかったのですか?あの留学生の方は昨日の帰り道であかねさんと話していた方ですよ」
「あ、ああ〜通りで見た気がする訳だ……」
そりゃあかねもHRであんな反応する訳だ。
ただそんな反応をしてしまったが為に、英語が一番苦手なあかねが留学生の相手をしなくてはいけなくなってしまったのだが……
「まぁ、頑張れとしか言えないわなぁ」
「ええ、あかねさんも頑張っているのですし八幡君も頑張りましょうね♪休憩は終わりです。腕立て、腹筋を二セットしてまた組手ですよ」
「やぶ蛇だったかぁ……」
「ワァオ!ジャパニーズスモウ!」
れいかと組手をしていると突如弓道上に場違いな声が響いた。
「すまん、邪魔やったか?」
弓道場にやってきたのはブライアンを連れたあかねだった。
「今色んな部活を見学させてもらっててん。弓道部は今日休みやったんやな」
「いえ、八幡君も少しバテて来ていましたから良いタイミングだったと思います」
「スモウ?ジュウドウ?さっきのはドッチだったノ?」
「あー……れいか?」
あかねはブライアンの質問をそのままれいかへ投げた。護身術ってあかねには言ってあった気がするんだが?
「先程八幡君と組み合っていたのは護身術というものです」
「ゴシンジュツ?」
「あー、悪いやつ、自分、守るーっ的な?」
「オウ!アカネ!ありがトウ」
今ので通じるのかよ……
「英語が出来なくても意外と何とかなるもんなんだな……」
二人が弓道場から出て行った後、終わりのストレッチをしながられいかに話しかける。
「ええ、海外で英語が全く話せなくても身振り手振りで何とかなったと言う話は私も聞いた事がありますし、あかねさんは元来身振りの大きな方ですからそれもあるのかもしれませんね」
「そういうもんか……」
「ええ」
そうしてストレッチを終え、弓道場の鍵を職員室に返した俺達は帰路に着くのだった。
今回は話がほっとんど進んでいないですが次回は飛びまくります!
それでは次回もお楽しみに!